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ブラックボックス16

最終更新:2017年01月29日 00:54

jelly

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第16章「Delirium(錯乱)」



 気がつくとゲンダーはあたり一面白一色で塗り潰された何も無い空間に立っていた。
 どうやってここに来たのか、なぜ自分がこんなところにいるのか、皆目見当もつかない。
 見渡す限りの白、白、白。天井も床も壁もなく、そもそも物が存在するという概念さえ失われてしまったのではないかと思えるほどに、ただ真っ白でゲンダー以外には何もない空間だった。
「ここは……オレはどうしたんダ? たしか、あのヴェルスタンドの中枢タワーに突入して、変な『蟹』の兵器と戦ったところまでは覚えている。それで……やられそうになって、一か八かで汁一本を撃ったんダ。それから……それから一体どうなったんダ」
 ゲンダーは恐る恐る足を一歩踏み出してみた。地面と呼べるようなものは存在しなかったが、下ろした足はそのまま見えない地に着いた。しかし何かを踏んだような感覚も無ければ、それでいて空中に浮かんでいるといったような感覚もない。この空白の世界を歩いてはいけるようだったが、なんとも奇妙な感覚だけがあった。
 とにかくこのわけのわからない場所から早く脱出しよう。そう考えて、何か目的があるわけでもなくとりあえず歩き出すことにした。
 どこまで行っても白い景色だけが伸びている。今自分がどっちに向かって進んでいるのかもわからない。それどころか、足を踏み下ろしても何も感じないのだから、本当に前に進んでいるのかさえもわからない。
「一体オレはどうしちまったんダ。なんなんダここは。もしかして、オレ死んダのか? 汁一本の威力に耐え切れなくて自爆しちまったとか。これってもしかしてあの世ってやつなのか……」

 最初は自分は機械だからという理由で、ゲンダーは死というものにあまり関心を持ってはいなかった。しかし人間であるガイストと知り合い、彼とともに窮地を切り抜けることでゲンダーは命というものに興味を持ち始めた。
 マキナからゲーヒルン中枢タワーへたどり着くまでの道中でこんな会話をしたことがあった。
「なあ。そういや死んだらそのあとってどうなるんダ」
 なんとなく気になったので聞いてみただけだった。
 機械がそんなことを気にするなんて意外だ、と驚きながらもガイストはそれに答えてくれた。
「考え方としてはふたつある。ひとつは無だ。マキナやフィーティンでは、精神というのは脳が作り出しているものだとされている。神経細胞が集まると、メカニズムはまだ解明されていないけど、そこに意識が誕生するらしい。それを精神だとする考え方がある。だから脳が死ねば精神も消滅するので、無になってしまうというわけだ。つまり脳=精神……これを【心身一元論】という」
「なんか小難しいな。もうひとつは?」
「ヴェルスタンドでは精神は脳とは別に存在するものだとしている。昔は身体に精神が宿ることで命が誕生するっていう考え方があって、死ぬと精神だけが魂として抜け出して天に昇り、新しい身体に宿ることで生まれ変わるという説が信じられていた。天国とか地獄とか、そういう信仰があるのもこの説だな。これが【心身二元論】だ。でも脳が意識を司っているのは間違いないし、科学的に言ってこの考え方はあまり正しいとは言えない」
「でも精神体っていうのがあるんダろ。あれは違うのか?」
「魂とは違う。ヴェルタンドでは現在、【心身三元論】という考え方が有力なんだ。まず身体がある。身体には脳があって、脳が意識を生み出す。これでふたつだ。じゃあ三つ目は何か? それが精神なんだ。意識と精神は別のものだとして考えている」
「…………? 意識も精神も似たようなもんじゃないのか。どう違うんダ」
「言い換えれば、無意識と意思だな。例えば……ちょっと君向けの例えじゃないけど、お腹がすいて目の前にリンゴがあったので食べたとしよう。リンゴを食べたのは自分の意思によるものだ。でもお腹がすくのは自分でコントロールできるものじゃなくて無意識によるものだ。他の例だと心臓を動かしているのも無意識だし、眠くなったり疲れを感じたりするのも無意識の作用だ。この無意識を司っているのが脳で、意思を司っているのが精神だというのがヴェルスタンドの考え方なんだ。精神とは意思……まあ、自我とかアイデンティティと言ってもいいかな」
「難しいな。じゃあ感情も精神なのか」
「感情はちょっとややこしい。無意識と精神の両方に影響されて変動する副産物みたいなものさ。感情はある程度は意思の力でコントロールできるけど、最初に喜怒哀楽の感情を発生させるのは無意識的なものだからね。何もないのにいきなり怒ったり泣いたりできないだろう」
「なるほど……じゃあ、ヴェルスタンドでは死んだ場合はどうなるんダ。脳が死ぬから無意識は消えるけど、精神は残るから意思はそのままで……幽霊みたいになるってことなのか」
「残った精神は精神体として存在する。でも脳がなければ感情は発生しないから、意思としての自我はもうなくなっているかもしれない。あるいは自我は残ってるかもしれないけど、身体という言わば外部情報を入力する装置がなくなってるから、何も見えないし何も聞こえないし、何も感じることもできずただ存在してるだけかもしれない。何も感じられなければ、意思は次第に薄れて結局は消滅してしまうのかもしれないね」
「無になるって点ではマキナやフィーティンと同じダな」
「結論だけ言えば精神体が残るっていう点が違うだけだね。まあ、これはあくまで精神体が存在する根拠を科学的に説明付けたものであって……」
 精神とは自我である。
 ヴェルスタンドの考え方では死ぬと精神だけが残る。
 そしてその精神は何も感じることができない……

 ゲンダーはガイストから聞かされた話を思い出して、今の自分の状況と重ね合わせていた。
 すべてが白い。何も感じることが出来ないと、すべてが空白に見えるのではないか。つまり自分は死んでいるのではないかと考えていた。
「たしかにオレは機械にすぎないさ。CPUはあっても脳はない。でも精神と脳が別の存在なのダとしたら、機械に精神が宿ることはないとは言い切れない。精神体ってものが事実、存在してるわけなんダからな。もしかしたらオレに感情があるのは精神体の影響なのかもしれない」
 そして精神兵器『蟹』との戦いで機械の身体と脳(無意識=CPU)が壊れてしまい精神だけが残ったとしたら。
 この何もない空間は、残された精神が何も感じることができないがゆえに見せている現象なのではないか。
「これがヴェルスタンド式のあの世ってわけか? ある意味、天国地獄よりもずっと恐ろしいな。じゃあやっぱりオレは死んじまったのか。メイヴを護るって誓ったのに……すまない」
 途方に暮れてゲンダーはその場に座り込んでしまった。
 もちろん座っても感覚として何も感じるものはない。地面の固さも、ひんやりとした感じも、なにもかも。
 こんなところで一体これからどうすればいいというのか。
 できることなど何もない。ただ精神が疲弊して意思が消滅するのを待つしかないのか。
「……ダー…」
 そのとき、ふと誰かの声が聞こえた気がした。
「……?」
 こんなところに誰かいるというのだろうか。
「ゲン………ゲンダー……」
 聞き覚えのある声だ。
 声は明らかに自分の名を呼んでいる。
「誰ダ? 誰かいるのか。どこにいるんダ」
 目を凝らすと、白い空間にもやがかかったようになり、そこから薄っすらと人影が現れた。
 影はゆっくりとこちらに近づいてくると、再び声を発した。
「おはよう、キョクゲンダー。私の声が聴こえるかね?」
 声の主はたしかにこの影のようだった。しかし、その聞き覚えのある声は……
「ヘイヴ……博士、なのか……? たしか永遠のコールドスリープに入ったはず。どうしてここに!?」
「私はヘイヴ。おまえの生みの親だ」
「それは知ってる。でもなんで博士がここに!?」
 わかっている。ヘイヴはたしかに自分の目の前でコールドスリープに入ったのだ。だからここにヘイヴがいるはずがない、そう理解している。
 しかし理性とは裏腹にゲンダーの感情は昂っていた。怪しいとわかっていながらも、つい自分で自分を抑えられなくなり、ヘイヴに駆け寄ってしまう。胸が熱くなる。この感情は、嬉しさ……?
 ヘイヴはしかしゲンダーの質問には答えず、呼びかけておきながらその目は虚ろでゲンダーを捉えてもいない。明後日の方向を見ながらヘイヴは続けた。
「ゲンダー。今日の研究を始めるぞ、昨日の続きからだ。すぐに準備してくれ」
「何言ってるんダ。昨日って、博士はコールドスリープ状態で眠っていたんじゃないのか」
 ヘイヴに触れようとすると、その手はすり抜けて、ヘイヴは霧のように消えてしまった。
「ゲンダー。おまえに頼みがある。もちろん、聞いてくれるな?」
 ヘイヴはいつの間にか、少し離れた場所に立っていた。不思議に思いながらも、ヘイヴに問いかけてみる。
「ああ、博士の頼みなら当然ダが……それより、いつ目が覚めたんダ。どうやってここへ? そもそもここはどこなんダ。何か知っているなら教えて欲しい」
 しかし、ヘイヴはこちらの声など聞こえていない様子で話を続けた。
「どうやら時間切れらしい。私の研究を狙う者がいる。そしてついに恐れていた日が来たのだ。全ての研究データは私が開発したメイヴという機械に記録されている。今となっては世界で唯一の研究データの在り処だ。おまえにはそのメイヴを守り抜いてもらいたい。そして大樹大陸のマキナ国へ向かい、メイヴを正しく扱える者に会うのだ」
「メイヴのことなら知っている。オレたちはもうマキナへ行ってきたんダ。スヴェンにも会った。一体何を言ってるんダ! どうしちまったんダよ、博士!?」
 様子のおかしいヘイヴにゲンダーは困惑していた。嬉しさは途端に不安に変わる。
「私はこの時代に生まれたことを悔やむ。悔やむぞ、悔やむ悔やむくやむくくくやむや悔やむやクやムくやム悔やムくヤ悔やむクククや……む。わ、ワワ私はぁぁぁああああぁぁあぁぁああぁ!!!」
 叫びながらヘイヴの姿は崩れてなくなってしまった。
 背筋に冷たいものを感じる。驚いて振り向くと、すぐ目の前にヘイヴの顔があった。
「うわぁ!?」
「キョクゲンダー! おまえ……まさか感情があるのか? いや、まさかあり得ん。そんなことはあり得ん……!」
 あれほど会いたかったヘイヴが目の前にいるというのに、もはやゲンダーには恐怖しか感じられなかった。
「ゲンダー……」
「おい、ゲンダー」
「こっちだ、ゲンダー」
 気がつくと、周囲にはいくつものヘイヴの姿がある。
「あり得ない」
「おまえはアリエナイ」
「おまエは普通じゃナイ」
 ヘイヴたちは口々に言う。
「説明がつかナイ。おかしい」
「ナぜだ。理解できききナい」
「ワカラナイワカラナイ。ワカラ……ワワカカララナナイイ。。。ナイ」
 口々にゲンダーを否定し、罵りながら距離をつめてくる。
 いつの間にかヘイヴたちの数は増え、あっという間に取り囲まれてしまった。
「異常だ。科学的には在りエナイ」
「そんなモノ存在してはなラない」
「廃棄だ。処分だ。解体だ。没だ」
 そしてついにヘイヴのうちの一人が言った。

「おまえは……駄作だ」

 すると他のヘイヴたちもそれに続く。
「「駄作だ。駄作だ。駄作駄作駄作ダサク。駄作だだ。駄駄さクダさクダ作駄作駄作駄作ダ駄作駄作駄作サ駄作駄作駄作ク駄作駄作だダサ駄作さくサクさク駄作クさクククク……」」
 カタカタと身体を、首を震わせながら、深い闇の底のような目で、ヘイヴたちは同じ言葉を延々と繰り返す。

 駄作駄作駄作駄作
 作駄作駄作駄作駄
 駄作駄作駄作駄作
 作駄作駄作駄作駄
 駄作駄作駄作駄作
 作駄作駄作駄作駄

「もう……もう、やめてくれぇッ!!」
 追い詰められたゲンダーは複数のヘイヴに向かって汁千本を乱射していた。汁千本を受けたヘイヴは次々に溶けていく。
「ナゼダ……キョクゲンダー…」
「ワタシ…ノ……タイ…セツ…ナ、キョ…クゲ。ゲゲ」
「ワタシノコエガキコエテイ…イル…イルイル。イル。。。イイイル」
 ヘイヴたちは跡形もなく消えてなくなった。
 そして白一色の空間には再びゲンダーだけが取り残された。
「う……ううっ。ううう……」
 親にも等しいヘイヴを撃ってしまった。
 とても嫌な気分だった。まるで、胸を槍で貫き抉られたような気分だ。
 しばらくゲンダーはうずくまったまま動くことができなかった。


 ずいぶん時間が経って、ようやく落ち着きを取り戻したゲンダーは、突然湧いて出たヘイヴの群れの正体について考えていた。あれは一体なんだったのかと。
(ここがあの世ダとすれば幽霊? いや、ヘイヴはまだ死んでない。コールドスリープに入ったダけダ)
 まずヘイヴがあんなに何人もたくさん存在するわけがない。そしてこんな場所にいるはずがない。
(本人じゃないことは間違いない。偽者ダ。……じゃあなんで急に出てきたんダ?)
 ここにメイヴさえいれば、この現象を分析してくれたかもしれないのに。
 一人でタワーに突撃してしまったことを少し後悔していると、目の前に見覚えのある光が現れた。
『どうしたんですか、ゲンダー。ぼーっとして』
「えっ?」
 気がつくと、いつの間にか隣にメイヴが立っていた。
 白一面の景色は消えて、今はどこかの建物の中にいる。
「あ、あれ……? オレどうしてたんダ。ヘイヴの群れは!?」
『何を寝惚けたこと言ってるんですか。私たちには目指すべき場所があるんです。立ち止まってる暇はありません』
「そ、そうダったな」
(なんダったんダ、さっきのは。幻覚? 夢でも見ていたのか)
 理解が追いつかず首を傾げるばかりだったが、脱出できたのならそれでいい。
 さっきまでの奇妙な現象は気になるが、その原因を究明するよりももっと大切な目的がある。
『さて、先に進みましょうか。中枢は最上階か、それとも最下層か…』
「ん? 最上階を目指すんダろ。大統領はそこにいるはずダ」
『ふむ。どうやらあちらも私たちを観察していたみたいですね』
「えっ? あ、ああ! そうなんダよ! 誰にも見つかってないのに侵入がバレてて待ち伏せされてたんダ」
『見当たりません。確かにセンサーはこの部屋にいると示しているのですが…』
「いや、心配はいらない。もうオレが倒したからな。変な『蟹』みたいな兵器ダった。手強い相手ダったよ」
『なるほど、きりがありませんね』
「まったくダ。大統領を捕まえるダけの作戦なのに、なんでこんなにも敵が出てくるもんかな」
『中央の機械が発生源のようですね。ですが、アクセスしてみないことにはわかりません』
「……は?」
 会話として成立しているような気がしていたが、よく考えると何かがおかしい。
 メイヴの言動に違和感がある。それにどこかで聞いたことがあるような台詞だ。
「中央の機械? なんのことダ。それが敵を生み出してるとでも言うのか。敵はホログラムとかそんなんじゃなかったぞ。実際に殴られたし、首まで絞められたんダ。危うくスクラップにされるところダった」
『中央の機械を吹き飛ばすと、爆発的に霧が発生して窮地に陥る可能性があります。それよりももっといい考えがありますよ』
「……メイヴどうした? さっきから変ダぞ。一体何の話をしてるんダ」
 しかしメイヴはその問いには答えず、壊れたテープレコーダーのように、ただただ決められた台詞を垂れ流すだけだった。
『ゲンダー、その子はG-メイシス。例の資料にあった第三の兵器です。精神体を基にして精製されるもののようで、はっきりとした自我を…』
(そうダ……このメイヴの台詞、覚えがあるぞ。どれもガイストクッペルの地下室でのやりとりダ)
 あのときはドームから脱出するために情報を求めて地下室へ向かった。そこで精神体のことを知って、ガイストやグメーと行動を共にするようになったのだ。
 そう気付いてみれば、たしかに周囲の景色にも見覚えがある。ここはガイストクッペルの地下5階だ。
「ということはこれも幻覚……いや、オレの記憶なのか!?」
 その間にもメイヴは一人でしゃべり続けている。ゲンダーの意思に関係なく場面は変わり、移動しなくても次の舞台へと進んでいく。まるで立体映像の中に立ってそれを見ているかのようだ。
 さらに景色は変わって、メイヴが何かの機械にコードを繋いでアクセスしている場面になった。
「これは……霧の装置? たしかあのときメイヴは……ま、まずい!」
 あのときメイヴは装置にアクセスしたことが原因で暴走してしまった。たとえこれが記憶の再現に過ぎないとわかっていても、仲間がこれから大変な目に遭うとわかっていて、それを放っておくことなどできなかった。
「やめろ、メイヴ! そいつに触るな!」
『アクセスしてみなければわかりません』
「わかるんダ! それが原因でおまえは大変なことになるんダ」
 しかしメイヴはゲンダーの制止を振り切って、装置へのアクセスを開始してしまった。
 あとはよく知っている光景だ。メイヴの目や体が発光し始める。データのやり取りを示す文字の表示は速度を増し、もはや目で追うのは困難になった。
「くっ……やむを得ないか」
 ゲンダーは以前にメイヴが暴走したときと同様に、左腕を大きく振りかぶってメイヴの側頭部に45度の角度で思い切り叩きつけた。激しい音が響きメイヴの体が横倒しになる。右腕が少しへこんだ気がするが、気にしている場合ではない。
 しかし、今回の暴走はこれで治まるものではなかった。
『痛いですね、ゲンダー』
『父さんにもぶたれたことないのに』
『敵意を検知、攻撃を受けています』
『了解。直ちに防衛態勢に入ります』
 メイヴの発光はさらに激しくなり、周囲に遠隔モニタが数えきれないほどの勢いで大量に現れ始めた。
『破壊セヨ、破壊セヨ、破壊セヨ』
「なんてこった、メイヴまでおかしくなっちまったのか! オレは敵じゃない、ゲンダーだ! おまえの味方ダ!!」
 メイヴはアームを格納させると、なんと砲台に変形し始めた。
『拡散波動砲エネルギー充填』
 メイヴの発光は収まり、その光は一点に集めれていく。
『エネルギー充填120%』
 メイヴが砲台に変化したことも驚いたが、それどころではない。
『電影クロスゲージ明度20…』
 直感が警鐘を鳴らしている。
『標的ロックオン完了』
 これはすぐに逃げなければ危ない…! そう思ったときにはもうすでに遅い。
『波動砲発射!!』

「!!」

 高濃度のエネルギー派がゲンダーに迫る。
 もうおしまいか、まさかメイヴにやられることになるとは、などと思いつつ、走馬灯のように今までの旅を思い巡らせていると突如、空間に裂け目が現れ、なんとそこからグメーが飛び出してきた。
「グメメェェェエエエエエっ!!」
 グメーは果敢にゲンダーと波動砲の間に立ち塞がる。すると波動砲は粉のようになって消えた。
「た、助かった……のか?」
 ゲンダーは力が抜けてへたり込んだ。
 グメーはゲンダーに構うことなく空間を飛びまわる。グメーが飛びまわった後からは次々に粉が生成され、空間の裂け目がどんどん広がってゆく。暴走したメイヴはすでに姿を消していた。
 空間の裂け目はなおも広がり、ついには崩壊してガラスのように崩れ落ちる。
 崩壊した空間の外は、もとのゲーヒルン中枢タワーだった。
 灰と煤だけになった真っ黒な空間。しかし、ここにはたしかに見覚えがある。あの『蟹』と戦った場所だ。
『ゲンダー! 正気に戻ったのですね!』
 目の前に遠隔モニタが現れた。
「う、うわっ!?」
 驚いて後ずさるゲンダー。
「メイヴ!? おまえ、暴走したはずじゃ…」
『それは、むしろゲンダーのほうですよ』
 メイヴの近くには破壊された何かの装置があった。
 この装置は霧を発生させて、それに包まれた者の不安や恐怖心を煽り幻覚を見せるというものだった。
 これもヴェルスタンドの精神兵器の一種であり、感情を持ち合わせていないメイヴや、同じく精神体であるグメーには効果を示さなかったが、感情を持つゲンダーはまんまとこの罠に嵌ってしまったのだった。
『どうやら倒れていたあなたの傍に誰かがこれを置いたようですね。私たちが到着したときには、この部屋は霧が充満していて真っ白で何も見えませんでした。グメーが霧を浄化して隠されていたこの装置を見つけてくれなければ、発見が遅れてあなたの精神が破壊されていたかもしれません。大変な思いをさせてしまって申し訳ありません』
「ってことはつまり、オレがおかしくなってたのか」
『そういうことになります。もう大丈夫ですね?』
「ああ……大丈夫だ。オレは正気に戻った!」
『その台詞は裏切りフラグですよ、ゲンダー。出口でクリスタルを奪って逃げないでくださいね』
「グメメメぇ~ん」
「……ま、まあ幻覚でよかった。オレはまだ死んでないようダな。その装置を置いたのはきっと大統領に違いない。どうも最初っからオレたちの侵入はバレてたみたいダったからな。でもこれで堂々と大統領の顔をぶん殴りに行ける」
『あなたが上で騒ぎを起こしてくれたので、ここまでは苦労せずに来れました。騒ぎを起こすな、とは言いましたが、最初からバレてたのなら仕方ありませんね』
「仕方ないね! ところでガイストはどうした? 姿が見えないが…」
『それが実はここに来る途中、大きな爆発があったようで建物の一部が崩壊してはぐれてしまったんです。無事だといいのですが。タワーの人間も大騒ぎで、侵入者どころじゃないみたいですね』
「お、大きな爆発ね。な、なんダろうなぁ。物騒ダなぁ」
『わかっています。あなたを襲った兵器の仕業ですね? まったくタワーの被害もお構いナシに攻撃してくるなんて、ヘルマン大佐の言っていたように敵はずいぶんとクレイジーなやつみたいですね』
「お、おう。そうダな……」
 汁一本によって自分が吹き飛ばしたとは、とても言えそうな空気ではない。
『とにかく今がチャンスです。非常事態で警備は機能していません。大統領を狙うなら今です』
 ホログローブを取り出して立体見取り図を確認すると、大統領執務室はこの倉庫だった部屋を出て通路を真っ直ぐ行った突き当たりだ。標的はもう目と鼻の先にいる。
「しかし大騒ぎになってるなら、大統領のやつも逃げちまったんじゃないか」
『いえ、それがどうも執務室にいるようなのです。ホログローブには表示できませんが、私の生体センサーがその存在を捉えています。そもそも侵入がバレていたなら、もっと早くに逃げることもできたはずです。しかし、やつはいる。これはつまり余程の自信があるのか、あるいは……』
「罠か」
『わかりません。ですが、好機であることにも違いありません。この先には大統領一人の反応しかありませんから』
「行ってみるしかないな。できるかどうじゃない。オレたちはやるんダ」
『もちろんです』
「グメぇ~っ!」


 爆発によってひん曲がったシャッターのその奥先に通路は延びている。
 今更こそこそと侵入する必要などもうない。メイヴの重火器とグメーの能力で道を妨げる瓦礫や残骸を消し飛ばしながら先へと進む。
 通路はそれほど長くはなく、すぐに目的の場所へとたどり着いた。
 重厚な扉が彼らを待ち構えており、扉の上の金のプレートには【大統領執務室】と書かれている。
「ここダな」
『中にいますよ』
「グメぇ…」
 ごくりと息を呑む。
 メイヴのセンサー反応によると、大統領はただ一人この扉の向こうで何をするでもなく、ただじっとしているらしい。
 通路脇の窓から眼下を望むと、地上は避難する人々や駆けつけた救急車両などでごった返している。思った以上に大きな騒ぎになっているようだ。
 そんな事態でありながら、ただ落ち着いてじっと部屋に閉じこもっているだけとはとても考えられない。やはり何か考えがあるのだ。罠である可能性は全く否定できない。
「でも行くしか道はないんダ。そうダろ?」
『せっかく色々準備して待ってくれてるんです。顔を出しておくのが礼儀ってもんですね』
「グメっ。グぅーメェっ」
 互いに顔を見合わせて頷き合う。
「よし、行くか!」
 呼吸をそろえて勢いよく扉を開け放つ。
 間髪入れず攻撃態勢をとりながら執務室の中に飛び込んだ。
「大統領、覚悟しろ!」
『私たちと一緒に来てもらいましょうか』
 執務室の奥には黒光りする立派なデスクがあり、その席に大統領は威厳たっぷりに鎮座している。
 しかしゲンダーもメイヴもその姿を見る前に突然崩れ落ちて倒れてしまった。そしてそのまま、どちらもピクリとも動かなくなった。
 そんな様子に動じることも表情を変えることもなく、大統領もまた全く同じ姿勢のまま沈黙を守っていた。
「グ、グメっ!? グメーっ! グメェーっ!!」
 外の騒ぎとは対照的に、静まり返った大統領執務室に、慌てたグメーの声だけがこだまする……


第16章 了

ブラックボックス17
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