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魔法戦争9

最終更新:2017年06月04日 02:34

jelly

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Chapter09「火竜の国ムスペルス」



「見えてきたぞ。あれがムスペルスじゃな」

 クルスが前方に見えてきた巨大な雲の塊を指して言った。
 火竜族の王子セルシウスと別れてから、魔導船で三日ほど飛んだ先にムスペルスはあった。
 自前の翼で飛べる竜族や、大型の船ならもう少し速度は出せるが、小型船ではこれでも最大速度だ。思ったよりも時間がかかってしまっている。それでも、その間に再び例のヴァルトやファントムトロウのような追手に襲撃されることなく無事にたどり着けたのは幸いだった。

「やった着いたのか。しかし、どこにムスペルスがあるんだ? 見たところ雲しか見当たらないが……」

 望遠鏡を覗きながらオットーは辺りを見回している。しかし、目立つものといえば目の前の巨大な積層雲ぐらいだ。
 するとセッテは、

「なんだ兄貴。まだ気付かないんすか。ムスペならさっきからずっと目の前にあるじゃないっすか。こんなに堂々と」

 と面白そうに笑いながら、オットーの先に立って手で前方の空を指し示す。

「それがわからないから聞いてるんだ」
「この雲がムスペっすよ。こんなでっかいのに見落とすほうが難しいっすねぇ」
「雲だと? 火竜どもはこんな雲の中にでも棲んでいるというのか。これのどこが国なんだ」

 初めてムスペルスを訪れた者は、知らなければまずそこに到着しても、到着したということに気がつくのが難しいだろう。見かねたクルスが補足して説明した。

「これはただの雲の塊ではない。分厚い層にはなっておるが、中は空洞になっておってのう。内側には大火山から成る浮島が存在しておるのじゃ。具体的には、雲の中の浮島がムスペルスの国土ということになるのう」

 山をまるごと空に浮かべて雲の中に閉じ込めたようなムスペルスの大地は、今よりも遥か太古の昔から存在しているのだという。それは人が地上からやってくるよりもずっと前で、地上に文明が誕生するよりもさらに昔に遡る。かつてこの世界には大樹とムスペルス、そしてニヴルヘイム。この3つしか存在せず、そこからすべてが誕生したと説明している神話もあるほどだ。

「原始の時代の火山がそのままこの空に遺されているといった感じじゃな。そんな巨大な大地がどうやって空まで昇ってきたのか、どうやって浮かんでいるかは私に聞かれてもわからんがな。そして私たち地竜が大樹を大切にするように、火竜たちはこの大地を神聖視しておる。国であり聖地であり、そして太古の遺産でもあるというわけじゃのう」

 クルスが説明しているうちに船は積層雲に近づき、雲の壁が手で触れられるほどすぐそばまで迫ってきた。

「なるほど。噂には聞いていたけど、来るのは初めてだ。案内を頼むよ、セッテ」

 雲は水蒸気の塊だというが、極限までに密度を高めたこの雲の壁はまるで綿のクッションのようで、押せば柔らかな弾力さえ感じられそうである。
 物珍しそうに雲に手を伸ばすフレイの様子を見て、慌ててセッテが忠告した。

「あっ、フレイ様、危ないっすよ! それすごく熱いんすから!」
「おっと」

 フレイは慌てて手を引っ込める。
 しかし、そこでひとつ疑問が生まれた。ムスペルスはこの中だ。そんな熱くて厚い雲の壁を一体どうやって通り抜けるというのか。

「船は大丈夫なのかな」
「任せるっす」

 セッテが長い呪文を唱えると、光の膜が広がって船全体を包み込んだ。

「耐熱障壁っす。中の空間もすごく暑いっすから、火竜でもなければ生身じゃ数分ともたないっすよ」
「具体的にはどれぐらい?」
「コップの水がすぐに蒸発したり、卵を割ったらあっという間に目玉焼きになっちゃうぐらいっすね。あと湿度はほぼ100%っす。それにあちこちにマグマの川や池があるんで、温度計は振り切れちゃって測定不能なんすよねぇ」
「なんて過酷な場所だろう。まさに炎の国といった感じだ」
「火竜にとっては居心地がいいらしいっすけどね。まあ大丈夫っすよ。おれが上陸する前にみんなにも直接、耐熱と耐火の魔法をかけますんで。あ、でも水分補給だけは自分で気をつけてくださいっす」

 話しているうちに、船の穂先が雲の壁に差し掛かった。船首が雲のかき分けるように奥へと入っていく。

 しばらくは雲の中を進んだ。まるで濃い霧の中にいるようで一面真っ白、隣に立っている仲間の顔すら見えないほどだ。魔導船は魔法が目的地まで自動で船を導いてくれるので安心だが、もしそうでなかったら雲の中で遭難してしまっていたかもしれない。

 それから数分ほど進んだだろうか。硫黄の香りが次第に鼻をつくようになり、ようやく雲の壁を抜け切った。
 雲の壁も想像以上に厚い層だったが、中の空間もまた予想以上に広大だった。外とは別のもうひとつの空がそこにあるのではないかと錯覚するほど広く、抜けてきた反対側、つまり正面のずっと向こう側の壁は遠すぎてここからは見えない。
 そしてこれだけ広い空間があれば、そこに浮かんでいる島もまた大きかった。浮島なんてちっぽけなものではない。もはやあれは浮き大陸といってもおかしくないほど巨大な岩の塊がそこにはあり、火山が中心にあるとは聞いていたが、山がひとつある程度のものではなく、山脈をまるごと地上から引っぺがして空に浮かべたような規模だ。さらにはセッテが言っていたように、山から流れ出したマグマの川がいくつも延びており、あちこちでは黒煙が昇っていた。
「ようこそムスペルスへ! おれたちの暮らしてる場所とはまるで別世界っすよ」





 ムスペルスには港のようなものは存在しない。火竜たちは魔導船など使わなくても、自前の翼で飛べるからそんなものは必要ないのだ。
 そこで適当な岸辺に船を着けると、セッテに保護魔法をかけてもらい、フレイたちはムスペルスの大地へと降り立った。

「私はここに残るぞ。地竜と火竜の関係は悪いわけではないが変に目をつけられても困るし、それに耐熱魔法の効き目が切れたら誰かがかけ直さねばならんからの。戻ってきたら帰る船が燃えて灰になっていたでは困るじゃろう」
「わかった。それじゃあ行ってくるよ。なるべく早く戻るから」

 クルスを残して、フレイたちはセッテの案内でムスペルスの王城へと向かった。
 王城はこの大地の中央に位置する山脈の火山の上にある。火竜たちは飛べるのでまったく問題がないが、人と身からすればずいぶん遠い。
 なんせこの暑いなか、わざわざ登山までしなければならないのだから。耐熱魔法をかけてもらっているとはいえ、それでも暑いことには変わりはない。

「セッテ。おまえが修行していたのは王城の兵舎だったな。こんな山を毎日登っていたのか?」
「まさか。セッちゃんに乗せてもらってたっす」
「はぁ。まったくおまえってやつは、王子使いの荒いやつだな」
「好意に甘えさせてもらってただけっすよ! こんなところでも集落があって、人数は多くないっすけど同じように修行に来てる人や、あるいは学者だったりも滞在してるっすから、宿はそこにお世話になってたっすね。いろいろ魔法が駆使されてて、外とは違って涼しくて快適な宿だったっすねぇ」

 話しているうちにその集落にたどり着いた。町や村というほど立派なものではなく、掘っ立て小屋のような簡素な建物が少数寄り集まっているだけのもので、ここには火竜の姿はほとんどなく、今はここに滞在している人もいないようだ。火竜はそこらで適当に眠ったり、あるいは山肌の洞窟をねぐらに使うので、狭苦しい家などは必要ない。そのため集落という概念をそもそも持っていないのだ。

「でも中にはここの人相手に商売をする変わった火竜もいて、そこで売ってたムスペまんじゅうがなかなかおいしかったんすよねぇ。ホットで、スパイシーで、とろふわで。今でも売ってるっすかね~。ちょっと寄ってっちゃだめっすか?」
「観光に来たんじゃないんだぞ。王子の用事が最優先だ」
「ちぇー。残念っす」

 口惜しそうになんども振り返るセッテの手を引きながら小さな集落を後にする。そこから少し進むとリフトが設置されていた。セッテも見覚えがないというから、セッテが修行から帰った後に作られたものなのだろう。どう見ても火竜用のサイズではないので、集落の人たちが王城に向かうときのために設置されたものだと考えられる。

 リフトに乗り込んでみると小さな装置が目に入った。焦げ目がついているので、ここで炎を当てるのだろうということはすぐにわかった。セッテが手をかざして装置に炎を放射すると歯車の回る音が聞こえてリフトが動き始めた。
 装置の中には小型タービンと液体が入っていて、熱することで液体を循環させて歯車を動かすエネルギーを得る方式だ。

「こいつぁ便利っす」
「魔法と技術の融合か。面白い発想だな」
「こういうのは竜にはマネできないっすよね」

 リフトで山を昇りきると、ちょうど王城の目の前だった。
 火竜サイズなので、ユミルにあるバルハラ城とは比べ物にならないほど大きい。
 そびえ立つ絶壁のような門をくぐり、それだけでバルハラ城下街がすっぽり収まってしまいそうな広さの中庭を抜けて王城の中へと入る。
 絶対に攻め込まれない自信があるのか、あるいはそもそも守る必要がないと考えているのか、門番や見回りの兵のようなものはまったく見当たらない。上方を飛んでいる火竜の姿はここまでにいくつか見かけたが、城の中ではまだ火竜に会っていない。
 セッテがいうには、ほとんどの火竜は火山の中腹あたりにいるらしく、城にいるのは王族ぐらいのものだという。兵舎もあるにはあるが、そもそも火竜そのものが強く頑丈で一般の竜が兵士のようなものなので、この城は行事などに使われる程度らしく、大抵はこのとおりがらんとしているという。

「もとが強いからわざわざ王族を守る必要とかもないんすかね」
「政治とかはやらないんだろうか」
「まあ、火竜王とはいっても人から見れば族長みたいなポジションって感じっすからね。ムスペは外交もあまりしてないし、むしろニヴルとにらみ合ってるだけで、あとは各々好きなようにやってるって印象っす」
「ふむ。しょせん竜は竜か。それで王子。火竜王にはどう説明いたしますか。火竜が我々の力になってくれれば心強いですが、セルシウス殿の言うように、我々に味方するメリットが火竜にはありません。どう説得したものか……」
「うん。難しいところだけど、かといって嘘を言うわけにもいかない。あとで問題になると困る。だから正直に話してみるしかないね」

 そのまま奥に進み玉座の間へと向かう。そこでフレイたちは火竜王ファーレンハイトと謁見した。
 玉座はあるものの、火竜は四足に大きな翼を持つ体形をしているので椅子に座るという文化はないらしく、ファーレンハイトは玉座の前に寝そべっていた。

「お忙しいところ失礼致します、火竜王様。お願いしたいことがあり、ユミル国から参りました」

 声をかけるとファーレンハイトは首だけを持ち上げて答えた。
「うむ? なんだニンゲンか。我はおまえたちに構っているほど暇ではない。消し炭にされる前に帰るがよい」

 それだけ言うと再び眠そうに首を下げた。

(どう見たって、めっちゃ暇そうじゃないっすか!)
(静かに。ここで火竜王の機嫌を損なうわけにはいかない)

 フレイは諦めずに続けた。

「申し送れましたが、私はフレイ。ユミル国の王子です」
「ほう。ニョルズのせがれであったか。ならば話を聞いてやらんわけにもいかぬ」

 のっそりと身体を起こすと、ファーレンハイトはフレイに向き直った。
 竜族の見分けはあまりつかないが、なんとなく父親だけあってセルシウスと雰囲気は似ている気がするなとフレイは思った。体格はさらにふたまわりほど大きく、ヴァルトほどではないが竜の中でもかなり大きいほうの部類だろう。

「それでフレイ王子。我に何の用だ? さては親父に言われて我が国に奇襲でも仕掛けに来たか」
「そんな、とんでもありません! ただ私は火竜王様に相談したいことがあってムスペルスを訪れたのです」
「相談だと? しかし噂では貴国は戦争の準備を始めていると聞くぞ。それを相談とは悠長な。それとも何か。攻め入られたくなければ、これから提示する条件を飲めとでも言うつもりなのか」

 にやりと笑いながらも、鋭く火竜王の目はフレイをにらみつけてくる。しかし臆せずフレイは続ける。

「そうですね……。ある意味ではそうかもしれません。ただ私は父上とは違う考えをもっています。ニョルズ王は今、トロウという魔道士にそそのかされて、その結果として噂のとおり軍備の増強を進めています。しかし私はそれを阻止したいと考えております。そのためにはトロウを止める必要があるのですが、その男は魔道に長けており、自分たちの力だけでは奴の暴走を止められません。そこであなたたち火竜の力を借りたいと思い、ここにお願いに参った次第です」
「ほう。しかしそれが我々にとって何の得になる。断る、と言ったらどうする?」
「このままではムスペルスとユミルは戦争になります。しかしトロウを止めればそれは回避できます。無益な争いを回避できることは、貴国にとっても損ではないかと思いますが」
「無益ねぇ……」

 ふっ、と笑うとファーレンハイトは険しい表情になり、声を低くして答えた。

「我は貴国が攻め入ってくるならば、それはそれで構わぬ。そのときは返り討ちにしてやるだけのこと。貴殿らも既知のことであろうが、火竜の中にはまだニンゲンを認めておらぬ者も多い。もともとこの空は我ら竜族の領域なのだ。物好きの地竜どもが大樹にニンゲンどもを住まわせるのは勝手だが、我々に害なすならためらうことなく排除する。それが空の秩序のためにもなる。ただそれだけだ」
「それは誤解です! 父上はトロウにそそのかされているだけなんです。人間は竜族を害そうなんて思っていません」
「それは矛盾しているぞ、フレイ王子よ。ニョルズ王とは親交がある。あやつが悪いニンゲンではないことは我も理解している。そのせがれであるなら、貴殿もそうなのだろう。だがそのトロウとやらもニンゲンなのだろう? ずいぶん純粋なようだから教えておいてやる。たしかに貴殿のような善人もいるが、基本的にニンゲンの本性は悪だ! 欲に駆られて同族ですら平気で害するような種族だぞ。では聞くが、貴国はなぜあんなに兵士がいる?」
「それは……城下街の治安を守る為で……」
「わざわざ兵士を置いて見張っておかなければ治安を維持できない。ゆえにニンゲンとは自然状態は悪なのだ」
「そ、それは……」
「ふん、返す言葉もないか。まあよい。我ら火竜には誇りにかけてこの空の秩序を守る義務がある。それを壊す恐れのあるニンゲンは排除すべきだという声もあり、我もそれには同意だ。だがニョルズ王との縁もあるので、今のところはあえて目をつぶってやっている。ただそれだけだ。だからニンゲンに協力することが我々にとって得になるということはあり得ない」

 ユミル国など――人間などその気になればいつでも潰してやれるとファーレンハイトの目が語っている。トロウが原因でユミル国が戦争を起こしたならば、国ごとまとめて排除してやる。それだけのことだと。
 なんとか食い下がりたいフレイだったが、火竜が手を貸す利点を他に提示することができなかった。
 言葉に詰まっていると、こんどはファーレンハイトのほうから条件を提示した。

「ならばこうしようではないか。我が国は太古の昔より氷竜どもの国ニヴルヘイムと戦ってきた。奴らはすべてを凍てつかせ、近寄る者をすべて排除する冷血な種族だ。自分たちのことしか考えていない。あれも空の秩序のためには倒すべき宿命にある。そこでものは相談なのだが、ユミルがニヴルを倒すため我々に協力するというのであれば、そのトロウとやらを倒すのに協力してやってもよい」

 たしかにその条件を飲めばトロウを倒せるかもしれない。そうなればムスペルスとユミルの戦争は回避できる。
 しかし火竜王に協力してニヴルヘイムの攻撃に参加するということは、それはユミルとニヴルヘイムが敵対関係になるということでもある。

 フレイが戦争を止めるために旅に出たのは、トロウに操られた父親を正気に戻すためだが、これまで建国から争いなく平和な時代を送ってきたユミル国の歴史を壊さないためでもある。だからトロウを止めるためとはいえ、ここでニヴルヘイムに手を出すことはできない。

 以上のことを丁寧に説明すると「ならば協力もなしだ」と火竜王は話を切り上げた。

「ニョルズ王に免じて、そちらから手を出さない限りは、我々から攻め込むようなこともしないでおいてやる。だが攻撃してくるならば容赦はしない。それだけは肝に銘じておけ。話は以上だ」

 交渉決裂だ。フレイたちは肩を落としてムスペルス王城を後にするのだった。
 重い足取りで船へと戻る道中、落ち込むフレイにセッテが声をかけた。

「まあ、こちらから手を出さなければ問題ないことはわかったんすから、それだけでも収穫っすよ。おれたちがトロウを止めさえすれば戦争は回避できるんすから。セッちゃんは心配してたっすけど、火竜王様も厳しそうだけど意外と話のわかる竜でよかったじゃないっすか」
「そう……だね。ただ依然としてトロウに対抗する力が足りないのも事実だ」
「うーん、そっすねぇ。兄貴、何かないっすか?」
「うむ、そうだな……。では王子、こんどはニヴルの氷竜を説得してみてはいかがでしょうか」
「氷竜を? しかしニヴルは鎖国政策中だというし、近づく者はなんでも排除すると火竜王も言って……」
「ムスペも隙あらばすぐに攻め込んでくるというような噂でしたが、こうして実際に話を聞いてみれば手を出さない限りは手荒なことはしないとわかったわけではありませんか。噂とは尾ひれのつくものです。ニヴルのほうも噂を鵜呑みにせず、一度は実際に行ってみる価値があるのではないかと」
「なるほど。それは一理ある」

 鎖国政策中だというのは間違いなく事実だが、近づいただけで排除されるというのは尾ひれの可能性がある。火竜の協力を得られなかった以上、今は他にあてがあるわけでもない。なんとか鎖国状態のニヴルヘイムに入国する方法を考える必要はあったが、次に向かうべき場所はそこに決まった。




 人陰のない例の集落にまで戻ると、さっきはいなかった火竜たちがそこに集まっていた。ムスペまんじゅうが買えるかもしれないとセッテが嬉々として飛び出していったが、すぐに血相を変えて戻ってきた。集まっていた火竜たちはセッテのあとを追ってくると、すぐにフレイたちを取り囲んでしまった。

「見つけたぞ、ニンゲンめ! おまえたちも奴の仲間か!?」
「例の噂は本当だったようだな。すぐに火竜王様に報告せねば」
「不意打ちとはいい度胸だ。生きて帰れると思うなよ」
「しょせんニンゲンはニンゲンだな。やはり排除すべきなのだ」

 口々に穏やかでないことを言っている。それに話もよく見えない。

「ま、待ってくれ。不意打ちって何の話だ。奴って誰のこと?」
「とぼけるな! あれだけ暴れておいてしらを切るつもりか!」
「おい、追ってきたぞ! 逃げろ!!」

 見上げるとこちらに向かって燃えたぎる岩石が隕石のようにこちら目掛けて飛んでくるではないか。それも雨のようにいくつも、無数に、おびただしく。
 それを見るなり、火竜たちは一目散に逃げ出していった。

「な、なんなんすかあれェ!?」

 咄嗟にセッテが上空に防壁を張るが、隕石はあっさりとそれを突き破って飛び込んでくる。

「だめだ。僕たちも逃げよう」

 岩石は地面にぶつかると爆発して炎を撒き散らした。
 大量に降り注ぐ隕石は、まるで爆撃のように次々と爆発を起こし、見る見るうちに地形を変えていく。火山の噴火か。いや、これはそんな自然現象のようなものではない。何者かによる魔法攻撃を受けているのだ。
 さっき火竜たちが言っていたことも気になるが、今はフレイたちはただひたすら船に向かって走るだけだった。

 その様子を上空から見下ろす人陰がひとつ。
 血に塗れたような赤黒いローブをまとった魔道士が空中に浮遊している。魔道士は目でフレイたちを追うと一人呟く。

「こんなところでフレイ王子を見かけるとはな。ちょうどいい。火竜たち共々、我が魔法で始末してやろう。トロウ様が欲しているのは奴の血のみ。殺すなとは言われていないからな」

 魔道士が両手に黒い炎を燃え上がらせると、マグマの川から引き寄せられるように溶岩が浮き上がっていく。それが空中で冷えて固まると、魔道士は黒い炎をまとわせて先ほどの燃えたぎる岩石を形成していく。それをいくつも自分の周囲に浮かせながら、いつの間にか戻ってきて攻撃の矛先を向けてきている火竜たちに向かって叫んだ。

「我が名は金魔将ヴィドフニル。トロウ様の命により、これより実験を始める。手始めに邪魔な竜どもには大人しくなってもらおうか」


Chapter09 END

魔法戦争10
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