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魔法戦争34

最終更新:2017年08月22日 18:14

jelly

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Chapter34「フレイと竜人3:竜人族の少年は中二病」



「俺の名はウェイヴ。邪悪な余所者はこの俺が排除してやる!」

 一人の竜人の少年が僕たちの前に立ち塞がっている。
 腰までかかるほどの銀の長髪で、体色は対照的に黒い。ゲルダと同様に翼がなくかかとが地面についているのでヒト寄りの竜人だが、ウェイヴにはさらにツノも尻尾さえもない。シルエットだけ見れば、人間とほとんど違いはない様子。
 背丈は僕の半分程度で、セッテがこの場にいたらきっとまたちびっこと呼んでからかっていきそうなぐらいだ。

 ウェイヴについてゲルダに聞いてみると、この少年もアルヴで生まれた竜人の一人で、幼くして両親を病で亡くしたために一人で暮らしている。……という答えが返ってきた。

「ほんとは誰かが面倒をみてあげられるといいんだけどね。ウェイヴ本人が強くそれを拒んでるみたいなんだよね。なんかちょっとひねくれてる感じ」
「可哀想な子なのか。それはひねくれてるんじゃなくて、たぶん寂しいだけだよ。もっと愛情をもって接してあげれば、きっと心を開いてくれるんじゃないかな」
「うーん。そうかもしれないけど、あの子ちょっと変わってるっていうか……」

 二人で話し込んでいると、少年はさらに怒気を強めて声を荒げた。

「おい、俺を無視するな! 今は俺がおまえに話してるんだ」
「ごめんごめん。でもフレイはわたしの友達だから、邪悪でも敵でもないよ」
「うるさい。ゲルダには話してない。そのフレイって奴に話してるんだ!」

 少年はゲルダを押しのけると、ずかずかとこちらに歩み寄ってきた。そして鋭い目つきで僕の顔を見上げた。

「おまえ何者だ。一体何の目的でアルヴへ来た。返答次第では黙ってはいないぞ」

 僕は素直に自分のことと、アルバスに竜人たちを率いて立つよう頼まれたことを話した。
 しかし少年はそれを聞いても不機嫌そうな表情を改めることはなかった。

「白竜のジジイがおまえを選んだ? ふん、ジジイめ。ついにもうろくしたか。こんな邪悪な余所者を頼るなんて、気が触れてるとしか思えん」
「さっきから邪悪邪悪って言ってくれるけど、僕には全く心当たりがないな。そこまで言うなら、僕の何が邪悪なのか教えてくれないかな」
「しらばっくれるな。一目見た時からおまえからは邪悪な気を感じている。邪悪ということは敵ということだ。敵ということは倒さなければならないということだ」

 どうも具体性を得られない。何度聞いても何度説明しても、この少年はただ邪悪な気がどうのこうのと繰り返すだけだった。

「余所者を頼るなんてあり得んな。俺はずっと一人で生きてきた。生きるためには強くなくちゃならない。だから俺はもっと強くなる。誰よりも強くなる! おまえのような余所者なんかに負けてはいられないのだ。だから俺と勝負しろ!」

 だめだ。こういうのは言葉で説得できるような相手じゃない。
 思えば、僕がまだ子どもの頃、セッテと二人で城を抜け出して城下街へ遊びに行ったときに似たようなタイプの子どもと遭遇したことがあった。
 その子どもはいわゆる街のガキ大将というやつで、自分の実力に絶対の自信をもっていた。子どもたちの間だけの狭い世界での実力に、だ。

 あのときは、相手の挑発に怒ったセッテが喧嘩を売って返り討ちに遭ったんだ。隣で友達が泣かされて黙って見ていられるほど僕ものんきじゃない。習ったばかりの大地の魔法を駆使してガキ大将を打ち負かしてやった。城での剣術や魔法の稽古はあまり好きじゃなかったが、このとき初めてそれが役に立った気がした。

 もちろん、そのあとで父上やオットーに酷く叱られてしまったが、喧嘩を通して生まれる友情もあるということを僕は学んだ。なぜなら、そのときのガキ大将は後にユミル王家に仕えるようになり、剣術の稽古の良きライバルになったからだ。
 彼は名をスキルニルといい、魔法の才能はなかったが、剣に関しては大人にも劣らない腕前を持っていた。やがて彼は僕の剣のライバルから、剣の先生になった。それ以来、彼とは長い付き合いになる。
 ほとんど幼なじみのようなオットーとセッテを除けば、ユミルで最も親しい友達といえば、まずスキルニルの顔が思い浮かぶ。
 そんな彼も今では城下街治安維持部隊エインヘリアルの隊長だ。

「拳を交えてわかる言葉もある……か。わかった、相手をしよう」
「フレイ、あんなの真に受けることないって。どうせ子どもの言うことなんだし、それにああ見えてウェイヴは意外と強いよ?」
「かまわないよ。力を示して認めてくれるっていうんなら、勝負でもなんでもしてあげるさ。それにこう見えて、僕も弱いつもりはないからね!」

 すべてが雲でできているアルヴでは、媒体がないため大地の魔法は使えない。
 腰にはフリードから借りたままになっている剣を一本提げているが、両刃なのでみね打ちはできないし、丸腰の少年相手に剣を振り回すのも大人気ない。
 拳を握り締める少年に倣って、僕もすっと胸の前に両拳を構えた。

「さあ、どこからでもどうぞ」

 子ども相手に本気になるまでもないだろう。そう思って先手を譲ることにした。
 しかし、少年はそれを見て、さらに不満そうな顔になった。

「馬鹿にしてるのか。これがただの勝負でなく実戦だったら、おまえは死んでいたぞ。いいか、強くなければ、この世は生きていけないんだ。今からそれをおまえに思い知らせてやる。いくぞ!」

 素手の戦いで死んでいたって、そんな大げさな。
 なんて思っていると少年の姿が一瞬にして消え、みぞおちに鋭い痛みを感じた。

「うぐっ……!?」

 続けざまに背面から刺すような衝撃。気がつくと、咳き込みながら膝と両手を地面につかされていた。

(――――は、速い!?)

 呼吸を整えながら顔を上げると、すぐ正面には屈みこんだウェイヴの不機嫌そうな顔があった。

「その程度か、つまらんな。邪悪な気を振りまいているからには、さぞ手強い相手なんだろうと期待した俺が馬鹿だった」
「ち、違う。今のは少し油断しただけだ。わかった、そういうことなら僕だって、本気を出させてもらう。あとから大人気ないとか言うなよ」
「ふん、もうおまえには興味ない。今のでだいたいわかったからな。おまえは俺より弱い。本気を出したところで、どうせ俺には敵わないことがよくわかった」
「な、なんだと! そんなの、やってみないとわからないじゃないか」
「いや、わかる。俺ぐらいになると、相手の動きを見ただけで強さがわかるんだ。その点おまえは隙だらけだ。よくそれで今まで死なずに生きてこれたもんだな」

 子ども相手とはいえ、ここまで言われてさすがの僕も腹が立ってきた。言い訳をするわけじゃないが、僕は大地の魔道士なんだ。剣や拳は専門じゃない。魔法さえ使えればこんな子ども相手に遅れを取ることなんてないはずだ。
 そもそも、こんな子どもなんかに負けているようじゃ、トロウを倒すなんて夢のまた夢。こんなところで僕は負けてなんかいられない!

「ウェイヴくんと言ったかな。君、魔法は使えるのかい?」
「こんどは魔法で勝負しろとでも言いたいのか。あいにく俺はこの拳一本で生きてきた。俺には炎だの雷だのを派手にぶちかますような魔法は使えないからな」
「そうか、実は僕は大地の魔法が専門なんだ。拳で負けるのは苦手分野だから、ある意味しょうがないし、実力の半分も出せなかったんだけど……もう興味がないなら仕方ないよね。あーあ、魔法さえ使えたら僕はもう少し強かったんだけどなぁ」

 わざとすごく残念そうに言ってやる。そっちに勝負する気がもうないならしょうがないよなぁ、と。
 すると――

「……ほう? おまえ魔道士だったのか。だったら話は別だ。この拳一本で生きると決めたからには、魔道士だろうが竜だろうが、この拳で倒す。魔道士には魔道士として戦ってもらわなければ困る。でなければ、修行にならんからな」

 やはり食いついた!
 どういう世界観を持ってるのかわからないけど、ウェイヴはとにかく強くなることにこだわりを持っている様子。そしてそのために強い相手と戦うことを望んでいるようだ。ならば、本当はもっと強いんだぞ、と仄めかしてやればきっと飛びつくと思っていた。

「だったら一度場所を変えよう。ここじゃ僕は全力を出せないんだ」

 大地の魔法の特性を説明して、勝負の場をグリンブルスティの近くに移すことにした。あの周囲でならば、船そのものを媒体にして大地の魔法を使うことができるからだ。




 グリンブルスティの脇に、僕とウェイヴとが向かい合って立つ。
 少し離れた位置からは、心配そうな表情でゲルダが僕らを見守っている。

「ねぇフレイ。本当にやるの?」
「当然! 僕はアルヴの竜人を率いて立つことを求められているんだ。そんな僕が竜人の子ども一人に勝てなくて、どうして皆をまとめられるものか!」
「でもウェイヴはちょっと特殊っていうか……。あの子、ただ誰彼かまわず勝負したいだけだからね? しょっちゅう誰かに勝負ふっかけてるし」
「かまうもんか。こんな子どもになめられてるようじゃ、主導者失格だ」

 するとウェイヴも頷いて続ける。

「その通り! 俺はこんな奴は認めない。認めて欲しければ、戦って己の存在を証明するのみだ。己の地位は勝って掴み取れ! それでこそ漢(おとこ)だ」
「はぁ……。これだから男っていうのは……」

 そしてゲルダは理解できないとでも言いたげに、大きなため息をつくのだった。

 そのまま静寂が訪れ、僕とウェイヴの視線が交差する。それを合図にお互いが頷き合い、それぞれが構えを取って勝負の再開と相成った。

 こんどは先手を譲ってやるような甘さは見せない。大人気ないと言われようが、こんどは本気で相手をしてやるつもりだ。
 まずウェイヴの速さが厄介だ。あれは目で追うには困難を極める。そんな攻撃をかわすのもまた難しいだろう。となれば、護りを固めるに限る。

 さっそく呪文を唱え、グリンブルスティの表面を媒体に木製の鎧を生成して身体にまとわせた。木製では防御力が心もとないが、相手は素手だ。拳を防ぐ程度なら木製の鎧でも十分だし、これなら軽いので自分の動きが鈍ることもない。

 その一部始終をただじっと眺めていたウェイヴは、初めて笑みを見せた。

「面白い。大地の魔法というのを俺は初めて見た。おまえの説明が正しいなら、アルヴでは大地の魔法が使えないそうだからな。大地の魔道士と戦うのも初めてだ」

 その表情は、言うなれば初めて経験する大地の魔法に興味津々で、一体どんな攻撃をしてくるのか、どれほど強力なものなのか、と期待に満ち溢れた顔だった。

「アルヴにも火や水、風を扱う奴はいる。俺はそれらの魔法は全て見切ったつもりでいる。だが大地はまだだ。おまえを相手に、大地も全て見切ってやる」
「そうか。だったら大地は火や水よりも変幻自在だ。果たして見切れるかな?」
「絶対に見切ってやる。来いッ!!」

 来いと言われるまで待ってやる筋合いはない。話しているうちにすでに策は打っておいた。柔らかい雲の地面は、ものを潜伏させるのにもってこいだ。

 雲の地面から植物のツタが幾本も飛び出すと、それらはウェイヴの両足を縛りつけた。素早い相手は、まず身動きを取れなくするのが基本だ。……と、剣術を習っていた頃にスキルニルから教わった。
 相手が動けなければ、自然とそこに隙が出来る。呪文を詠唱しながら駆け寄り、ウェイヴとの距離を詰めていく。

 とはいえ、拳法を使う相手に正面から挑むのはさすがに危険だ。そこでウェイヴの手前で跳躍。先程の呪文で事前に用意しておいたツタを地面から伸ばし、それにつかまってウェイヴの頭上を飛び越える。
 案の定、飛び上がった足の下を拳が通り過ぎていった。読み通りだ。
 そして相手の背後に着地し、木の籠手で覆った拳でウェイヴの背中を打った。

 だが拳は虚しく空を切った。
 見るとウェイヴは身を屈めてうまく攻撃をかわした様子だ。そして身を反転し、渾身のアッパーカットを繰り出す。

 木の兜をかぶっているとはいえ、あごまでは無防備。ウェイヴの拳がクリーンヒットし、一瞬目の前が真っ白になった。
 気がつくと、僕は後方を吹き飛ばされて尻餅をついていた。

「鎧を着た相手との戦い方はすでに心得ている。まさか頭上を飛び越えるとは思わなかったがな。さあ立て。大地の魔法とやらはもう終わりか」

 いつの間にか、拘束したはずのウェイヴの足も解放されている。さっきの目眩のせいで魔法で生み出したツタが消えてしまったか。
 ならば、と大地の魔法で木の兜を補強してフルフェイスのヘルメット状に形を変えた。視界が少し悪くなったが、これでもう同じ手を食らうことはない。

「なるほど。大地の魔法は罠と防御が中心か? 地味で攻撃力に欠けるな」

 植物の魔法に関しては、ウェイヴの言うとおりだ。自身の護りを固めつつじわじわと相手を弱らせる、そういう魔法だ。
 大地の魔法には他に岩を媒体にしたものもある。尖った岩を突き出して敵を貫くような攻撃は、どこからその岩の槍が飛び出してくるかもわからないので、奇襲と強力な攻撃を兼ねている。岩の頑丈さは防御面も優秀で、大きな魔力を要するが、大技になれば辺り一帯に地震を起こすことだってできる。

 しかしアルヴには岩がない。媒体の有無はもちろん、その種類によっても大地の魔法は強さを左右されてしまう。媒体次第で誰でも強力な魔法が使えるのが大地の魔法の強みであり、媒体次第で無力にもなってしまうのが弱みでもある。
 そもそも岩そのものが少ない空の世界では、大地の魔法は扱いが難しいのだ。

(ここなら大地の魔法が使えると安心していたが、岩の媒体はない。力でゴリ押すような戦法は無理だ。うまく頭をつかって戦わないと)

 何かいい手はないかと作戦を考えていると、こんどはウェイヴが先に動いた。

「大地の魔法はだいたいわかった。さっそく閃いた攻略法を試させてもらおうか」

 ウェイヴは右手の拳を突き出すと、左手でその上をそっと撫でる。すると、その右手を赤いオーラが覆い始めた。

「我が右拳に宿りしは地獄の業火。深緑の神秘など容易く打ち破ってくれよう」

(じ、地獄の業火!? なんだかよくわからないが、凄そうだ!)

 すると横から見ていたゲルダが冷めた様子で解説した。

「ただの付呪魔法(エンチャント)だよね、それ。武器じゃなくて拳にかけるってところは独創的だと思うけど」
「……だ、黙れ! これは召喚魔法だ! 地獄の業火だッ!!」

 どうやら拳に炎をまとわせてツタや木の鎧を焼き払おうという魂胆らしい。ところであの拳、本人は熱くないんだろうか。
 しかし、植物が火に弱いから炎の拳とは安直すぎる。しょせんは子どもの考える作戦といったところか。もちろん、僕には対策がある。

 ウェイヴが炎の拳を振り上げて走り出した。次の瞬間には、ふっとその姿が消えてしまう。またあの目にもとまらない速さの一撃が来る。
 だが抜かりはない。

「うわっ!?」

 驚いた声とともに転んだ格好でウェイヴが姿を見せた。
 こんなこともあろうかと、すでに自分の周囲には多数のツタを忍ばせておいたのだ。雲の地面は、土の地面よりも何かをその中に隠すのに向いている。ツタを仕掛けたその上を誰かが通れば、自動的にツタがその足に取り付いて身動きを封じるよう罠を張っていたというわけだ。
 ただの拳ではリーチが短い。だから、当たらなければどうということはない。

「また罠か。雲の中だな。ならば……これだ!」

 再びウェイヴが突き出した拳に左手を重ねる。
 するとこんどは蒼いオーラが湯気のように拳を包んで揺れている。

「我が拳に秘めたるは凍てつく永遠の呪縛。どんな罠だろうと時の忘却の彼方へと消し去ってやろう」

(永遠? 時!? まさか子どものくせに時を止める魔法を!? なんて魔力!)

 するとまたしてもゲルダが冷めた様子で解説した。

「つまり氷属性の拳でツタごと地面を凍らせちゃうわけね」
「……お、おい! 俺の作戦を敵に教えるような奴があるか!」

 文句を言いながらも、ウェイヴは氷の拳を雲の地面に叩きつけた。周囲の地面は凍り付いて仕掛けたツタも動かなくなってしまった。

「でも地面を凍らせたら、君だって困るんじゃないか? そんな滑る地面じゃ、さっきまでのように素早くは動けないだろう」
「いや、動かなくてもいい。どうせおまえは拳じゃリーチが足りないとでも思っているのだろう。だが、離れていても届く拳もある!」

 ウェイヴが拳に左手を這わせる。次は緑のオーラだ。

「疾風の拳は触れずに敵を倒す。これぞ気の極意。波動の力を見よ!」

(波動!? 波動って一体なんなんだ。魔法とはまた違う概念なのか!)

 こんどのゲルダの解説はこうだ。

「それって、ただパンチを打ったら風が飛び出て敵を跳ね飛ばすだけだよね」
「……風じゃない。波動だッ! くそっ。手の内が読まれていては攻撃にならん。こうなったら奥の手だ」

 ウェイヴが右手に魔力を込める。こんどは白いオーラ。

「雷神の怒りは氷霜を駆け抜ける。この一撃は賢者トールの一撃に匹敵する!」

(賢者トール! そういえば聞いたことがあるな。光魔法に長けていて、その中でもとくに雷を扱うことに特化しているとか……。そういえば、オットーは賢者を捜しに行くとかいってたっけなぁ)

 そしてゲルダの解説。

「ねぇ知ってる? 氷って電気はほとんど通さないんだけど」
「……! ふん。おまえ、命拾いしたな。ならば次の手だ。俺の切り札を食らえ」

 奥の手と切り札って何が違うんだろう。切り札は黒いオーラだった。

「深淵の闇こそ最も禍々しく最強かつ最凶の……ぐゥッ!?」

(な、なんだ? 急に右腕を押さえて苦しみ始めた!)

 ゲルダ曰く。

「闇ってある種の毒なんだって。生命力を奪う魔法とか、それこそ毒の魔法も闇に分類されてるから、前例はないけどそれを自分の手に付呪しちゃったら、それってやっぱりマズいと思うんだ」
「……くッ。し、鎮まれ……俺の腕よ、怒りを鎮めろ……!」

 なんだか勝負してるのが、馬鹿らしくなってきた。
 こんどはこっちが興味をなくして背を向けようとすると、ウェイヴは最後にもうひとつだけ試させてくれと食い下がった。

「ま、まだだ。まだ大地のエンチャ……いや。ん……ううむ。少し考える時間をくれ。母なる大地の……いや、ここは空だから違和感がある。大地、地面、岩……」
「ええと。大樹?」
「それだ! 大樹の加護を受けし豪腕の力の奔流をその眼に焼き付けるがいい!」

 よくもまあ、次々と決め台詞を並び立てられるものだな。と半ば呆れながらも感心しながら次の手を見守った。大地のエンチャントは褐色のオーラのようだ。

 ウェイヴは大地の拳を地面に叩きつけた。凍り付いた地面にヒビが入ったが、それ以上はツタが生えたり、岩が飛び出したりするようなことは何もなかった。

 まぁ当然ではある。大地の魔法は媒体が重要。生身の拳には大地の要素なんて何もないわけだから、身体が植物で出来ているとか、土のゴーレムか何かでもない限りは拳に大地の魔力を込めたところで何も特別な現象は起こらない。

 逆に大地の魔力を帯びたその拳は、その表面の魔力そのものが大地の要素であるため、媒体にはならなくても魔法の起点にはなる。
 大地の魔法で直接生き物の身体にツタなどを生やすことはできないが、その表面が大地の魔力で覆われているなら話は別だ。

 手早く呪文を唱えてやると、ウェイヴの右手からツタが生えて、その両手にぐるぐると巻き付き拘束してしまった。
 拳に大地の魔力が込められているため、力ずくで拘束を破ろうとしても、ツタには常に魔力が供給され続けるため、その強度は相当に頑丈なものになる。こうなると自力での脱出はほとんど不可能に近いはずだ。

 こうなってはもはやウェイヴは攻撃することができない。これで完全に無力化したも同然だ。
 ウェイヴは悔しそうにしながらも負けを認め、再び不機嫌そうな顔になった。

「こ、この俺が負けるとは……。まだ修行が足りないというのか……」

 正直なところ、魔法の拳を使う前のほうが強かったんじゃないかと僕は思った。かえって隙を作る結果になっていたし、闇や大地の拳のおかげでほとんど自滅に近い形で勝負を終える結果になったわけなのだから。
 しかしそれを伝えても「俺はこの拳一本で最強になる」とウェイヴは言って聞かなかった。何かこだわりでもあるのか……たしかにゲルダの言うように、この少年は少し変わっているようだ。

 それでも子どもにしてはなかなかの強さだった。これは訓練をつめばきっとさらに強くなるに違いない。これはトロウとの戦いにおいて戦力として期待できるかもしれない。
 そう考えて僕はウェイヴを仲間に勧誘してみることにした。

「ウェイヴ。もっと強くなりたいか? もし良かったら僕が稽古をつけて……」
「断るッ!! 俺は今まで一人で生きてきたんだ。だから誰の助けも受けない! 自分の力だけで強くなれないようでは、この世界では生きていけないだろうが」

 しかしウェイヴは一人で強くなることに頑なにこだわった。誰かの力を借りて強くなるのは本当の強さではない。助けられるのは弱さの表れなのだ、と。

「力を合わせることも強さだと思うんだけどな。まぁ、そこまで言うなら無理強いはしない。それじゃあ質問を変えよう。ウェイヴ、もっと強い相手と戦ってみたくはないか?」

 トロウのことを話すと、とにかく強い相手と戦うことを望んでいるウェイヴのことだ。やはりすぐにこの話には飛びついてきた。

「ふん、いいだろう。トロウだかなんだか知らんが、外にはもっと強い奴がいるんだな。ちょうどアルヴの奴らの相手にも飽きてきた頃だ。アルヴを出てみるか」
「そうか! じゃあ良かった僕たちの船でいっしょに……」
「それはだめだ! それでは自分の力で強くなることにならない。だから俺一人でアルヴから出る方法を考える」

 見たところウェイヴには翼もないし、空を飛べるような魔法も扱えないように見えるが、自分の力だけで一体どうやって空を渡るつもりなのだろうか。
 とはいえしょせんは子どもの言うことだ。そのうち諦めて、やっぱり船に乗せて欲しいと言い出すかもしれない。だからこの場は静かに頷いてあげることにした。

「そのトロウとかいう奴と戦うときが来たら、そのときは俺を呼べ。今よりも桁違いに強くなって駆けつけてやる。もちろん俺一人でトロウを倒してみせよう。残念だったな、おまえの出る幕はないぞ」
「そ、それは頼もしいね……。まぁ期待しておくよ」
「そうと決まれば、さっそく旅に出る準備をしなくては。じゃあな!」

 孤高の強さを追い求める竜人の少年ウェイヴは、颯爽と駆け出していった。いずれ訪れるトロウとの決戦には必ず駆けつけると約束して。
 結局ウェイヴは僕のことを認めてくれたのかわからなかったが、このアルヴでようやく最初の共に戦ってくれる仲間を見つけることができた。
 ……いや、この場合仲間になってくれたって言っていいんだろうか?




「ところでウェイヴが言ってた邪悪な気を感じるって、何のことだったんだろう」
「さあね。フレイと戦うための、ただの口から出まかせだったんじゃない?」


Chapter34 END

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