第十七章「The spirit of Brave」
(執筆:イグリス)
地下拷問室を脱走したガイストは最上階を目指して走っていた。ずいぶん時間を無駄にしてしまった。あの兵士の拷問が魅力的すぎたのがいけない。うっかり楽しんでしまっていた。兵士たちがドン引きした隙を突いて脱走できたからよしとしよう。いい思いをさせてもらったしな。大統領執務室を中心に空間異常が検知されている。大統領はそこにいる筈だ。おそらくゲンダーたちも。
侵入者を阻む三つの部屋が突破されている。やはりゲンダーたちはこの先にいるようだ。急いで精神の間の扉を抜け、執務室に向かおうとしたその時、
「グメーッ!グメーッ!」
「グメーシス!二人はどうしたんだ」
「グッメッグゥメー!メッ。グメェ~っ!」
「ふむ、ふむふむ、なるほど。さっぱり分からん!」
しかし、どうやら異常はここから検知されているようだ。おそらく大統領が作る空間に捕らわれてしまったのだろう。
「執務室に空間を作っている装置があるはずだ。そいつを何とかする。行こう、グメーシス」
「グメーッ」
グメーシスの力で扉を溶かし、ガイストたちは執務室へと入っていった。
侵入者を阻む三つの部屋が突破されている。やはりゲンダーたちはこの先にいるようだ。急いで精神の間の扉を抜け、執務室に向かおうとしたその時、
「グメーッ!グメーッ!」
「グメーシス!二人はどうしたんだ」
「グッメッグゥメー!メッ。グメェ~っ!」
「ふむ、ふむふむ、なるほど。さっぱり分からん!」
しかし、どうやら異常はここから検知されているようだ。おそらく大統領が作る空間に捕らわれてしまったのだろう。
「執務室に空間を作っている装置があるはずだ。そいつを何とかする。行こう、グメーシス」
「グメーッ」
グメーシスの力で扉を溶かし、ガイストたちは執務室へと入っていった。
男は機械を弄っていた。明かりのないその空間は薄暗く、影しか見えない。その機械は直方体の台座にドラム缶のような体が据え付けられている。知っている。ゲンダーはこの機械の名前を知っている。誰かがメイヴを操作している。その驚きでゲンダーの意識が覚醒した。
「何をしているダ!」
慌てて飛び起き、男に向かって叫んだ。その声に振り向いた男の顔は驚きの色に染まっていた。
「バカな。この私の精神世界に侵入を許しただと!」
その隙を逃さず、相手に飛びかかる。完璧に虚を突いたはずだった。しかし既にそこには二人の姿はなく、ゲンダーの不意打ちは虚しく空を切った。
「そもそも機械に精神力が備わっていることが間違いなのだ」
その声のする方へ顔を向ける。男は何事かを呟いていて、こちらを見ようともしていない。戸惑いながらもその男に手を伸ばし、無数の汁を放つ。やはり男はこちらを見ていない。そして汁が男に命中すると思ったとき、男の姿はそこにはなく、別の方向から声が聞こえてきた。今度はもうゲンダーを見ている。
「どうなっているダ」
「ここは私の世界だ。私の思い通りになるのは当然のこと。だからこそ、君のようなイレギュラーは、消しておかねばならん」
男がゲンダーを指さし、消えろとつぶやくと、その直後、凄まじい風圧がゲンダーを襲った。その暴風に肉体だけでなく、意識すら吹き飛ばされそうになるのを必死に堪える。
「抵抗はやめたまえ、時間の無駄だ」
その言葉と共に風圧も強くなる。このままでは吹き飛ばされてしまうのも時間の問題だ。そしてオレは吹き飛ばされてどこへ行くのか。そんなことを思うゲンダーの視界に機械の影が目に入る。メイヴだ。このまま飛ばされてしまえば、そこにきっとメイヴはいない。メイヴのいない世界でオレは何を目的に生きていけばいいんだ。それにこのままあの男の好きなようにやらせてしまえば、ヘイヴに合わせる顔もなくなってしまう。メイヴの謎はガイスト博士に任せると決めた。それまで、オレは……、オレが……
「オレが、メイヴを守るんダァァーー!」
決意を叫んだとき、ゲンダーを襲っていた風がなくなり、自分の性能の限界を超えた力が湧いてくるのが分かった。
「なぜ思い通りにならん!?私は大統領だぞ。命令をきかんかぁ!」
再び大統領の体から衝撃が発せられる。しかし今のゲンダーにはそよ風のようにしか感じられない。
「お前が大統領ダ?さっき見なかったことにした姿とはずいぶん変わっているダ」
立場が逆転して余裕の表情を浮かべるゲンダーに対して、大統領の顔には焦りが出ている。
「姿形など、この世界ではどうとでもなる。それだけではない、この世界で私の思い通りにならないことは何一つ無いのだ。貴様以外はなぁ!」
「だったらどうするダ」
「私が直接、この手で破壊してやる」
その言葉を合図に、二人の闘いが始まった。
「何をしているダ!」
慌てて飛び起き、男に向かって叫んだ。その声に振り向いた男の顔は驚きの色に染まっていた。
「バカな。この私の精神世界に侵入を許しただと!」
その隙を逃さず、相手に飛びかかる。完璧に虚を突いたはずだった。しかし既にそこには二人の姿はなく、ゲンダーの不意打ちは虚しく空を切った。
「そもそも機械に精神力が備わっていることが間違いなのだ」
その声のする方へ顔を向ける。男は何事かを呟いていて、こちらを見ようともしていない。戸惑いながらもその男に手を伸ばし、無数の汁を放つ。やはり男はこちらを見ていない。そして汁が男に命中すると思ったとき、男の姿はそこにはなく、別の方向から声が聞こえてきた。今度はもうゲンダーを見ている。
「どうなっているダ」
「ここは私の世界だ。私の思い通りになるのは当然のこと。だからこそ、君のようなイレギュラーは、消しておかねばならん」
男がゲンダーを指さし、消えろとつぶやくと、その直後、凄まじい風圧がゲンダーを襲った。その暴風に肉体だけでなく、意識すら吹き飛ばされそうになるのを必死に堪える。
「抵抗はやめたまえ、時間の無駄だ」
その言葉と共に風圧も強くなる。このままでは吹き飛ばされてしまうのも時間の問題だ。そしてオレは吹き飛ばされてどこへ行くのか。そんなことを思うゲンダーの視界に機械の影が目に入る。メイヴだ。このまま飛ばされてしまえば、そこにきっとメイヴはいない。メイヴのいない世界でオレは何を目的に生きていけばいいんだ。それにこのままあの男の好きなようにやらせてしまえば、ヘイヴに合わせる顔もなくなってしまう。メイヴの謎はガイスト博士に任せると決めた。それまで、オレは……、オレが……
「オレが、メイヴを守るんダァァーー!」
決意を叫んだとき、ゲンダーを襲っていた風がなくなり、自分の性能の限界を超えた力が湧いてくるのが分かった。
「なぜ思い通りにならん!?私は大統領だぞ。命令をきかんかぁ!」
再び大統領の体から衝撃が発せられる。しかし今のゲンダーにはそよ風のようにしか感じられない。
「お前が大統領ダ?さっき見なかったことにした姿とはずいぶん変わっているダ」
立場が逆転して余裕の表情を浮かべるゲンダーに対して、大統領の顔には焦りが出ている。
「姿形など、この世界ではどうとでもなる。それだけではない、この世界で私の思い通りにならないことは何一つ無いのだ。貴様以外はなぁ!」
「だったらどうするダ」
「私が直接、この手で破壊してやる」
その言葉を合図に、二人の闘いが始まった。
メイヴは混乱していた。どうも意識を失っていたらしい。気がつくと薄暗い空間でゲンダーと男が対峙していた。話を聞いていると、どうもその男が大統領らしい。しかし、同時に無機質な部屋で倒れているゲンダーが倒れている光景が意識に入ってくる。そちらは動くものがないためか、何も音は聞こえてこない。
(……まるで夢と現実を同時に見ているようですね)
慣れない光景のためか、体がうまく動かせない。
(見ているだけしかできないというのですか……)
闘いは既に始まっていた。ゲンダーが大統領に向けて汁千本を放つ。しかし大統領はそれを意に介することもなくゲンダーに近づき接近戦を仕掛けた。大統領の繰り出した拳を針だらけの腕で次々と払いのける。しかし大統領は針山の装甲も無視するように連打を浴びせている。接近戦では分が悪いと見たゲンダーは一度距離を取り、渾身の一撃、力の間で見せた汁一本を放った。最大最速の一撃を大統領は片手を上げ、パンッと鋭い破裂音と共に叩き落としてしまった。
「なん……だと?」
「言ったはずだ。この世界で私の思い通りにならないことはない。私はこの世界で最強の存在なのだ!」
汁一本を放った腕は無事。それを考えれば力の間で放ったものより幾分威力は落ちているだろうが、それでも片手で振り払われたことはゲンダーと、そしてメイヴにも大きなショックを与えた。
(今の攻撃を凌がれては勝ち目は……)
全力のゲンダーに対して、未だ余裕のある大統領。どちらが優位かは考えるまでもなかった。
そのときもう片方の視界に動きが生じる。正確には音、誰かの足音が聞こえてきた。そして視界に何者かが映る。ガイストとグメーシスが現れた。
(……まるで夢と現実を同時に見ているようですね)
慣れない光景のためか、体がうまく動かせない。
(見ているだけしかできないというのですか……)
闘いは既に始まっていた。ゲンダーが大統領に向けて汁千本を放つ。しかし大統領はそれを意に介することもなくゲンダーに近づき接近戦を仕掛けた。大統領の繰り出した拳を針だらけの腕で次々と払いのける。しかし大統領は針山の装甲も無視するように連打を浴びせている。接近戦では分が悪いと見たゲンダーは一度距離を取り、渾身の一撃、力の間で見せた汁一本を放った。最大最速の一撃を大統領は片手を上げ、パンッと鋭い破裂音と共に叩き落としてしまった。
「なん……だと?」
「言ったはずだ。この世界で私の思い通りにならないことはない。私はこの世界で最強の存在なのだ!」
汁一本を放った腕は無事。それを考えれば力の間で放ったものより幾分威力は落ちているだろうが、それでも片手で振り払われたことはゲンダーと、そしてメイヴにも大きなショックを与えた。
(今の攻撃を凌がれては勝ち目は……)
全力のゲンダーに対して、未だ余裕のある大統領。どちらが優位かは考えるまでもなかった。
そのときもう片方の視界に動きが生じる。正確には音、誰かの足音が聞こえてきた。そして視界に何者かが映る。ガイストとグメーシスが現れた。
「ゲンダー君もメイヴもやられてしまったのか!?」
「グメー!」
執務室に入ってすぐに目に入ったのは倒れたゲンダーたちだった。他には何も見えない。
「ゲンダー君のことは分からんがメイヴならあるいは……」
懐からコンピュータを取り出すとメイヴに接続し、状態の確認を行う。特に異常は見られない。強いて言えば膨大な処理に手間取っているような……
『……ガ…………で……!』
コンピュータにノイズだらけの文章が表示される。
「これは、まだ無事だったのかメイヴ!」
『大統領がピンチで最強過ぎてゲンダーですよ!』
「落ち着け!」
「グメー……」
ガツンと一発。うっかり叩いてしまった。グメーシスも呆れたような目でガイストを見ている。
(壊れた機械を叩くなど技術者としてあるまじき……)
ガイストがショックを受けているうちにメイヴが復活し状況を説明した。
『……ということでゲンダーがピンチなのです』
「おそらくゲンダー君たちは肉体を超えた魂、精神体で戦っているのだろう。そういった勝負では得てして思いが強いほうが勝つ。はっきり言って大統領は馬鹿だからな。これと信じたものは疑わないから、ああいった世界では馬鹿は強い」
ガイストはまだなにか呟いているがもうメイヴの耳には届かない。思考が冴え渡る。思い違いをしていた。
(大統領は最強だから思い通りに出来るのではない。思ったとおりになるから最強なのだ)
大統領は自らが最強の存在であると信じた。その結果、精神体は最強といえる強さを手にした。しかし、上には上があるということを思い知らせれば、そこに勝機が生まれる。
『ガイスト博士、お願いがあります』
何としてもゲンダーに伝えなければ。何と引換であっても……
「正気かね?確かにそれが可能であるならば助けになるだろうが……」
『勝利につながるでしょう。なぜなら、思いを信じるという点ではゲンダーも馬鹿なのですから』
「お前も相当な馬鹿なようだな。勝手にし給え」
もう知らん、とそっぽを向いてしまった。
「ぐめ~~ッ!」
横からオレもいると言わんばかりにグメーシスが鳴く。
『グメーシスも手伝ってくれるのですか』
当然だと言わんばかりに宙を回り、その姿が虚空へと消えていった。もう一つの世界ではまだ闘いが続いていた。
「グメー!」
執務室に入ってすぐに目に入ったのは倒れたゲンダーたちだった。他には何も見えない。
「ゲンダー君のことは分からんがメイヴならあるいは……」
懐からコンピュータを取り出すとメイヴに接続し、状態の確認を行う。特に異常は見られない。強いて言えば膨大な処理に手間取っているような……
『……ガ…………で……!』
コンピュータにノイズだらけの文章が表示される。
「これは、まだ無事だったのかメイヴ!」
『大統領がピンチで最強過ぎてゲンダーですよ!』
「落ち着け!」
「グメー……」
ガツンと一発。うっかり叩いてしまった。グメーシスも呆れたような目でガイストを見ている。
(壊れた機械を叩くなど技術者としてあるまじき……)
ガイストがショックを受けているうちにメイヴが復活し状況を説明した。
『……ということでゲンダーがピンチなのです』
「おそらくゲンダー君たちは肉体を超えた魂、精神体で戦っているのだろう。そういった勝負では得てして思いが強いほうが勝つ。はっきり言って大統領は馬鹿だからな。これと信じたものは疑わないから、ああいった世界では馬鹿は強い」
ガイストはまだなにか呟いているがもうメイヴの耳には届かない。思考が冴え渡る。思い違いをしていた。
(大統領は最強だから思い通りに出来るのではない。思ったとおりになるから最強なのだ)
大統領は自らが最強の存在であると信じた。その結果、精神体は最強といえる強さを手にした。しかし、上には上があるということを思い知らせれば、そこに勝機が生まれる。
『ガイスト博士、お願いがあります』
何としてもゲンダーに伝えなければ。何と引換であっても……
「正気かね?確かにそれが可能であるならば助けになるだろうが……」
『勝利につながるでしょう。なぜなら、思いを信じるという点ではゲンダーも馬鹿なのですから』
「お前も相当な馬鹿なようだな。勝手にし給え」
もう知らん、とそっぽを向いてしまった。
「ぐめ~~ッ!」
横からオレもいると言わんばかりにグメーシスが鳴く。
『グメーシスも手伝ってくれるのですか』
当然だと言わんばかりに宙を回り、その姿が虚空へと消えていった。もう一つの世界ではまだ闘いが続いていた。
「グッ、強いダ……!」
「どうしたそれでおしまいか!?」
先程から防戦一方でなんとか攻撃をしのいでいる状態だ。もう終わりかと思うほど、さっきみなぎった力がどんどん抜けている気がする。これではやられるのも時間の問題だ。そう考えるとまた体から力が抜けていく。
「オレは……メイヴを……!」
「グメーーッ!」
そのとき虚空から何かが飛び出し、大統領に向かっていった。
「グメーシスだと!?」
大統領が叫び、その体当たりを躱す。グメーシスは大統領にまとわりつくように体当たりを繰り返すが、大統領も簡単には当たらない。その隙に、今となっては見慣れたウインドウが眼の奥に映った。
『ゲンダー見えていますか?』
「メイヴ!無事ダったのか、よかったダ!」
『ずいぶん手こずっているようなので手助けを、と思いまして』
「しかし、オレの最強の一撃もあいつには通用しなかった。もう打つ手が……」
珍しく弱気な声が出てしまう。それほどまでに敵は強大だった。
『この手段は使いたくなかったのですが……。ゲンダー、今から私はゲンダーをハックし、あらゆるリミットを解除、機体の限界を突破させます。そうすれば私の計算では大統領など楽勝でしょう』
「本当に、そんな劇的なパワーアップが可能なのか?」
『また私が暴走しないという保証はありません。しかし今回は、今回に限っては必ず制御しきって見せます』
一瞬の間。
『ゲンダー、私を信じてください』
考えるまでもない。文章だけだがメイヴが自分を信じてくれていることはわかる。そしてそのメイヴが制御してみせるといったのだ。ならば……!
「メイヴ、お前を信じるダ!やってくれ」
『了解しました』
大量の文字列が凄まじいスピードで流れていく、そして間もなくcompleteの文字が。
『さあゲンダー、自分の強さを信じてください』
「どうしたそれでおしまいか!?」
先程から防戦一方でなんとか攻撃をしのいでいる状態だ。もう終わりかと思うほど、さっきみなぎった力がどんどん抜けている気がする。これではやられるのも時間の問題だ。そう考えるとまた体から力が抜けていく。
「オレは……メイヴを……!」
「グメーーッ!」
そのとき虚空から何かが飛び出し、大統領に向かっていった。
「グメーシスだと!?」
大統領が叫び、その体当たりを躱す。グメーシスは大統領にまとわりつくように体当たりを繰り返すが、大統領も簡単には当たらない。その隙に、今となっては見慣れたウインドウが眼の奥に映った。
『ゲンダー見えていますか?』
「メイヴ!無事ダったのか、よかったダ!」
『ずいぶん手こずっているようなので手助けを、と思いまして』
「しかし、オレの最強の一撃もあいつには通用しなかった。もう打つ手が……」
珍しく弱気な声が出てしまう。それほどまでに敵は強大だった。
『この手段は使いたくなかったのですが……。ゲンダー、今から私はゲンダーをハックし、あらゆるリミットを解除、機体の限界を突破させます。そうすれば私の計算では大統領など楽勝でしょう』
「本当に、そんな劇的なパワーアップが可能なのか?」
『また私が暴走しないという保証はありません。しかし今回は、今回に限っては必ず制御しきって見せます』
一瞬の間。
『ゲンダー、私を信じてください』
考えるまでもない。文章だけだがメイヴが自分を信じてくれていることはわかる。そしてそのメイヴが制御してみせるといったのだ。ならば……!
「メイヴ、お前を信じるダ!やってくれ」
『了解しました』
大量の文字列が凄まじいスピードで流れていく、そして間もなくcompleteの文字が。
『さあゲンダー、自分の強さを信じてください』
「エエィ、鬱陶しい蝿が。喝ッ!」
大統領の体から衝撃波が放たれ、グメーシスは避けるすべもなく弾き飛ばされてしまった。再び止めを刺すべくゲンダーを見ると、つい先程とは打って変わって異様な気配に包まれていた。
「オレは最強ダ……」
この短時間に何があったのか、大統領はその闘気に押されるばかりだ。まるで闘気自身が目に見えているほど……
「オレは最強ダ」
いや、確かに蒼い霧のようなものが見えている。そしてゲンダーの姿にも変化が。その姿に大統領はたじろぐ。あれは、あれはまるで
「あの姿は、勇者サムソ……」
「オレは、最強ダ!」
姿形はこの世界ではどうとでもなる。悪を滅ぼさんとするゲンダーの思いは自らの姿を伝説の勇者へと変えた。跳躍、大統領の頭上に飛び上がる。大統領は動けない。集中、ゲンダーの手に青い霧が集まりその手に剣を形作る。大統領は動けない。一刀両断、その一太刀はあらゆる攻撃を弾いた大統領の体を真っ二つにした。
大統領の体から衝撃波が放たれ、グメーシスは避けるすべもなく弾き飛ばされてしまった。再び止めを刺すべくゲンダーを見ると、つい先程とは打って変わって異様な気配に包まれていた。
「オレは最強ダ……」
この短時間に何があったのか、大統領はその闘気に押されるばかりだ。まるで闘気自身が目に見えているほど……
「オレは最強ダ」
いや、確かに蒼い霧のようなものが見えている。そしてゲンダーの姿にも変化が。その姿に大統領はたじろぐ。あれは、あれはまるで
「あの姿は、勇者サムソ……」
「オレは、最強ダ!」
姿形はこの世界ではどうとでもなる。悪を滅ぼさんとするゲンダーの思いは自らの姿を伝説の勇者へと変えた。跳躍、大統領の頭上に飛び上がる。大統領は動けない。集中、ゲンダーの手に青い霧が集まりその手に剣を形作る。大統領は動けない。一刀両断、その一太刀はあらゆる攻撃を弾いた大統領の体を真っ二つにした。

再びゲンダーが意識を取り戻すと、そこは見たことのない部屋だった。自分の体を確認する。ヘイヴに作ってもらった体のままだ。
「あれは、夢だったのか」
機械の自分が夢を見るのか悩んでいると、横からガイストの声が聞こえてくる。
「ゲンダー君、無事でよかった。帰ってきたということは大統領は倒せたんだな」
どうやら夢ではなかったようだ。しかし、そんなガイストの声は憂鬱な色を含んでいて、
「メイヴが無茶をしてしまった。メイヴは精神の世界で行動できるようにはできていないのだよ。いや、君のほうが特別に作られているといったほうがいいのだがね。それでも、君に連絡をとるために自分のプログラムを書き換えてしまった。以前ヴェルスタンドで自分の力を制御しきれず暴走したと聞いたが、おそらくその力を使ったのだろう」
「そんな!?ならメイヴは元に戻らないのか?」
「バックアップから復旧が行われているが復旧したそばからプログラムが書き換えられている。おそらくこれも暴走しているということだろう」
難しい話はわからないがどうやら深刻な状況らしい。
「プログラムが完全に書き換えられてしまうとどうなるんダ?」
「わからない。しかし、今までのメイヴとは違ったものになるだろう。私も補助を行うが、上手くいくかどうかは……覚悟はしておいてくれ給え」
悲壮なゲンダー、決意を秘めたガイスト、何もわかっていないようなグメーシス。そこに機械音声がさらなる混乱を告げる。
「大統領閣下の生存信号が途絶えました。警告、振動型大陸破壊兵器を無制限で解放します。現実世界からの退避を推奨します。繰り返します。……」
闘いはまだ終わっていなかった。
「あれは、夢だったのか」
機械の自分が夢を見るのか悩んでいると、横からガイストの声が聞こえてくる。
「ゲンダー君、無事でよかった。帰ってきたということは大統領は倒せたんだな」
どうやら夢ではなかったようだ。しかし、そんなガイストの声は憂鬱な色を含んでいて、
「メイヴが無茶をしてしまった。メイヴは精神の世界で行動できるようにはできていないのだよ。いや、君のほうが特別に作られているといったほうがいいのだがね。それでも、君に連絡をとるために自分のプログラムを書き換えてしまった。以前ヴェルスタンドで自分の力を制御しきれず暴走したと聞いたが、おそらくその力を使ったのだろう」
「そんな!?ならメイヴは元に戻らないのか?」
「バックアップから復旧が行われているが復旧したそばからプログラムが書き換えられている。おそらくこれも暴走しているということだろう」
難しい話はわからないがどうやら深刻な状況らしい。
「プログラムが完全に書き換えられてしまうとどうなるんダ?」
「わからない。しかし、今までのメイヴとは違ったものになるだろう。私も補助を行うが、上手くいくかどうかは……覚悟はしておいてくれ給え」
悲壮なゲンダー、決意を秘めたガイスト、何もわかっていないようなグメーシス。そこに機械音声がさらなる混乱を告げる。
「大統領閣下の生存信号が途絶えました。警告、振動型大陸破壊兵器を無制限で解放します。現実世界からの退避を推奨します。繰り返します。……」
闘いはまだ終わっていなかった。
Chapter17 END
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