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  • メタディア外伝 chapter18-2

メタディア外伝 chapter18-2

最終更新:2012年03月24日 03:02

iglys

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第十八章 後編「Peregrinus」

(執筆:日替わりゼリー)


 鈍く響く音ととも引き起こされた揺れがようやく治まる。そして訪れる静寂。
(ああ、ここがあの世か…なんて静かなところなんダ。しかし、オレも死んだらあの世に行くようなものだったのか?)
 などということを考えていると、頭上から降ってきたのは鯰ではなかったことに気がつく。頭上から降ってきたのは声だった。
「ヒュー、危機一髪! 間に合ってよかった。まだ諦めるのは早いぞ、ゲンダー!」
 見上げると、頭上に浮かんでいたのは巨大な銀の鯨だった。見まわすと、鯰は離れた場所に吹き飛ばされて横たわっている。
「どういう…ことなんダ…」
「ゲンダー、こっちだ!」
 銀の鯨の背中からガイストが顔を出した。
「ガイスト!! その鯨は一体…。何が起こったんダ!?」
「私もいるぞ」
 鯨から別の声が聞こえてくる。
「その声は…スヴェン博士!」
「ゲンダー、話はあとだ! これにつかまれ! グメーシスもこっちへ!」
 鯨からクレーンが降りてきてゲンダーを引き上げる。クレーンはゲンダーをそっと持ち上げると、鯨のへその部分から内部に格納された。その隙間からグメーシスも鯨の内部に入る。
「これはまたずいぶんこっぴどくやられたなぁ…。無事…とは言えないけど、無事でよかった!」
「グッメメェ~♪」
 グメーシスはゲンダーがまだ生きていたとわかって嬉しそうだ。
「勝手に殺さないでくれ…。それで、これはなんダ? なぁガイスト、一体何があったんダ!?」
 ゲンダーを助けられて嬉しそうな顔のガイストだったが急に真面目な顔になると、まず落ち着いて聞いてほしいとゲンダーに断った。
「ゲンダー。メイヴが……うっ…。メ、メイヴが亡く……いや、…………。ゲンダー、メイヴが壊れてしまったよ」
「え………っ?」
 ガイストは敢えて冷静に淡々と事実を告げた。
「とうとうメイヴのすべてのプログラムが書き換えられてしまったんだ。僕も最大限の努力をしたつもりだけど…残念だ。どうやらブラックボックスにはあらゆる機械の性能を格段に向上させる特性があるらしくてね。メイヴは大統領と戦う君をサポートするために無茶をして自分のプログラムを大きく書き換えたんだが、そこにブラックボックスが作用してしまってね…。必要以上にプログラムが書き換えられることになって、メイヴ自身が破綻する結果を招いてしまったようなんだ」
「え……っ、…え? う、うそ……ダ…」
「残念だがこれは事実だ。そして僕はメイヴに予め頼まれていたように、壊れてしまったメイヴからブラックボックスを取り出したんだ。そして、こんなこともあろうかとスヴェン博士と相談して準備していたマキナが誇る最新鋭の潜水飛行艇、銀の鯨『スロヴェスト』にブラックボックスを取り付けた。スロヴェストの起動コードを入力しに行ったときにうっかりヴェルスタンド兵に捕まっちゃったけど、あとは先生がなんとかしてくれたみたいだし、捕まったおかげで大統領に苦戦する君やメイヴを助けることができて…」
「なんでダ」
「え?」
「なんで止めなかったんダ! そんな危険なこと、メイヴにやらせて…。科学者にとって機械なんて所詮そんなもんだってことか!? ひとつぐらい壊れたって痛くも何ともないってか!?」
 ゲンダーは左腕を振りまわした。グメーシスを叩き飛ばしたときにできた穴から汁千本の汁がこぼれてガイストの足元の床を溶かす。
「わっ、おっ落ち着くんだ、ゲンダー! 僕だって止めたさ! だが、それがメイヴ自身の願いだったんだよ! だけどゲンダーを助けるためなら本望だって……これはメイヴの意志だったんだよ!! …僕だって辛いんだ。ゲンダー、君にはできるか? 大切な仲間から自分を解体(ばら)してくれと頼まれたら…。僕は…この手で…大切な…仲間を……!!」
 ガイストの手がわなわなと震えている。もう片方の手で震える手を押さえても、震えは一向に止まる気配を見せない。押さえる手の隙間からは、ゲンダーを殴ったときにできた傷が顔をのぞかせている。
「わ、悪かった。オレが悪かった」
「こっちこそすまない。現実を受け入れたくなくて、つい無機的にことばを並べてしまった。君の気持ちも考えずにね…」
「……」
「……」
「…それが、メイヴの意志…だったんダ、な?」
「ああ。君の役に立ちたい、役に立てないなら意味がないと何度も言ってたよ」
「だったらオレももう何も言わない。そこまでしてくれたんダ…。この戦争を終わらせないとオレはメイヴに合わせる顔がない!」
 ゲンダーは頭を振るって余計な感情を吹き飛ばすと、しっかりとした顔つきで改めてガイストに向き直って言った。
「鯰を倒すぞ! もう一度説明してくれ。つまり何がどういうことだったんダ?」
 ガイストは再び潜水飛行艇のこと、ブラックボックスの特性のこと、それをこの飛行艇に取り付けたことを説明した。
「ブラックボックスのおかげで主砲の性能も大幅に上がってね。君が今にも鯰に踏み潰されるってときにドスンと一発お見舞いしてやったわけだ。あまりの威力増大のせいか、エネルギーを38%も消費してしまったけどね」
「あと一発撃つのが限界か…。だが、おかげで助かったぞ」
「どういたしまして。だが、まだ安心はできないよ。これくらいでやられる鯰じゃないはずだ。なぜなら鯰は…」
 ガイストが何かを言いかけたとき、飛行艇がガクンと大きく揺れた。
 一同はブリッジに駆け寄った。ガイストは動けないゲンダーを背負って。
「何事ダ!?」
 鯨を操縦するスヴェンが状況を説明する。
「大丈夫だ。鯰の攻撃をかすめただけだ。やはり鯰のやつめ、まだくたばってはおらんようだな」
 鯰はもう跳ねることはできなくなったようだが、二本の髭からレーザーを乱射して固定砲台と化していた。
「揺れるぞ。しっかり掴まっておれ!」
 スヴェンは巧みな操縦で雨のようにばら撒かれるレーザーをかわしていく。ガイストは床を左右に転がっていた。
 再びガクンと大きく揺れる。
「追尾レーザーだと…。やりおる!」
 続けてガクン、ガクンと二度三度揺れる。艦内に警告音が鳴り響く。
「これはいかん!」
「おい、高度が下がってるぞ! 大丈夫なのか!?」
「下がっているのではない、下げとるのだ! スロヴェストは潜水飛行艇だからな。いったん海に逃げ込むぞ!」
 銀の鯨は一直線に降下し、滑るようにマキナ近海へ潜り込んだ。レーザーは海面を境に勢いを失い、海中深くまでは届かない。
「ふう…。あ、危ないところだったね」
「空も飛ぶし海にも潜れるのか! こいつめ、鯨というだけのことはあるようダ」
「これで水を得た魚ですね、先生! …いや、魚じゃないけど」
 ゲンダーもガイストも一息ついて胸をなでおろした。
「…む。そうでもないようだぞ、ガイスト君」
 警告音は未だ鳴り続けている。艦体はミシミシといやな音を響かせる。
「さっきかすめた攻撃でどこか穴が空いていたらしい…。なんということだ…浸水しておるようだぞ!」
「な…っ」
「なんダと!?」
 このままの状態で長く潜行することはできないだろう。しかし浸水の影響で再び飛び上がるのも難しいということを重量センサーが示している。それどころか再浮上できるかどうかすら怪しい。海上の航行は可能だが、仮に浮上できたとしても機動性の問題でレーザーによって蜂の巣にされてしまうだろう。
「万事休す…か」
「そんな、ここまで来て…」
 スヴェンもガイストもがっくりと項垂れてしまった。
「八方塞がりじゃないか! くそっ。こんなとき、メイヴがいてくれたら…」
 メイヴなら…どうしただろうか。ゲンダーは考えた。考えて考えて考え抜いた。
 ゲンダーにはメイヴのようにシステムに侵入して操作することも、自身のエネルギーを飛行艇に供給するような能力もない。直接的に飛行艇をなんとかすることはできない。ならば、別の方法を考えろ。
 飛行艇の操縦技術はスヴェンに劣る。艦体を修理するにしてもまだガイストのほうがそういったことには詳しいだろうし、海中にいる状態ではそれも不可能。グメーシスのような特殊な能力もない。それ以前に、今のゲンダーにはほとんど自力で動けるほどの力さえ残されていない。
 さぁ、どうする。唯一動かせるのは左腕と頭のみ。その左腕もボロボロで到底何かの役に立つとは思えない。ならばなおさら考えろ。今、自分にできる最大の貢献は考えることだ。
 ときにゲンダーの考えはガイストやスヴェンを驚かせてきた。敵は国を一瞬で半壊させるほどの強大な兵器、そして一国の大統領だった。普通ならそこにわずか数人で挑んで勝てるなど、まして戦争をその人数で止めることができようなど想像だにしないだろう。しかし、それでもゲンダーは立ち向かった。勝機があるかなど、そんなことはどうでもよかった。メイヴを守るために…その障害になるなら、たとえそれがなんであろうと戦うつもりだった。
 人はそれを馬鹿と呼ぶだろう。ああそうとも、ゲンダーは馬鹿だった。馬鹿で、しかし真っ直ぐだった。生まれてからヘイヴの研究所を一度も出たことがなかったゲンダーには、いわゆる”常識”というものがなかった。だからこそ、常識に囚われない考え方ができる。それはときに、常識の中からは生まれ得ないような答えを導き出す。普通では繋がらない二点をゲンダーは繋ぎ合わせることができる。機械と精神、本来は心を持たぬモノと感情。そんなゲンダーだからこそ、機械(マキナ)と精神(ヴェルスタンド)を繋ぎ合わせることができるはずだ。いや、ゲンダーにしかできないのだ。
(君がやらなくて誰がやるんだ!)
(できるかどうかじゃない、私たちは”やる”んですよ)
(グメェェェーーーッッッ!)
 仲間の声が脳裏に蘇る…。そうだ、”やる”んだ!
「おい、銀の鯨! スロットなんとか! オレの話を聞いてくれ!!」
 ゲンダーは飛行艇スロヴェストに向って叫んだ。
「ゲ、ゲンダー君!? どうしたんだ、突然…」
 思い出すんだ、メイヴのことを。出会ったばかりのころ、メイヴはあくまでただのシステムに過ぎなかった。冗談がわかる程度の柔軟さこそあったが、あくまでデータに基づいて計算に則って行動するドライなやつだった。ゲンダーもかつてはあくまでメイヴはただの機械に過ぎないと思っていた。しかし、ゲンダーと旅を続けるうちにメイヴは変わっていった。
「鯨! 聞こえていたら応えてくれ! おまえは機械(マキナ)の鯨ダ!」
 ゲンダーは生みの親であるヘイヴに絶対の信頼を寄せていた。そのヘイヴに頼まれていたからこそ、その遂行のためにメイヴを守る必要があると考えている程度に過ぎなかった。
「ゲンダー、どうした!? 落ち着け、冷静になれ!」
「そして相手は精神(ヴェルスタンド)の鯰ダ!」
 だが、ゲンダーは知った。メイヴが自らの命を削ってまで自分を助けようとしてくれていたことを。メイヴが自分をとても心配してくれていたことを。メイヴがゲンダーを信じてくれていたことを!
「信じるんダ、相手を信じるんダ。互いに信じ合うことで初めて互いに手を取り合うことができる。互いに助け合うことができる」
 メイヴは変わった。あれほどドライだったメイヴが仲間を心配するというひとつの”感情”を持った。いや、あるいは変わったのはゲンダー自身のメイヴに対する見方なのかもしれない。ゲンダーもメイヴも、共に旅をすることで互いに影響を与え合ってきたのだ。
「ゲンダー…。そんなことをしても無駄だよ…」
 ゲンダーはこの”感情”というものが欠陥だと考えていた。大切なものを失えば悲しい、苦しい、胸が締め付けられる。心は奈落の底深くへと落とされる。感情とはまさにブラックボックス(わけのわからないもの)だ。感情が原因で簡単な仕事にさえ支障をきたしてしまうことだってある。だからこそゲンダーはこれを欠陥だと考えた。だが、その闇の底から抜け出す希望もまた感情の中から生まれる。
「解り合える。解り合えるんダ。機械も、精神も」
 ゲンダーは感情を持つがゆえに悩んだ。何度も何度も悩んだ。もう何もかもがどうでもいいと思ってしまうようなことさえあった。しかし、そんなときはいつも仲間…ガイストが、グメーシスが、そしてメイヴが自分を説得してくれた。
「だから鯨…! 鯰を説得してくれ、攻撃をやめるようにと…。おまえたちは仲間ダ。機械と精神、立場は違ってもおまえたちは同じ大陸で生まれたもの同士…仲間なんダ! 仲間同士で争う必要なんてないんダ!」
 すると、心の闇は希望という名の光に変わって行く先を明るく照らしてくれた。光によって力がみなぎる。光はいつもの何倍もの力を与えてくれる。
「頼む、応えてくれ!!」
 ゲンダーは祈った。信じて祈った。
「ゲンダー君…? もしや、思考回路がおかしくなってしまったのかね」
 ひたすらに祈った。大切な仲間のことを想って祈った。
「応えろ! 応えてくれぇーーーッッ!!」
 ゲンダーはメイヴのことを想って強く念じた。
「「ブォォオオォォォッッッ!!」」
 どこかから鯰とはまた異なる唸り声が聞こえた。
「応えた…!」
「まさか…水圧で艦体が軋む音か何かだろう…」
 スヴェンは投げやりな様子で呟いた。
「先生! これを見てください!」
 ガイストが海上の様子を知らせるセンサーを指差した。センサーには何の反応もない。それはさっきまで雨あられと降り注いでいた鯰からのレーザーが止んだことを示していた。
「ばかな…! これは奇跡かね!? …いや、おおかた鯰がエネルギー切れを起こしただけだろう。それがなんだというのだね。どちらにせよ、もう我々に助かる術など…」
「手はある。艦体を海底のほうに向けるんダ!」
 ゲンダーは叫んだ。ガイストもスヴェンもわけがわからない顔をしている。
「ゲンダー? こんどは一体何を言い出すんだ」
「鯨は応えてくれた! 今がチャンスなんダ! また鯨を空に飛ばすぞ!!」
「それは無理な話だ、ゲンダー君。浸水しすぎて浮上さえままならないというのに…」
「いや、大丈夫ダ。上手くいく。オレを信じてくれ!」
「どういうことだね。君の話は矛盾しているじゃないか。飛ぶのなら上に向かうものだろう?」
 スヴェンは怪訝そうにゲンダーを見つめている。
「だったらオレじゃなくてもいい。オレを作ったヘイヴを信じてくれ! …頼む」
「信じてみましょう、先生。ヘイヴを…いや、ゲンダーを!」
「ガイスト君、君まで何を言い出すんだ」
「グメッ、グメェーッ!」
 グメーシスもゲンダーを後押しする。
「スヴェン博士!!」
「ああもう、何がなにやら…。ええい、もうどうにでもなれだ!」
 半ばヤケになりながらも、スヴェンはゲンダーに言われたとおりに艦体を海底に向けて傾けた。
「さぁ、次はどうするんだ!?」
「ありがとう、スヴェン博士。次はそのまま海底に向かって主砲をぶっ放してくれ!」
「なんだと…!? ああ、君らの考えることは全くわけがわからん」
 スヴェンが主砲の準備に取りかかった。鯨の顎にあたるあたりから主砲が顔をのぞかせる。
 エネルギーを凝縮、圧力を主砲に集めていく。その構造としてはゲンダーの汁一本に似ていると言えるだろう。
 エネルギー充填完了、狙いは海底。極限まで研ぎ澄まされた一撃を下方に向かって勢いよく撃ち放った。
 ブラックボックスが作用し主砲の威力は大幅に底上げされる。それに伴ってその反動もまた大きくなり、艦体が持ち上げられる。
 なおも威力増大、鯨は海を突き抜け勢いよく空に舞い上がる。空を切り風を切り、ロケットよろしく高く高く打ち上がる。
「と、飛んだ…。こんな飛び方…馬鹿げてる…」
「ああ、たしかに馬鹿かもな。だが馬鹿はこれで終わりじゃない!」
 空を飛んだ鯨。しかし本来鯨とは空を飛ばないもの。たとえ飛行艇として飛ぶことが想定されていたとしても、いくら主砲の勢いが強かったとしても、この不正規な方法で飛び続けるには無理があった。鯨の軌跡はじわじわと傾き地面との距離が縮まりつつある。
「お、落ちてるぞ! 次はどうするんだゲンダー!?」
「スヴェン博士は主砲を最充填していてくれ!」
「もう一発やるというのかね!? もうエネルギーが足りないぞ…それに全てのエネルギーを使い切ってしまえばスロヴェストは……ええい、くそ!」
「鯨を信じろ! それからガイストはオレを外の様子がわかるところまで運んでほしい!」
 砲撃による勢いが途絶える。勢いを失った鯨は当然のこと、さらに速度を上げて落ちる。
「このままじゃ地面に叩きつけられるぞ! どうか、私たちを殺さんでくれよ、ゲンダー君!!」
 ゲンダーは計器から鯨と鯰の位置関係を素早く把握する。さらに鯨の移動ラインを瞬時に予測する。
 力がみなぎっていく。初めての感覚だった。まさにゲンダーは覚醒状態だと言えた。感覚が、精神が研ぎ澄まされていく。周囲の時の流れがとても遅く感じられる。実際に血が流れているわけではなかったが、熱く血がたぎるようなこの感覚。胸が高鳴るようなこの高揚感。恐れも不安もない、あるのは絶対の自信と希望だ。
 なおも傾き落ち続ける鯨。スヴェンもガイストも顔面蒼白で、次の指示はまだかとゲンダーに視線を集める。
 鯨がある位置に差し掛かったとき、光が見えた。ゲンダーの脳裏にははっきりとその光が見えた。
「今ダ!! 撃てェーーーッッ!!」
 飛行艇に残るすべてのエネルギーを力に換えて最後の一撃を放つ。ブラックボックスは激しく唸り輝き、最高の一撃をもってそれに応える。
(頼む、届いてくれ!)
 極限の一撃は虚空に消えた。鯨は反作用を受けて一直線に突進する。その目指す先には鯰の姿があった。
「まさか…このまま鯰に特攻をかけるつもりかね!? ゲ、ゲンダー君、なんてことを…わ、私はまだ死にたくない!」
「ぼ、僕は最後まで信じるぞ、ゲンダーを!」
「グメッ、グメェェ~♪」
 大丈夫、信じるんだ。鯨と鯰…機械も精神も、解り合える。
(メイヴ! おまえの最期の願い、絶対に無駄にはしない!!)
 ブラックボックスはゲンダーの強い想いに呼応するかのように雄叫びを上げた。
「「ブォォオオォォォッッッ!!」」
「いっけぇぇぇーーーーーッッッ!!」
 銀の弾丸が鋭く鉄の鯰に突き刺さった。


 辺りに静寂が訪れる。
 さっきまでの激しい戦いが、まるで嘘だったかのような静けさだった。
「わ、私は…生きている…のかね…?」
 スヴェンは恐る恐る目を開けた。
 鯨は頭を吹き飛ばされた鯰にできていた、かつて頭があった空洞に尾から突っ込む形で受け止められていた。
「あなたと合体し…いやナンデモナイ。やったぞ! 助かったんダ!」
「これは驚いた…。まさか鯰に助けられることになるとは…!」
「言っただろ、信じろと。鯨と鯰…機械(マキナ)と精神(ヴェルスタンド)は解り合えると!」
 鯨も鯰も、もう動かなかった。鯰の動きが止まったことで、ついに戦争は終わったのだ。
「な、なんと…。信じられん。実に信じられん! たったこれだけの人数で本当に戦争を止めおった!!」
「やはりゲンダーは素晴らしいな…。さすがヘイヴ、そしてさすがゲンダーだ!」
「グメメ、グメ~♪」
 ガイストとスヴェンはゲンダーに深く感謝した。
「ゲンダー…。本当にありがとう。君は僕たちの故郷を救ってくれた。復興に時間はかかるだろうが、きっとこれから良くなっていくだろう。メイヴのことは残念だったが…ブラックボックスは我々が持ち帰って研究してもいいだろうか」
「ああ、それがヘイヴの頼み、メイヴの謎を解くことにつながるなら…。オレも協力するぞ。それにもしかしたら、いつかメイヴが復活できる日が来るかもしれないしな!」
「それは嬉しい言葉だ。さて、ブラックボックスを回収して…」
 ガイストが鯨からブラックボックスを取り出そうとすると、
「「ブォォォオオオォォォォォン!!」」
 動かなかったはずの鯰が、鯨を呑み込んだまま突然暴れ始めた。
「あ、危ないっ!?」
 慌てて鯨から脱出するガイストたち。転がるように鯨から飛び出した。
「みんな、怪我はないかね? 一体何が起こって…」
「ま、まさか…ブラックボックス!?」
 なんと鯨に取り付けられたブラックボックスの力を得て鯰が蘇り、さらに突っ込んできた鯨をも取り込んで自身の一部にして復活を遂げてしまったのだった。
「な、なんだと!? 詰めが甘かったとでもいうのか…」
 絶望するスヴェンに対して、ガイストは意外にも冷静だった。
(どういうことなんだ? いくらブラックボックスがあらゆる機械の演算能力を大幅に上昇させる特性を備えているからといって、実際に配線なんかを繋ぎ合わせたわけでもないのに、鯨の内部からその力を引き出すなんて。まるで、鯰には意識があるみたいじゃないか。これは、もしや…)
「グメー? グメメー!?」
 グメーシスは誰かを捜すように周囲に呼びかけていた。
「む、む!? 大変だ、ゲンダー君の姿が見当たらない…。まさかまだ中にいるのでは…! おーい、ゲンダー君、無事かね!? 早く…早く脱出するんだ!!」
 しかしゲンダーからの返事はない。
「まさか、ゲンダー君まで取り込まれてしまったのでは…」
 ゲンダーは未だ鯨の中にいた。だが先の戦いでの損傷によって、ゲンダーに動く力はもはや残されていない。不思議なことに、ゲンダーは鯰のようにブラックボックスの力を得て回復するようなことはなかった。
 鯨を取り込んだ鯰の暴れるがままに、ゲンダーは右に左に、鯨内部の壁へと何度も何度も叩きつけられた。
(嘘ダ…。勝ったと思った。メイヴに報いることができたと思った…! 明らかにあとはエンディングのみって雰囲気だったじゃないか…! なのに…なのに…!! これじゃメイヴにもガイストにも、誰にも顔向けできねえよ…。こんなのって…ないぜ…)
 ゲンダーの意識は薄れつつあった。絶対だったはずの自信も希望も、いつの間に闇に呑まれて消えてしまっていた。感情は場合によって足枷にもなれば大きな力にもなる。それは変化するものであるがゆえに不安定でもある。自信も希望も、時として簡単に失われてしまうものなのだ。
(やっぱりオレだけじゃだめなのか…。メイヴ――!!)
 ゲンダーは目の前が真っ暗になった。


『ゲ……ン…ダー…?』
 メイヴもまた漆黒の闇の中にいた。右も左も上も下もわからない。今、自分がどこにいるのかも、どちらを向いているのかさえわからなかった。音も光もなにもないその闇の世界で、たしかにメイヴはゲンダーの声を聴いた。いや、声を聴いたというよりもその存在を感じ取ったといったほうがより正確だろう。
 具体的にどう形容すればいいのか、適切なことばはメイヴのデータベース内からは見つからなかったが、たしかにゲンダーという存在がそこにはあった。
『そうだ、私は…。ゲンダーを守らなければなりません。ゲンダーが…ゲンダーが危ない!』
 メイヴの感じ取ったゲンダーの存在は徐々に消えつつあった。その事実がメイヴを目覚めさせた。ブラックボックスにメイヴのプログラムは99.9%書き換えられてしまっていたが、残るわずか0.1%がメイヴにゲンダーを思い出させたのだ。その0.1%とは、メイヴ自身が自己プログラミングした領域、ゲンダーを守るという決意だった。決意は光となって闇を払いメイヴを照らす。その強い想いが今、メイヴを蘇らせる!
 メイヴは覚醒した!!
  メイヴの自己修復機能が再開した。
  メイヴのプログラムが10%まで修復された。
  メイヴの胴体にできた空洞にブラックボックスに代わる新たな動力が自己生成され始めた。
  メイヴのプログラムが20%まで修復された。
  メイヴの胴体の解体された部分が修復完了した。
  メイヴのプログラムが40%まで修復された。
  メイヴの新たな動力の自己生成が完了した。その名は【意志の力】
  メイヴのプログラムが80%まで修復された。
  メイヴはゲンダーの位置を瞬時に把握した。
  メイヴのプログラムが完全に修復された。
  メイヴの力がみなぎっていく。
  メイヴのプログラムが拡張され性能が160%に上がった。
  メイヴの身体が赤く発光し始めた。
  メイヴの性能が300%に上がった。
『待っててください、ゲンダー! メイヴ、行きます!!』
 メイヴはおもむろにロケットランチャー取り出すと、それを使って壁に大穴を開けた。足元の車輪を格納させると拡張された機能により地面を滑走し、リミットを生成するレバーの備え付けられている台座をカタパルトとして角柱型の身体をミサイルが如く台座から発射し、勢いよく回転しつつ壁の大穴から大空へと飛び立ったのだった。


 対抗手段すらも失ったガイストたちは、もはや鯰を相手になす術もなかった。
「そうだ…。そもそも土台無理な話だったのだ…」
 スヴェンはただただ呆然と立ちつくしている。
「先生、危ないですよ! とにかくこちらへ!」
 ガイストはスヴェンを引っ張って岩陰に隠れさせると、再び鯰を分析し始めた。
(そうだ、思い出せ。大統領は精神体を使って秘密裏に兵器開発を行っていたんだ。それがプロジェクトGΩの真相。メイヴのデータベースにあった情報によると、G-ブロウティス、G-レティス、それからグメーシスも精神体から作られた兵器であるようだが、横流しされていた精神体の量を考えると明らかにこれ以外の兵器が存在するはずだ。もっと強力でもっと強大な…。それにあの大統領のことだ。ブロウティスやレティス、グメーシスだけで満足するような男じゃないはず。鯰はヴェルスタンドで開発された強大な兵器だ。きっと精神体も材料に使われているに違いない。ということは…!)
「そうか…!!」
 ガイストはついに鯰の正体に気がついた。
「鯰は意識をもつ精神体が核になっているんだ! 鯰は自らの意思を持っていたんだ! だから頭を吹き飛ばされても平気で動けた。なぜなら機械の部分はあくまで鎧でしかないからな。ブラックボックスから間接的に力を引き出せたのも、鯨を取り込んでしまったのも、実体を持たない精神体が本体だったからなんだ!」
 精神体が本体だとわかれば、あとは簡単だ。ガイストは精神の解放研究の第一人者、その対処法は十分に熟知している。
「射影機だ。あれさえあれば精神体はイチコロだ!」
「おおっ、でかしたぞ、ガイスト君! それで、その射影機はどこにあるんだね?」
「ええ! それなら私が……あれ?」
 ガイストの脳裏に過去の光景がフラッシュバックする。

 …これは射影機といってね。
 …そうなんダ!?
 …レンズを通して見える思念を写し取り、このフィルムに閉じ込める装置なんだ。
 …なんダか難しそうな品ダナ
 …ゲンダー君、君が使ってくれ給え。器用な手先をもつ君ならではの品だ。
 …イイのか? ぼろっちぃが、かなりの精密なものダと思うが。
 …ああ、かまわないよ、ワタシはここでやるべきことがあって君たちとともにはいけない。だからこれを私の代わりにもっていってくれ。
 …合点承知ダー。

「あっ…。しまった、射影機はゲンダーが持っているんだ…」
「おしまいだ!」
 スヴェンは頭を抱えた。
「グメッ!? グメメー! グメメメーーーッ!!」
 するとそのとき、グメーシスが空に向かって鳴き始めた。グメーシスの見つめる先からは赤いオーラをまとったミサイルのようなものが猛スピードで接近してくる。
「あ、あれは…!?」
 ガイストたちの目前に見慣れた遠隔モニタが現れた。
『みなさん、お待たせしました! メイヴ、イズ、カムバックです!!』
「メイヴ!!」
 メイヴは驚くべき速さで鯰に突撃する。鯰は勢いよく跳ね飛ばされた。そのはずみでゲンダーが弾き飛ばされる。メイヴはアームを格納してそこから大きな網を取り出すと、見事にゲンダーを回収した。
 ゲンダーとともにガイストたちの前に降り立つメイヴ。
「メイヴ!? ど、どうやって…!」
「メイヴ…!! 死んだんじゃなかったのか!」
 ゲンダーもガイストも驚きを隠せない様子だった。
『勝手に殺してもらっては困りますね。私は永遠に不滅です』
「だ、だがブラックボックスを取り除いているのになぜ…? 君はブラックボックスを封じるために生み出されたシステム。ブラックボックスなしには成立し得ないはず…」
『私自身、驚いています。現在、私は私がどうやって動いているのかまったくわかりません。ですが…呼ばれた気がしたんですよ、ゲンダーに。なぜかはわかりませんがゲンダーが危ないと思ったんです。すると、どこからともなく力がみなぎってきました。この原因を探すためにデータベースを片っぱしから調べましたが、それらしい答えは見つかりませんでした。最も矛盾の少ない説明をするならば、まさにこれが奇跡というやつですね』
「う…ううっ、メイヴーーーっ!!」
 ゲンダーは思わず自身がまったく動けない状態だったことも忘れてメイヴに飛びついた。
『ゲンダー、危ないですよ。棘が刺さります。それに損傷個所から汁も漏れ出していますし、あまり激しく動くと損傷がひどくなります。ああ、ほらほら、こんなにぼろぼろになっちゃって…』
「よかった…。おまえが無事で、本当によかった…!」
『そんな今にもぶっ壊れてしまいそうなやつが言う台詞ですか。…心配をかけましたね。本当に…申し訳ない』
「謝ることなんてないんダ…。むしろ、謝らなきゃならないのはオレのほうダ。だって、今までメイヴは…」
 メイヴはそっとゲンダーがその先を口にするのを止めた。
『そんなものはあとでいくらでも聞いてあげられます。あとはすべて私に任せてください。ゲンダーたちを苦しめたあの鯰めを懲らしめてやりますよ!』
「いや、オレも手伝うよ」
『大事なことなのでもう一度言いましょう。そんな今にもぶっ壊れてしまいそうなやつが言う台詞ですか。ゲンダーは手を出さなくて大丈夫です。あんなやつ、私一人でやってやりますよ。なぜかはわかりませんが、目覚めてからとても調子がいいんです。今ならいつもの3倍は力が発揮できるでしょう。今の私にはもう何も怖いものなどありませんよ!』
 メイヴはやけに自信満々だ。まさに負ける気がしない状態とはこのことだった。
「二人とも、聞いてほしいことがあるんだ」
 ガイストは鯰の正体についてゲンダーとメイヴに説明する。
 鯰の本体は精神体だ。射影機を使えば精神体を封じ込めることができる。しかし、そのためには精神体を露出させる必要があった。そこでメイヴが鯰の”銀の鯨と鉄の鎧”を取り除き、その隙を狙って射影機で精神体をとらえることが決まった。
『では、いっちょうやってやりましょうか。今回は私の出番が少なかったですからね、その分しっかり活躍させてもらいますよ!』
 メタい発言をしながら、メイヴは鯰に向かって飛び出していった。
 鯰はこれでもか、と言わんばかりの追尾レーザーを乱射する。しかしそれよりも速くメイヴはレーザーをかいくぐり、鯰の懐に潜り込む。
『この野郎、ぶっ飛ばしてやるです』
 メイヴが高速で回転すると、無数の小型爆弾がばら撒かれた。急上昇、爆発の範囲内から脱出、次々に爆発が起こり鯰はその部品を散らしていく。さらに、メイヴを追尾してきたレーザーが鯰に向かってくる。小回りの利かないレーザーは次々に鯰に命中していく。
 その上空でメイヴがアームを格納させると、そこからミサイルが姿を見せた。さらに胴体の脇からは何本ものロケットランチャーが取り出される。それらを一斉に発射、全弾命中、大爆発。爆風による煙は岩陰のゲンダーたちのところにまで届き、視界は一寸先さえも遮られる。
 煙が晴れると、そこにはがらくたの山と地面にできた大きなクレーターの姿があった。
「射影機ダな!?」
 ゲンダーがすかさず射影機を構えた。しかし驚いたことにがらくたたちがひとりでに浮かび、集合し、合体してひとつの群体を形成し始め、精神体の姿を隠してしまう。
『なんということでしょう。ばらばらにするだけではすぐに復活してしまいますか…』
 さらに、精神体はそれぞれのがらくたを弾のように発射した。機関銃の如く鉄の塊、銀の塊がメイヴを襲う。鉄の弾はメイヴの胴体にめり込み、銀の弾は貫通する。三倍速のメイヴをもってしても高速で撃ち出されるがらくたを完全に避け切ることができない。撃ち出されたがらくたは、再び精神体のもとへ再集合しまた撃ち出される。攻撃はやむことなく、弾はほぼ無限に撃ち続けられる。
「メイヴ!」
 心配したゲンダーが叫ぶ。
 声に反応した精神体は攻撃の矛先をゲンダーたちに向けた。ゲンダーたちの隠れる岩はがらくたの弾によって見る見るうちに削られていく。
(こ、こいつぁやばいですね。エマージェンシーです。しかし私は負けるわけにはいかない…! こんな攻撃を食らっては、ゲンダーも博士たちもひとたまりもありません。ぶっちゃけ博士たちはどうでもいいですが、ゲンダーは…。ゲンダーだけは絶対に守らなくてはならない! それが今の私の存在理由にして行動原理!! いくら散らしても無駄…さらにあのがらくたは鎧にして武器でもある…これは厄介です。ならば、あのがらくたを消滅させてしまうしかない!!)
 ゲンダーたちのすぐ傍に遠隔モニタが現れた。
『ゲンダー、そしてガイスト博士にグメーシス。ああ、それからスヴェン博士も。先に謝っておきます、ごめんなさい。せっかく感動の再会ができたけど、どうやらそれを無駄にしてしまいそうです…。ですが、これもやつを倒すため。どうかわかってくださいね』
「メイヴ…? 何を…言ってるん…ダ…?」
『一番おいしいトドメの一撃をもっていかれるのは悔しいですが、まぁ仕方ないので譲ってあげます。これはお世話になった博士たちへの恩返しでもあります。別にゲンダーのためだけじゃないんですからね! なんてね。…ゲンダー、あとはよろしくお願いしますよ』
「メイヴ…!? おい、メイヴ! 何をするつもりダ! やめろ、そんなこと…だめダ!!」
 遠隔モニタにはもう何も表示されない。
「メイヴ!! 待てよ! そんなのいやダ…やめてくれ! メイヴ! メイヴ!!」
 メイヴは精神体に向かって音響手榴弾をばら撒いた。数秒遅れて激しい閃光と、爆音が鳴り響く。それは精神体の注意を引くには十分すぎるほどだった。これによって生じたパルス波が精神体の物理的干渉と精神的干渉に影響を及ぼす。これが原因で、精神体はその活動を妨害され身動きがとれなくなった。精神体の弱点は意外にも音にあったのだ。メイヴはそれを知っていたわけではなかったが、結果として精神体の攻撃の手を止めることに成功したのだ。しかし、その効果も長くはもたない。
『これが私の極限の一撃だ!!』
 メイヴのアームが格納される。メイヴの頭上に空洞ができる。空洞はメイヴの筒状の身体を貫くように空いている。そこにメイヴは持てる全ての力を集約させていく。
 エネルギー充填開始!
(スヴェン博士、あのときは私を修理していただいてありがとうございました)
 セーフティーロック解除!
(ガイスト博士、ブラックボックスはあなたに託します。あれは丈夫なので、きっとこの攻撃にも耐えてくれるでしょう)
 ターゲットスコープオープン!
(グメーシス、最後まであなたはよくわかりませんでしたが、とりあえずゲンダーのことをよろしくお願いします)
 電影クロスゲージ明度20!
(そして、ゲンダー…。言いたいことは山のようにありますが敢えて言いません。ですが、最後にこれだけは言わせてください…)
 エネルギー充填120%! 最終セーフティー解除!
(ありがとう……!!)
『波動砲、発射!!』



 メイヴは自身の身体を砲身として、精神体の鎧を引っぺがすため、ゲンダーを守るため、そして己を突き動かす意志の力の告げるままに、最後の一撃を放った!!
 凄まじいエネルギー波が精神体に迫る。
 精神体は身動きがとれない。
 極限の一撃が精神体の鉄と銀の鎧を灰に変える。
「ゲンダー、今だ!」
「ああ…」
 ゲンダーが射影機で精神体をしっかりと捉える。
 精神体は身動きがとれない。
「ゲンダー君、今こそ精神体にトドメを!」
「わ、わかってる…!」
(ああ、メイヴ…! オレはとうとう最後までおまえに助けられてばかりだった)
 今までの旅の記憶が次々を浮かんでくる。シャトルミサイルでの旅立ち、紫の霧の中での赤い光や青い光との闘い、崩壊するガイストクッペルからの脱出、数々の試練に打ち勝った大統領との決戦。いつも自分の傍にはメイヴがいた。だからこそ諦めずにここまでこれた。メイヴの存在そのものがゲンダーの助けになっていた。
 しかしよく考えてみるのだ、それはゲンダーだけだったのかということを。思い出せ、その答えはメイヴのことばの中に既に表わされていた。
(ゲンダーが危ないと思ったんです。すると、どこからともなく力がみなぎってきました。この原因を探すためにデータベースを片っぱしから調べましたが、それらしい答えは見つかりませんでした。最も矛盾の少ない説明をするならば、まさにこれが奇跡というやつですね)
 そうだ、メイヴもまたゲンダーの存在が助けになっていたのだ。今、メイヴは戦えないゲンダーたちに代わって一人で敵と戦っているのだ。ならばメイヴを助けてやらなくては。そして、それができるのはゲンダーだけだ。ゲンダー、おまえがやらなくて誰がやる!
(そうだった…。それにメイヴは言っていたんだ、あとはよろしく…と!)
 ゲンダーはついに覚悟を決めた。
『ゲンダー、私を信じてください!』
 どこかからメイヴの声が聞こえたような気がした。
「もちろんダ、メイヴ…。よろしく頼まれてやるよ…!!」 
 震える手でシャッターを…切る!
 射影機は強烈な光を放ち精神体を呑み込んだ。ついに精神体は跡形もなく消滅した。
 それとほとんど時を同じくして、メイヴは粉々に砕け散った。『ありがとう』の文字を最後に、メイヴの遠隔モニタは永遠に消え去ったのだ。
(オレのほうこそダ、メイヴ…!)
 ありがとう――

Chapter18 END

メタディア外伝 chapter19
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