【扶桑蒸奇譚・改】蜘蛛の嘆き、夜に満ちて > 南弥

概略

秋津から西へ遠く離れた所にある、寂れた小さな街。
小規模ながら天然温泉があるため、現在は一応温泉宿場街として成り立っている。
とはいえ温泉客のにぎわいはなく、湯治客や、他の街へ向かう途中で立ち寄る者が時たま宿を求める程度のものだ。
以下に記すのは、南弥の街に存在する組織や場所、施設である。

月祈教(つきみきょう)

南弥の街に古くから伝わる、月を神として崇め、救済を求め土着信仰。街の住人は全てが月祈の信徒である。
扶桑の国家神道とはだいぶ様式が異なっており、どちらかといえばウァティカヌスなどのソレに近い。
過去には南蛮からウァティカヌスの宣教師も訪れたらしく、その影響も大きいと思われる。

教会

月祈教の中心となる教会。
正確には「月祈協会」という呼び名だが、もっぱら「教会」とだけ呼ばれる。

月雲山(つぐもやま)

南弥の宿場町から北に向かった先にある小山。
禁足地とされており、入ることができるものは限られている。

虚宮(うつろのみや)

月夜見山の麓、上月雲にある廃墟。古くから存在するものらしい。
一帯は常に深い霧に包まれており、足を踏み入れれば迷って二度と戻れなくなるといわれている。
一応、霧の向こうにその姿を認めることはできる。

南弥の山崩れ

15年前に発生した、月雲山の大規模な山崩れ。
当時の人口の3割ほどがこれによって失われた。
直前に台風や豪雨は確認されておらず、原因はよくわかっていない。
その実態は、15年前の儀式の失敗、およびそれに伴う蜘蛛の夜の発生に起因する災害である。
もっとも、その詳細を知るものはほとんどいないが。

蜘蛛の病

南弥の街に蔓延する、病とも呪いともつかない何か。
人をゆっくりと蜘蛛のような怪物へ変じさせるものであり、南弥の住民は、その全てがこの病を発症する可能性がある。
発症した住人は、狩人によって狩られることとなる。
この病について、当然ながら住人の他に知るものはない。よしんば何かの偶然で知ったとしても、不運な最後が待つだけだ。

蜘蛛の夜

十数年から数十年の周期で起こる、蜘蛛の病の一斉発症。
多くの狩人が繰り出し、蜘蛛狩りに勤しむこととなる。
発症していない住人は、原則として家の戸を固く閉ざし、決して外出しないものと厳命される。
蜘蛛を狩ろうと武器を取る住人が居ても、協力しようなどとは思ってはならない。
狩人の手に依らぬ蜘蛛狩りとは、虫の共食いに過ぎない。

狩人

南弥の街にて、蜘蛛を狩る役目を担う者たち。
強靭な意志と卓越した狩りの技術を兼ね備えた彼らは、宵闇にまぎれて蜘蛛を狩る駆除者である。
また、現存する狩人の大半は、月祈教に属する聖職者でもある。
しかし、彼らもまた病と無縁ではいられない。
優秀な狩人であればあるほど、より恐ろしい蜘蛛に変じるとさえ言われている。
また、狩りの中で血に酔い、人を獲物にするまで堕した狩人も少なくはないという。
しかし蜘蛛は只人が抗うには、あまりにもおぞましい存在だ。
故に、人は一つの舌で狩人を讃え、また別の舌で罵るのだ。

血の契約

狩人が結ぶ契約。特殊な調整を施された血を取り込むことによって刻まれるもの。
狩人としての己の在り方を定義するものであるとされ、「狩り」の他には「かがり火」「流れる水」が少なくとも現存している。
契約と言うからには契る相手が居るはずだが、誰も知らず、気にも留めない。

月鳴り

街に響き渡る、泣き声とも鳴き声ともつかない怪音。
この声が響くとき、街は蜘蛛の夜を迎えるという。

月詠衆

詳細不明。

南弥病院

南弥の街に唯一存在する医院。
よくある田舎のかかりつけ医だが、その実態は蜘蛛の病について知ってしまった外部の人間や、暗部に触れた住人を始末する掃除人である。
そのため、病院の人間は街の人々からは煙たがられる傾向にある。

上月雲(かみつぐも)

月雲山の麓にあたる地区。
禁足地としての指定が解けてからは、わずかながら人が住んでいたが、山崩れによって壊滅的な被害を受けてしまった。
それ以来、虚宮を包む霧のこともあり、人はほとんど寄り付かない。

下月雲(しもつぐも)

上月雲と香露川の間の一体を指す。
月祈教会と墓地、および教会関係者の住宅が存在している。

香露川(かろがわ)

月雲山を源流とし、月雲地区と他の地区とをわけるかのように流れる川。
かつて両月雲地区が禁足地だった頃は、現世と神の世界とを分かつ境目としても扱われていた。
また、狩人たちが、武器や衣服に着いた蜘蛛の血を流す禊の場でもあった。
狩人も少なくなった現在では、この禊は「雲流し」という名で伝わっており、旧暦の大晦日に形代を流す「流し雛」のような形態の祭祀として一般に行われている。

経来(へらい)

香露川沿いの地区。
川が禊の場であるためか、病院や狩人のための工房など、街における汚れ仕事――すなわち穢れを担う者たちのための施設が集中している。
彼らの穢れた業が、流れる水に消えるように。その穢れが、住人へと及ばぬように。
なお、狩人たちは通常の墓地には埋葬されず、この地区にある墓地に埋葬される。

佐貫(さぬき)

南弥の街の中心地区。目抜き通り沿いに、食堂などが軒を連ねている。
温泉客向けのみやげ物屋も一応あり、桂を使った組木細工や彫り物が販売されている。

柴留(しばどめ)

街の西部、棚田の広がる田園地帯。起伏が激しく遮蔽物に乏しい地形のため、蜘蛛を一匹ずつ釣り上げて狩るのに向いている。
……しくじって複数の蜘蛛に囲まれようものなら、悲惨な結末が待っているが。
そのままさらに西へ進んでいくと、鳥竹の丘に出る。

鳥竹(とりたけ)

柴留の西に存在する、小高い丘。月雲山を除けば、街で最も高い=月に近い場所であるためか、かつてはここに月祈教会と墓地があった。
しかし下月雲の禁足地扱いが解けたことと、建物自体の老朽化が重なり所在を移すことになった。
かつての教会は、朽ちた廃墟となっている。

夜呉(よご)

佐貫から東へ向かった先、桂緒の森のすぐそばの地区。
尋常小学校や町役場など、自治体としての施設群はここにある。いずれも古い建物を流用したものであるため、老朽化が著しい。

桂緒(かつらお)

街の東部に存在する、桂が生い茂る森林地区。
この森の桂から切り出した木材は、古くから南弥の街の人々に利用されてきた。

珠宇佐(たまうさ)

街道に面した、いわば南弥の玄関口。
温泉宿場町はこの地区にある。
PCの初期地点となる避難所もここ。


NPC

以下に紹介するのは、南弥の街でPCたちが出会うことになるかもしれない人々である。

磐永
古い型式のイヱガアを纏う、初老の狩人。

"鼈甲蜂"
蜘蛛の天敵の名を自称する狩人

竹野 白(たけの はく)
月祈教会の月守(つきもり)。月守とは、月祈における司祭や神父のようなものだ。
街の住人から慕われる立場にあり、本人の人柄も穏やかでそれに相応しい。
最終更新:2023年04月30日 00:12
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