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BB_Angel Gear > 紀・帚篁 > txt

閑話.01、意訳すると妄想乙:第一話終了後~第二話開始前

「おーい、茜ー」
「あ、帚篁。おーす、どした?」
「おう、ちょっと考えたんだけど、聞いてくれないか」
「ん、いつもの新兵器の話かい。いいよいいよ! 今度はどんなの作りたい?」
「新兵器、つーか、……新型シュネルギア?」
「出直せよバカ!」
「却下早いな! やっぱ無理か?」
「さすがにアタシの裁量じゃ人型戦車は組めないよ」
「だよなー。やっぱ親父さんやヴィヴリオ大佐にも話通さないと難しいか」
「そりゃそうだって。資材に限りもあるし、……ちなみに、どんなの考えてるワケ?」
「おう、スヴァンタイプあるだろ?」
「ああ、あの可変型? ピーキーだよねー。白兵戦と電子戦の両立とか、そも操縦適正持ってる人探すのが大変だよ」
「でな、そいつを高機動戦と霊子戦の対応型にOSと装備を積み直す」
「なるほど。確かにアンタ地味に技術はないけどセンスはあるもんね、射撃。能力値的な意味で。セラピアもむしろ射撃誘導の方が得意だし」
「うるせえよ。経験点振る余裕がまだ無いんだから仕方ないだろ」
「うーん、それだけなら、多分そこまで難しいことじゃないとは思うけど、……それだけ?」
「や、ここからが主題。コックピット、三人乗りに出来ない? パイロットひとつのナビシートふたつ」
「ん?」
「でもって、高機動戦と霊子戦とでリンクするナビシートを切り替え、更にそれぞれ特化させて対応力の向上を狙う」
「んん?」
「どうよ」
「んんんー、でき、なか、ない。……かなー?」
「お」
「でも、ぱっと思いつく問題点がいくつもあるけど、帚篁のことだから考えてないわけじゃないんだよな?」
「そりゃそうだ。まず、単純なナビの追加によるスペースの増加。これが可変機にとっては致命的」
「それに、高機動戦も視野に入れるなら装備重量も気にしないとねえ」
「スペースと重量は機体サイズの大型化で解決できなくもない、と思う」
「武装に関しても、多分どうにかなるかな。今のトラバントジステムを改良すれば、可変式でも装備は共用でいけるよ」
「おう、それに出力は搭乗者三人のケルン相乗で確保できるだろ」
「その三人のS.Q.U.I.Dリンクが手間だよね。ただでさえ適正ないと二人でも同期出来ないってのに、三人だろ? 単純計算でも1.5倍、実際にはもっと面倒」
「……ああ、そうか。実際の機動でリンクさせるのは二人でも、出力維持の為には三人のコネクトが常時必要なんだな。そりゃうっかり計算外だ」
「お、久しぶりに一本とれたかな? それに、きっとケルン展開してもすごい負荷が三人にはかかる。ひょろっちい帚篁じゃ多分無理だって」
「あー、やっぱりミンチかなー。ん、とりあえずの思考実験みたいなもんだ。付き合ってくれてサンキュな」
「いいっていいって。また今度美味い飯でも奢ってくれよ。この間の蕎麦屋、結構気に入ってんだ」
「あいよ、予約入れといてやる。休憩時間合わせろな」
「おっけー、次の木曜で。……そろそろ来る頃?」
「だな。早々に出てった、って言ってくれ。ちょっと体鍛えてくるわ」
「了解。大変だねえ、色男」

「――あら、茜さん? おーくん、ここに来なかったかしら」
「どーも、由紀さん。帚篁なら、ふらっと来た後にすぐジムの方に行きましたよ」
「もう、おーくんったら。座学の復習一緒にやるって言ってたのに」
「あっはっは、アイツも忙しいですからねえ」
「本当に。……その割には、結構ハンガーには頻繁に出入りしてるみたいだけど」
「へ?」
「…………」
「…………」
「それじゃ、教えてくれてありがとう、茜さん。おーくん追いかけなくっちゃ」
「え、あ、はい。おつかれさまでーす」

「……へ?」


閑話.02、意訳すると妄想乙:第二話終了後~第三話開始前

 予期せぬ起動を見せた五行ジステム。「WELCOME TO NEW CENTURY」のメッセージ。
 予期せぬ起動? いいや。あれは本来予定された機能を発揮しただけなのだろうか。
 中島・三郎は言った。現在の五行ジステムはダウングレードされたトラバント用管理OSでしかないと。
 元は別の用途の為に構築されたものらしいが、あの時は周囲の機体を陰陽五行に当て嵌め、……何が起こった? 思い出せ。
 機体、パイロットへの負荷が分散、いや、循環か、拡散か? 力の流れは、強さは、相関はどうなっていた?
 ああ、くそ。戦闘ログにもおかしなデータはなかった。システムの起動も正常、ただ不可思議な損壊を被ったのみ。
 何も無かったということはありえない。この身が体験したことだ。であるなら、通常の機器では観測できない次元での現象か。
 より精度の高いエーテル観測器か、あるいは普段使っているライフモニタの五行値測定機能を応用してみるという手もある。
 しかし、より高次の非物理次元から干渉を行っている場合は、流石にお手上げか? ……いや、そんなこともあるまい。
 人の手で作ったシステム、仮に天使などの人外の者が関わっていようと、今より昔に造られたものなら解析できないはずもなし。
 ……いや待て、何かを履き違えていないか?
 五行とはそもそも何かを考え直す必要があるのか、それにあの意味深長なメッセージは――。

「おーくん!」
「ああ、由紀ねえ。どした?」
「どした、じゃないわよ。座学の復習、一緒にやるって言ったでしょう」
「……そだっけ? え、いつ?」
「今日の朝、寮のロビーで」
「……あー、ごめん。考え事してて、聞いてなかったかも」
「おーくん?」
「ん?」
「朝も今も、難しい顔してたわ」
「や、だからちょっと考え事を」
「相談は出来ない?」
「……んー、そんな心配かけてる?」
「そんな、じゃないわ」
「なら、」
「とっても、よ」
「む」
「私は、おーくんに助けてもらったから。人を助けるために、おーくんがどこまでも一生懸命になれること、知ってるから」
「だから、心配?」
「そう。その時に、私はとても嬉しかったけど。同じくらいに、とても心苦しかった」
「俺がやりたくて我儘通してただけなんだから、気にしなくていいのに」
「それはおーくんの勝手。心配するのは、私の勝手。でも、私はおーくんに気にしてほしい。もっとおーくんが考えてること、私に教えてほしい」
「ええ? それずるくね?」
「釣った魚に餌もくれないおーくんの方がよっぽどずるいわよ」
「それは、……あー、ううむ」
「ね、頼りないかもしれないけど、助けたいの。おーくんを、おーくんがやろうとしてること全部」
「んー、でも、ごめん」
「……駄目なの?」
「駄目、っていうか。そういうんじゃなくて、んー、まだ全部中途半端な状態で、どれから手をつけようか迷っているところで」
「途中?」
「そう。だから、まだ由紀ねえたちに手伝ってもらう段階じゃない、って言えばいいのかな」
「……必要になったら、ちゃんと声かけてくれるってこと?」
「ん、そうだね。俺、ひとりじゃ出来ないようなことばっかり考えるからさ。その時には、由紀ねえに、セラピアや他のみんなにも」
「70点」
「へ?」
「おーくん、私が言ったこと全然分かってくれてない。考えてること、ちゃんと教えてほしいのに」
「や、それは守秘義務とかNeed to Knowとか軍人さんには色々ね?」
「分かってるけど、それでも大甘な採点なんだから。今日のところのお説教はここまで」
「はいはい、ありがとうございます、っと。ん、心配かけさせたお詫びに午後の自主教練の時間はちゃんと復習に付き合うよ」
「お詫びじゃなくて約束してたんだってば、もう」

「“約束”したでしょ、ちゃんと最後まで幸せにしてくれるって。ね? 旦那様」
「あー、その呼び方、やっぱ止めない? すごくむず痒い」
「いやよ、だって私おーくんのお嫁さんですもの」
「予定だからね、予定」


閑話.03、意訳すると妄想乙:第二話終了後~第三話開始前

「帚篁くん、帚篁くん! この間もらった草案から立ち上げた企画書をヴィヴリオ大佐に提出してきましたよ!」
「お、さすが小雪さん。仕事早いっすね!」
「えへへ、もちろんですよ。維馬篭大将を見返してやるためにも、まずは行動あるべし!」
「その意気その意気。やっぱりシュネルギア組むのは楽しいですか?」
「勿論! 戦争を終わらせる役に立てる、っていうのもありますけど、その、夢とか浪漫とかありますし」
「乗ってる俺が言うのもアレですが、人型戦車ってやっぱりカートゥーンの産物ですよねこれ」
「あ、帚篁くんもアニメ色々見てました? 最近は規制とかで全然見れないし、分かってくれる人も少なくて寂しかったんですよ」
「宇宙戦艦ヤシマとか、装甲騎兵トップスとか好きですよ。一番のお気に入りは超時空要塞ミクロスなんですが」
「戦闘機と人型戦車に変形するワルキリヤが恰好良いあれですね! 私も見てました! 結構古い作品なのにやだもう、帚篁くん分かってますね!」
「クレイダ大隊のドッカー少佐に天才マキシムとか、強くて恰好良いんだけどどこか憎めないキャラクターも魅力で、夢中になって見てましたよ」
「アイドルの少女と軍人のお姉さんとの間で揺れる主人公の心情描写も秀逸で、毎回はらはらしましたね! ちなみに私インレイ派です!」
「うん、小雪さんが瑞穂基地に来てくれて良かった。中島の親父さんじゃ、絶対可変機オリジナルで組むとかやってくれないし」
「ふふ、任せてください! 帚篁くんの希望を可能な限り盛り込んで、絶対落とされない機体にしてみせます!」
「そりゃ頼もしい、よろしくお願いしますよ。そうだ、搭載する武装とOSに組み込むマニューバの設定なんですけど」
「はいはい、何です?」

「あー……、盛り上がってるところ悪いんだが、仁科技術中尉」
「ヴィヴリオ大佐! さっきの新型シュネルギアの――」
「うむ。不採用だ」
「あひゃ?」
「中島技術大尉と検討した結果、『仕様の基準を満たす技術理論がまだ完成の域に達していない』ということでな」
「……ええと、大佐。その、つまり『練り込みが足りないんだよ馬鹿野郎』と?」
「その通りだ、紀少尉。しかし発想自体は悪くないと私は評価している。確度の高いデータを持って、また来るといい」

「あーうー……。結構厳しいですね、ヴィヴリオ大佐」
「そりゃこのドライクロイツのトップですし。でも、維馬篭大将のところより全然良いでしょ?」
「ええ、“評価している”って。しっかり見てくれてるんですから、やる気も出ます!」
「なら良かった。海巫の新しい機体を組む前には出来る限り不安要素除きたいんで、早速企画書洗い直しましょう」
「はい! じゃあまずは可変機構の剛性処理の部分から――。あ、にしても」
「それなら確か先月発表された東郷教授の論文で……え、何です?」
「帚篁くんって、海巫ちゃんのことが好きなんですか? セラピアさんや由紀さんも侍らせて、悪い子ですねえ」
「海巫を、俺が? はは、まさか。放っておけないだけですよ、危なっかしくて。いつも冷や冷やさせられっぱなし」
「でも我龍が暴走した時とか、それに今も海巫ちゃんの機体のこと考えたりとか、やたらと――」
「だから違いますって。それに俺は年下よりも、小雪さんみたいな年上の方が好きなんで。守備範囲外ですよ、海巫は」
「本当に? パイロット同士の甘酸っぱいあれやこれとか、アニメだったらお約束なのにちょっと残念です」
「ご期待に添えず……、あ、しまった。すいません、所用思い出したんで、企画書の話はまた夜に」
「え? あ、はい。それじゃ、夕食の後にでもロビーで待ってますね」

「……私みたいな、って。さっきのあれ、口説かれてましたかね?」
「はい?」
「ああいえ、何でもありません。眼鏡の研究者枠ってまだ空いてたかな、とか考えていた次第で!」


閑話.04、意訳すると妄想乙:第三話終了後~第四話開始前

「お? 八坂・凍。珍しいな、一人か」
「……うん。くー、伊音と訓練中」
「そうかい。暇してるなら、ちょっと付き合えよ。手伝ってほしいんだ」
「?」
「菓子でも焼こうと思ってさ」
「!」

「何を、作るの?」
「とりあえず、饅頭でも焼こうかね。俺は生地を練るから、餡子を任せる」
「……やったこと、ない」
「そんなに難しくはねえよ。小豆を柔らかく煮て、渋を切ってザラメと練るだけ。それくらい出来るだろ?」
「渋、知らない」
「あー、一回湯を捨てて、もっかい煮直す作業だ。ちと面倒だからそこは俺が替わろう」
「なら、可能」
「うし、じゃあ始めるべ。まずは手を洗ってこいな」

「……つぶあん、できた」
「あとは冷めるのを待って、皮につめれば完成だ。気を使うところは多いが、出来ないことはないだろ?」
「ん。帚篁は酢の使い方とか、餡子の作り方とか、くーとは違うことを私に教えてくれる。」
「知ってても仕方のないことだけどな。出来あがったら、海巫と伊音に持って行ってやれよ。あいつらも甘いもん好きだからさ」
「そうする。……また、やりたい」
「楽しかったか?」
「私も、甘いもの、好きだから」
「そうかい。じゃあ、余った餡子で冷やし汁粉でも作ってやろうか。手伝ってくれたお礼にな」
「!」
「この間の鍋の時、好きだって言ってたもんな。白玉団子は冷凍のやつが残ってたはずだから、すぐ出来るぜ」
「いいの?」
「うん?」
「小豆も、ザラメも。あなたの私物。戦時下では高級品。私が食べても、いいの?」
「……さっき、海巫と伊音にも持ってけって、俺言ったよな」
「彼女たちは、貴方の仲間だから」
「は、あれだけ海巫といちゃついておいて。お前は蚊帳の外だって?」
「…………」
「くっだらねえこと言うなよ。手伝わせておいてコストかかってるから凍の分は無しとか、恰好悪過ぎるだろ。俺、そんな狭量に見えるかね?」
「それは、違う」
「なら、気にするな。昔からの海巫の友達ってんなら、十二分に俺の身内扱いだよ。素性が明らかでなくたって知ったことか」
「……いいの?」
「くどいって。それに、そんなに金もかけてない。ザラメは俺の飴玉を砕き直したやつで、小豆は篤志家のおっさんに譲ってもらったもんだ」
「篤志家。……鴨の?」
「そう、鴨の。畜産だけじゃなくて畑もやってるみたいでな、市場に流せないやつを回してくれたんだ。孤児院の子供たちと、頑張ってる俺たちにってさ」
「子供たちと、私達、に」
「ああ。な、だから遠慮せずに食べてけよ。饅頭は海巫たちと一緒に食べる分。冷やし汁粉は、みんなの分を作るのを手伝ってくれたボーナスだ」
「食べない理由、ない」
「よっし、じゃあ少しだけ待ってろな。すぐ団子を解凍しちまおう」
「帚篁」
「あん?」
「餡子も好きだけど、メロンパンも好き」
「……流石に今の材料じゃ無理だから、また今度な」

「はは、幸せそうな顔しやがる。餡子、そんなに好きか?」
「好き。くーと、同じくらい」
「そりゃ良かった。食べたくなったら言えよ、海巫の分も一緒に拵えてやる」
「ありがとう。帚篁のことも、嫌いじゃない」
「はいはい、そりゃどうも」

「だから、教える」
「うん?」
「悩んでいたのは、現状。後方10m、調理室入口扉前。パルマコンと、西宮がいる」
「……それは先に言ってほしかったなあ。逃げ場は?」
「ない」


閑話.05、意訳すると妄想乙:第五話終了後~第六話開始前

「頼もーう!」
「お、茜。夜に俺の部屋まで来るのは珍しいな、どうした?」
「帚篁!」
「うん?」
「こ、ここ、この間の、その、キ、キ、キスのことなんだが!」
「……おう」
「おおおお前、アタシのこと好きなのか!?」
「当たり前だろ、何を今更」
「そんなあっさり返すんじゃねえよバカー!」
「痛ってえ! おいこら、モンキー振りかぶるな! 折れるって!」

「…………」
「落ち着いたか?」
「んなわけないだろ、無理だよ。もう心臓ばっくばくだよ。頭に血が上って今にもオーバーヒート寸前だっての」
「そうかい。俺は逆に血が足りなくて今にも倒れる寸前だけどな」
「う、わ、悪かったよ。でも、お前も悪いんだぞ! 驚かせるようなこと言うから!」
「驚かれると思ってなかったよ。俺、結構露骨に茜のところ通ってたつもりだけど」
「だって、いつもセラピアや由紀さん侍らせてるし」
「それでも一人の時間作ってハンガーに顔出してたろ」
「海巫や伊音とも仲良いしさ」
「何するか分かんねえから、放っておけねえだけだよ」
「最近は小雪さんともよく話してるし」
「概ねギアのことか、趣味の話だ」
「家庭科室で八坂とはしゃいでたって」
「その時に作った饅頭、お前も食べたじゃないか」
「この間はヴィヴリオ少将にも話かけてた」
「軍略とか政治とかの方面でアドバイスが欲しくてな」
「あ、あとアクシア大尉や七支隊の人たちとも!」
「アーデルハイド大尉とは違うタイプのベテランだから、訓練が新鮮でさ」
「一般クラスの子と街中歩いてたとも聞いたぞ!」
「それは偶然。道に迷ってるのを見たら、声掛けないわけにもなあ」
「……アタシ、正直そんな可愛くないだろ?」
「ばっか、可愛くなかったら足繁くハンガーに向かうかよ」
「ぐぬぬ」
「ぱっちり大きな眼が、浅く焼けた健康的な肌が、タンクトップの下の無防備な乳が可愛いよ」
「ちちち乳とか言うな! 身体目当てか!」
「身体も好きだ。否定はしない。でも一番好きなのは、俺たちのために死ぬ気でギアの整備や武器の開発に取り組んでくれる、真面目なところだ」
「う、」
「嘘じゃない。茜は可愛い。可愛い茜が、俺は好きだよ」
「――ッ!」
「で、だ。茜」
「……なんだよぅ」
「顔を真っ赤にしてジタバタしてるお前を見てるのも楽しいんだけどさ」
「バカ、見んな!」
「わざわざ俺の部屋まで来てくれた、ってことは」
「っ! あ、いや、ええと、その、」

「――今度は頬じゃなくてもいい、ってことだよな」
「ま、ま、待って! タンマ! ワンモアチャンス!」
「ワンチャンねえよ。しっかり洗いたてのシャンプーの匂いさせておいて何を」
「や、だって油臭いの嫌だし」
「お前の仕事なんだから、気にしないけどな」
「アタシが気にすんだよぉ! ほ、頬じゃなかったら、どど、どこ?」
「決まってる。……ん、」
「――――ぁ」
「全身、くまなく」


閑話.06、意訳すると妄想乙:第五話終了後~第六話開始前

「凍」
「帚篁。なに?」
「いや、見かけたから声かけただけなんだが……、何やってるんだ?」
「編み物。人形を作って、くーにあげる」
「なるほど。お前、編み物初めてか」
「ん。そう。何故?」
「お前が実はわかめの人形を作ってる、とかでないなら見りゃ分かるよ」
「帚篁、失礼。これは、くー」
「そっちのが海巫にひでえだろ……、っつっても仕方ねえやな。教えてやろうか?」
「!」

「実は困ってた」
「だろうなあ。海巫にやるってんなら、あいつには聞けないもんな」
「驚かせたい」
「はいはい、じゃあ良く見とけよ。流石に編み物は、俺も得意ってわけじゃない」
「でも、帚篁は知ってる。博識」
「よせやい。俺も、子供のころに母様に贈りたくて練習したんだ。かなり昔のことだけどな」
「母様?」
「ああ。お前みたいに綺麗な人で、筋の通った、俺の大好きな母様だ」
「由紀に聞いた」
「うん?」
「帚篁はマザコン。どういう意味?」
「……忘れとけ、大した意味はない」
「わかった」
「っと、ほれ。こんな感じだ。増やして、減らして、形整えて。パーツごとに順番に作って、最後に綴じ合わせれば大丈夫のはずだ」
「できそう」
「おう。饅頭の時も覚えは良かったから、凍ならきっとすぐ出来るようになるだろ」
「ありがとう。また、帚篁に教えてもらった」
「海巫を喜ばせたいってんなら、また言えよな。俺にできることなら手伝ってやるからよ」
「帚篁も、くーが好き?」
「勿論。だから、俺もあいつを喜ばせてやりたいのさ」
「気が合う」
「そうだな。……ん? あー、凍。使う毛糸はこれで全部か?」
「足りない?」
「残念ながらな。黒一色じゃ流石に海巫は作れないだろ。肌色とか、髪の毛とか、あと目にするボタンとか」
「! 盲点」
「まあ、それくらいなら購買で売ってるだろ。あとで買い足しておくといい」
「助かる。ひとりだと多分できなかった。あとは頑張れる」
「ん、頑張れ頑張れ。帝都奪還作戦も終わったし、少しは時間も取れるだろ」
「しばらく、こちらから攻勢に出る作戦はないと聞いている」
「そりゃ良かった。それじゃな。寮に先戻ってるぜ」
「あ。待って」

「ん、――――」
「……ええと?」
「親愛の証。帚篁が中島・茜にやっていたのを見て覚えた」
「あー、そうね。やってたね、俺」
「昨日、くーにしたら喜んでくれた。だから、帚篁も喜ぶと思った」
「いやその理屈はおか……、しくはねえか。そうだな、俺も嬉しいよ。光栄だ」
「気が合う」
「はいはい。……本気で言ってるんだろうなあ、こいつ」
「? 何を笑っているの」
「なんでもねえよ、喜んでるのさ」


閑話.07、意訳すると妄想乙:第六話終了後~第七話開始前

「お、いたいた」
「……げ。紀?」
「げ、とは随分だなおい。はしたないぜ、クレーリオン隊長」
「なら、そう言われないような素行を普段から心がけなさい」
「……言うほどひどいかね、俺。海巫ほど暴れてないつもりだが」
「相対じゃなく個人の絶対値で見なさい。十分問題児よ、あなた」
「はいはい、そりゃすみませんでした、っと。……ほら」
「? なによ」
「目元。拭けよ、濡れてるぜ」

「……ありがと。こういうところは気が利くのよね」
「周りに泣き虫が多くてな。いつも多めに持ってるんだ」
「私もその一人だって言いたいわけ? 喧嘩売ってる?」
「そんなわけあるかよ。人の好意は素直に受け取れって」
「好意、ねえ。ピュットリンゲン小隊の面々や整備士たちじゃ飽き足らず、私も手籠めにする腹かしら」
「それでお前の負担が楽になるなら、そうしてやるがね」
「冗談でも言わないで」
「だろうよ。だから、そんなつもりはない。だけど愚痴や泣き言は聞いてやれる。部外者だからな」
「部外者だから?」
「ああ。俺はお前の上でも下でもないし、階級は同じだ。それに海巫ほどアクシア大尉に思い入れがあるわけじゃない。適役だろ」
「……あんなに大尉の胸に目線向けてたのに?」
「それはそれ、男の子だ、許せ。……アクシア大尉だけじゃなく、サカモトとタンも亡くしちまったんだ。そろそろ吐き出しとけ」
「ば、バカにしないでよ! あんたにどう見えてるかは知らないけれど、私、そんなに弱くないわ!」
「――そうかい、俺の目が節穴なだけだったか。お前が平気なら、そりゃ何よりだ」
「そうよ、アクシア隊長の後、私が頑張らなきゃいけないんだから。愚痴や泣き言だなんて、」
「ま、いいさ。さっき泣いてるのも見なかったことにしておくよ、隊長殿」
「あ、む、ぐぬぬ、紀!」
「ははは。あ、そうだトゥアレタ。喉乾いてないか? 泣いたんだったら、水分補給しておけよ」
「見なかったことにするって言った直後にそれ!? 何その唐突な話題転換、……まあ、飲み物欲しいっちゃ欲しいけど」
「ならほれ、これやるよ。うちの地元の名水だ、うまいぜ」
「……本当に用意がいいわね、紀」
「周りに手がかかるやつが多くてな。ヤシマ男児の嗜みだ」

「らぁーからー! そもそもおかしいでしょお! ってはなしなの!」
「そうだな、おかしいよ」
「なんでころもしかうごかせないのよけっせんへいきぃ! くんれんじかんなんてあるわけないし! だからりゅんまやめいりぃがぁ、ひんじゃったのよ!」
「ああ、足りない。ひどい世界だぜ、まったく」
「ねー! らいたい、あたしがたいちょーなんておかしいでしょ! ひとがいないからって! ほんしょくのぐんじんよんれきなさい!」
「辛いよな、わかるよ。……いやあ、思った以上に効くなあ、うちの地元の名水」
「あにかいった!」
「何にも」
「あんたもそう! わたしのはなし、ちゃんときいてる? ひとつとしうえらからってばかにしないれよね!」
「聞いてるよ。してねえよ。お前はよくやってる、知ってるよ」
「うそ! なにをしってれうの、あー、ひっく、しってるのよ!」
「毎日。放課後。体力作りでランニングしてること」
「ぁや」
「それから、その後は図書館で戦術研究してること」
「おお」
「あとは最近やけ食い多めで体重増えてることもな」
「それはよけい! ……なんら、みてるの。わたしのこと」
「そりゃね。気になるよ」
「んふふー」
「なんだよ、急に寄って来て」

「なんで?」
「お。んー、何でだと思う?」
「きいてるの」
「さてなあ。単純に面倒見がいいんじゃねえの、俺」
「じぶんでいうんだ」
「その方がいいだろ。手籠めにされたかないらしいからな?」
「ばかねえ」
「はいはい、馬鹿ですよ」
「ばかー」

「む、帚篁? どうしたのだ、そのトゥアレタは」
「伊音か。いや、疲れてたみたいでな。ぐっすりだ」
「……そうか。お前、よもや酔わせて襲うなどと畜生じみた振る舞いなど」
「しねえよ! それに酔わせてもないって。飲ませたのは水だよ、水」
「こんな米の匂いがする水があるか!」
「水だ。そういうことにしといてくれ。まさかこいつも分かってて飲んだなんて、そんなことはないのさ」
「ばーか」
「ん?」


最終更新:2011年03月25日 00:06
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