ファイナル本能寺・エピソード2(後編) ◆hqLsjDR84w
◇ ◇ ◇
【3】
急いで事情を説明しようとした真司はしどろもどろになってしまい、結局炭治郎に任せられることになってしまった。
話の半ば、ミクニがこれまでの経緯を話している際に事件が起きたという段階で、三玖はすべてを察したような表情になる。
三玖に遅れること数分。炭治郎による説明が完全に終わると、一花と二乃も完全に合点が行ったらしい。
話の半ば、ミクニがこれまでの経緯を話している際に事件が起きたという段階で、三玖はすべてを察したような表情になる。
三玖に遅れること数分。炭治郎による説明が完全に終わると、一花と二乃も完全に合点が行ったらしい。
「そ、それは……。ちょっと、ねえ……」
「なにそれ。そこの猛田が全部悪いんじゃない」
「うん。全部悪い。全部、猛田が一人で悪いだけ」
「なにそれ。そこの猛田が全部悪いんじゃない」
「うん。全部悪い。全部、猛田が一人で悪いだけ」
うむうむと頷き合う三人。
姉妹内裁判の判決は、早々に下されたらしい。
姉妹内裁判の判決は、早々に下されたらしい。
「三玖、そんな子……そんな人と一緒でよく大丈夫だったね」
「なにかされてたんなら言いなさいよ。もし一人で抱えてたら許さないわよ」
「近づかないようにしてたから大丈夫。あんなのと話せる立香はすごいけど、警戒心とか足りないと思う」
「いや待ってくれ、三人とも! たぶん俺の説明もよくなくて、もうちょっと上手く話せれば――」
「ミクニ、やっぱりそういうところ傲慢。相手がわかってくれてないだけって思わないで。わかった上で言ってるから」
「ぐ……三玖さん……。その、すまねェ……」
「ていうか、私も沖田さん追いかけよ」
「なにかされてたんなら言いなさいよ。もし一人で抱えてたら許さないわよ」
「近づかないようにしてたから大丈夫。あんなのと話せる立香はすごいけど、警戒心とか足りないと思う」
「いや待ってくれ、三人とも! たぶん俺の説明もよくなくて、もうちょっと上手く話せれば――」
「ミクニ、やっぱりそういうところ傲慢。相手がわかってくれてないだけって思わないで。わかった上で言ってるから」
「ぐ……三玖さん……。その、すまねェ……」
「ていうか、私も沖田さん追いかけよ」
リビングが一気に賑やかになったのち、またすぐに静かになった。
二乃は沖田と立香に少し遅れて家から出て、三玖はミクニと猛田と静かに話している。
二乃は沖田と立香に少し遅れて家から出て、三玖はミクニと猛田と静かに話している。
「でも、ほんとに安心したよ。タンジローくんも城戸さんも無事で。
おっきな音と一緒に家が揺れて、それでびっくりして目が覚めちゃったときは、さ。
誰かが死んだとか、殺されたとか、やっぱりそういう嫌なことばっかり浮かんじゃったから」
おっきな音と一緒に家が揺れて、それでびっくりして目が覚めちゃったときは、さ。
誰かが死んだとか、殺されたとか、やっぱりそういう嫌なことばっかり浮かんじゃったから」
一花は炭治郎と真司のもとに歩み寄っていき、屈み込んで椅子に座る二人の目線に合わせる。
覗き込んできた彼女の表情は、千翼との戦闘中の怒りと困惑に満ちたものではなく、きっと彼女本来のものであろう落ち着いた笑みになっていた。
勝手に騒いで起こしてしまっておいて、挙句の果てに心配までされていたという事実に、真司はもはや合わせる顔がない。ついつい視線を逸らしてしまう。
覗き込んできた彼女の表情は、千翼との戦闘中の怒りと困惑に満ちたものではなく、きっと彼女本来のものであろう落ち着いた笑みになっていた。
勝手に騒いで起こしてしまっておいて、挙句の果てに心配までされていたという事実に、真司はもはや合わせる顔がない。ついつい視線を逸らしてしまう。
「いやほんと……ごめん。熱くなっちゃって。目の前のことしか考えてなかった。だから俺はダメなんだ。蓮だったら……」
まただ。
また、さっきまでと同じことを考えてしまっている。
沖田に向かって切った啖呵は、はたしてどこに行ってしまったのか。
間違っている戦いに巻き込まれる被害者を守るために、と言っておいてこれである。
守るべき被害者を怯えさせてしまって、いったいどうするつもりなのか。
また、さっきまでと同じことを考えてしまっている。
沖田に向かって切った啖呵は、はたしてどこに行ってしまったのか。
間違っている戦いに巻き込まれる被害者を守るために、と言っておいてこれである。
守るべき被害者を怯えさせてしまって、いったいどうするつもりなのか。
「えっ……? そっ、そうだ。秋山さん……っ! そんな、嘘――」
しまった――と。
真司が気づくのは、やはり遅かった。
まただ。またやってしまった。また軽率に怯えさせてしまった。
ずっと気絶していた一花が蓮の死を知る由もないことくらい、考えなくてもわかることだ。
真司にとってあまりにも衝撃的すぎて、蓮が死んだのは周知の事実であると、てっきりみんなもう知っているものだと思い込んでしまった。
そんなはずがないのに。
真司が気づくのは、やはり遅かった。
まただ。またやってしまった。また軽率に怯えさせてしまった。
ずっと気絶していた一花が蓮の死を知る由もないことくらい、考えなくてもわかることだ。
真司にとってあまりにも衝撃的すぎて、蓮が死んだのは周知の事実であると、てっきりみんなもう知っているものだと思い込んでしまった。
そんなはずがないのに。
「ご、ごめん、一花ちゃん。
実は……その、そうで。アイツ、死んじゃってさ。俺じゃなくて蓮なら、もうちょっと上手く伝えられたんだろうけど……」
「――城戸さん」
実は……その、そうで。アイツ、死んじゃってさ。俺じゃなくて蓮なら、もうちょっと上手く伝えられたんだろうけど……」
「――城戸さん」
どうにかして一番衝撃を与えない形で話そうとして、やはりどうにもならない。
思わず髪を掻きむしって突っ伏したくなりながらも、真司が無理やりに言葉を取り繕っていると、一花に割って入られてしまう。
思わず髪を掻きむしって突っ伏したくなりながらも、真司が無理やりに言葉を取り繕っていると、一花に割って入られてしまう。
「自分じゃなくて誰かならとか、あんまり言わないでほしい……かな。
年上の人にこういうこと言うのって失礼かもなんですけど、でもやっぱり……どうしても、こっちも考えちゃうから。ごめんなさい」
「あ…………」
年上の人にこういうこと言うのって失礼かもなんですけど、でもやっぱり……どうしても、こっちも考えちゃうから。ごめんなさい」
「あ…………」
真司はハッとして、逸らしていた視線を戻して一花に向き直る。
彼女が浮かべた笑みは先ほどまでの落ち着いたものとは違い、無理に顔に張り付けたようなものに変わっていた。
彼女が浮かべた笑みは先ほどまでの落ち着いたものとは違い、無理に顔に張り付けたようなものに変わっていた。
「こっ、こっちこそごめん! そんなつもりじゃ!」
「謝ってほしいワケじゃないんです。城戸さんがマジメな人なことくらい、私にもわかります」
「いやでも……やっぱりごめん! 俺、なんかかっこつけようとしてたのかな。上手くやろうとしてさ」
「あー、演技っぽかったのは感じました」
「嘘!? 一花ちゃんって、もしかして鋭いタイプ!?」
「……ふふっ。えー? 言われたことないなあ。城戸さんが、女の子に嘘吐けないタイプなんじゃないですかー?」
「う……! そ、そうかな。そうなのかな……だったら困っちゃうな……」
「安心してください、城戸さん! 俺にも、無理してるの伝わってましたよ!」
「なんだ、よかった! だったら女の子に嘘吐けないタイプじゃないじゃん! ……んん? んんんーーー??」
「あははははっ!」
「謝ってほしいワケじゃないんです。城戸さんがマジメな人なことくらい、私にもわかります」
「いやでも……やっぱりごめん! 俺、なんかかっこつけようとしてたのかな。上手くやろうとしてさ」
「あー、演技っぽかったのは感じました」
「嘘!? 一花ちゃんって、もしかして鋭いタイプ!?」
「……ふふっ。えー? 言われたことないなあ。城戸さんが、女の子に嘘吐けないタイプなんじゃないですかー?」
「う……! そ、そうかな。そうなのかな……だったら困っちゃうな……」
「安心してください、城戸さん! 俺にも、無理してるの伝わってましたよ!」
「なんだ、よかった! だったら女の子に嘘吐けないタイプじゃないじゃん! ……んん? んんんーーー??」
「あははははっ!」
はたして、本当に喜んでよいことなのだろうか。
真司が大きく首を傾げると、一花は声を上げて笑っていた。
意図したものではなくとも屈託なく笑ってくれるというのなら、真司にとってこんなに嬉しいことはない。
真司が大きく首を傾げると、一花は声を上げて笑っていた。
意図したものではなくとも屈託なく笑ってくれるというのなら、真司にとってこんなに嬉しいことはない。
「あー……笑った笑った……。なんだか、久しぶりに笑った気がするなぁ」
「……ちぇっ。なにがなんだかって感じだけど、そんなに喜んでもらえたならなによりですよーだ」
「……ちぇっ。なにがなんだかって感じだけど、そんなに喜んでもらえたならなによりですよーだ」
舌打ちこそしてみせたが、もちろん真司の本心からのものではない。
「やっぱり、嘘がない人っていいですよね」
「……えっ? うん、まあよくわかんないけど、普通はそうなんじゃない?」
「……えっ? うん、まあよくわかんないけど、普通はそうなんじゃない?」
深く考えもしないで軽い気持ちで答えると、一花は小さく頷いて再び眠っていた部屋に戻っていった。
去り際に浮かべていたぎこちない笑顔が気がかりだったが、真司の小さな疑問はすぐに頭から消えることになる。
去り際に浮かべていたぎこちない笑顔が気がかりだったが、真司の小さな疑問はすぐに頭から消えることになる。
「それにしても城戸さん、あんまり気にしすぎないでくださいね」
「えっ、なんの話?」
「えっ、なんの話?」
首を傾げる真司の前で、炭治郎は笑顔を浮かべたままで言い放つ。
「自分じゃなければ、とか。そういう風におっしゃってましたが、安心してください。
城戸さんがいなかったら、俺が沖田さんを止めようとしてましたよ。立香さんもたぶんそうです」
「はあ!? そうなの!? なんだよぉ……言ってよぉ……。俺しかいないもんだと思ってたからさあ……」
「もしも城戸さんを挟んでなくて、俺が沖田さんの隣に座ってたら、だいぶ危なかったですね」
「えー……やめといてよかったよ、それ。
怪我してるのに危ないって。アイツ、あんな痩せてるのにスゲー強かったもん」
「なんと。俺は驚いています。まさか城戸さんに言われるなんて」
「怪我してるのに、無理なんてするもんじゃないよ」
「ええっ!? でも、無理して戦って、その、なんていうか、亡くなったんですよね……!?」
「あんまり言うなよー……。さっき炭治郎が鬼の説明してるとき、あれ? 俺ってもしかして鬼なのか? って超怖かったんだから」
「あっ! 大丈夫です! 城戸さんは鬼じゃないです! 俺が保証します! 鬼の匂いはしません! 煉獄さんと同じで!」
「よかったーーーー! いやマジで安心したよ、俺……」
城戸さんがいなかったら、俺が沖田さんを止めようとしてましたよ。立香さんもたぶんそうです」
「はあ!? そうなの!? なんだよぉ……言ってよぉ……。俺しかいないもんだと思ってたからさあ……」
「もしも城戸さんを挟んでなくて、俺が沖田さんの隣に座ってたら、だいぶ危なかったですね」
「えー……やめといてよかったよ、それ。
怪我してるのに危ないって。アイツ、あんな痩せてるのにスゲー強かったもん」
「なんと。俺は驚いています。まさか城戸さんに言われるなんて」
「怪我してるのに、無理なんてするもんじゃないよ」
「ええっ!? でも、無理して戦って、その、なんていうか、亡くなったんですよね……!?」
「あんまり言うなよー……。さっき炭治郎が鬼の説明してるとき、あれ? 俺ってもしかして鬼なのか? って超怖かったんだから」
「あっ! 大丈夫です! 城戸さんは鬼じゃないです! 俺が保証します! 鬼の匂いはしません! 煉獄さんと同じで!」
「よかったーーーー! いやマジで安心したよ、俺……」
◇ ◇ ◇
【4】
沖田総司が出て行ってからもう何分も経っているというのに、未だに猛田トシオの震えは収まる気配がなかった。
日本刀のように冷たく鋭い眼差しは鮮明に頭に残り続け、もう今後どのようなことがあっても忘れられる気がしない。
ただ睨みつけられただけで身体は震え、鼓動は早鐘と化し、呼吸は過剰であるのか不足であるのかの判別さえつかなくなった。
特段激しい口調で罵ってきたワケでもなく、淡々と断じて許されるべき罪ではないと告げてきただけだというのに、猛田の知るなによりも恐ろしかった。
日本刀のように冷たく鋭い眼差しは鮮明に頭に残り続け、もう今後どのようなことがあっても忘れられる気がしない。
ただ睨みつけられただけで身体は震え、鼓動は早鐘と化し、呼吸は過剰であるのか不足であるのかの判別さえつかなくなった。
特段激しい口調で罵ってきたワケでもなく、淡々と断じて許されるべき罪ではないと告げてきただけだというのに、猛田の知るなによりも恐ろしかった。
ラブデスター実験主催者・ファウストよりも、フィーリング測定機を渡してきた狂人・神居クロオよりも、騙されていたことを知って掌を返してきた生徒(バカ)たちよりも――ずっと怖い。
一度死んでしまう以前の猛田は、武力よりも話術を信じて立ち回ってきた男である。
沖田が許してはくれないと判明した時点で、「じゃあどうすればよかったって言うんだよ」とそんなことを言おうとした。
恥も外聞の捨ててみっともなく泣き付こうとした。他の面々の同情を集めて、沖田が悪いかのような空気を作り上げようとした。
死を前にすればプライドなど消え失せるということを、この場において再び知った。どんな醜態でも晒す覚悟があった。必要とあれば涙以外を出すつもりもあった。
これもまた、猛田が武力よりも上等と信じる話術である。
沖田が許してはくれないと判明した時点で、「じゃあどうすればよかったって言うんだよ」とそんなことを言おうとした。
恥も外聞の捨ててみっともなく泣き付こうとした。他の面々の同情を集めて、沖田が悪いかのような空気を作り上げようとした。
死を前にすればプライドなど消え失せるということを、この場において再び知った。どんな醜態でも晒す覚悟があった。必要とあれば涙以外を出すつもりもあった。
これもまた、猛田が武力よりも上等と信じる話術である。
だが、機会すら与えられなかった。
そんなことをする余裕はたったの一睨みで掻き消えたし、仮にやったところで沖田の心が揺らぐことはなかっただろう。
そんなことをする余裕はたったの一睨みで掻き消えたし、仮にやったところで沖田の心が揺らぐことはなかっただろう。
おそらく、沖田はこともなげに言うのだろう。
首に爆弾がついているんじゃあるまいし、手首を斬り落とせばよかっただろうに――と。
「バカ殿……やってくれたな。お前はやっぱりバカ殿だ」
よくある蔑称だ。
若殿会長、転じてバカ殿会長。
こんな低俗なニックネームが定着するような民度の学校だ、測定機さえあれば永遠に支配できる。猛田はそう思っていたが、あっさりと覆されてしまった。
あの生徒会と新生徒会の戦いを経て、猛田はミクニに対する認識を改めていたが、改めたこと自体が過ちだった。
若殿ミクニはバカがつくほどまっすぐで、バカがつくほど先のことを考えていない、バカ殿会長のままだ。
若殿会長、転じてバカ殿会長。
こんな低俗なニックネームが定着するような民度の学校だ、測定機さえあれば永遠に支配できる。猛田はそう思っていたが、あっさりと覆されてしまった。
あの生徒会と新生徒会の戦いを経て、猛田はミクニに対する認識を改めていたが、改めたこと自体が過ちだった。
若殿ミクニはバカがつくほどまっすぐで、バカがつくほど先のことを考えていない、バカ殿会長のままだ。
「俺は……もしかして間違っていたのか? オメェの言うように黙ってたほうが、もしかしたら……」
「それくらい、考えればわかるだろうが……!
誰が受け入れてくれるんだよ。同じ学校の生徒を騙していいように使ってた人殺しなんだぞ。そんなヤツを受け入れる強さの持ち主なんて……!」
「それくらい、考えればわかるだろうが……!
誰が受け入れてくれるんだよ。同じ学校の生徒を騙していいように使ってた人殺しなんだぞ。そんなヤツを受け入れる強さの持ち主なんて……!」
バカがつくほど強いお前くらいしかいない――と。
猛田は苛立ちながらも、どうにかそれだけは口にしないで済んだ。
猛田は苛立ちながらも、どうにかそれだけは口にしないで済んだ。
「ミクニは間違ってないよ。猛田のやったことを隠さない意味、前に自分で説明してたでしょ」
二人で言い合ってくるところに、歩み寄ってきたのは中野三玖だ。
彼女は猛田への嫌悪感を隠そうともせず、露骨に距離を取っている。
すべて知られているのだから当然だとわかっていながら、猛田はきまりが悪くて視線を逸らしてしまう。
彼女は猛田への嫌悪感を隠そうともせず、露骨に距離を取っている。
すべて知られているのだから当然だとわかっていながら、猛田はきまりが悪くて視線を逸らしてしまう。
「三玖さん……でも、俺のせいで……」
「まあ……こうなるときもあるよね、それはね……。沖田さんって人が許せないのも当然だと思うし。でも、やるって言ってたじゃん」
「それは……」
「別に無理して続けないで諦めてやめてもいいと思うけど、たぶんもう遅いよ。
この人数にバレちゃったら、もういまさら隠せないと思う。私だって誰かにあったら話すし」
「まあ……こうなるときもあるよね、それはね……。沖田さんって人が許せないのも当然だと思うし。でも、やるって言ってたじゃん」
「それは……」
「別に無理して続けないで諦めてやめてもいいと思うけど、たぶんもう遅いよ。
この人数にバレちゃったら、もういまさら隠せないと思う。私だって誰かにあったら話すし」
ミクニが言葉を失っているのが、猛田には憎たらしくて仕方なかった。
なにをいまさらになって驚くことがあるのか、まったくもって理解ができない。
一度知られてしまった以上、もうどうにもならないことくらい予想がつくはずだ。
なにをいまさらになって驚くことがあるのか、まったくもって理解ができない。
一度知られてしまった以上、もうどうにもならないことくらい予想がつくはずだ。
「(こいつ、本気で……!?
悪意があって全校生徒に俺の罪の告白を見せつけたんじゃなく、あんなことやった上で俺の帰る場所があるとでも思ってやらかしたのか……!?)」
悪意があって全校生徒に俺の罪の告白を見せつけたんじゃなく、あんなことやった上で俺の帰る場所があるとでも思ってやらかしたのか……!?)」
あんなものを見せられて。
あのような所業を打ち明けられて。
あのような所業を打ち明けられて。
「(それでも戻ってこいと受け入れてくれる酔狂な人間なんて、この世にお前以外にいるワケねェだろうが……ッ! このバカ殿がァ……!)」
若殿ミクニは強さを信じすぎている。
そんな強さを持ち合わせている人間が、他にそうそういるはずがない。
そんな強さを持ち合わせている人間が、他にそうそういるはずがない。
「それにさ、もしもミクニが間違ってたなんて言っちゃったら、だったら猛田はどうしたらいいの?
嘘を吐かずに包み隠さず話したほうがいいと思ってたけど、実は間違ってたごめんなんて、そんなのいまさら猛田はどうしようもないよ」
「――――ッ! そう、だな。そうだ。
被害者だって言ってくれた城戸さんだっている。俺だけは間違ってたなんて言っちゃいけねェんだ」
嘘を吐かずに包み隠さず話したほうがいいと思ってたけど、実は間違ってたごめんなんて、そんなのいまさら猛田はどうしようもないよ」
「――――ッ! そう、だな。そうだ。
被害者だって言ってくれた城戸さんだっている。俺だけは間違ってたなんて言っちゃいけねェんだ」
握り締めた拳を胸に叩きつけて、ミクニは大きく頷く。
一度落ち込んでからの立ち直りが早いというのも、彼の特徴だ。
そんなに単純な人間ばかりならいいだろうがと、冷ややかに眺める猛田の前で、ミクニの口から予期せぬ発言が飛び出る。
一度落ち込んでからの立ち直りが早いというのも、彼の特徴だ。
そんなに単純な人間ばかりならいいだろうがと、冷ややかに眺める猛田の前で、ミクニの口から予期せぬ発言が飛び出る。
「三玖さん、もしかして猛田のことを許してくれ――」
「うん、そんなワケないよね」
「うん、そんなワケないよね」
ミクニが言い切るよりも、三玖の返答は早かった。
それみたことかと胸中で吐き捨ててから、猛田は視界が揺らめくのを感じた。
思いのほかショックを受けているらしいことに、猛田自身が意外で驚いてしまう。分かり切っていたはずなのに。
それみたことかと胸中で吐き捨ててから、猛田は視界が揺らめくのを感じた。
思いのほかショックを受けているらしいことに、猛田自身が意外で驚いてしまう。分かり切っていたはずなのに。
「でも……可哀想だとは思うよ。
あのとき立香がいてくれなかったら、私だってどうなっていたかわからないし……。一人で戻れないところまで行っちゃったのは可哀想」
「やっぱそう、だよな……。ほんとありがとう、三玖さん。参考になるっていうか、とにかくスゲェありがたい」
あのとき立香がいてくれなかったら、私だってどうなっていたかわからないし……。一人で戻れないところまで行っちゃったのは可哀想」
「やっぱそう、だよな……。ほんとありがとう、三玖さん。参考になるっていうか、とにかくスゲェありがたい」
三玖に頭を下げてから、ミクニは猛田に向き直る。
「猛田、やっぱり俺はオメェを一人にはできねェよ。嘘も吐きたくねェし、やっちまったことを隠して認められても意味ねェと思う」
「はっ。よく言うぜ、バカ殿。
だったらお前は嘘なんか吐かないっていうのかよ。たとえば……そうだな、お前の相棒ヅラしてる副会長の秀才くんに、なにもかも包み隠さず全部を見せているって言い切れるのかよ」
「…………当たり前だろ」
「はっ。よく言うぜ、バカ殿。
だったらお前は嘘なんか吐かないっていうのかよ。たとえば……そうだな、お前の相棒ヅラしてる副会長の秀才くんに、なにもかも包み隠さず全部を見せているって言い切れるのかよ」
「…………当たり前だろ」
どうせいつものように力強く即答すると思い込んでいたので、ミクニが暫し間を空けてから返答したことに、猛田は僅かな違和感を抱いた。
「それにしても…………沖田さん? 二乃が言ってた沖田さんって……? 名簿にいる……? んんん???」
◇ ◇ ◇
【5】
「…………さて、撒けましたかね?」
沖田総司が振り返って四方へと視線を飛ばすが、追跡者の気配は感じない。どうやら振り払えたらしい。
沖田は周囲に誰もいないのがわかっていながら、誰に見せるワケでもないのに大げさに安堵の息を吐いてみせた。
沖田は周囲に誰もいないのがわかっていながら、誰に見せるワケでもないのに大げさに安堵の息を吐いてみせた。
追跡者の名は、藤丸立香――奇妙な少女だった。
沖田より遅れて民家を出た彼女は、足音を殺して追いかけてきていた。
たしかな追跡技術であった。沖田ゆえに気づくことができたが、並の隊士では追跡を許してしまっていただろう。
思い返してみると、ずっと不可思議な存在であった。
城戸真司と小競り合いになった際、炭治郎だけでなく立香からもいざとなれば割って入ってくる気配が醸し出されていた。
実力自体はそこまで取り立てて言うほどのものではないと思われるし、筋肉も多少ついていたが鍛え抜かれた戦士というほどではない。
沖田より遅れて民家を出た彼女は、足音を殺して追いかけてきていた。
たしかな追跡技術であった。沖田ゆえに気づくことができたが、並の隊士では追跡を許してしまっていただろう。
思い返してみると、ずっと不可思議な存在であった。
城戸真司と小競り合いになった際、炭治郎だけでなく立香からもいざとなれば割って入ってくる気配が醸し出されていた。
実力自体はそこまで取り立てて言うほどのものではないと思われるし、筋肉も多少ついていたが鍛え抜かれた戦士というほどではない。
だが、薄気味悪い。
化物との戦いの経験がある城戸真司や、鬼殺の剣士である竈門炭治郎が内に力を秘めているのは納得できるが、彼女は未だなにも話していない。
あるいはあの民家に残り続ければ、彼女の持つ情報を知ることができたのかもしれないが――
あるいはあの民家に残り続ければ、彼女の持つ情報を知ることができたのかもしれないが――
「(まあ、もう会うこともないだろう)」
とうの沖田に、もうあの民家に戻るつもりはなかった。
鬼の情報は得たし、民家には戦う力を持った参加者が複数人いる。
鬼の情報は得たし、民家には戦う力を持った参加者が複数人いる。
きっと、彼らは許すのだろう。
二人もの乙女を手にかけた猛田トシオの存在を。
理解し難い。沖田総司にとって、あまりにも理解し難い。
理解し難いが、おそらくあの民家に集まった参加者の認識はそうなのだ。場の空気を察することができぬ沖田ではない。
理解し難い。沖田総司にとって、あまりにも理解し難い。
理解し難いが、おそらくあの民家に集まった参加者の認識はそうなのだ。場の空気を察することができぬ沖田ではない。
おそらく――慶応四年の感覚が元和の剣士に伝わらぬように、百五十年後の感覚がどうしたって伝わっていないのだろう。
であれば邪魔なのは沖田のほうであろう。沖田が消える他にあるまい。
百五十年後であるらしいこの世界に、沖田総司の居場所などないということだ。
斬るべき鬼は決して少なくはないようだし、これはこれで気軽で悪くはない。
時を超えても付き合ってくれる酔狂な相棒なぞ、腰に携えた菊一文字則宗だけである。
百五十年後であるらしいこの世界に、沖田総司の居場所などないということだ。
斬るべき鬼は決して少なくはないようだし、これはこれで気軽で悪くはない。
時を超えても付き合ってくれる酔狂な相棒なぞ、腰に携えた菊一文字則宗だけである。
「それにしたって……ほんと、言ってくれますね」
時代ではないなど、言われるまでもない。
新選組としての終わりも、隠密鬼退治の終わりも、すべて逃してきたのだ。
新選組としての終わりも、隠密鬼退治の終わりも、すべて逃してきたのだ。
――――自嘲気味な笑みを浮かべた沖田の耳が、近づいてくる足音を捉えた。
立香、ではない。
彼女ならばこんなに派手に足音は立てないし、そもそも沖田の名を叫ぶ声に聞き覚えがある。
こうなってしまえば、沖田のほうから足音のもとへと駆けつける他にない。
彼女ならばこんなに派手に足音は立てないし、そもそも沖田の名を叫ぶ声に聞き覚えがある。
こうなってしまえば、沖田のほうから足音のもとへと駆けつける他にない。
「わたしになんの用です、二乃さん」
「沖田さん! やっぱり来てくれたわね」
「沖田さん! やっぱり来てくれたわね」
わざとらしく肩を竦めてみると、返されたのはこんな言葉で――どうやらしてやられたらしい。
慶応四年を追い出されて以降、沖田総司はどうにも乙女にやられっぱしである。
慶応四年を追い出されて以降、沖田総司はどうにも乙女にやられっぱしである。
「もしかして勝手にいなくなろうとしてるんじゃないかって、心配しちゃったから」
「バレましたか」
「バレてたわね」
「バレましたか」
「バレてたわね」
沖田は僅かに逡巡しながらも、ここを誤魔化したほうがのちのち厄介であると考えた。
また次に集団から抜け出そうとした際に、また今回のような追われ方をされては困る。
また次に集団から抜け出そうとした際に、また今回のような追われ方をされては困る。
「ちょっと意外スね。そんなそぶり、見せてなかったはずなんですが」
「私たち姉妹は、良かれと思って勝手に動くプロよ。察しくらいつくに決まってるじゃない」
「私たち姉妹は、良かれと思って勝手に動くプロよ。察しくらいつくに決まってるじゃない」
なんのことだかわからなかったが、沖田のほうにも事情はある。
自分には到底猛田トシオを許すことができない。あの集団は沖田総司の居場所ではない。
きっと百五十年後を生きる彼女にとっては予想だにしない答えなのだろうが、ゆえにこそわかってくれるはずである。
自分には到底猛田トシオを許すことができない。あの集団は沖田総司の居場所ではない。
きっと百五十年後を生きる彼女にとっては予想だにしない答えなのだろうが、ゆえにこそわかってくれるはずである。
「なに言ってるのよ。そんなの、私だって絶対許せないに決まってるじゃない。怖いわ」
「――――えっ?」
「もちろん、その城戸さんって人はすごいと思うわよ。そうありたいわね。でも私にできるかっていうと無理。
沖田さんみたいにそんなの許せないって人もいないと、怖くてあの家にいられないじゃない。一花と三玖だっているのに」
「――――えっ?」
「もちろん、その城戸さんって人はすごいと思うわよ。そうありたいわね。でも私にできるかっていうと無理。
沖田さんみたいにそんなの許せないって人もいないと、怖くてあの家にいられないじゃない。一花と三玖だっているのに」
二乃から返ってきた答えこそ、予想だにしないものであった。
予期せぬ展開に困惑する沖田の手を取って、彼女はさらに続ける。
予期せぬ展開に困惑する沖田の手を取って、彼女はさらに続ける。
「ねえ沖田さん、勝手にいなくならないで……?
せめて相談くらいしてほしかったわ。私も、あの子たちも、絶対沖田さんがいてくれたほうが安心なのに」
せめて相談くらいしてほしかったわ。私も、あの子たちも、絶対沖田さんがいてくれたほうが安心なのに」
どう返答するべきか、沖田は思考を巡らせる。
考えに考えて、たっぷり間を空けてから出てきたのは、結局こんな言葉だった。
考えに考えて、たっぷり間を空けてから出てきたのは、結局こんな言葉だった。
「…………すいません。なにやらとんだ早合点をしていたらしく」
沖田が詫びると、二乃は潤んでいた目を細めて安心したように笑った。
その表情の変化が妙におもしろくなって、沖田のなかに眠る童心が蘇ってくる。
その表情の変化が妙におもしろくなって、沖田のなかに眠る童心が蘇ってくる。
「そうですね。ここは……そうですね、はい。そうしましょう。
ここはひとつ、上田さんの離脱は引き止めなかったのに、私の離脱は許してくれないことに意味を感じるとしましょう」
「っちょ、沖田さん! なんでそういう言い方するのよ!」
「~♪」
「あーもう! 素で言うどっかの誰かと違って、わざと余計なこと言うのも普通にタチ悪いわね!」
ここはひとつ、上田さんの離脱は引き止めなかったのに、私の離脱は許してくれないことに意味を感じるとしましょう」
「っちょ、沖田さん! なんでそういう言い方するのよ!」
「~♪」
「あーもう! 素で言うどっかの誰かと違って、わざと余計なこと言うのも普通にタチ悪いわね!」
なんて会話をしながら、沖田は視線を路地裏に飛ばす。
慌てて隠れようとしたようだが、橙色の髪を隠し切れてはいない。
藤丸立香もまた二乃の声と足音を聞いて、駆けつけてきていたのである。
慌てて隠れようとしたようだが、橙色の髪を隠し切れてはいない。
藤丸立香もまた二乃の声と足音を聞いて、駆けつけてきていたのである。
考えてみれば当然である。
あのように目立つ行動をしていれば、立香も行方知れずの沖田など諦めて二乃のほうに向かうはずだ。
つまるところ沖田は二乃のことなど放置していれば、容易に集団から離脱して単身鬼退治に向かうことができ、二乃もまた立香によって保護されていたのだ。
あのように目立つ行動をしていれば、立香も行方知れずの沖田など諦めて二乃のほうに向かうはずだ。
つまるところ沖田は二乃のことなど放置していれば、容易に集団から離脱して単身鬼退治に向かうことができ、二乃もまた立香によって保護されていたのだ。
「完全にシクっちゃってますね、これ。うっかり駆けつけてしまったおかげで、早とちりに気付けたのですが」
首を傾げる二乃がおかしくて、沖田は口角を吊り上げた。
「新選組一番隊組長ともあろうものが脱走して、まんまと刺客に捕まっただけの話ですよ」
◇ ◇ ◇
【6】
玄関が開く音が響いて、猛田の身体が反射的に跳ね上がった。
わざとらしく立てられた足音は少しずつ近づいてきており、ミクニは再び沖田と向き合うべく椅子から立ち上がった。
わざとらしく立てられた足音は少しずつ近づいてきており、ミクニは再び沖田と向き合うべく椅子から立ち上がった。
「あの、沖田さん! 俺、やっぱり――!」
「いいですよ、若殿くん。ひとまず後回しとします。
間が空いてみれば、せっかく綺麗にしてもらった部屋でボコる気にもなりませんし」
「えぇ…………?」
「いいですよ、若殿くん。ひとまず後回しとします。
間が空いてみれば、せっかく綺麗にしてもらった部屋でボコる気にもなりませんし」
「えぇ…………?」
あまりにもあっさりとした展開に、ミクニは思わず拍子抜けしてしまう。
沖田とともに戻ってきた立香に目配せしてみると、なにやら頷いていたが意味はわからない。
なにはともあれ、現状すぐに猛田の身に危険が及ぶという展開ではなくなったらしい。
沖田とともに戻ってきた立香に目配せしてみると、なにやら頷いていたが意味はわからない。
なにはともあれ、現状すぐに猛田の身に危険が及ぶという展開ではなくなったらしい。
「でもね、断じて罪が許されたなどとは思わぬよう」
「ひッ!」
「ま、そんな甘えたこと考えやしないでしょうが」
「ひッ!」
「ま、そんな甘えたこと考えやしないでしょうが」
猛田を一睨みしてから、沖田は炭治郎のもとに近づいていく。
「さっきは言ってくれましたね、竈門くん。
新選組の時代じゃないことくらい知ってますよ。百五十年経ってることくらいね」
「え……っ? 百五十年……?」
新選組の時代じゃないことくらい知ってますよ。百五十年経ってることくらいね」
「え……っ? 百五十年……?」
怪訝そうな炭治郎をよそに、沖田は続いて真司のほうに視線を飛ばす。
先ほどの小競り合いのせいであろう、真司は険しい表情でカードデッキを手にしている。
先ほどの小競り合いのせいであろう、真司は険しい表情でカードデッキを手にしている。
「仕掛ける気はありませんから身構えないでくださいよ、城戸くん」
「信用できるかよ! 人に向かって、刀抜こうとしておいて!」
「――――っ!」
「信用できるかよ! 人に向かって、刀抜こうとしておいて!」
「――――っ!」
予期せぬ答えに、沖田は呆気に取られてしまう。
「やだなァ。心に『誠』があるとわかったから、刀を抜いてやるつもりだったのに」
幕末の京都。
狭く暗い路地で斬りつけられたときには、鞘から刀を抜くよりもそのまま叩いたほうがずっと早い。
そして、先ほどの沖田と真司の間合いは、まさしく叩いたほうが早い間合いであった。
にもかかわらず刀を抜こうとしたのは、真司が鏡面がなければ力を発揮できない戦士であると知っていたゆえである。
沖田にしてみれば、新選組らしからぬ相対する相手への贈呈品であったのだが、まさかそれがきっかけで疑わることになろうとは。
狭く暗い路地で斬りつけられたときには、鞘から刀を抜くよりもそのまま叩いたほうがずっと早い。
そして、先ほどの沖田と真司の間合いは、まさしく叩いたほうが早い間合いであった。
にもかかわらず刀を抜こうとしたのは、真司が鏡面がなければ力を発揮できない戦士であると知っていたゆえである。
沖田にしてみれば、新選組らしからぬ相対する相手への贈呈品であったのだが、まさかそれがきっかけで疑わることになろうとは。
「……なに言ってんだか。ほんとワケわかんねえよ」
「いやいや。まあまあ。こんなの、別にわからなくてもいいんですよ。
どうだっていいんだ、そんなことは。お互い、心に通したいスジがある剣士なんだから。そんなことはどうだっていい」
「いやいや。まあまあ。こんなの、別にわからなくてもいいんですよ。
どうだっていいんだ、そんなことは。お互い、心に通したいスジがある剣士なんだから。そんなことはどうだっていい」
どんどんどん――と。
沖田は菊一文字の鞘でもって、卓上に広げたままの名簿を叩く。
衝撃から僅かに遅れて、先ほど炭治郎が告げた鬼たちの名が二分される。
沖田は菊一文字の鞘でもって、卓上に広げたままの名簿を叩く。
衝撃から僅かに遅れて、先ほど炭治郎が告げた鬼たちの名が二分される。
「俺と竈門くんと城戸くん。三人でやるんだよ、鬼退治」
◇ ◇ ◇
【7】
「早かったね」
「あら。むしろ時間かかっちゃったと思うけど」
「だって、二乃が家出て行くと長いから」
「私が出て行ったんじゃないわよっ! 追いかけたほうっ!」
「そんな器用なことできたんだね。知らなかった」
「あら。むしろ時間かかっちゃったと思うけど」
「だって、二乃が家出て行くと長いから」
「私が出て行ったんじゃないわよっ! 追いかけたほうっ!」
「そんな器用なことできたんだね。知らなかった」
沖田と立香の三人で戻ってきた二乃は、玄関で待っていた三玖と顔を見合わせる。
なにやら軽口を叩いているが、彼女は彼女で一仕事終えた後らしい。他の誰にもわからなくとも、姉妹である二乃にはわかる。
なにやら軽口を叩いているが、彼女は彼女で一仕事終えた後らしい。他の誰にもわからなくとも、姉妹である二乃にはわかる。
「さっきね、起きちゃう前。アンタもだと思うんだけど」
「うん」
「夢を見たのよ」
「あー……うん、一緒だと思う」
「夢のなかでは五人一緒で」
「でも、これは夢なんだってわかって」
「そう。それ」
「だよね。うん。一緒だよ」
「二人に……あの子たちに、なにか言わなきゃって」
「…………うん。二人とも、もうわかってるみたいに寂しそうな顔してた」
「なにか言おうとして、口を開いたところで……だったのよね」
「うん。私も」
「あの家が揺れたヤツ、沖田さんらしいわよ」
「ひどい。二回も揺れた」
「どっちも沖田さんだって」
「なんなの、あの人」
「なんなのかしら……わっかんないのよね……」
「うん」
「夢を見たのよ」
「あー……うん、一緒だと思う」
「夢のなかでは五人一緒で」
「でも、これは夢なんだってわかって」
「そう。それ」
「だよね。うん。一緒だよ」
「二人に……あの子たちに、なにか言わなきゃって」
「…………うん。二人とも、もうわかってるみたいに寂しそうな顔してた」
「なにか言おうとして、口を開いたところで……だったのよね」
「うん。私も」
「あの家が揺れたヤツ、沖田さんらしいわよ」
「ひどい。二回も揺れた」
「どっちも沖田さんだって」
「なんなの、あの人」
「なんなのかしら……わっかんないのよね……」
遠い目をして、二人でため息を吐く。
そうしてたっぷり間を空けてから、今度は三玖が切り出す。
そうしてたっぷり間を空けてから、今度は三玖が切り出す。
「もし目を覚まさなかったら、なんて言ってたのかな」
「まあ、それ考えちゃうわよね……」
「どうしてもね」
「どうしてもよね……」
「どうしてもだね……」
「まあ、それ考えちゃうわよね……」
「どうしてもね」
「どうしてもよね……」
「どうしてもだね……」
――と。
そこで、はたと気づく。
芽生えたのは、奇妙な違和感であった。
芽生えたのは、奇妙な違和感であった。
二乃と三玖が見ていた同じ夢のなかで、四葉と五月になんと言うべきだったのかを話している――さて。
「「一花は!?」」
相当大きな声を出していたのだろう。リビングから真司による返答が飛んできた。
「一花ちゃんなら、あのあと寝室に戻ったよー!」
二乃と三玖は、目の前がくらくらと廻るような錯覚に襲われる。
「そんな……まさか夢の続きに挑戦……?」
「一花、やっぱりすごい……」
「一花、やっぱりすごい……」
◇ ◇ ◇
【8】
全員がリビングに揃ったのち、中断されていたミクニによる経緯の説明が終わり、沖田と中野姉妹も話を終えた。
とはいえライダーバトル、鬼殺隊、ラブデスター実験などのような特殊な存在とは縁がないとのことで、ずいぶんと早く話を済ませてしまったのだが。
沖田は鬼こそ知っているし、時空を飛んだこともあるが、ただ出くわしたというだけで詳細については、ロクに知らないという。
とはいえライダーバトル、鬼殺隊、ラブデスター実験などのような特殊な存在とは縁がないとのことで、ずいぶんと早く話を済ませてしまったのだが。
沖田は鬼こそ知っているし、時空を飛んだこともあるが、ただ出くわしたというだけで詳細については、ロクに知らないという。
「――――で、私だね」
最後に残った藤丸立香が切り出す。
そこに至ってようやく、真司は立香が一度回ってきた順番を後回しにしていたことを思い出す。
なにか並々ならぬ事情があるのかもしれない。そう息を呑む真司だったが、その疑問はすぐに解消された。
そこに至ってようやく、真司は立香が一度回ってきた順番を後回しにしていたことを思い出す。
なにか並々ならぬ事情があるのかもしれない。そう息を呑む真司だったが、その疑問はすぐに解消された。
「まず……ごめん、三玖! 実はアナタに嘘ついてた!
演劇系サークルをやってて名簿に載ってる名前が芸名とか、全部嘘なんだ! ごめん!
これだけは三玖がいるときに言っとかないとって思って、順番来ても後回しにしてもらってたんだ!」
演劇系サークルをやってて名簿に載ってる名前が芸名とか、全部嘘なんだ! ごめん!
これだけは三玖がいるときに言っとかないとって思って、順番来ても後回しにしてもらってたんだ!」
顔の前で両手を合わせて、立香は三玖へと頭を下げる。
「うん。ま、それはさすがに察してたけどね」
「ええ!?」
「ええ!?」
三玖は表情を変えることなく、立香の表情が変わった。
「立香がなにか隠してるのはわかったし、誤魔化し方も全然上手じゃなかった」
「う……っ!」
「私は立香に姉妹のこともフータローのことも話したのに、立香は私に話せないことがあるんだーへーって思ってたよ」
「うぐぐ……! 返す言葉もない……!
その、悪意とかは全然なくて、そういう風に思われちゃうのも当然なんだけど、でも!
なんていうか……ほんと言い訳とかじゃないんだけど……。いや、でもこれも言い訳だね。ごめん」
「う……っ!」
「私は立香に姉妹のこともフータローのことも話したのに、立香は私に話せないことがあるんだーへーって思ってたよ」
「うぐぐ……! 返す言葉もない……!
その、悪意とかは全然なくて、そういう風に思われちゃうのも当然なんだけど、でも!
なんていうか……ほんと言い訳とかじゃないんだけど……。いや、でもこれも言い訳だね。ごめん」
ぷくーと頬を膨らませる三玖に、立香は慌ててなにやら説明しようとするが上手く言葉が出てこない。
どんどん呂律まで怪しくなってくる上に、なぜか無意味な身振り手振りをしている始末だ。
そんな見る見る壊れていく様子をしばらく眺めてから、三玖は膨らませていた頬をしぼませて小さく笑った。
どんどん呂律まで怪しくなってくる上に、なぜか無意味な身振り手振りをしている始末だ。
そんな見る見る壊れていく様子をしばらく眺めてから、三玖は膨らませていた頬をしぼませて小さく笑った。
「いいよ。立香のこと、いまは結構信用してるから」
「三玖ぅ……!」
「立香でもあんな風になるんだね。もうちょっと見たかったのに、さすがに我慢できなかった」
「三玖!!」
「三玖ぅ……!」
「立香でもあんな風になるんだね。もうちょっと見たかったのに、さすがに我慢できなかった」
「三玖!!」
ふふっとしばらく笑ってから、三玖は妙に真剣な表情になる。
「だいたい、嘘にしても節操がなさすぎる。バレるに決まってる。なに? 宮本武蔵に、ナイチンゲールに、清姫にって。
なんなの、その演劇。とても成立すると思えない。そんなチョイス、歴史ゲームでもありえないよ。もしあったとしても、絶対に流行らないと思う」
なんなの、その演劇。とても成立すると思えない。そんなチョイス、歴史ゲームでもありえないよ。もしあったとしても、絶対に流行らないと思う」
【E-6 民家/1日目・早朝】
【藤丸立香(女主人公)@Fate/Grand Order】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、魔術礼装・カルデア@Fate/Grand Order、ランダム支給品1~2(確認済み)、ファムのカードデッキ@仮面ライダー龍騎
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを止める。いつも通り、出来る限り最善の結末を目指す。
0:今後の方針を練る。
1:自分だけでは力不足なので、サーヴァントか頼れそうな人と合流したい
2:三玖達みんなを守る。サーヴァントのみんなのことはどう説明したものかな……!?
3:BBと話がしたい
[備考]
※参戦時期はノウム・カルデア発足後です。
※原作通り英霊の影を呼び出して戦わせることが可能ですが、面子などについては後続の書き手さんにお任せします。
※サーヴァント達が自分の知るカルデアの者だったり協力的な状態ではない可能性を考えています。
※カルデア礼装は使用すると一定時間のインターバルがあります。
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、魔術礼装・カルデア@Fate/Grand Order、ランダム支給品1~2(確認済み)、ファムのカードデッキ@仮面ライダー龍騎
[思考・状況]
基本方針:殺し合いを止める。いつも通り、出来る限り最善の結末を目指す。
0:今後の方針を練る。
1:自分だけでは力不足なので、サーヴァントか頼れそうな人と合流したい
2:三玖達みんなを守る。サーヴァントのみんなのことはどう説明したものかな……!?
3:BBと話がしたい
[備考]
※参戦時期はノウム・カルデア発足後です。
※原作通り英霊の影を呼び出して戦わせることが可能ですが、面子などについては後続の書き手さんにお任せします。
※サーヴァント達が自分の知るカルデアの者だったり協力的な状態ではない可能性を考えています。
※カルデア礼装は使用すると一定時間のインターバルがあります。
【若殿ミクニ@ラブデスター】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3(確認済み)
[思考・状況]
基本方針:バトルロワイアルからの脱出
1.皆を探す
[備考]
※敬王から帰還以降からの参戦。詳しい時期は後続の書き手にお任せします。
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3(確認済み)
[思考・状況]
基本方針:バトルロワイアルからの脱出
1.皆を探す
[備考]
※敬王から帰還以降からの参戦。詳しい時期は後続の書き手にお任せします。
【猛田トシオ@ラブデスター】
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3(確認済み)
[思考・状況]
基本方針:優勝商品を手に入れる
1.若殿ミクニ達他のやつらを利用する
2.まずは信用されるように動き、利用しやすくなるように動く
3.藤丸立香は俺に気がある?
[備考]
※死後からの参戦
[状態]:健康
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3(確認済み)
[思考・状況]
基本方針:優勝商品を手に入れる
1.若殿ミクニ達他のやつらを利用する
2.まずは信用されるように動き、利用しやすくなるように動く
3.藤丸立香は俺に気がある?
[備考]
※死後からの参戦
【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1(本人確認済み、武器)、龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎
[思考・状況]
基本方針:今度こそ願いを叶える。
1.戦いを止める。
2.千翼のことを止めたいが…
3.蓮…!!
[備考]
※秋山蓮に生きろと告げて目を閉じた後からの参戦です。
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)
[道具]:基本支給品一式、不明支給品1(本人確認済み、武器)、龍騎のデッキ@仮面ライダー龍騎
[思考・状況]
基本方針:今度こそ願いを叶える。
1.戦いを止める。
2.千翼のことを止めたいが…
3.蓮…!!
[備考]
※秋山蓮に生きろと告げて目を閉じた後からの参戦です。
【竈門炭治郎@鬼滅の刃】
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、全身に切り傷と打撲(簡易処置済み)
[道具]:基本支給品一式、折れた日輪刀@鬼滅の刃、ランダム支給品0~1、カルデア戦闘服@Fate/Grand Order、
[思考・状況]
基本方針:禰豆子を見つけて守る。無惨を倒す。
1:禰豆子や仲間に早く会いたい。
2:刀が欲しい。
[備考]
※強化合宿訓練後、無惨の産屋敷襲撃前より参戦です。
※折れた日輪刀は半天狗戦で緑壱零式の刀を使う前のものでした。
[状態]:疲労(大)、ダメージ(大)、全身に切り傷と打撲(簡易処置済み)
[道具]:基本支給品一式、折れた日輪刀@鬼滅の刃、ランダム支給品0~1、カルデア戦闘服@Fate/Grand Order、
[思考・状況]
基本方針:禰豆子を見つけて守る。無惨を倒す。
1:禰豆子や仲間に早く会いたい。
2:刀が欲しい。
[備考]
※強化合宿訓練後、無惨の産屋敷襲撃前より参戦です。
※折れた日輪刀は半天狗戦で緑壱零式の刀を使う前のものでした。
【沖田総司@衛府の七忍】
[状態]:健康
[装備]:着流し、菊一文字則宗@衛府の七忍
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:『びぃびぃ』と名乗る鬼を討った後、元和に戻って鬼退治。
1:己の『誠』を信じて突く。
2:二乃さんを護衛する。
3:酒呑童子については保留。
4:二乃さんの妹御を斬った鬼(千翼)を斬る。
[備考]
※第三十五話以降からの参戦。
[状態]:健康
[装備]:着流し、菊一文字則宗@衛府の七忍
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3
[思考・状況]
基本方針:『びぃびぃ』と名乗る鬼を討った後、元和に戻って鬼退治。
1:己の『誠』を信じて突く。
2:二乃さんを護衛する。
3:酒呑童子については保留。
4:二乃さんの妹御を斬った鬼(千翼)を斬る。
[備考]
※第三十五話以降からの参戦。
【中野一花@五等分の花嫁】
[状態]:ダメージ(中)、頭部強打、顔面に切り傷(いずれも治癒)、精神的ショック
[装備]:制服
[道具]:基本支給品一式、ベルデのデッキ@仮面ライダー龍騎、三玖の変装セット@五等分の花嫁、マンジュウでわかるFGO@Fate/Grand Order 、五月の髪飾り、不明支給品0~3
[思考・状況]
基本方針:好きな人に会いたい
1.ひとまず話をする。
2.千翼に対する強い怒り。それを上回る四葉と五月への哀しみ。
[備考]
※三年の新学期(69話)以降から参戦です。
[状態]:ダメージ(中)、頭部強打、顔面に切り傷(いずれも治癒)、精神的ショック
[装備]:制服
[道具]:基本支給品一式、ベルデのデッキ@仮面ライダー龍騎、三玖の変装セット@五等分の花嫁、マンジュウでわかるFGO@Fate/Grand Order 、五月の髪飾り、不明支給品0~3
[思考・状況]
基本方針:好きな人に会いたい
1.ひとまず話をする。
2.千翼に対する強い怒り。それを上回る四葉と五月への哀しみ。
[備考]
※三年の新学期(69話)以降から参戦です。
【中野二乃@五等分の花嫁】
[状態]:健康、精神的ショック
[装備]:制服にカーディガン
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:好きな人と傍にいたい
1:ひとまず話をする。
2:PENTAGONに向かう。
3:四葉と五月を殺した相手への怒り。それを上回る四葉と五月への哀しみ。
[備考]
※修学旅行中(少なくとも79話ラスト以降)からの参戦。
[状態]:健康、精神的ショック
[装備]:制服にカーディガン
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:好きな人と傍にいたい
1:ひとまず話をする。
2:PENTAGONに向かう。
3:四葉と五月を殺した相手への怒り。それを上回る四葉と五月への哀しみ。
[備考]
※修学旅行中(少なくとも79話ラスト以降)からの参戦。
【中野三玖@五等分の花嫁】
[状態]:首筋に引っ掻き傷(処置済み)、精神的ショック
[道具]:基本支給品一式、四葉のリボン、ランダム支給品1~3(確認済み)
[思考・状況]
基本方針:好きな人へ伝えたい
1:ひとまず話をする。
2:四葉と五月を殺した相手への怒り。それを上回る四葉と五月への哀しみ。
[備考]
※参戦時期は修学旅行中です。
[状態]:首筋に引っ掻き傷(処置済み)、精神的ショック
[道具]:基本支給品一式、四葉のリボン、ランダム支給品1~3(確認済み)
[思考・状況]
基本方針:好きな人へ伝えたい
1:ひとまず話をする。
2:四葉と五月を殺した相手への怒り。それを上回る四葉と五月への哀しみ。
[備考]
※参戦時期は修学旅行中です。
| 前話 | お名前 | 次話 |
| ファイナル本能寺・エピソード2(前編) | 藤丸立香 | だんだん遠くなってく君を追いかけていく |
| 中野三玖 | ||
| 若殿ミクニ | ||
| 猛田トシオ | ||
| 中野一花 | ||
| 竈門炭治郎 | ||
| 城戸真司 | ||
| 沖田総司 | ||
| 中野二乃 |