ファイナル本能寺・エピソード2(前編) ◆hqLsjDR84w
◇ ◇ ◇
【0】
つまり、おわりのつづき。
◇ ◇ ◇
【1】
住宅街が広がるエリアE-6の一画。
あまり代わり映えのしない外見で建ち並ぶ民家の一軒に、この殺し合いにおいて出逢った九名もの参加者が集まっている。
ひしめき合うようにという形容からは程遠い閑静な住宅街のなかで、たった一軒だけがまさしくひしめき合うような人口密度となっていた。
特にリビングに至っては、別室にて休む三人を除く六人がダイニングテーブルを囲む形になっており、四人家族用と思しきテーブルが奇妙に頼りなく思える始末だ。
あまり代わり映えのしない外見で建ち並ぶ民家の一軒に、この殺し合いにおいて出逢った九名もの参加者が集まっている。
ひしめき合うようにという形容からは程遠い閑静な住宅街のなかで、たった一軒だけがまさしくひしめき合うような人口密度となっていた。
特にリビングに至っては、別室にて休む三人を除く六人がダイニングテーブルを囲む形になっており、四人家族用と思しきテーブルが奇妙に頼りなく思える始末だ。
けれど、そんなテーブルと比べても、自分のほうが遥かに頼りないだろう。
家具と自分自身を比較したことなどこれまでになかったが、生まれて初めて――城戸真司はそんな風に思ってしまった。
家具と自分自身を比較したことなどこれまでになかったが、生まれて初めて――城戸真司はそんな風に思ってしまった。
死んだはずの自分が生き返っていて、もう会えないはずの友と再会して、自分たちとは異なる『ライダー』と戦って敵わなくて、守るべき少女を守れなくて、どうにか逃げ切ったものの再会した友を失って――
いろいろあった。
いろいろありすぎた。
このライダーバトルとは異なる殺し合いに参加させられてから、いまになってようやく落ち着いたのだ。
いろいろあった。
いろいろありすぎた。
このライダーバトルとは異なる殺し合いに参加させられてから、いまになってようやく落ち着いたのだ。
「(どうして、よりにもよって俺のほうが生き延びているんだろうな……)」
落ち着いたからこそ、ついつい自問してしまう。
我が身を犠牲にした秋山蓮に対して、あまりにも無礼で厚かましく恥を知らぬ疑問だということくらい、真司自身もよくわかっている。
そもそも、アレは蓮にしかできなかった。
自分一人が盾となって残り三人を逃がすなどという発想と能力、両方を持ち合わせていたのはあの場に彼以外にいなかった。
能力だけならば同じライダーである真司にもできたかもしれないが、戦える人間が頑張って敵を退けるしかないと、そんなことばかり考えていた。
だとしても、どうしたって考えてしまうのだ。
蓮に対して何度胸中で頭を下げても、同じ疑問を抱いてしまうのを止められそうにない。
我が身を犠牲にした秋山蓮に対して、あまりにも無礼で厚かましく恥を知らぬ疑問だということくらい、真司自身もよくわかっている。
そもそも、アレは蓮にしかできなかった。
自分一人が盾となって残り三人を逃がすなどという発想と能力、両方を持ち合わせていたのはあの場に彼以外にいなかった。
能力だけならば同じライダーである真司にもできたかもしれないが、戦える人間が頑張って敵を退けるしかないと、そんなことばかり考えていた。
だとしても、どうしたって考えてしまうのだ。
蓮に対して何度胸中で頭を下げても、同じ疑問を抱いてしまうのを止められそうにない。
普段ならば気にも留めないであろう物事からも、いまの真司は自身の至らなさを痛感してしまう。
もともとこのリビングには椅子は四脚しかなかったというのに、負傷をしているからと気を遣われて優先して椅子を回してもらった。
まだ十代半ばと思われる竈門炭治郎はともかく、社会人である真司がである。
最終的に藤丸立香が別室から椅子を持ってきたとはいえ、おそらく蓮ならばリビングに入ったと同時に椅子の数を把握して、自ら探しに行っていただろう。
もともとこのリビングには椅子は四脚しかなかったというのに、負傷をしているからと気を遣われて優先して椅子を回してもらった。
まだ十代半ばと思われる竈門炭治郎はともかく、社会人である真司がである。
最終的に藤丸立香が別室から椅子を持ってきたとはいえ、おそらく蓮ならばリビングに入ったと同時に椅子の数を把握して、自ら探しに行っていただろう。
「(…………すごいよな、立香ちゃん。
一花ちゃんたちの一件もだけど、怪我も治せるみたいだし、みんなで話そうって提案したもあの子だし、あと――)」
一花ちゃんたちの一件もだけど、怪我も治せるみたいだし、みんなで話そうって提案したもあの子だし、あと――)」
現在話している炭治郎から視線を下に移して、真司はフローリングに残るシミを眺める。
本当に微かな汚れでしかなく、まさかここに少女の死体がしばらく放置されていたとはとても思えない。
換気も十分にされており、鼻が利くという炭治郎がとても驚いていた。
死体を別室に移動させるのも、飛び散った血液や臭いの処理も、なんでもほとんど立香が行ったのだという。
自分たちは指示に従って窓を開けたり、言われたものを用意したりしただけだと、若殿ミクニと猛田トシオの二人は揃ってバツが悪そうに頬をかいていた。
本当に微かな汚れでしかなく、まさかここに少女の死体がしばらく放置されていたとはとても思えない。
換気も十分にされており、鼻が利くという炭治郎がとても驚いていた。
死体を別室に移動させるのも、飛び散った血液や臭いの処理も、なんでもほとんど立香が行ったのだという。
自分たちは指示に従って窓を開けたり、言われたものを用意したりしただけだと、若殿ミクニと猛田トシオの二人は揃ってバツが悪そうに頬をかいていた。
「(それでも十分すごいよ。中学生だって言うもんな。
いや……それを言うなら、立香ちゃんだってまだ高校生か大学生だよな、たぶん。それに比べて、俺は……!)」
いや……それを言うなら、立香ちゃんだってまだ高校生か大学生だよな、たぶん。それに比べて、俺は……!)」
猛田、ミクニ、立香と順番に眺めていって、真司は思わず頭を抱えたくなった。
このリビングに入ってすぐのことである。
放置されていた死体を移動させて、さらに血痕や臭いの処理をした旨を説明した立香に、炭治郎は「犬でもなければ気づきませんね」と言ったのだ。
炭治郎にしてみれば対処の完璧さに驚いたゆえの発言でしかないというのに、真司はというと『犬』というワードだけを聞いて怯えて机の下に隠れてしまった。
あのときに向けられた冷ややかな視線と来たら忘れられそうにないし、真司だって年が一回り上の男がそんな醜態を晒していたら、冷ややかな視線くらい向けるだろう。
このリビングに入ってすぐのことである。
放置されていた死体を移動させて、さらに血痕や臭いの処理をした旨を説明した立香に、炭治郎は「犬でもなければ気づきませんね」と言ったのだ。
炭治郎にしてみれば対処の完璧さに驚いたゆえの発言でしかないというのに、真司はというと『犬』というワードだけを聞いて怯えて机の下に隠れてしまった。
あのときに向けられた冷ややかな視線と来たら忘れられそうにないし、真司だって年が一回り上の男がそんな醜態を晒していたら、冷ややかな視線くらい向けるだろう。
それに――と。
リビングにいない少女たちのことが、真司の頭にへばりついて離れない。
別室で疲れて眠っている三人の少女たち。中野一花、中野二乃、中野三玖。
傍目には髪形やアクセサリー以外では到底見分けがつかないほどにそっくりだが、しかし断じて三姉妹ではない。
これまでずっと五つ子姉妹として生きてきたというのに、この殺し合いに巻き込まれて早くも二人を失ってしまったのだ。
リビングにいない少女たちのことが、真司の頭にへばりついて離れない。
別室で疲れて眠っている三人の少女たち。中野一花、中野二乃、中野三玖。
傍目には髪形やアクセサリー以外では到底見分けがつかないほどにそっくりだが、しかし断じて三姉妹ではない。
これまでずっと五つ子姉妹として生きてきたというのに、この殺し合いに巻き込まれて早くも二人を失ってしまったのだ。
彼女たちのように戦う術を持たない参加者がいる可能性くらい、最初に蓮と再会した時点で指摘されていた。
高層マンションのロビーにて一花と五月を発見した時点で、そのような参加者が決して少なくないことなどわかっていた。
にもかかわらず――いまさらながら、ようやく一息ついたいまになって、やはりどうしても思ってしまうのだ。
高層マンションのロビーにて一花と五月を発見した時点で、そのような参加者が決して少なくないことなどわかっていた。
にもかかわらず――いまさらながら、ようやく一息ついたいまになって、やはりどうしても思ってしまうのだ。
「(クソッ、どうして俺が残ってるんだよ!
一回死んで生き返った俺なんかよりも、ずっと生きてかなきゃいけない人がいるっていうのに!
なァ、頼むよ。教えてくれよ、蓮……! 俺なんかよりもっと上手くやれるはずのお前が死んでまで……!)」
一回死んで生き返った俺なんかよりも、ずっと生きてかなきゃいけない人がいるっていうのに!
なァ、頼むよ。教えてくれよ、蓮……! 俺なんかよりもっと上手くやれるはずのお前が死んでまで……!)」
――お前の夢に付き合う余裕がある。
蓮の声が、真司の頭のなかを廻り続けている。
頼り甲斐がある友からの思わず胸が熱くなってしまった言葉であるはずなのに、いまはどうにも重たくのしかかっているような感じがしてならなかった。
頼り甲斐がある友からの思わず胸が熱くなってしまった言葉であるはずなのに、いまはどうにも重たくのしかかっているような感じがしてならなかった。
「(…………それにしても、炭治郎の説明はわかりやすいな)」
真司は、右隣に座っている竈門炭治郎へと視線を向ける。
ついついよそ事を考えてしまっているというのに、彼が人を喰らう鬼を斬る剣士であることは伝わった。
鬼から人々を守るべく、また鬼になってしまった妹を人間に戻すべく、仲間や先輩とともに日々鍛錬を重ねているのだという。
映画のなかのような話だが、ライダーバトルを経験している以上、ありえないなどとは言い切れない。むしろ先ほどの戦闘中の発言にスジが通り、大いに納得さえしてしまっている。
この場にいる六人、真司以外の面々もそれぞれなにかしらの事情を持ち合わせているのだろう。驚くものはいても、目に見えて否定するものは一人として現れぬままに、炭治郎の話は続く。
ついついよそ事を考えてしまっているというのに、彼が人を喰らう鬼を斬る剣士であることは伝わった。
鬼から人々を守るべく、また鬼になってしまった妹を人間に戻すべく、仲間や先輩とともに日々鍛錬を重ねているのだという。
映画のなかのような話だが、ライダーバトルを経験している以上、ありえないなどとは言い切れない。むしろ先ほどの戦闘中の発言にスジが通り、大いに納得さえしてしまっている。
この場にいる六人、真司以外の面々もそれぞれなにかしらの事情を持ち合わせているのだろう。驚くものはいても、目に見えて否定するものは一人として現れぬままに、炭治郎の話は続く。
話し合いくらいは引っ張らねばならないと、一人目を買って出たのは真司であった。
沖田総司を名乗る青年はどうにも読み切れないところがあるが、おそらく真司が唯一の真っ当な社会人だ。
突発的なミーティングや、なぜ出る必要があるのかわからない打ち合わせなど、悲しいことにもう慣れたものである。
しかしながら、あまり上手く行った感触はない。
ライダーバトルとその顛末(途中脱落の真司の知っている範囲で)を話したものの、イマイチ伝え切れた気がしない。
この場にいないライダーバトルの主催者・神崎士郎や、確実に死ぬ定めを背負った士郎の妹・神崎結衣など、この場にいない人間の話ばかりしてしまった。
参加者である秋山蓮と浅倉威の話を、特に百パーセント殺し合いに乗っているであろう危険人物である浅倉の話をこそ、重点的にするべきだったというのに。
結局、立香に軌道修正をしてもらった感さえある。
彼女が「じゃあ支給品のこれは……」と支給されていたカードデッキを出してくれたことで、神崎兄妹のほうへと脱線した内容がライダーゲーム自体の話に戻った。
立香の取り出した『ファム』という白いカードデッキ自体は真司の知るものではなく、説明書に記載されているのと変わらないような変身方法の話くらいしかしてあげることはできなかったのだが。
沖田総司を名乗る青年はどうにも読み切れないところがあるが、おそらく真司が唯一の真っ当な社会人だ。
突発的なミーティングや、なぜ出る必要があるのかわからない打ち合わせなど、悲しいことにもう慣れたものである。
しかしながら、あまり上手く行った感触はない。
ライダーバトルとその顛末(途中脱落の真司の知っている範囲で)を話したものの、イマイチ伝え切れた気がしない。
この場にいないライダーバトルの主催者・神崎士郎や、確実に死ぬ定めを背負った士郎の妹・神崎結衣など、この場にいない人間の話ばかりしてしまった。
参加者である秋山蓮と浅倉威の話を、特に百パーセント殺し合いに乗っているであろう危険人物である浅倉の話をこそ、重点的にするべきだったというのに。
結局、立香に軌道修正をしてもらった感さえある。
彼女が「じゃあ支給品のこれは……」と支給されていたカードデッキを出してくれたことで、神崎兄妹のほうへと脱線した内容がライダーゲーム自体の話に戻った。
立香の取り出した『ファム』という白いカードデッキ自体は真司の知るものではなく、説明書に記載されているのと変わらないような変身方法の話くらいしかしてあげることはできなかったのだが。
一方、次に話し始めた炭治郎の説明は、前任者を反面教師にしたかのようなわかりやすさであった。
まず名簿を取り出して真ん中に広げ、誰が仲間で、誰が倒すべき鬼であるのか。またこの場で一花と出会い、その後千翼と戦闘になり、どのような展開を経てこの場所まで辿り着いたのか。
少なくとも真司よりはスムーズに話していたし、何名かは話の流れで出てきたとしても、真司のように参加者でもない人間について延々話し続けるマネはしなかった。
真司の左隣に座る沖田から鬼に関して質問が飛んできても、予期せぬ質問に慌てて挙動不審になったりすることもなく、炭治郎は落ち着いて淡々と返答をしている。
業務ミーティング中の自分を思い出して、真司ははずかしくなったものの、こと『鬼の倒し方』などの話題になると擬音を多用し始めて沖田が首を傾げていたため、少しだけ安心した。
安心してしまったことに、遅れて胸が痛くなった。
まず名簿を取り出して真ん中に広げ、誰が仲間で、誰が倒すべき鬼であるのか。またこの場で一花と出会い、その後千翼と戦闘になり、どのような展開を経てこの場所まで辿り着いたのか。
少なくとも真司よりはスムーズに話していたし、何名かは話の流れで出てきたとしても、真司のように参加者でもない人間について延々話し続けるマネはしなかった。
真司の左隣に座る沖田から鬼に関して質問が飛んできても、予期せぬ質問に慌てて挙動不審になったりすることもなく、炭治郎は落ち着いて淡々と返答をしている。
業務ミーティング中の自分を思い出して、真司ははずかしくなったものの、こと『鬼の倒し方』などの話題になると擬音を多用し始めて沖田が首を傾げていたため、少しだけ安心した。
安心してしまったことに、遅れて胸が痛くなった。
「俺の事情はこんな感じで……。じゃあ次は立香さん、お願いします」
「んー。私はちょっと事情があって……。ちょっと後に回してほしい、かな」
「…………? じゃあ、次は――」
「んー。私はちょっと事情があって……。ちょっと後に回してほしい、かな」
「…………? じゃあ、次は――」
炭治郎の次となると、席順的には猛田の番だ。
その次がミクニで、さらにその次になってようやく立香に回ってくるはずだ。
それを無視して立香にバトンを回そうとしたのは、おそらく三人のなかで一番落ち着いてるのは立香だと判断したからだろう。
真司もその判断は正しいと思ったため、断られてしまうのは少し意外だった。
その次がミクニで、さらにその次になってようやく立香に回ってくるはずだ。
それを無視して立香にバトンを回そうとしたのは、おそらく三人のなかで一番落ち着いてるのは立香だと判断したからだろう。
真司もその判断は正しいと思ったため、断られてしまうのは少し意外だった。
「ってことは俺たちの番、か。とはいえ見ての通り、先に説明してくれたお二人のように戦う力なんて、とても持ち合わせていなくて……。
ただ悪趣味な実験に巻き込まれただけで、あくまで普通の中学生に過ぎない二人でしてねえ。わざわざ時間を取ってもらうのも忍びないというか。
まあそこまで詳しく聞くほどの価値もないだろうし、ちょっと流す程度に説明させてもらいますよ。月代海岸って知ってます? あの近くにある月代中学の――」
「――猛田、やめろ。俺から話す。オメェは黙ってろ。
それに、もう三玖さんも立香さんもとっくに知ってンだ。いまさら取り繕ったって意味ねえだろ」
ただ悪趣味な実験に巻き込まれただけで、あくまで普通の中学生に過ぎない二人でしてねえ。わざわざ時間を取ってもらうのも忍びないというか。
まあそこまで詳しく聞くほどの価値もないだろうし、ちょっと流す程度に説明させてもらいますよ。月代海岸って知ってます? あの近くにある月代中学の――」
「――猛田、やめろ。俺から話す。オメェは黙ってろ。
それに、もう三玖さんも立香さんもとっくに知ってンだ。いまさら取り繕ったって意味ねえだろ」
意外と言うのなら、であればと堰を切ったように喋り出した猛田も意外で、それを制したミクニもまた意外ではあったのだが。
「ミクニ……! クソッ、この野郎が……! せめて言い方とか考えるんだぞ……!」
彼らにいかなる事情があるのだろうか。苦虫を噛み潰したような表情で見守る猛田の前で、ミクニが喋り始める。
なんでも、彼らはともに愛実験(ラブデスター)という殺し合いに巻き込まれた被害者であるらしい。
なんでも、彼らはともに愛実験(ラブデスター)という殺し合いに巻き込まれた被害者であるらしい。
「(なんか、ライダーバトルみたいだ)」
『真実の愛』に至ったペアがだけが生還できる狂気の実験。
生き延びた一人だけが望みを叶えられるライダーバトルとはルールこそ異なるものの、生存するために他者との戦いを強制される実験の話は、真司にとってかなり共感できるものだった。
いきなり巻き込まれるのも、開始時点では主催者の目的がまったくわからないのも同じだ。ただ、社会人の自分と違って彼らは中学生で、しかも百名以上が巻き込まれている。
もしも中学生の時点でそのような実験に巻き込まれたらと思うと、真司には想像もつかない。知らず歯を噛み締めてしまう。
生き延びた一人だけが望みを叶えられるライダーバトルとはルールこそ異なるものの、生存するために他者との戦いを強制される実験の話は、真司にとってかなり共感できるものだった。
いきなり巻き込まれるのも、開始時点では主催者の目的がまったくわからないのも同じだ。ただ、社会人の自分と違って彼らは中学生で、しかも百名以上が巻き込まれている。
もしも中学生の時点でそのような実験に巻き込まれたらと思うと、真司には想像もつかない。知らず歯を噛み締めてしまう。
「そんで、あるときファウストが被験体である俺たちに、奇妙な道具を配ったんだ」
ライダーバトルとの奇妙な類似点が増えた。
そんなことを考えていた真司は、猛田の顔色が見るからに青くなったことに気付かない。
そんなことを考えていた真司は、猛田の顔色が見るからに青くなったことに気付かない。
「――――『フィーリング測定機』というアイテムを」
◇ ◇ ◇
【2】
フィーリング測定機の持ち主である猛田が、ラブデスター実験のなかでなにをしでかしたのか。
詳細が明かされたリビングはしんと静まり返り、全員が一様に顔を伏せて震える猛田を見据えていた。
詳細が明かされたリビングはしんと静まり返り、全員が一様に顔を伏せて震える猛田を見据えていた。
いや、全員ではない。
沖田総司、彼もまた顔を伏せていた。
猛田と同じように顔を伏せていながら、猛田と違って震えてはいない。その表情は誰にも窺い知ることはできない。
沖田総司、彼もまた顔を伏せていた。
猛田と同じように顔を伏せていながら、猛田と違って震えてはいない。その表情は誰にも窺い知ることはできない。
「間違いを犯したのはたしかなんだ。否定できねェし、絶対にさせねェ。でも……こいつだって、実験の被害者なんだ。
あの異常な空間でおかしくなったせいで、測定機なんかに踊らされちまっただけで、普通に生きてたら絶対こんなことしてなかった……と信じてェ。
それに、こいつだって全部が全部引っ掻き回したってワケじゃねえんだ! こいつが相性がいいって言った二人は実際生還したし、間違っていなければきっと!
だから……傲慢って言われちまったし、そうかもしれねェんだけど、でも! それでもなにも死んじまうことはなかったと思ってたし、せっかく生き返ったんなら、今度こそ……!」
あの異常な空間でおかしくなったせいで、測定機なんかに踊らされちまっただけで、普通に生きてたら絶対こんなことしてなかった……と信じてェ。
それに、こいつだって全部が全部引っ掻き回したってワケじゃねえんだ! こいつが相性がいいって言った二人は実際生還したし、間違っていなければきっと!
だから……傲慢って言われちまったし、そうかもしれねェんだけど、でも! それでもなにも死んじまうことはなかったと思ってたし、せっかく生き返ったんなら、今度こそ……!」
その通り――かもしれない。
真司は思ってしまってから、蓮がいれば単純に流されすぎると怒るんだろうなと自嘲する。
真司は思ってしまってから、蓮がいれば単純に流されすぎると怒るんだろうなと自嘲する。
でも、猛田は中学生だ。
社会人である自分でも、ずっと答えなんて出せなかった。
最後の最後に至っても、ようやく答えみたいなものに到達しただけだ。
挙句、生き返ったいまになっても、どうして俺が生き延びてしまっているんだと自問している。
明かされたような手段を取るのも理解はできないが、中学生ならばありえることはあるのかもしれない。
社会人である自分でも、ずっと答えなんて出せなかった。
最後の最後に至っても、ようやく答えみたいなものに到達しただけだ。
挙句、生き返ったいまになっても、どうして俺が生き延びてしまっているんだと自問している。
明かされたような手段を取るのも理解はできないが、中学生ならばありえることはあるのかもしれない。
「いやいや。いやいや、いやいや」
真司の思考に割って入ってきたのは、表情が見えぬままの沖田の声だ。
切り出しておいて顔を上げる気配はないし、続きを話す気配もない。注目が集まるのを待っているのだろうか。
真司が抱いた疑問は、すぐに氷解する。
俯いていた猛田が顔を上げたと同時に、沖田は傍らの日本刀を手に取る。
待っていたのは皆の注目ではない。猛田が顔を上げるのだけを待っていたのだ。
沖田は座った状態で、鞘に入れたままの日本刀で床を突く。どんと低く重たい音が響き、家自体が大きなゆりかごであるかのように振動した。
切り出しておいて顔を上げる気配はないし、続きを話す気配もない。注目が集まるのを待っているのだろうか。
真司が抱いた疑問は、すぐに氷解する。
俯いていた猛田が顔を上げたと同時に、沖田は傍らの日本刀を手に取る。
待っていたのは皆の注目ではない。猛田が顔を上げるのだけを待っていたのだ。
沖田は座った状態で、鞘に入れたままの日本刀で床を突く。どんと低く重たい音が響き、家自体が大きなゆりかごであるかのように振動した。
「――――そんなの、通らないでしょう」
短く告げて、沖田は勢いよく顔を上げる。
露わになったその表情からは、ずっと浮かべていた軽薄な笑みは消え失せており、冷たく鋭い視線は刀よりも早くとうに猛田の身体を貫いていた。
なにか弁明の一つでもあったのだろうか、猛田は両手を前に出して咄嗟に口を開く。しかしその口から洩れるのは、ひゅうひゅうと空気が出入りする音だけだ。
ミクニが庇うように椅子から立ち上がろうとするが、沖田が首を動かすことなく視線だけをほんの一瞬向けただけで、再び椅子に腰を落として動けなくなってしまう。
露わになったその表情からは、ずっと浮かべていた軽薄な笑みは消え失せており、冷たく鋭い視線は刀よりも早くとうに猛田の身体を貫いていた。
なにか弁明の一つでもあったのだろうか、猛田は両手を前に出して咄嗟に口を開く。しかしその口から洩れるのは、ひゅうひゅうと空気が出入りする音だけだ。
ミクニが庇うように椅子から立ち上がろうとするが、沖田が首を動かすことなく視線だけをほんの一瞬向けただけで、再び椅子に腰を落として動けなくなってしまう。
「待てよ、お前! そりゃないだろ!」
思わず立ち上がってしまった自分に、驚いてしまったのはむしろ真司自身のほうだった。
とはいえ、予期せぬ自分自身の行動に戸惑っている場合ではない。
沖田は刀を持って立ち上がり、いまにも対面に座る猛田のもとに向かうべくテーブルに足をかけかねない勢いだ。真司は慌てて沖田の右腕を掴む。
とはいえ、予期せぬ自分自身の行動に戸惑っている場合ではない。
沖田は刀を持って立ち上がり、いまにも対面に座る猛田のもとに向かうべくテーブルに足をかけかねない勢いだ。真司は慌てて沖田の右腕を掴む。
「相手は中学生なんだぞ! それに一回死んでんだ! 二度も死ぬなんて、そんなの……!」
そんなの――。
そんなの、なんだと言うのか。
自分だって、生き返っておいて。
どうして自分が生き延びているのかなどと、ずっと考えておいて。
そんなの、なんだと言うのか。
自分だって、生き返っておいて。
どうして自分が生き延びているのかなどと、ずっと考えておいて。
真司自身にもわからない。
ただわからないままに声を張り上げているだけだ。
まるで真司の混乱など読み切っているかのように、沖田は冷え切った視線を猛田に突き刺したままで答える。
ただわからないままに声を張り上げているだけだ。
まるで真司の混乱など読み切っているかのように、沖田は冷え切った視線を猛田に突き刺したままで答える。
「『中学生』、ねえ。わたしにはあまりよくわかりませんが。それを言うならば、殺されたのも同じ齢の乙女であったらしいですよ」
「ぐ……! そ、それは……!」
「ぐ……! そ、それは……!」
それはそうだ。
否定のしようもない。
中学生のやったことだろうと言い張るということは、すなわち中学生二人の死をなかったことにするということだ。
そのような言説、うっかり記事になどして提出した日には、はたして編集長からどれだけ雷が落ちるだろうか。いったい何時間に渡って意図の追及をされるであろうか。おそらく終電は残っていないだろう。
否定のしようもない。
中学生のやったことだろうと言い張るということは、すなわち中学生二人の死をなかったことにするということだ。
そのような言説、うっかり記事になどして提出した日には、はたして編集長からどれだけ雷が落ちるだろうか。いったい何時間に渡って意図の追及をされるであろうか。おそらく終電は残っていないだろう。
「(余計なこと考えてる場合かよっ! 考えろ、考えろ――!)」
真司は自分の脳に期待をかけて呼びかける。
最近、こんなことばかりだ。らしくもなく考えている。考えさせられている。
どうしたって答えは出ない。あのときと同じだ。死ぬ前となんら変わらない。
考えろ、考えろ、考えろと、結局まったく同じ三文字が脳内を巡るばかりだ。
最近、こんなことばかりだ。らしくもなく考えている。考えさせられている。
どうしたって答えは出ない。あのときと同じだ。死ぬ前となんら変わらない。
考えろ、考えろ、考えろと、結局まったく同じ三文字が脳内を巡るばかりだ。
「ダメだ、殺すな。それは……ダメだ! ダメなんだよ!」
「…………なんです、それは?」
「…………なんです、それは?」
あまりの中身のなさに苛立ったのか、沖田は不愉快そうに眉根を寄せた。
瞬く間に真司の視界は反転し、遅れて身体を走り抜けた痛みで、ようやく真司は腕を掴んだ手を振り払われたのだと理解する。
痛い。あまりにも痛い。先ほどの戦闘で負傷している身体を容赦なく床に叩きつけられ、表情が歪むのを抑えられない。
ようやく少し落ち着いてきたなど考えていた一瞬前までの自分を、真司はブン殴ってやりたくなった。なにが落ち着いたものか。
痛みに慣れてしまって麻痺していただけであって、少し衝撃を与えられただけで吐きそうだ。泣きそうの段階はとっくに超えた。吐きそう。
瞬く間に真司の視界は反転し、遅れて身体を走り抜けた痛みで、ようやく真司は腕を掴んだ手を振り払われたのだと理解する。
痛い。あまりにも痛い。先ほどの戦闘で負傷している身体を容赦なく床に叩きつけられ、表情が歪むのを抑えられない。
ようやく少し落ち着いてきたなど考えていた一瞬前までの自分を、真司はブン殴ってやりたくなった。なにが落ち着いたものか。
痛みに慣れてしまって麻痺していただけであって、少し衝撃を与えられただけで吐きそうだ。泣きそうの段階はとっくに超えた。吐きそう。
「やめろって……言ってるだろ……!!」
それでも嘔吐感を抑えて、歪み切った表情のままでどうにか声を絞り出す。
さすがに驚いたらしい。沖田はその視線を猛田から外し、初めて真司へと向ける。
さすがに驚いたらしい。沖田はその視線を猛田から外し、初めて真司へと向ける。
「俺もさ……言わなかったけど、ライダーバトルに乗ったことあるんだよ。ほんの数日だけだし、全然上手く行かなかったんだけどさ」
「騙していた告白ですか。信用できなくなっちゃうなァ」
「騙していた告白ですか。信用できなくなっちゃうなァ」
沖田はからかうような挑発的な口調だったが、真司は素直に胸が痛くなってしまう。
「……だよな。騙す気があったワケじゃないんだけど、それはごめん。ほんとごめん。
さっき言った結衣ちゃんがさ、死ぬってなってさ、なんにもわかんなくてさ。だったら難しいこと考えないで戦うしかないのかなって、そう思っちゃったんだ。
でも、ほんとなんにも上手く行かなくて。みんな、俺が戦いを止めようとしても戦うのをやめないのに、俺が戦おうとしたら誰も戦わなくてさ。なんなんだよって。
だけどさ、いまならわかるんだよ。本気で考えてないヤツが急に戦うなんて言っても、誰も乗り気になんかなってくれないんだって。言うことなんか聞いてくれねえんだって」
さっき言った結衣ちゃんがさ、死ぬってなってさ、なんにもわかんなくてさ。だったら難しいこと考えないで戦うしかないのかなって、そう思っちゃったんだ。
でも、ほんとなんにも上手く行かなくて。みんな、俺が戦いを止めようとしても戦うのをやめないのに、俺が戦おうとしたら誰も戦わなくてさ。なんなんだよって。
だけどさ、いまならわかるんだよ。本気で考えてないヤツが急に戦うなんて言っても、誰も乗り気になんかなってくれないんだって。言うことなんか聞いてくれねえんだって」
真司はゆっくりと立ち上がる。
ただ立ち上がるだけだというのに、身体の節々から軋むような音が聞こえてくる。
沖田をまっすぐに見据える真司の視界には、しかしながら沖田の痩躯は入っていなかった。
フラッシュバックするのは――あの日、死にゆくなかで、消えゆく意識のなかで、最期に目にした光景だ。
ただ立ち上がるだけだというのに、身体の節々から軋むような音が聞こえてくる。
沖田をまっすぐに見据える真司の視界には、しかしながら沖田の痩躯は入っていなかった。
フラッシュバックするのは――あの日、死にゆくなかで、消えゆく意識のなかで、最期に目にした光景だ。
「俺さ、そういうことってあると思うんだよ。
あっちゃいけないとはわかってるんだけど、ほんとはないほうがいいんだけど、でもさ、あると思うんだよ。
ミラーモンスターが人に襲い掛かるときもさ、みんな我先にと逃げるんだよ。
おじいちゃんとかおばあちゃんを突き飛ばしてでも、なんとか前に進もうとするしさ。お父さんとかお母さんが、子どもを置いて逃げちゃうんだよ。
間違ってるんだよ、そんなの。ほんとはあっちゃいけないことなんだよ。それを見るだけで悲しくなるんだよ。ほんとキツいんだ。でも、あるんだよ。
だけどさ、俺とか蓮がミラーモンスターを倒して、ミラーワールドから帰ってくるとさ、お父さんとかお母さんが泣きながら置いてった子どもを抱き締めてるんだよ。
それが……さ。なにがってそれがなんだよ。それが……それが。それが、なんだよ! それが正しいかどうかじゃなくて、それがなんだよ! それが――蓮が付き合うって言ってくれた夢なんだよ!」
あっちゃいけないとはわかってるんだけど、ほんとはないほうがいいんだけど、でもさ、あると思うんだよ。
ミラーモンスターが人に襲い掛かるときもさ、みんな我先にと逃げるんだよ。
おじいちゃんとかおばあちゃんを突き飛ばしてでも、なんとか前に進もうとするしさ。お父さんとかお母さんが、子どもを置いて逃げちゃうんだよ。
間違ってるんだよ、そんなの。ほんとはあっちゃいけないことなんだよ。それを見るだけで悲しくなるんだよ。ほんとキツいんだ。でも、あるんだよ。
だけどさ、俺とか蓮がミラーモンスターを倒して、ミラーワールドから帰ってくるとさ、お父さんとかお母さんが泣きながら置いてった子どもを抱き締めてるんだよ。
それが……さ。なにがってそれがなんだよ。それが……それが。それが、なんだよ! それが正しいかどうかじゃなくて、それがなんだよ! それが――蓮が付き合うって言ってくれた夢なんだよ!」
あのとき。
あのときだ。
あのとき、ようやくだ。
あのときだ。
あのとき、ようやくだ。
ずっと見てきた。
ずっと嫌だった。
ずっと悔しかった。
ずっと嫌だった。
ずっと悔しかった。
だから――
だから戦いを止めたかったんだ。
だから戦いを止めたかったんだ。
でも、そのことに気付いたのは。
答えらしいものが見つかったのは。
漠然とした目的が、はっきりとした夢に変わったのは。
叶えたい願いのために戦うライダーとして、胸張って言える願いに到達したのは。
答えらしいものが見つかったのは。
漠然とした目的が、はっきりとした夢に変わったのは。
叶えたい願いのために戦うライダーとして、胸張って言える願いに到達したのは。
あのときになって、ようやくなんだ。
だから――!
「だから、もう『どうして』じゃない。
俺が生き返ってるのも、俺が生き延びちゃったのも、もう『どうして』なんかじゃない!
アンタがそのつもりなら、俺は戦う。間違っている戦いを止めるために! 間違っている戦いの被害者を守るために! ライダーとして!」
俺が生き返ってるのも、俺が生き延びちゃったのも、もう『どうして』なんかじゃない!
アンタがそのつもりなら、俺は戦う。間違っている戦いを止めるために! 間違っている戦いの被害者を守るために! ライダーとして!」
懐からカードデッキを取り出したころには、真司の眼前に広がるのは過去の光景ではなくなっていた。
それでも負傷の影響か、痛みの影響か、視界はあまり明瞭ではない。少しボヤけた視界のなかで、目を見開いている沖田だけが妙に鮮明だ。
それでも負傷の影響か、痛みの影響か、視界はあまり明瞭ではない。少しボヤけた視界のなかで、目を見開いている沖田だけが妙に鮮明だ。
「…………へえ。犬っころを怖がるのに、壬生狼は恐れませんか」
おどけるように口元を緩めてから、沖田は「いや――」と続けて軽く頭を下げる。
再び頭を上げたときには、その表情から僅かに浮かべた笑みは消え、冷たい表情に戻っていた。
再び頭を上げたときには、その表情から僅かに浮かべた笑みは消え、冷たい表情に戻っていた。
「なるほど。見誤っていました。『誠』を心に秘めた大した剣士だ」
言って、沖田は刀の鍔に手をかける。
真司が狙うのは、日本刀が鞘から出た瞬間だ。
自身の鏡像が刀身に映し出されたと同時に、龍騎への変身を完了する他にない。
勝ち目どころか、戦いが成立する目が、他に存在しない。
だがカードデッキの説明はすでに済ませている。沖田のほうも理解していることだろう。
二人の間にたしかに張り詰めた空気が流れ、それを破ったのは沖田でも真司でもなく、炭治郎の一声であった。
真司が狙うのは、日本刀が鞘から出た瞬間だ。
自身の鏡像が刀身に映し出されたと同時に、龍騎への変身を完了する他にない。
勝ち目どころか、戦いが成立する目が、他に存在しない。
だがカードデッキの説明はすでに済ませている。沖田のほうも理解していることだろう。
二人の間にたしかに張り詰めた空気が流れ、それを破ったのは沖田でも真司でもなく、炭治郎の一声であった。
「そこまでにしてください、沖田さん! もう新選組の時代じゃないんですよ!」
炭治郎がなにを言っているのか、真司にはよくわからなかった。まるで本物の沖田総司に対してのような言葉だ。
たしかにこうして家に入る前に、炭治郎と沖田は二人でなにやら話をしてはいたが、まさかそのような可能性が――ありえるのだろうか。
困惑する真司を置いて、炭治郎は声音を落としてさらに続ける。
たしかにこうして家に入る前に、炭治郎と沖田は二人でなにやら話をしてはいたが、まさかそのような可能性が――ありえるのだろうか。
困惑する真司を置いて、炭治郎は声音を落としてさらに続ける。
「それに……さすがに」
視線を廊下のほうに泳がせての一言。
本格的に会話の意味がわからなくなってきた真司をよそに、沖田は苦々しい表情となる。
本格的に会話の意味がわからなくなってきた真司をよそに、沖田は苦々しい表情となる。
「機を逃しましたね」
猛田のほうを一瞥したのち、沖田は冷たく言い残してリビングから廊下に出て行く。
しばらくして玄関が開く音が響いたので、どうやら荷物も持たずに民家の敷地内から足を踏み出したらしい。
しばらくして玄関が開く音が響いたので、どうやら荷物も持たずに民家の敷地内から足を踏み出したらしい。
「私、沖田さんのほう見てくるよ。ごめんね、炭治郎くん。あとをよろしく」
椅子から立ち上がって、大きく伸びをしたのは立香だ。
最低限の荷物だけを持って、沖田を追いかけるように家を飛び出していく。
最低限の荷物だけを持って、沖田を追いかけるように家を飛び出していく。
「…………なんなんだよ、アイツは! ワッケわかんねえよ!」
いきなり急変した事態に、真司の頭はまったくついていけていない。
行き場のない感情を籠めて床を殴りつけようとすると、炭治郎が飛びかかってきて腕を掴んでくる。
行き場のない感情を籠めて床を殴りつけようとすると、炭治郎が飛びかかってきて腕を掴んでくる。
「いけません、城戸さん! あんまり怖がらせないでください!!
大きな音がしたり、怒声が響いたり、床が揺れたりするの、結構怖いんですよ!!」
「…………はあ!?」
大きな音がしたり、怒声が響いたり、床が揺れたりするの、結構怖いんですよ!!」
「…………はあ!?」
その行動もまた理解の範疇を超えており、真司は困惑する他にない――が、すぐに理解することになった。
程なくして、眠っていたはずの三人の少女がおそるおそるといった様子で、リビングを覗き込んできたのだ。
起こしてしまったのも、怯えさせてしまったのも、沖田と真司が立てた音によってなのは、あまりにも明白であった。
程なくして、眠っていたはずの三人の少女がおそるおそるといった様子で、リビングを覗き込んできたのだ。
起こしてしまったのも、怯えさせてしまったのも、沖田と真司が立てた音によってなのは、あまりにも明白であった。
| 前話 | お名前 | 次話 |
| 割れた星のTRIANGLE(後編) | 藤丸立香 | ファイナル本能寺・エピソード2(後編) |
| 中野三玖 | ||
| 若殿ミクニ | ||
| 猛田トシオ | ||
| 中野一花 | ||
| 竈門炭治郎 | ||
| 城戸真司 | ||
| 沖田総司 | ||
| 中野二乃 |