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Fate/Under Side - Ⅰ / 登場:ジントニックスノーボール



────英吉利、倫敦郊外。
三大魔術協会の一つ、時計塔を構成する四十を超える学生寮と百を超える学術棟のお膝元。
今日は生憎の空模様で、街を行き交う人々も少ない。先程まで雨だって降っていたのだから、猶更だ。

……そんな、静寂に包まれた街を歩く影が二つ。

「……本当に寒いな。使いを出すにしても、もう少し何とかならなかったのかね?」
「そう、ですね。此処までだと、冷たい空気が肌に刺さって……少し痛いです。
 大丈夫ですか、先輩? もし良ければ、マグの中にハーブティーが在りますけど……」
「ああ、悪い。貰うよ」

黒いジャケットを羽織った細身の男は、たった今渡っていた橋の縁に腰を下ろす。
それに倣い、春とは少し季節がズレた様な……かなりの厚着を纏う白髪の女も隣に座った。

女は小さめの鞄からマグを取り出し、カップに紅茶を注いで男へ差し出す。

「有難う。 ……うん、美味いな、文句なしに」
「なら良かったです。これはハワイ固有の、ママキというハーブのお茶なんですが……
 身体と精神の毒素を抜く効果があるんですよ。それ自体も、魔術的には二千年以上の歴史が在って――……って、ごめんなさい」
「謝らなくとも。 へえ、それは知らなかった。詳しいんだな、勉強したのか?」
「……ええ、まあ、はい」

"詳しくならなくてはいけなかった"なんて言葉を飲み込んで、女は曖昧に言葉を肯定する。
そして又、男も何かを察してか、それ以上話を続けることは無い。

――男の名はジントニック。
――女の名はスノーボール。

彼ら二人は同じ職場に勤める先輩後輩の関係で、
斯うして共に倫敦の街に繰り出したのも又、仕事の用事があったからだった。

ジントニックの手に握られたのは、紅い封蝋のされた一通の手紙。
これを然るべき場所に届ける。それが、今回の彼らに与えられた「任務」だ。

「……果て扨。リーダーから渡された『コレ』は、何の手紙なのかね」

ひらひらと光に翳し、中身が透けないのを確認すると少し残念そうにした。

「妙に気になるし、開けてみるか」
「……えっ、それは不味いんじゃ。封だってされてますし……」
「でも、開けるなとは言われてない。蝋だってただの蝋で、手の込んだ仕掛けもされてないみたいだ」
「へ? あぁ、本当ですね。
 い、いや、それでも開けていい訳じゃない気が……」
「いいさいいさ。責任は俺が負う」
「あっ、ちょっ――」

蝋の接着はそれほど強くなく、剥がそうと手を掛ければそれは簡単過ぎる程に開く。
中から出てきたのは、書簡箋が一枚だけ。他には何も無い。

「あっ……」
「これだけか。ただの便箋が一枚。
 ……問題は手紙の内容って所だが――」

取り出した書簡箋に目を通し……ジントニックは暫し硬直する。
目線を上から下へ、もう一度上から下へ。二度読み直し、それでも内容が変わる事は無い。

其処に綴られていたのは――

「ラブレターだな、これ」
「…………………………はい?」



Fate/Under Side - Ⅱ


 ◆追記予定◆

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最終更新:2020年04月02日 06:47