キキキ、でたぞ、でたぞ、冬の主がもどってくるぞ
そうだ、冬の霊がもどってくるぞ、ニンゲンどもはこういうのをオボンというのか?

祝おう祝おう 


季節は冬…

世界樹も白くもこもことした様相を取るほどに今年もよく雪が降る中、寒い知らせが王都に届いた。北方の砦から提示連絡がいつまで経っても来ないのである。

早速王都から斥候が使わされたものの、この寒い中の遠征には彼らも嫌々ながらだった。
「うー寒い・・・どうせ提示連絡が来ないのはこの雪で動けてないんだろ。」
防寒装備はしてるもののやはり雪の大気の冷たさは顔を冷やす。この二人は先程まで暖炉のある兵舎にいたのだから愚痴が出るのも無理は無い。
「全くだな・・・。」
もう一人は喋る気すらも起こらない。
最初こそ互いに愚痴りあって寒さを紛らわしていたものの、次第に無言になっていった。
北方砦への街道は整備されているものの、雪が積もっていては馬も使えないので、砦へは途中の駐屯地を経て5日を費やした。


「あれは何だ?」
砦に誰もいない事に気づく前に、目の前で遊んでいる子鬼に対し条件反射するかのように斥候の一人が漏らす
「あいつは…フロストリングだな。でも1匹は見たこと無い奴だな」

冬にしか現れない民族、それがフロストリングであった。体が青く、悪魔のような三角でやや大きい耳を持つゴブリンに似たようなものである。体躯も人間の子供と同じくらいだが、1匹だけは仮面をつけており、体も大人と同じくらい大きい…


「モッカ!モッカ!」
一匹のフロストリングが声を上げる。どうやら奴はモッカというらしい・・・
モッカは雪の上に座り込んで遊んでいた。片手には棒人形、もう一方の手には雪の塊で作った獣を持っていた。
彼は唸り声を出したり、武器の音を真似たりしながら戦争ごっこをしているようである

「どうやらこいつが砦の者を追い出したのか、或いは…」
「あまり信じたくはないが…奴は所詮子鬼だ。ちゃんと武装もしてある、一太刀で決めよう」

二人の斥候が武器を抜いて近づいた。モッカの杖は地面に置かれていたが、それを掴むために遊びを中断する気はなかった。そのかわり、モッカは近い方の斥候に向かって棒人形を掲げた。
「は?今更棒人形くれたところで許しはしないぞ?」
斥候は軽く笑って気にも留めずに剣を振り上げたその瞬間、モッカは棒人形を2つに折った

鈍い音が斥候から生じるのを、もう一人は聞いてしまった…。
棒人形と同じように、彼の体が真っ二つに折れていたのである。そのまま最後には頭が鈍い音を立てて踵にぶつかった

「あ…あ、ああああ…」
もう一人の斥候は怯えて後退りした。
モッカは雪の獣を優しく揺すった。斥候は自分の背後で雪が持ち上がる音を聞いた
「ま、まさか砦の者はこれ」
全てを言い終える前に斥候は雪に食われてしまった

モッカは棒人形を失ってしまったが、新しいおもちゃを手に入れました。今度のおもちゃはなんと声が出ます。




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最終更新:2012年07月09日 03:14