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いつか天魔の黒ウサギ

ほんの少しのネタバレを含みますよ

概要

…もはや、多く語る必要は無いだろう。
不死身書房のあの大御所、鏡貴也大先生の伝勇伝に次ぐ代表作。(エル・ウィンが泣いている)
《最古の魔術師》サイトヒメアにかけられた《毒》により、15分間に7回死ななければ死なない体になった《犠者》鉄大兎、通称不死身君の物語である。
あらすじ等で使用される呼称は「学園リバースファンタジー」…どの辺がリバースなのかはよく分からないが、学園というのはギリギリ理解出来る。
どちらかと言うとシリアスなバトルものなのだが、読後感は重くない。
これは貴也大先生の「娯楽なんだから楽しく読めないと」という信念の下、シリアスシーンとギャグシーンのバランスが調整されている為である。
随所に大御所の技が光る作品だ。

そのためもあってか、目を見張る急展開が多いというのが「いつ天」(および貴也作品)の特徴と言えるだろう。
「全く話進まねぇえええええええ!」と思いながら20ページほど生徒会室での掛け合いが続いたかと思ったら、次のページで重大なネタばらしがあったり。
今まであると信じてきたものが、実は全て幻だったり……。
伝勇伝からも例を挙げるとしたら、戦場(後方)で仲間と漫才してたと思ったら、突然主人公の腕が吹き飛んだりする。
物語の緩急がこれでもか!と付けられているので飽きずに読む事が出来るのだ…と、思う。

語彙を極力削った文体は、多くの人の目に新鮮に映るだろう。
英語の教科書をそのまま和訳した時より平易な日本語で書かれていると思っていい。
たとえば登場人物が何かを喋る時、「~と、言った。」という表現は極力避けるのが一般的だ。
何かを喋るにしても、そこには様々な言い方というものがある。
「~と、言った。」だけでは、そのような細かい部分が伝わらないからだ。
しかし、貴也大先生は違う。「~と、言った。」「~と、うめく。」基本的にはこの2つしか出てこない。
「貧相な語彙だ…」と馬鹿にするのは間違っている。彼は、敢えて語彙を削っているのだ。
女神転生シリーズのシナリオを書いた某氏が、とある雑誌のインタビューでこう答えている。
「より広い年齢層の方に楽しんでもらうために敢えてシンプルな表現を選んで書いていた。しかし「稚拙な文章」という評価が多く、途中からその書き方を変えざるを得なかった。」と。
貴也大先生もそうなのだ。「より広い年齢層に楽しんで貰うために」…いつ天の文体には、彼のエンターテイナー性が強く表れている。
また、読んでみると分かる事だが、細部が描写されない事で、「想像で補って読む」というラノベの楽しみ方としては正しさ20000%な方向に特化している事が分かる。
簡単な事ではない。これは、それだけキャラが立っていないと出来ない上級テクニックなのだ。

登場人物が比較的少ないのも、魅力のひとつだろう。
10巻の時点で主要な登場人物は10人。(あまり出番の無いハーフエルフの兄弟を除けば8人)
多作品と比べると少なさが分かるだろう。
この少なさで、しかし物語に飽きがこない。
新刊を出すたびに新キャラが出てくるような作品とは違う。

特徴的な舞台設定も大きな魅力だ。
読んだ時の驚きを大切にしてほしいので詳しくは話せないが…貴也大先生は、「ヴァンパイアに手を出せる実力」を持っているとだけ言っておけばよいだろうか。




作品紹介


  • 素晴らしい記事だ -- 信者A (2012-09-28 02:06:04)
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最終更新:2012年09月28日 02:06