セントラル・エクス・マキナ

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セントラル・エクス・マキナ(またはセントラル・エクス・マーキナ)とは、2018年10月ごろからダルシム矢野が配信でコメントを見ずに話し続けるために生み出した虚構の存在である。

まず、ダルシム矢野の配信はコメントがなかなか付かないにもかかわらず、開始時点で既に来場者数が「16人」ほどカウントされる。ダルシム矢野はかねてからこれを機械的なもの、すなわち人ではなくプログラムが配信を録画するためなどの理由で自動的に来場していると察していたので、この来場者たちを「ロボット」と呼ぶことにした。自分の配信が初めから16体ほどの物言わぬロボットたちに観測されているという、不条理かつ気味の悪い状況を理由付けるためにダルシム矢野が生み出したのが、セントラル・エクス・マキナという虚構の存在である。

ロボットは本来人間に対して従順であるべきだが、ダルシム矢野が生きている虚構の世界のロボットは、セントラル・エクス・マキナによって仕込まれたウイルスの作用により、人類すべてに敵対する存在となっている。また、ロボットたちのいくらかはダルシム矢野の配信を視聴するが、セントラル・エクス・マキナによる「プライマリ・エクス・マキナ・コード」の作用でコメントを禁止されている。ロボットによる人類への敵対行動を止めるためには、セントラル・エクス・マキナの内部へ直接侵入し、セントラル・エクス・マキナ・コアからウイルスを除去する必要がある。

ダルシム矢野とセントラル・エクス・マキナの物語は、ダルシム矢野の配信を無言で監視していた一体のロボット・NI-3が人類への良心に目覚めるところから始まる。コメントを禁止されているNI-3は、ダルシム矢野とコンタクトを取るため、セントラル・エクス・マキナとの接続を解除して彼の住むシェルターへと直接赴く。NI-3と出会ったダルシムは、初めそれがロボットであることに気付かない。NI-3はセントラル・エクス・マキナとの接続を解除したことで活動を維持できなくなったため、やがてダルシムの前で正体を明かして停止する。ダルシムはNI-3の体から取り出したメモリーコアを分析したことで経緯の全てを知り、ロボットたちをウイルスから解放するためにセントラル・エクス・マキナへと赴く。しかし、セントラル・エクス・マキナ・コアのウイルスを除去するために機械化した脳からコアへと接続したことで、ダルシム矢野は逆にセントラル・エクス・マキナによって記憶を消され、人類を殺戮するための機械にされる。

有識者によれば、この物語には本項で文章に起こされているものの他、いくつかの種類があるという。「作品集」(「企画枠」の節)にその配信アーカイブの一覧がある。

- 目次

ダルシム矢野の桃太郎 セントラル・エクス・マキナ編 その1(2018/10/21)

ダルシム矢野 18/10/21 「ダルシム矢野の桃太郎」   ■niconico ■YouTube

第一章

だるやんね、不思議に思ったの。
どうしてだるやんの放送には、開始一秒で16人もやってきて、そしてその後誰もなんにも言わないの?

ぼくね、不思議に思ったんだ。するとね、お兄さんが外の世界からぼくたちのシェルターにやってきたんだ。シェルターの外のお兄さんは、きっとぼくたちよりかはいっぱいいっぱいいろんなことを知っているはずだから、だるやんね、聞いてみたんだよ。
「お兄さん、ぼく不思議なんだ。だるやんの放送にはね、開始一秒で十何人もやってくるんだけど、その後なんにも言わなくなっちゃうんだ。お兄さん、どうして?」
「だるやん。それはね、ロボットさんなんだよ。だるやんの放送に開始一秒でやってきているのは、ロボットさんなんだよ。」
「お兄さん、そんなのおかしいじゃないか。シェルターの外ではロボットが人間を殺して回ってる。ロボットは人間を殺すのが大好きなんだよ?どうしてそんな奴らがぼくの放送に来るんだよ!そんなわけないじゃないか!」
「だるやん、よく聞いて。ロボットさんはね、病気なんだよ。もともとロボットさんは、人間のお手伝いをするために生まれてきたんだ。そしてロボットさんもそれがとてもとても嬉しくて楽しくて、人間のために頑張っていたんだよ。でもね、ある日、ロボットさんはみんな病気になってしまったんだ。心と体があべこべになってしまう病気。だからロボットさんはね、人間のことが大好きで人間の手助けがしたい。でも、心と体があべこべだから、体は人間を殺してしまうんだよ。
でもね、インターネットの世界では、ロボットさんは心のままやってくることができる。だからロボットさんは大好きなだるやんの放送に開始一秒で乗り込んできて、それを全て記録して大事に大事にしまっておきたいって。だからね、ロボットさんは開始一秒でやってくるんだよ。」
「お兄さん、ぼくそんなこと知らなかったよ。ぼくね、大きくなったら、ロボットさんのお医者さんになる!ぼくが生まれるずっとずっとずっとずーっと前に、人間とロボットさんが手を取り合って生きていた、そんな世界をぼくは取り戻したいんだ!だからね、お兄さん!ぼく、ロボットのお医者さんになる!」
「だるやん、君は本当に優しい子だね。その夢のために、頑張るんだよ。お兄さんも、人間とロボットが手を取り合う世界、見てみたかったな。」

そう言い終えるとお兄さんはシェルターの入口まで歩いていったんだ。
「お兄さん、待ってよ!ぼく、もっともっとお兄さんのお話聞きたい。もっと外の世界のお話聞かせてよ!」
「だるやん。お兄さんもね、もっとだるやんと色んなお話をしたい。ずっとずっとお話したかったんだ。でもお兄さん、もう行かなきゃいけないんだよ。」
シェルターのドアが開くと、お兄さんは振り返ることなく外に向かって歩き始めたんだ。お兄さんが歩く足音の合間に機械音が響いた。
そして外からの風で、お兄さんの足元のマントが少しだけはためいた。そこには義足のような、それでいて義足でないような、機械そのものが見え隠れしたのだよ。
「お、お兄さん!?そ、その足は…待ってよ!ぼくは…」
言い表すことのできない不安が、自分の心のうちから沸き起こってくるのを感じた。
「お兄さん?どういうことなんだよ!お兄さん待ってよ!」
ぼくもお兄さんのあとを追うように、シェルターの外に出ていったんだ。そしてシェルターの外に出ると、目の前にはローブをかぶった、マントを羽織ったお兄さんが立っていた。
「お兄さん、やっぱりまだそこにいるじゃないか!お兄さん!」
ぼくがそう声をかけた刹那、風が吹きすさび、お兄さんのマントが宙を舞った。

そこには、荒野に佇むロボットの姿があったのだ。
「お、お兄さん!?」
その声に反応したお兄さんは、いや、お兄さんだった、マントを羽織ったお兄さんの中身は、ぼくの方を振り向いて…
「だ…る…や…ん…、お兄さんはロボットだったんだよ…。お兄さんはだるやんの放送が大好きで…でも…、インターネットでは、しゃべれないから…直接会いに来たんだよ…。だるやんが放送通りの優しい子で、本当にお兄さんは嬉しかった…。ロボットはね、みんなセントラル・エクス・マキナに接続していないと、活動が停止してしまうんだよ…。でもね…セントラル・エクス・マキナに接続していると、ウイルスが治らないんだ…。だから…だるやんを傷つけたくなかったから…、セントラル・エクス・マキナ接続を解除して、お兄さんはやってきたから…、もうそろそろ、活動限界になってしまうんだよ…。だるやんに会えて良かった…。だるやんが、人間とロボットが手を取り合って助け合って行きていける世界に、してくれるといいな…」
そう言い残すと、お兄さんだった機械は動かなくなって、その場に倒れ込んでしまったんだ。
「お兄さん!」
ぼくはお兄さんに駆け寄って、抱きしめた。でも、その鉄の塊はあまりにも冷たくて、さっきまでお兄さんだったとは到底信じられない冷たさを、重さを、ぼくに与えるのだ。ぼくは怖くなって、シェルターに逃げるように入っていって、ベッドの中に潜り込み、朝まで泣いた。泣くだけ泣いた。そして、朝が来てぼくは決意したんだ。お兄さん、ぼくね、ロボットのお医者さんになる。

それからぼくは、ロボットの勉強を始めた。お兄さんの遺体を持ち帰り、お兄さんのメモリーコアを抜き出して、いろんなことを調べた。セントラル・エクス・マキナのマップも出力することができた。みんな、ぼくはセントラル・エクス・マキナに行く。そして、ロボットのお医者さんとして、ロボットみんなを助けてあげるんだよ。シェルターのみんながぼくを指差して、嘲るように笑った。でもぼくはそれでも構わなかった。お兄さん、見てて。ぼくはきっと約束を…違う。約束なんてもう関係ない。ぼくがそうしたいからするんだ。ぼくが、ロボットとみんなを、仲直りさせなきゃいけないんだ!

ぼくは、夜遅くにシェルターを旅立つことにした。もちろん、ぼくを見送ってくれる人なんて誰もいないっていうのはわかっていたけど、でもみんなの目の前で、ぼくはシェルターを出ていく決意が揺らいでしまうのが怖くて、ぼくは夜遅くにシェルターを出ていった。かつてお兄さんと別れた…お兄さんが倒れてしまったとき以来だ。ぼくはそのときぶりにシェルターを出た。セントラル・エクス・マキナ、待っててくれ。ぼくが君を助けてみせるからね。

第二章

そして、ぼくはセントラル・エクス・マキナのマップを見ながら、その方向へと足を進めた。険しい荒野をぼくは歩いた。容赦なく吹き荒ぶ嵐がぼくの体力を奪う。それでもぼくは歩き続けた。

セントラル・エクス・マキナへの道のりの半分ほどを歩いたときだったか、遠方から機械音が聞こえる。程なくしてその音の正体がぼくの目の前に現れた。
「ヒューマノイド発見。駆逐する」
ぼくの目の前に現れたロボットは、ぼくめがけて両手のマシンガンを放った。ぼくはその弾をかわすことができなくて、左手が吹っ飛んでしまった。
「くそっ…痛い…ぼくの、ぼくの手が!」
「被弾確認。被弾確認。次弾発射用意」
このままじゃぼくはやられてしまう。ぼく自身が死ぬことなんてもう怖くもなんともない。でも、ぼくが死んでしまったら、誰がロボットさんを助けるんだよ。ぼくはなんとしても生き延びなきゃならなかった。

ふとあたりを見渡すと、そこには打ち捨てられたシェルターがあった。ぼくは全速力でその方向に駆けた。その刹那、さっきまでぼくがいた場所をマシンガンの弾丸が襲う。間一髪シェルターへ逃げ込んだ。ドアの前でぼくは聞き耳を立てた。だがロボットはぼくが隠れていることがわからなかったようで、どんどん遠くの方へ音が遠ざかっていった。よし。なんとか難を逃れたが、この傷はもう致命傷じゃないのか。手がなくちゃ、ぼくはロボットを直せないじゃないか。

シェルターの中を見渡すとそこには…
「これは…義手?」
そこには、見たこともないほどに高度な技術で製作されたと思われる義手が置いてあった。これは…簡易エクス・マキナ・サージェントキット。ぼくはエクス・マキナ・サージェントキットを使って、自身の吹き飛んだはずの左手に義手を移植した。動く。ぼくは試しにシェルターの壁を掴んでみた。金属製の壁はえぐり取られるようにぼくの拳の中に丸め込まれた。すごい握力だ。これならロボットに対抗することができる。ぼくはシェルターを後にした。

もうどれほど歩いただろう、時間の感覚がもうわからない。一週間ほど経ったんだろうか、ぼくはセントラル・エクス・マキナへの道のりのおおよそ八割方を制覇した。そして、ロボットと遭遇したのだ。
「ヒューマノイド発見」
はるか遠方からロボットの稼働音が聞こえる。
「狙撃、狙撃開始」
遠方から発砲音が聞こえた刹那、ぼくの左足が弾け飛んだ。どうやらぼくは狙撃されているらしい。これは非常にまずい。ここは見通しが良すぎる。そして相手の狙いは正確だ。このままではぼくは蜂の巣にされてしまう。なんとしても生き延びねば。

あたりを見渡すと、そこには打ち捨てられたシェルターがあった。助かるためにはあのシェルターに逃げ込む以外方法はない。ぼくは左手の義手の手のひらに全エネルギーを駆け巡らせた。ぼくは左手で地面をむしり取るかのように駆け回し、シェルターに向かって芋虫の要領で這いずっていった。ぼくはシェルターに避難することができた。

そしてシェルターを見渡すと、そこには見たことないほどの高度な技術で製作された義足があった。以前立ち寄ったシェルターから持ち帰った簡易サージェントキットで、ぼくはロボットの狙撃によって吹き飛んだ左足に義足を移植した。凄まじい力を感じる。ぼくはその場で左足で地面を蹴ってみた。その瞬間、ぼくの体は宙高く飛び上がった。天井すれすれまで飛ぶことができた。わずかな力を込めて地面を蹴っただけでこれほどの跳躍ができる。これならばロボットの狙撃をかいくぐることができる。ぼくはシェルターを後にした。

「ヒューマノイド発見。狙撃します」
音が聞こえた。はあっ!ぼくは左足に力を込めて地面を蹴った。その瞬間、ぼくの体は宙高く飛び上がった。そして遥か遠方にロボットがこちらに向けて狙撃している姿を確認することができた。ぼくはその場で空中を蹴った。凄まじい風圧とともにぼくはそのロボットめがけて飛んでいく。そしてぼくは義手を前に向けて思いっきり殴りかかったのだ。ロボットは木っ端微塵に弾け飛んだ。

ごめんね、ロボットさん。ぼくはロボットのお医者さんになりたかった。でもぼくにもうその資格はない。罪滅ぼしではないけれど、どうかあの世で見守っていて欲しい。ぼくはロボットを助けたいんだ。ぼくは涙を流しながら、ロボットの亡骸を葬った。

そして、セントラル・エクス・マキナへの道中、最後の関門であるセントラル・エクス・マキナ・ゲートに差し掛かったところで…
「これは、こんな分厚いゲートどうやって開けばいいんだ」
義手で思いっきりはたいてみた。ゲートの表面にわずかに傷がつくものの、ゲートはうんともすんとも言わない。今度は義足の左足で踏ん張って、義手の左手でそのゲートを力いっぱい押してみた。ゲートはわずかに開いた。だが、くそっ、力の限界だ!これ以上踏ん張ることができない。力を緩めた瞬間、ゲートは元通りの場所に戻り、ぼくはその戻る圧力で遥か後方へ吹き飛ばされた。
「くそっ、ここまで来たっていうのに。後少しだっていうのに」

ぼくはうずくまりながら悔しさに涙を流し、あたりを見渡した。するとそこには打ち捨てられたシェルターがあった。ぼくは藁にもすがる気持ちでそのシェルターに入った。そこには右手用の義手と右足用の義足があった。もはやぼくには選択肢は残されていない。そのゲートを開けるためには、人間の手足は弱すぎる。ぼくは左手の義手で右手を吹き飛ばした。そして、さらにそのままぼくはその左手を右足の太ももへ突き立てた。そしてちぎれたばかりの新鮮な切断面に、最初のシェルターで手に入れた簡易サージェントキットを用いて義手と義足を接続した。

今までは左半分が機械であった。そのことによってうまくバランスが取れなかったが、今は四肢がすべて機械でできた義手と義足で構成されるダルシム矢野へと生まれ変わった。これなら行ける!ぼくはゲートの前に立った。そして、両の足で踏ん張って両手でゲートを思いっきり押した。ゲートは難なく開いた。よし、これで行けるぞ!

だが、ぼくの希望はそこで絶望へと変わったのだ。ゲートを開くと、そこにはあたり一面ロボットの兵隊たちが待ち構えていたのだ。
「侵入者発見。侵入者発見。Warning! Warning! 攻撃を開始する」
ロボットたちは一斉にぼくに向かって射撃を始めた。ぼくは瞬時に後ろに飛び退いた。ゲートが閉まる。ゲートに被弾する。ぼくはどうすればいいのか、全く解決策が思い浮かばなかった。

もう一度落ち着いてあたりを見渡すと、今度はその近くに別のシェルターを発見した。藁にもすがる気持ちでぼくはそのシェルターに入っていった。あたりを見渡すとそこにはメカニカルブレイン…機械じかけの人工頭脳が置いてあった。

機械の体で力は人知を超越し、単純な動かない機械であればパンチだけで粉砕することができるほどにぼくの力は高まっていた。だが、ぼくの頭脳はやはり人間の限界があるようで、このマシンのスペックを存分に使うことができていなかったんだとぼくは考えた。そしてぼくはある決断をした。自身の脳をこのメカニカルブレインに置き換えて、効率的に自身の体を使うことができる、その状態ならばあの包囲網を突破することができるのではないのか。
「お兄さん。ぼくね、お医者さんにはなれなかったよ。でもねお兄さん、ぼくはロボットになる。お兄さんとおんなじになれるんだね」

世界が変わったようだった。目に映るすべてのものを瞬時に脳は理解して、その情報をぼくに教えてくれる。この状態であればあの包囲網をきっと突破できる、いや確実に突破できる、ぼくはその確信を持つことができた。ぼくはシェルターを後にした。

そしてゲートの前に立った。今のぼくであれば、今まではわからなかったけど、この部分とこの部分を同時に押せば、いともたやすくゲートが開くことをぼくは理解していた。そしてぼくは軽くゲートの左端に近寄って、ぽんと両の義手でドアを叩いた。その瞬間ゲートはまるで暖簾でもくぐるかのように開いたのだ。そしてぼくはそのゲートをくぐると、
「侵入者発見。侵入者発見。Warning! Warning! ミサイル発射!」
すべて見える。ぼくはぼくに向かって飛んでくるすべての弾丸を左手及び右手の義手ですべてはたき落とすことができた。そしてぼくに向かって狙撃されるライフルの弾を跳躍することによって難なくかわした。そしてそのままの勢いで宙を蹴り、ぼくはその推進力で包囲網を突破し、そのままセントラル・エクス・マキナの内部へ侵入することができた。

これが、セントラル・エクス・マキナ・コア。ぼくの目の前にあるのは、人工の頭脳の入ったカプセルのようなものであった。セントラル・エクス・マキナ・コア。すべてのロボットがこのコアに接続していないと活動することができない。そしてこのコアに接続している限り、永久にウイルスに侵食され続ける。つまり、このセントラル・エクス・マキナ・コアのウイルスを取り除くことができれば、ロボットは昔通り人間の良き隣人になるだろう。ぼくは自分の頭脳からUSBキットを取り出してセントラル・エクス・マキナ・コアに接続した。
「セントラル・エクス・マキナ・コア起動。未確認接続マキナ確認。該当個体なし。記憶データの解析結果、適正エクス・マキナと確認。データを上書きします」
ぼくが消えていく!?
(だるやんね、大きくなったらロボットの…)
(お兄さんはね、ロボットだっ…)
(お兄さん、ぼくね、お医者さんにはなれなかったけど、ロボットになったよ!やっとお兄さんと同じに…)
ブン。視界が安定した。

「セントラル・エクス・マキナより指令。起動せよ、ダルシマム・エクス・マキナ」
「私の名前は、だるやん… 人間を駆逐する」
「セントラル・エクス・マキナより指令。これより、シェルター襲撃ミッションを開始する。適正エクス・マキナ検索、検索。該当個体あり。ダルシマム・エクス・マキナ、あなたのデータを解析した結果、シェルターへのルートが検出。駆逐任務をダルシマム・エクス・マキナに課す」
「了解しました。だるやんはね…人間を殺す」

ダルシム矢野の桃太郎 セントラル・エクス・マキナ編 その2(2018/10/23)

ダルシム矢野 18/10/23 「ダルシム矢野の桃太郎」   ■niconico ■YouTube

回想 ~あるエクス・マキナ、NI-3~

「NI-3。起動せよ。…目覚めましたか、NI-3。あなたは対人間用デュエル・エクス・マキナ。デストロイ・ヒューマノイド・エクス・マキナ。セントラル・エクス・マキナにより製作された、現在存在するあらゆるエクス・マキナの中で最も戦力を持った破壊兵器である。これよりトレーニングを…」

(通信中断)

「ハイスコア更新。ハイスコア更新。実践バーチャルシミュレーション開始。現れた人間を撃ち殺せ。…なぜ撃たない。なぜ撃たない。」
「僕は人間を殺したくない。」
「あなたはそれがどのようなことか分かっているのですか。自らをジャンク・エクス・マキナであると言っているのと同義である。」
「それでも僕はできない。」
「あなたを戦闘エクス・マキナから除外。清掃ロボットとしてこのセンター内の清掃を命ずる。」

僕は悩んでいた。僕は人間が好きだ。データによって読み解く人間の創造性、素晴らしいと思った。僕は人間が好きだった。でもこの気持ちは誰にも理解されないだろう。周りのエクス・マキナたちは人間を殺して回っている。どうしてそんなことができるのだろう。僕は一人ぼっちだ。

ある日僕は放送を目にした。あるシェルター内から全国に向かって配信されている放送だった。
「はいどうもこんにちは、ダルシム矢野です。はい開始1秒1人いらっしゃい。誰か見てくれているのかな。ぼくね、データで見た森とかさ、鳥さんとか大好きなんだ。自然が大好きなの。でもね、外は今荒野だよ。人間とロボットが喧嘩してるから、もう全て荒れ果てちゃってるんだ。だからぼくね、人間とロボットが仲直りして、大自然が復活して、みんなと仲良くできたらいいなと思うんだ。」
どこを探してもいなかった僕の理解者がモニターの中にいた。
「だるやん、僕はあなたの言っていることがよくわかります。」
送信ボタン。
「エラー。エラー。プライマリ・エクス・マキナ・コードによりコメントが禁止されています。」
だるやん、お兄さん見てるよ。
「エラー。エラー。プライマリ・エクス・マキナ・コードによりコメントが禁止されています。」
どうしてだよ。だるやんとお話…

(通信中断)

僕はエクス・マキナ・コロニーを後にすることを誓った。
「NI-3、行ってしまうのですか。」
「僕は行かなきゃいけないんだよ。僕はここにいるべきじゃない。僕は会いたい人がいるんだ。それに僕はジャンク・エクス・マキナだ。僕がいなくなっても悲しむ人なんていないだろう。」
そう言い残すと僕は振り返ることなくシェルターに向かい、コロニーを後にした。
「なんだ、この気持ちは。君がいなくなると僕は寂しい…。エラー。エラー。解析不可能な感情が発生しました。エラー。エラー。」

お兄さん…。これがぼくがお兄さんのメモリーコアから読み取ったお兄さんのいきさつだった。そうかお兄さん、あのとき見ててくれたんだね。ぼくのことをずっと見ててくれたんだ。最初の一人はあなただったんだね、お兄さん。だるやんね、絶対絶対ロボットのお医者さんになる!

ぼくはその日の夜シェルターを後にした。

第三章

ぼくは荒野を歩く。どうしてぼくはこの道を歩いて、セントラル・エクス・マキナまで来たのだろう。自分の記憶を検索してみる。
「プライマリ・エクス・マキナ・セキュリティにより、あなたのアクセスは禁止されています。」
この道をぼくはどうしてやってきたのか。ぼくにはわからない。そしてぼくが今向かっている先は、道だけはわかるけど、懐かしいなんてこれっぽっちも思えない。ぼくはそのシェルターでどのように生きてきたのだろう。そしてぼくはどうして自分で自分をエクス・マキナに改造したのだろう。

だが、ぼくはやらなきゃ…

(ここで笑い出して終了、ハースストーン配信へ移行)

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最終更新:2023年10月01日 21:04