レヌリア帝国近代史 第1話

 レヌリア帝国にはいくつもの小国が属する大国である。

 その小国の一つにかつてライザール王国と呼ばれた国があった。近年の錬金術の研究に使われて始めているいる鉱石『マナ』の採掘が盛んに行われている国だった。

 ライザールは古い時代からドワーフ族と共存共益の関係にあり、互いの技術を摺り合わせて、他国にはない独自の採掘方を取り入れていた。

 しかし約25年ほど前、この国にとって大きな転機が訪れる。

 本格的に錬金術の研究を始めたレヌリア帝国が、ライザールに対して更なるマナの供給を求めたのだ。

 いかなる国にも肩入れしない中立の関係を取ることによって、小国ながらも常に一定の立場を守ってきたライザールはその要求に対して反対の姿勢を取る。

 次第にライザールとレヌリアの関係は悪化。レヌリアにとっては貴重な地下資源であるマナを確保するためついに強硬手段に出る。

 宣戦布告。

 レヌリアは大国としての強大な国力を背景に、ライザールに侵攻。ライザールは周辺国に助けを求めたが、助けは一兵たりとも来なかった。

 大国であるレヌリアに敵対したとすればどうなるか分からない。明日の我が身だ。極めつけはレヌリアが交わした密約があった。

 その密約の内容とは、マナの採掘利権を分け合うこと。自分の身が大切な役人達がそれに食い付かないはずがない。

 なにもしなくても得が出来るのだ。ライザールを助けるメリットなど存在しなかった。

 そのような状況でライザールはレヌリアの圧倒的戦力差を前に、宣戦布告から僅か三日で陥落支配される。

 後にこの戦争は、三日間という期間とその時に出ていた月が三日月だったことに準えて『赤の三日月戦争』と呼ばれることになる。

 レヌリアにとっては輝かしい歴史の1ページとして、ライザールにとっては忌々しい歴史の1ページとして深く刻まれることになった。

 戦争終結後レヌリアは、ライザールから採掘技術の提供とマナの一定量の供給を条件に自治を認めた。

 その後、レヌリアは君主制を廃止。王族達はその地位を執政官として引き続き統治することを許された。

 だがその実態はただの肩書きであり、実権はレヌリアが握ったままでいた。

 戦争から約20年後の同じ日、この国にまた大きな転機が訪れることになる。

 街に残る戦争の傷跡は消えて戦争を知らない子供達が大人になり、属国としての立場で落ち着いてきた矢先にその事件は起きた。

 ドワーフ族を中心とした技術集団『クラフター』が、採掘現場を視察に来たレヌリアの要人を人質に取り、レヌリアの関連施設を次々に襲撃したのだ。

 彼らはレヌリアに対して独立を要求。受け入れられなければ更なる襲撃の準備があるとした。

 その事態にレヌリアも素早く動いた。帝国が誇る最強の特殊部隊『インペリアルガード』を動かし、旧王族を処刑。街にその死体を吊して大衆に晒した。

 クラフターはかつて戦争を目の当たりにした子供達が中心となって構成されていた。

 それ故に王族に対して特別な思いを抱いていた彼らの士気は急激に低下。彼らの独立を夢見た反乱は僅か三日で鎮圧された。

 赤の三日月戦争と同じ日、同じ期間での出来事だっため『赤の三日月戦争』に準えて『青の三日月事件』とされ、また新たな歴史が刻まれることとなった。

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最終更新:2011年07月20日 08:56
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