港町ヴァッサー

レヌリア帝国の首都から西に存在する港町『ヴァッサー』
古くから交易の要所として栄えている、レヌリア帝国の海の玄関口である。
その海の交通の要所としての価値の高さからか、町の近くの湾に浮かぶ島には堅牢な砦と大砲があり
町自体も半ば要塞と化している。

「全体整列!」
町に駐屯する兵士達の詰め所からは今日も朝早くから上官の大声が響く。
これから彼等は町の見回りを開始するのだ。
何故なら、交通の要所であるこの町には多くの者が集まる。
その集まる者の中には闇商人や犯罪者等も含まれるため、ヴァッサーの兵士達は
毎日のように見回りをし、治安の維持活動を行っているのだ。

「では貴様達はB地区の見回りをしてこい」
町の中心地に到着した兵士達は、あらかじめ決められた地区へ見回りのために散らばって行く。
そのあらかじめ決められた地区にはAからFまでの文字が、軍の使用している町の地図に書かれていて
Aは貴族達が住む場所、Bは店や酒場等が存在する場所、Cは兵士の詰め所にもっとも近い場所
Dは一般人が住む家が多い場所、Eは貧民街と呼ばれる場所、Fは港と区別されている。
その中でBとEは犯罪者等が多く集まる場所として見回る兵士達の数も非常に多い。

「兵士の皆さん!今日はシーサーペント(海竜の一種)の鱗から作られた鎧が入ってますよ!」
B地区に入った途端、商人の威勢のいい声があちこちから聞こえてくる。
「サーペントの鎧か、珍しい物が入ったもんだな」
兵士の一人がふとそうこぼす。
「へぇ、ハンターの連中がたまたま見つけたらしく」
ハンターとは、モンスターを討伐しその体の素材を持ち帰り商人に売る事を生業とする職である。
「そいつは運がいい事だな」
「ですから、この鎧はどうですか?兵士の皆さん」
「悪いが俺達下っ端の兵士に、海竜の鱗を使った鎧は逆立ちしても買えないぜ」
兵士の一人が笑いながら商人に言う。
「もっと手ごろな物が入荷できたら教えてくれよ。
 特に酒とかは大歓迎だぜ」
それから彼等は、朝早くとはいえもう賑わいを見せているB地区の通りを歩きながら
酒場が固まる場所を目指す。

酒場『レーヌ』
この町には有名な酒場が幾つか存在するが、その中で一番有名なのはレーヌと呼ばれる酒場である。
朝でも夜でも深夜でも賑わいが尽きることのないその酒場には多くの者達が訪れる。
そして、同時に喧嘩や殺傷沙汰も多く起きる場所である。
「なにか問題は起きてないか?」
「いえ、最近は起きてないですね」
従業員の男が兵士にそう答える。
「ただ、先ほどまで海賊の方達がいましたけどね」
どうやら見回りを察知して海賊の連中は引き上げて行ったらしい。
「そうか、それならいいんだ」
「今晩はこちらに?」
「いや、今日は金がな……」
従業員と話していた兵士が少々残念そうな顔をしてそう答える。
「さて、次の店に行かんとな」
今日もヴァッサーの兵士達は見回りを欠かさず続けている。

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最終更新:2011年07月20日 09:04
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