プロット・登場人物
- 瀬方英子(せがたえいこ)25
- 町工場の平社員。見た目も性格も地味そのもの。
- 東城秀樹(とうじょうひでき)30
- 町工場の平社員、ガチムチの体育会系。社内の頼れるアニキ的存在。
- 佐山浩三(さやまこうぞう)55
- 町工場の社長。趣味のためなら金に糸目はつけない性格で、大金かけた社内喫煙所が最近の自慢。
- 清水雅恵(しみずまさえ)28
- 町工場の経理担当。派手な化粧で自己中心的な性格。
- 相田康則(あいだやすのり)43
- 町工場の製作主任。職人肌で「おやっさん」と呼ばれている。
- 下尾健(しもおけん)23
- 町工場の見習い。元ヤン。シンナーで歯はボロボロだが根は真面目。相田の弟子のような存在。
「とおせんぼ」
とある年代ものの3階建ての町工場。
その最上階にある喫煙所は最近完成したばかりで、一部の壁を除いて周囲はアクリルで囲まれ完全防音、室内の気温や換気は空調設備で常に快適な状態に保たれていた。
その工場の社員である瀬方英子は、宅配便から受け取った社長の佐山浩三あての荷物を届けるため佐山を探していた。
すると、瀬方は喫煙所の中の入り口から最も遠い隅で怯えながら固まっている佐山、東城秀樹、清水雅恵を見つける。
喫煙所の中の3人は喫煙所の方に向かって近づいてくる瀬方に気付くと何かを口々に叫んでいるが、完全防音のため瀬方にはそれが何を言っているのかまるで分からない。
さっさと荷物を渡して自分の仕事に戻りたかった瀬方はそれを無視して喫煙所の中に入り荷物を佐山に押し付け、即座に喫煙所から出ようとした。
ところが、喫煙所のドアの外にはさっきまでいなかったはずの不気味な人影が、透明な扉の前に立ちふさがっていた。
驚いて硬直している瀬方を押しのけ東城があわてて半開きになったままのドアを閉める。
その人影はどうやら喫煙所の外にいる者には姿を見せず、知らずに中に入ってしまった者の前だけに立ちふさがり外へ出られないようにしているらしかった。
全員の携帯は全て圏外になっていた。
瀬方が部屋に入ってからどうすることも出来ず30分ほどが経った。
ふと、相田康則と下尾健が非常に怯えた様子で階下から駆け上がってきて、喫煙所の中の佐山たちに気付くと二人は瀬川たちの必死の制止にもかかわらず大慌てで喫煙所の中に入ってきてしまう。
相田と下尾はまだ入り口をふさぐ不気味な人影の存在に気が付いていないにもかかわらず、すっかり怯え切って顔色は真っ青になっていた。
いったいどうしたのかと二人に佐山が尋ねると、下尾がガタガタ震えながら答える。
「ゆ、幽霊っす!幽霊がいっぱい襲ってきたっす!それで逃げて来たっす!」
一同があわてて階段のほうに目を向けると、階下から次々と不気味な人影が上がってきて、やがて喫煙所を取り囲むように陣取ってしまった。
たくさんの不気味な人影の視線に喫煙所内の面々はふるえ上がった。
ふと喫煙所内の気温が上がりはじめ、換気口から焦げ臭い匂いが漂い始める。
東城はこの状況に強い危機感を感じ、強行脱出して警察を呼んでくることにした。
ところが、喫煙所から飛び出した東城は階段へと向かう途中でその足を止めてしまった。
東城は周囲を見渡し、喫煙所のほうを振り返ると、「ああ、そういう事だったのか…」とつぶやく。
その直後、喫煙所の面々が見守る中東城の全身は突然発火し、断末魔の叫びを上げながら黒焦げになってしまった。
ついに喫煙所の中はパニックに陥った。
それに追い討ちをかけるように周囲の人影は喫煙所のほうに手をかざし、アクリルが熱で溶け始めた。
東城の黒こげ死体も起き上がり、周囲の人影の仲間入りをして喫煙所のほうに手をかざしている。
さらにアクリルではない壁の向こう側から何者かがものすごい力でガンガンと壁をたたき始め、徐々に壁に穴が開いていった。
穴はだんだん大きくなっていき、その穴から人影がなだれ込んできて中の人たちに覆いかぶさってきた。
ついに殺されてしまうんだと、社員たちは泣き叫びながらその場にしゃがみこんでしまった…
「大丈夫ですか!助けに来ましたよ!」
ふいに予想もしなかった言葉をかけられた社員たち。
驚いて顔を上げると、そこに立っていたのは消防隊員だった。手には壁を破るときに使ったであろう斧を持っている。
さらに辺りを見渡すと、周囲を取り囲んでいたはずの人影たちは姿を消し、その代わり喫煙所の外側は火の海に包まれ建物の崩壊が始まっていた。
喫煙所の中だけが綺麗にそのままな状態になっていた。
助け出されビルの外に連れ出された社員たちは、自分たちの工場が焼け崩れるのをぼーっと眺めていた。
喫煙所にいた者以外の先に助け出された社員の話によると、1階で機械が発火し、老朽化したビルのあちこちにあっという間に火の手が回って多数の社員が火災の初期段階で逃げ遅れ焼け死んだらしい。
業火の中で3階の喫煙所が綺麗なままだったのは奇跡に等しく、彼らを助け出した消防隊員いわく「まるで何者かに守られているようだった」との事。
コメント
- これでも少し長文すぎるかもしれない… -- (ひのきのぼう@管理人) 2009-10-22 00:23:26
最終更新:2009年10月28日 01:59