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農協
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農協
立花 隆 (著)

20年前のルポタージュなのに全然古くない。やるじゃん。
2008.1
昭和54年から55年にかけて「週間朝日」に連載した「農協 巨大な挑戦」に加筆してまとめたもの。
はじめに より
本書は、農協の諸活動を追いながら、稲作、畑作、果樹、園芸、畜産の農業各部門の生産と農産物の加工・流通がどうなっており、それぞれに問題がどこにあるのか、農民、農村をとりまく経済的、社会的、政治的環境がどうなっているかを、地域的には北海道から九州まで目を配りながら、日本農業の今日と明日を語るために最低これだけのことは知っておいてもらいたいということを、一冊にコンパクトにまとめることをめざしたものである。
目次を見ると、一つ一つのテーマが今もって現在的なテーマであることが分かる。それとも、政府やマスコミを始め、私のような農協を直に知らない者たちの認識が当時のまま止まっているということだろうか。まるで種本じゃないかと思える程だ。現在の政策や世論が的外れでないことを祈る。そして何より、続編を希望します。
昨年(2007年)後半から原油価格が高騰している。本書から得られた知見として、日本の農業は燃料としての石油、肥料・農薬を生産する原料・動力としての石油に多くを頼っている。唯一そこだけは不問にして生き延びてきたのだ。この先どうなるのだろうか。
- 目次
- 規模拡大と資本設備で農民の夢を実現した日本一豊かな北海道・士幌農協の馬鈴薯コンビナート
- 東京にも農協がある=不動産業者・金融業者と化した偽装農民たちの宅地なみ課税への抵抗
- 補助金を徹底的に利用して地域農業再編を実現した鳥取・東伯農協のブロイラー・インテグレイション
- 米づくりに賭ける庄内・余目農協の有志共同=受委託による規模拡大がもたらす群小地主制
- ピンからキリまである日本の稲作と、生産性を無視した画一的転作配分のもたらす矛盾
- 破産から立ち直り、ミカンと肉牛肥育のコンピューター管理農業で飛躍する静岡・三ヶ日農協
- 日本一のマンモス農協、宮崎・都城農協に見る、和牛子牛生産の高コスト構造
- 日米農業の生産性格差=国際競争力を失った高コスト・高利潤・高価格の日本農業
- 「高い牛肉」を作る、高い子牛と高い飼料による長期肥育という構造と、世界一の配合飼料メーカーになった全農
- 施設園芸だけではない日本農業の石油漬けぶりと、日本最大の石油販売業者になった農協
- 肥料・農薬の独占的流通業者である農協の実力と、化学肥料・農薬づけ農業への反省
- 野菜王国・長野経済連の出荷調整を支える青果物情報オンラインシステムと低温流通システム
- 日本一の”保険会社”にのしあがった農協共済組合と全農連を震撼した怪文書スキャンダル事件の真相
- 二十二兆円の資金量を誇る農協信用事業に頻発する金融事故のケーススタディ=滋賀・信楽農協の場合
- 泥沼の財政赤字を生む食管制度のもたらした諸矛盾と、それを掘りくずす自由米の横行
- 合理化によって実力を蓄えた酪農化が実現した自主的生産調整と加工・流通部門への進出
- 食肉流通業界は戦国時代、問屋、加工メーカーと対決する農協の販売力の弱み
- 農協の集票力はどれだけあるか=地域によって天と地ほどのちがいがある農協農政組織の実力
- 全中が号令をかける農協農政活動の曲がり角=ひそかに進行する自民党農林議員の農民ばなれ
- 地域農業振興計画を軸に展開される農協の八〇年代戦略と情報産業としての農協の未来像
- 参考文献ならびに取材先
- 解説(井出耕也)
- 詳細
- 文庫: 416ページ
- 出版社: 朝日新聞社出版局 (1984/01)
- ISBN-10: 4022602627
- ISBN-13: 978-4022602626
- 発売日: 1984/01
- amazon該当ページ
- ハードカバーはこちら(朝日新聞社,1980)
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