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大転換

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2007.12注目本



大転換

カール・ポランニー
吉沢英成・野口建彦・長尾史朗・杉村芳美訳、東洋経済新報社
出版社/著者からの内容紹介
先市場社会における経済の地位に注目しつつ、社会と経済の関係を検討することによって、市場社会たる19~20世紀世界の文明史的意義を解明する。経済社会学の一大古典。

参考になった個人ブログ記事


最近、カール・ポランニーの『大転換』(吉沢英成・野口建彦・長尾史朗・杉村芳美訳、東洋経済新報社、1975年)を読みました。そしてグローバリズムを2種類に分けてみることにしました。

植民地主義グローバリズムと

自由主義グローバリズムです。

植民地主義グローバリストは、武力を背景に貿易と支配者の地位を要求します。

彼らは、知識を独占しており、最も頭がよいと思っているため、いろいろな意味で最良の統治ができると考えます。

しかし、知識の独占や焚書などを行うと、進歩が妨げられて競争力が衰えるため、いずれ外からの勢力に押しつぶされます。

自由主義グローバリストは、植民地主義者とは違い、武力を否定し、知識の独占も否定します。ポランニーが主に描いたのは、自由主義の席巻した19世紀のイギリスです。

自由主義者は、誰もが自由に利己的な利益を追求することによって、自己調整システムを働かせようとします。欲望に任せることで、武力などで強制しなくても落ち着くところに落ち着くはずだと考えます。神様の御心に任せるのと同じです。

みんなが自分の欲望をとめどなく追求できるため、みんな幸せになれるはずだと考えます。

利己的な欲望を追求できることが「自由」なのだと自由主義者はいいます。われわれは生まれたばかりの赤ん坊のような欲望を保って、自由放任されなければなりません。

功利主義、自由主義のイギリスでは、「自由放任は、あることを達成するための方法ではなく、達成されるべき目標そのものだった(189ページ)」といいます。「自由」になることはまったく簡単なことではありませんでした。

自由になること、利己的な欲望のままに生きることが、それほど難しいのはなぜでしょうか。自由放任が、自然の法則や人間の本性に反しているからではないでしょうか。ポランニーも「自由放任には自然なところは何もなかった(189ページ)」といっています。

別のところでポランニーはいいます。

「自分自身のためあるいは自分の家族のために、食料を採集し狩猟する個人主義的な未開人などいたためしはない(70ページ)」。

われわれは、自然に放っておかれたら、共同体全体の利益を考えて行動するものであり、「利己的な欲望だけを追求する人間」は、カルト的な信仰をもつことでもなければ現れえないのです。

自由主義者は、全員が利己的な欲望を追及することを強要します。しかし利己的な欲望を追求することは人間の本性に反しており、みんなが不幸になるのです。

ところがイギリスの功利主義者、自由主義者は、全員が「利己的な欲望だけを追求する人間」になってほしいと切に考えました。そうなれば自己調整システムが働き、すべてがうまくいくはずだと。そんな風に考えるのは、自分が利己的な欲望だけを追求しているからでもあります。

彼らは、「利己的な欲望だけを追求する人間」になることを強要するために、「食欲だけ」を基準に行動する人間を出現させました。人々を常に飢餓すれすれの状態に置いたのです。助け合いのできる家族も共同体も破壊しました。

そうして生み出された社会は、地獄のようなスラムでした。

そして彼らは武力が不可欠であることに気付きました。

武力を背景に、ありとあらゆる手段で「利己的な欲望だけを追求する人間」になるよう強要した上で統治するのです。

自由主義者は「自由になれ」といいます。

しかし「みんなで助け合って生きる自由」はありません。

自由主義者は欲望のままに生きていいのだといいます。

しかし私たちは、誰かの役に立ちたいという欲望も持っていますが、その欲望だけは捨て去らなければいけません。

「利己的な欲望だけを追求する人間」として生きることができるなどと考えるのは、荒唐無稽なカルト信仰でしかありません。利己的な欲望だけを追求して幸せになれるはずもありません。

これはあらゆる人間の活動に当てはまります。

会社もまた、利益の最大化(利己的な欲望の追求)だけを目標にすることはできません。利益の最大化を目標にすることは、自然の法則に反しています。

会社の活動に関わるすべての人々を生かし豊かにすることを目標とし、そのために利益を追求して会社を守るべきなのです。

あらゆる国で働いている人たちを飢餓すれすれの奴隷扱いにするのはやめるべきです。

会社の利益を増やすために働いている人をクビにするのは自然の法則に反しています。

会社だけ生き残ったって人が全部死んでしまったら、何にもならないでしょう。

植民地主義グローバリズムでも自由主義グローバリズムでもないものは???

植民地をつくらないこと、近代自由個人主義を信奉しないこと、グローバル志向ではないことを充たすには、人様に喜ばれる商売とナショナリズムでしょうか。国を超える単位がない限り。

いずれにせよ、世界は一つになってはいけません。小さな島でも、二つの中心がある島は栄えているといいます。競争心が刺激されて、富がどんどん増えるのです。


詳細

単行本: 447ページ
出版社: 東洋経済新報社 (1975/04)
ISBN-10: 4492370293
ISBN-13: 978-4492370292
発売日: 1975/04
商品の寸法: 21.2 x 14.6 x 3 cm



同著者の他の注目本


経済と文明

カール・ポランニ―
栗本 慎一郎, 端 信行 (翻訳)
内容(「BOOK」データベースより)
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詳細

文庫: 334ページ
出版社: 筑摩書房 (2004/11/11)
ISBN-10: 4480088709
ISBN-13: 978-4480088703
発売日: 2004/11/11




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