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公道を走る無数のトラックの列。
その先頭を走るのは一台のジープ。
73式小型トラック(新)と呼ばれる自衛隊のジープだ。
幌はついておらず、その代わりに後部には軽機関銃が備え付けられている。
ジープを運転している隊員が、助手席にいる隊員に声をかける。
「三尉・・・何故いきなり実弾武装をした我々が出動を・・・?」
運転席にいる男よりも、助手席にいる男のほうが階級が上なのであろう、敬語使い訊ねる。
「俺にも判らん、取り合えず目的地である新宿に向かうほかあるまい。すでに民間人の退去は警察が誘導してくれたらしい。後処理はすべて我々だけということだ」
三尉と呼ばれた男は上から命令されたことをそのまま、部下に伝えた。
「はぁ、そうですか」
2人の会話はそこで終わり、後は車が風をきる音だけが周囲を支配した。
どれほど走ったのだろうか、見慣れない道を走っていると時間の感覚が狂ってしまう。
ジープの助手席に座っている霧島はそう抱懐した。
民間人の退去が全て終ったこととあり、本来ならば交通量の盛んな首都高下の道路も、今は自衛隊の車両以外は車が一台として走っていない。まさにゴーストタウンだ。

霧島は視線を前方に戻す。
電力も全て落ちているのだろう、信号から街灯、建物にいたるまでありとあらゆる電気が消えている。
頼りとなるのは車両のヘッドライトのみだ。
月明かりに照らされ、都心部のビル群が黒く、うっすらと浮き上がってるのが霧島の目に取れた。
今、あそこの下には今まで人間が見たこともないような奇妙な生命体が支配しているという。
これは日本のみならず、世界各国で発生しているようで、国内だけならばすでに死傷者は20万人を越えているとの報告も入っている。
すると、突然としてジープが急停車をした。
「どうした?」
霧島が叫ぶ。
すると運転席の隊員は、顔をしかめると、前方へと視線をやる。
そこには次々と追突をした車列があった。全てが民間車両である。
車はすべて乗り捨てられているようで、これをどかしていたら何時間かかるかわからない。
どうやら車両はここで待機させておくしかないようであった。
民間車両は歩道にも突き出ていて、中には炎上しているものもある。
当時の惨状を窺わせていた。
「さ、三尉・・・一体なにが襲ったらこんなことに・・・」
霧島は返答はしなかった。

「総員下車戦闘!」
霧島の叫び声が無人と化した市街地に響く。
それと同時に、陸上自衛隊員たちがトラックからぞろぞろと沸いてくる。
整列をすると、各班長が点呼を取り、小隊長である霧島に報告をする。
小隊は残り数キロの道のりを徒歩で行く事となった。
この調子では後方支援に向かうはずの装甲車や装甲戦闘車といった車両も立ち往生を食らうだろう。
上空からの支援もこのような高層ビル群のところではあまり期待はできない。
小隊は3個分隊にわかれ、民間車両の間を縫うようにして移動していった。
下車から40分ほどが経とうとしていた。
すでに都庁のガラス窓が一個一個確認できるほどまでに近づいている。
「そろそろ危険区域に入る!安全装置をはずし、警戒を厳にせよ!」
直後、「了解」という怒声が帰ってきた。
都心部に入っても、乗り捨てられた民間車両は一向に減る気配はなく、相変わらず道路を寸断していた。
奥に行けば行くほど、散発的な銃声を耳にするようになっていた。
他の部隊も続々と到着しているようだ。

その時だった、銃声がすぐ近くで響く。
霧島は銃声の方へと踵を返す。
するとそこには車の天井に仁王立ちをする、今までに見たこともないような生物が立ちはだかっていた。
見たこともないというには多少大げさな表現が入るかもしれない。
その生物の容姿というのは、恐竜に酷似していて、大きさは2メートル前後。
両手には鋭い4本の爪が備わっている。
脚はとてつもなく太く、脚力があることをうかがわせていた。
そしてそれを霧島は、身をもって体験することとなった。
生物は小隊のど真ん中に飛び込む形で現れたのだった。
慌てた隊員たちはすぐに蜘蛛の子を散らすようにして周囲に退いてしまった。
今度は歩道や建物内から続々と先ほどの生物が出現してきたのだ。
個々になった隊員たちは切り裂かれ、食いつかれ、あっという間に肉塊となってしまった。
銃撃を加えるも、あまり効いているとは思えなかった。

「くそ!撤退!撤退!」
霧島が命令するも、帰ってくる声は全てばらばらで、位置すら把握できない状況だ。
個々にちらばってしまっては火力を集中できない。
一人で数体を相手にするのはいい策略とは思えない。
現に何人もやられている。早く打開をせねば、全滅してしまう。
霧島は焦りの念にかられていた。
「三尉!霧島三尉!」
後ろから聞き覚えのある声が届く。
振り向くと、そこには先ほどの運転手だった隊員がいた。
89式小銃を右往左往と振り回し、連射している。
すぐ後ろには何体もの珍獣が暴れまわっている。
銃声はもう霧島と、運転手であった隊員のもの以外は聞こえない。

つまり、全滅を意味していた。
「早くこい!建物の中に退避するぞ!」
2人は全速力で駆けたが、行く手を全て車両が阻んでくる。
珍獣はその人並みはずれた脚力で、車の上をぴょんぴょんと跳ね回って追跡をしてくる。
まるで軽業しのような動きだ。
2人は歩道に出ると同時に周囲を見渡す。
左右、後方からはすでに珍獣がせまっていた。
「あ!三尉!あそこならいけそうですよ!」
隊員の指差す先には地下へ通じる通路のようなものがあった。
入り口付近には『空車』と記された掲示板のようなものが設置されてある。
どうやら地下駐車場の入り口のようだった。
2人は再度走り出すと、地下駐車場の暗闇へと姿を消していった。



2026-07-06 07:44:32 (Mon)

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最終更新:2006年09月24日 00:57