4話：亡霊の足音 - vipac @Wiki

ミサイルが空を舞い、プラズマと実弾が砲火を交える
黒いACはミサイルを回避しつつ蒼いACの側面を取るべく接近し
蒼いACは其れを射撃で牽制しながら距離を取る
何度同じ動作の繰り返しが続いただろうか
ミサイルも何時の間にか無くなり
逃げる蒼に黒が迫り
閃光の嵐が蒼いACをシステムダウンさせた

「グリッド2行動不能、グリッド1の勝利です！」

「ブルーティッシュワイバーン連勝ならず、オーガ以来初の敗北」(ACタイムズ)

季節は夏、近年個体数が大破壊以前程に増えてきた蝉の音が耳を刺す
「アルティが誌面に出ないなんて珍しい」
ここ数日、というか数週間、FF専門誌はアルティの連勝記録更新特集ばかりだったのだ
「あら？こっちは何時も通りよ」

「フロンティアで大規模反レイヴンデモ、紛争後では初」（朝日新聞）

「アカピーなんて取ってましたっけ？ていうか、それは専門誌でもスポーツ新聞でも無いし、アルティ特集なんか絶対にしないじゃないですか」
「朝のニュースの読み比べ見て出勤してくる途中に買って来たのよ、私達にも関わる問題だし」
彼等はFFチームの一員であり、レイヴンとしてのコンビでもある
「会社の事なんか無視して善良なアーキテクトと整備員面してればいいじゃないですか…」
彼等の所属するFFチームのメインスポンサーはレイヴンズフェストゥング
大破壊直後から操業を開始した警備会社が母体となっている圧倒的な伝統を誇るレイヴン組合の老舗の一つだ
「そーも行かないでしょうが…レイヴンとしての活動、マスコミにばれかけてるのよ？」
エマはそう言って鞄からさらに一誌取り出し、エンフィールドに放り投げた

「テロリスト駆逐のレイヴン、アノ機体にソックリ！？」(フライデイ)

「･･･何処で撮られたんでしょ」
「周辺に偵察専門レイヴンのACでも居たんでしょう。大方、迷彩で機体をカモフラージュ、
ステルスでレーダー反応を消してから狙撃ライフルを改造したガンカメラで撮影って所でしょうね。
クレストあたりの依頼でテロリストの動向を探ってたら、ミラージュから依頼を受けたあんたが来たから
その一部始終を撮って雑誌に売り払って追加報酬代わりにでもしたんじゃない？」
「･･･なんかムカツクなぁ」
「コレが全国紙の新聞にまで飛び火すると厄介な事になるでしょうね」
「それにしてもこのブルーティッシュワイバーン破ったチーム、guistでしたっけ？ブレンがちょっとだけ気にしてましたよ」
「ブレンと知り合いなの！？」
「嘘です」
がっ
「あいたたた･･･何も殴ること無いじゃないですか」
「乙女を騙した罪は重いのよ」
「恐い恐い･･･で、このチームなんですけど、動きがAIのモノじゃなかったんですよね」
「？どーゆうこと？」
「機械的じゃなかったって事ですよ、滑らかなんです、非常に」
通常、AIを用いて戦闘を行うu-ACの動きは思考から動作に移すまでが、まずベースキャラクターに基づいた
求める結果へのパターンを構築、その中で最短及び最良のパターンを選び出し動作として実行、
結果から直に思考へと循環させて戦闘を行っている。
そのために行動が何処かぎこちなく、勿論例外的なモノもあるが殆どが機械的になってしまうのである。
反面、多くのレイヴンは直感的にACを操縦するために無人駆動とは違った滑らかな動きになるのだ。
「私は無線操作システム使ったんじゃないかと思ってるわけで」
「ネイクドか…確かに有り得るわね」
「ジュブナイルの彼も使ってましたしねぇ」
「知り合いなの！？」
「嘘ですよ」
どすっ
「幾らなんでも･･･鳩尾は酷すぎる･･･」
「私がポリ公なら今直ぐあんたを捕まえて詐欺容疑でスチールバレー刑務所に打ち込んでやる所よ･･･」
「とりあえず･･･次の対戦相手は彼ですからね･･･たの･･･し･･･み･･･」
がくっ
「軟弱ねぇ･･･コレで現役レイヴンだって言ったら誰が信じるのやら･･･」