InterRegio(インターレギオ)はドイツ鉄道で運行されていた列車種別の一つ。略称は「IR」
「地域間急行」と訳され、日本の「急行」に相当する種別。
編成、車両構成
IRブルーと呼ばれる専用塗装を纏った専用客車が主に使用される。客車は1950~60年代製造の急行型客車(UIC-X客車)やDR(旧東ドイツ国鉄)所属客車からの改造車となる。いずれも内装は徹底して改造されており、それまでの急行列車とはイメージを一新することに成功した。一等、二等車ともに車端部にコンパートメント、中央部が開放座席という作りになっており、特に二等車は奇数人数のコンパートメントなど変則的な座席配置となっている。
また半室がビュッフェとなった一等合造車「Bistro Café」が一等車と二等車の間に連結され、インターシティには劣るものの供食設備を備えた列車もあった。
歴史
地域輸送の新顔として
1980年代は特急インターシティが最上級種別として西ドイツ全土にネットワークを広げ、各都市を結んでいた。一方、地域輸送を担う
D-zugなどの急行列車は車体の老朽化、インターシティの接続待ちによる所要時間の増大なども一因となって需要が減少しており、赤字運行が常態化していた。これら
D-zugに代わる地域輸送の主役として1988年に新設されたのがインターレギオである。
インターシティが主要幹線の大都市のみに停車するのに対して、インターレギオは亜幹線や地方路線を中心にインターシティが停車しない中規模の町にも停車駅を設けるなど、インターシティの補完的な役割をもち、地方路線においては最上級種別となった。またインターシティと同じパターンダイヤを採用して利用しやすいものとした。それまでの急行からの速度向上もなされ、高速新線においては最高速度200Km/hで走行した。使用客車は旧型客車からの改造だったが徹底した改造によってイメージを一新、また1985年にDBのCI(コーポレートアイデンティティ)が変更され、車体塗装がそれまでの等級別から列車種別ごとの塗装になり、インターシティに次ぐ種別と位置付けられたインターレギオには専用の青系塗装(IRブルー)が採用された。運賃面では、インターシティより安い料金で利用できた。
路線網の拡大
インパクトを持って登場した地方輸送の新顔は大きな成功をおさめ、旧来の急行列車に代わって西ドイツ全土にネットワークを伸ばしていった。また東西ドイツの統一以降は旧東ドイツの領域にも進出していき、このころには18ラインのネットワークが構築されていた。1995年にはDR(東ドイツ国鉄)のハルバーシュタット型客車を種車として
制御客車が製作され、インターレギオにおいて
制御客車を用いた
ウェンデツークでの運行が始まった。後1997年にはインターシティでも
推進運転が開始され、現在のインターシティの運行形態のもととなっている。
種別廃止
1991年にICEが登場、大幹線のインターシティを置き換える形で勢力を伸ばしていくと、インターシティは次第に地方輸送へとシフト、これによりインターシティがインターレギオと同じ性格を持った列車になってしまい、サービス面で差のあるインターレギオの人気は低迷していった。2002年にはICEが大量に新設され、これによってインターシティ網に大きな変更が加えられることとなり、インターレギオの多くの路線がインターシティに格上げされる形で廃止された。残る路線もインターシティ格上げや快速列車への格下げによって2006年までに全路線が廃止となった。
IR客車たちのその後
塗装変更前後の比較
種別が廃止されたインターレギオだが、使用車両たちはその種別と同様にインターシティに受け継がれた。
インターシティの特急用客車と同様の塗装に変更されたが、内装はそのままで使用され、一両単位で組成できる客車列車だったこともあって旧IR客車編成は次第にバラされ、インターシティの編成に組み込まれていった。結果、同じ編成内に特急用の設備と急行用の設備をもつ客車が同時に存在することになってしまった。座席によって料金が変わるような措置もない。一新された内装もすっかり老朽化し、インターシティに紛れ込むがっかり客車になってしまっている。一方、BistroCafé車は軽食堂車BordBistroに改造されて使用された。供食サービスの衰退によってTEE以来の食堂車たちが廃止されていくのに代わって現在のインターシティの供食車の主役となっている。また
制御客車もインターシティの
推進運転用として使用されている。
2015年、インターシティ2と呼ばれる新しい特急列車が新製され、旧インターレギオの路線で旧来のインターシティ列車に代わって運転を開始した。これにより余剰になった編成のうち、生え抜きの特急型客車のみにICEと同様の椅子に交換する改装を行って再び特急型のみの編成に組みなおし、旧IR客車を廃車する計画となっている。最古で1950年代に急行型客車として製造されて以来の長寿となる旧IR客車群だが、その活躍も間もなく終焉を迎えることになる。
余談
後継ともいえる新型特急車IC2は、快速用の2階建て客車と機関車にインターシティと同じ塗装を施しただけのシロモノであり、内装は快速と同じ、食堂車ナシ、最高速度の低下という遜色特急となっている。がっかりの血は争えない。
関連項目
最終更新:2018年09月24日 04:46