制御客車(
Control Car)とは、
プッシュプル運転をするために作られた運転台を装備した客車である。
制御客車を用いた運転方法については
プッシュプルトレインを参照。
制御客車の歴史
制御客車と機関車を用いた運転の先駆けは1904年、イギリスのグレートウエスタン鉄道(GWR)がオートコーチと0-6-0の機関車と組み合わせて運行したもので、ブレントフォードブランチ線の区間運転で初めて運行された。制御はロッドを介した機械的なもので、前後2両づつ最大4両の車両で運行することが出来た。しかし、複数の車両をつなぐと操縦ロッドの
リンク間の"遊び"が増大し操作が困難になることから機関車1両に対し客車1両あるいは機関車を挟むように2両での運行が基本であった。その後1905年にはノースイースタン鉄道(NER)、ロンドン・ブライトン・アンド・サウスコースト鉄道(LB&SCR)では圧縮空気を制御に用いた方法が、ミッドランド鉄道には滑車とケーブルを使用した方法が、そして翌1906年にもグレートセントラル鉄道(GCR)でケーブルを使用した方法が考案され運転が開始されている。いずれも1950年代にはDMUなどに置き換えられている。
一方、ドイツでは1920年代、
ドイツライヒスバーン (DRB)により開発が行われ、運転台から船舶で使わていたチャドバーン(chadburn)型機械式電信装置により機関車の自動火室コントローラを制御するものが開発された。しかしこれは反応速度が遅く、緊急時に客車側で制動をかけているにもかかわらず機関車が力行しているといった危険な事象が見られたため開発は中止されている。その後、BR E04
電気機関車を改造した車両を用い、直接制御できるようになったことで問題を克服し成功を収めた。しかしながら第二次世界大戦により実用化には至らなかった。
戦後、電車よりも客車列車が中心となる欧州においては古くから一般的な形態の列車であるために実用化が進み、1960年には電気機関車、
ディーゼル機関車、さらには蒸気機関車を使用したペンデルツークが高頻度運転を行う都市圏の列車を中心に実用化されていた。イタリアにおいても同時期に使用され始めている。上記の欠点ゆえに当初は最大連結数は10両に、速度は120km/h(1980年に140km/hまで引き上げ)に制限されていた。そのため普通列車、近郊列車等で6両程度で使用されていたが、次第に高速域の列車でも用いられるようになり、1995年にドイツのインターレギオ、後にインターシティにおいて最高時速200km/h・14両編成ののペンデルツーク列車が運行されるようになった。今日ではドイツのみならずヨーロッパ各国でSバーンなどの都市圏列車から近郊列車、インターシティなどの特急列車など多種の列車で広く使用るようになった。また、ドイツのICE2やオーストリアの
railjetなどの高速鉄道にも使われている。
北米では、1959年にシカゴ・アンド・ノースウエスタン・トランスポーテーション鉄道(C&NW)がバイレベルの通勤車両にコントロールキャブをつけたものを登場させたのが始まりで、これ以降その効率性から各社に波及し現在では通勤車両を中心にアメリカ・カナダで広く使用されている。
イギリスでは、その後1967年にサウザンリージョンでEMUと電気式ディーゼルによる運転が行われ、1979年にはマーク2客車
DBSOと
クラス47/7が点灯回路でデジタル通信することによって行う最高速度100mph(160km/h)の運転が開始された。その後、1988年にはウエストコースト本線で
マーク3客車の
DVTを使用したインターシティーの運行がはじまり、110mph(180km/h)での運転が行われ、1988年には
クラス91が登場
HSTをDVT代用とするこによりイーストコースト本線でも運転が開始された。マーク4客車が登場、クラス91と合わせてインターシティー225が完成し140mph(225km/h)での運転が可能となった。しかしながら信号システムが対応できず現在でも営業運転は125mph(200km/h)となっている。
各国での名称と代表的な車種
アメリカ
アメリカでは一般にキャブカー(Cab Car)と呼ばれる。
イギリス
イギリスでは
ドライビングトレーラー(
driving trailer)という。Mk3客車またはMk4客車を用いたインターシティーが有名で、100mphを超えて走行する列車は先頭車に客室を設けてはならないという当時の法規制から制御荷物車が採用された。それらは
ドライビングバントレーラー(
Driving Van Trailer,
DVT)と呼ばれる。それらが有名であるため、近代のものは実際の客室の有無にかかわらず制御客車のことがDVTと呼ばれることも多い。
制御客車には戦前GWRで用いられた
オートコーチ(
Auto Coach)やMk2客車には
DBSO(
Driving Brake Standard Open)、Mk5客車のトランスペナインエクスプレス用
DTSO(Driving Trailer Standard Open)など様々な車種がある。
ドイツ
関連項目
外部リンク
最終更新:2019年10月20日 16:54