M8 - (2010/04/01 (木) 22:31:48) の1つ前との変更点
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*第2(8)話 逆襲のジンクス
「おれっちのターンなっ!」
後攻のタンサンは1枚目のG…緑基本Gを場に出しターン終了を宣言した。
ミキオは「オレのターン」と言いながら、カードを手札に加える。
「配備フェイズ、ギンガナム軍を配備。ターンエンドだ」
次ぎのターン、タンサンは手札から紫色のGカードを出した。
彼が緑紫デッキを作っているのは知っていたし、戦ったこともある。
だからミキオは、タンサンがそのGのテキストを宣言した時に、「は?」と思わず聞き返した。
「だから、1コストで緑国力を発生だって」
タンサンはそう言って、紫の特殊Gであるジャブロー残留部隊を指差した。
ジャブロー残留部隊…通常は紫国力を発生しているが、自軍配備フェイズに1資源を支払うことで発生する国力を緑か黒に変更することが出来るGカードだった。
「なんだよ。緑紫じゃないのか?」
ミキオはそう聞きながら、先ほど見せられたスローネヴァラヌスを思い出す。
デュアルカードの紫指定は紫基本Gか3種類国力が発生している状態でしか支払うことは出来ない。
3色だということだろうか?
ミキオはそう疑問に思った。
「うんにゃ。緑黒紫だよ」
タンサンはチッチッと指を振ってターンを終了した。
得意げなタンサンに「そんなに綺麗に国力並ぶのかよ」と言いたげな表情を向け、ミキオはカードを手札に加える。
「エネルギー吸収をヴァリアブル。ターンエンド」
「ドロー、もう1枚ジャブロー残留部隊を配備。黒を発生」
ミキオは許可を出す。
特殊Gはデッキに6枚。ジャブロー残留部隊を採用している今日のタンサンが対ガンダム調査隊を使う可能性は低い。
という読みで、無理にギンガナム軍を使わずに、エネルギー吸収をヴァリアブルにしたミキオの行動はどうやら正解らしかった。
「これで緑、黒、紫が1国力ずつ。ブーストでジンクス3(ルイス機)を配備」
「あ、そいつの指定国力…緑1と紫1か」
ミキオは出されたカードを見てから「なるほど」と言った。
彼は、自分でも引いた緑セットの中身をよく確認していなかったから、今までのジンクスのように緑2と紫1の指定国力が必要なカードだと思い込んでいたのだ。
「ちなみにヴァラヌスもおんなじ指定国力だぜ」
「あるのか…?手札に」
「ないよ、戦闘フェイズ」
タンサンはもう1枚のジャブロー残留部隊の国力変更を宣言して、手札にデュアルカードがないことを体言する。
戦闘フェイズを告げるも、特殊兵装を宣言しただけでターンを終えた。
「ドロー…」
「配備フェイズ、ボルトガンダム(ガイアクラッシャー)を配備!」
「新カード。やっぱりそれ入れたかぁ~。でも、その代わりにシャイニングガンダムあたりを抜いたんでしょ?」
ミキオは「1枚な」と軽く答える。
大会ではないから、バレたからどうってことはないということらしい。
「だよね、こっちはジンクスをロールインしてる間にリングハンデスされるのがニガテだからさ~」
「おいおい待てよ、俺はまだ『これで終わり』なんて言ってないぜ」
タンサンが「あ?」と変な声を出す。
「アルゴ・ガルスキー!このカードをガイアボルトにセット、テキストでリロールするぜ」
「戦闘配備の代わりかよ~!」
「戦闘フェイズ…リングに出撃だ!」
規定で出られるユニットはいない。
タンサンは観念して手札をシャッフルする。
手札から黒基本Gが廃棄された。
「じゃあ本国に5ダメージで」
「ターンエンド」
ミキオはボルトガンダム(ガイアクラッシャー)を帰還させターンを終えた。
ボルトガンダム(ガイアクラッシャー)交戦することが前提のこのユニットに、攻防に使うことが出来るアルゴ。
専用機だけに強力なセットグループの完成だ。
「ドロー…配備フェイズ、緑基本Gを配備」
「Gが枯渇したりはねえよな」
すんなり出てきた4枚目のGにミキオは少し残念そうにそう言った。
タンサンは「まあね」と苦笑する。
「ジャブロー残留部隊で黒を発生、まずは王留美。2ドロー後に~、ブーストでこのカード!」
タンサンは1枚のユニットカードを表にした。
23弾のジンクスだった。
「このカードは場に出た場合、捨て山の中からジンクス系をもつユニットを何枚でもハンガーに移せる!」
「さっきからやたらに資源払いまくってるのはそういうことかよ」
「まあね~。おれっちだって考えてるんだぜ?」
タンサンは10枚以上ある自分の捨て山のカードを確認する。
何枚ジンクス系のユニットを入れているかはミキオには予想がつかなかったが、何枚かハンガーに行く予感がした。
「このカード達を移すぜ」
タンサンがハンガーに送ったのはジンクス3、ジンクス3(ルイス機)、そしてスローネヴァラヌスだ。
「随分な枚数が移った」とミキオは手札と場のカードを見比べる。
タンサンの手札次第だが、ギリギリ攻略は出来そうだ。
「こいつが落ちてるのは特殊兵装で見たから知ってたんだぜ。ハンガーのARユニット、ジンクスヴァラヌスをプレイ!」
「スローネだろ、それ。スローネヴァラヌス」
ミキオはタンサンの間違いを指摘するが、当の本人は「そうとも言う」と言っただけだ。
ヴァラヌスは戦闘配備を持ち、さらに手札やハンガーにあるジンクス系やスローネ系ユニットを除外することで敵カードを手札に戻すことが出来る。
24弾プレリュードスターター専用のレアであったため、アドバンスレアと同様の箔が押されていた。
タンサンは箔押しカードが好きだった。
彼がガンダムウォーを始めた頃には10thレアなどの箔押しレアが既にあり、10thイナクトやアグリッサなどを好んで使用していた。
曰く「スペシャルな感じが出て良い」そうだ。
「戦闘フェイズ、特殊兵装を宣言」
「…了解。帰還ステップにアルゴをリロールしておくぜ」
ジンクスはもう場に出たのだから、捨て山を増やす必要もあまりない。
となると、本当に専用兵装・擬似太陽炉がデッキにあるのか?
ミキオがそんことを考えているうちに、タンサンは3機全部の特殊兵装を宣言して「ダメだ。ない」と言ってターンを終えた。
「ドロー、配備フェイズ。危なく国力が足りなくなるところだったぜ…ギンガナム軍を起動」
引いたばかりのニュータイプの排除を表にするミキオ。
続けてガンダムシュピーゲル(シュツルム・ウント・ドランク)をプレイする。
タンサンはさらに増えるMFユニットに、少したじろぐ。
いかにヴァラヌスが優秀なバウンス能力を持っていたとしても、対応しきれない数になる前に勝負を決めなければいけない。
「戦闘フェイズ。ガイアボルトをリングに、ウント・ドランクを宇宙に出撃だ!」
「防御…このターンは手札は譲れないね。リングにジンクスヴァラヌス!」
「スローネな。オーケー!使うか?テキスト」
ミキオは誘うようにハンガーの2枚のジンクス系を指差す。
ここでテキストを使わなければヴァラヌスは撃破され、おまけにガイアクラッシャーのテキストも起動する。
タンサンもそれはわかっていたのか、迷わず宣言する。
「アルゴに使いたい」
「明鏡止水。いつもこれで悪りぃーけどな」
ボルトガンダム(ガイアクラッシャー)のセットグループはこれで移動しない。
「じゃあウント・ドランクを戻す」
タンサンは不思議とがっかりせず、気を取り直してそう宣言する。
ボルトガンダム(ガイアクラッシャー)がいくら攻撃力を上げても攻撃が貫通するわけではない。
タンサンにはそういう余裕があるように見えた。
「このままヴァラヌスは戦闘ダメージで撃破!」
「明鏡止水は仕方ないよね」
「さらに、ガイアボルトが4ダメージを受けたから…そっちの配備エリアにいるルイスジンクスも撃破!」
タンサンはユニットを2枚とも廃棄し、残るはジンクスのみ。
「ターンエンドだ」
「だからガイアクラッシャーと交戦したくなかったんだよなぁ~」と愚痴りながらも、タンサンは手札にカードを加える。
手札に加わったカードはジンクス3(ルイス機)。
なんだ、3枚全部引いたのか。
ぼけっとそう考えて、タンサンはジャブロー残留部隊で黒国力を発生させた。
「ハンガーのジンクス3をプレイ」
「…ネタ切れか?」
ジンクス3は他のジンクス系がいれば緑国力を発生するテキストを持っている。
5ターン目にブーストを持たないこのユニットをプレイするということは…もうヴァラヌスはない。
ミキオはヴァラヌスの脅威を可能性から消した。
「そして、ケリィ・レズナー《EB1》でジャンクヤードのジンクスヴァラヌスを場に」
「げ…」
ミキオは「スローネだろ」と突っ込むのも忘れ、思わず声を出す。
脅威再び、だ。
「戦闘フェイズ、ジンクスで捨て山を見たときにはなかったんだから、そろそろ…」
そう言いながらタンサンは特殊兵装を宣言した。
あたり。ケリィとヴァラヌスの資源コストに擬似太陽路が入っていたのだ。
「セットされた擬似太陽路のテキストを宣言して、全ユニットに+1修正を。さらにヴァラヌス、ジンクスが出撃」
両面攻撃で9点のダメージだ。それなりに大きい。
「攻撃規定後、手札からジンクスを除外してアルゴをバウンスは」
「…許可」
「じゃあこれも通るってことかな?手札からさらにジンクス3除外してボルトも手札に」
ミキオはカードを手札に移す。
しかし、相手の手札はこれで随分減った。
9点の攻撃のためにこれでは…次のターンにまた出るガイアボルトとアルゴをどうする気だよ。
と彼は思った。
「戻ったね。おれっちの勝ちだ…報復行動」
タンサンはニヤリと笑い、手札からコマンドをプレイした。
「おま…」
ミキオは慌てて相手の配備エリアを見た。
配備フェイズに黒を宣言したジャブロー残留部隊を含めた4枚のGカード。
そして、今更意味のないと思っていた”国力を発生する”ジンクス。きちんと5国力発生していた。
「いやー、リングハンデスで国力落とされたときはヒヤヒヤしたよ。対ガンダム調査隊もこのデッキにはないからね~」
タンサンはそう言って、報復Xを2で宣言した。
ミキオの場にはコインが乗ったギンガナム軍を含めて4枚のGカードしかない。
ミキオが報復行動のXを1で済ませたとしても、残るカードはギンガナム軍の2国力だけ。
次にボルトガンダムが出るまでに10ダメージ以上の打点を受ける…。
「オレはX=1で」
しかし、そもそも手札に国力要素がない彼にとって、この9ダメージで国力3枚を失うのは痛手。
結局、ガイアクラッシャーを再配備するまでに2回G事故を起こして、本国は削りきられてしまった。
×××
「本当は最速4ターンで報復行動キメめられるんだぜ?」
タンサンはえっへんと胸を張った。
「そういう系は対処できねーなんだよな…」
ミキオはカードをしまいながら、「先攻最速の月光蝶で勝負すればいいのか」などと言って首を捻った。
「もう1回!」
「おっけ。今度は4ターン目に決め…」
ミキオの売り言葉に、タンサンが買い言葉を口にしようとして…負のオーラを出しながら二人を睨むナツキに気づいて言葉を濁す。
ルールブックを読み終えたのかわからなかったが、顔に『飽きた』と書いてあった。
「…仕方ねー」
それを見たミキオはシャッフルしようとしてたカードをしまう。
タンサンもそれに習う。
「駅前のマック行こうよ」
「あれ?ナッちゃん門限いいの?」
途端にニッコリ笑ってそう提案したナツキに、タンサンは時計を指差して「はて?」と声を上げた。
「あ、うん。ウチのパパが『高校生になるから』ってのばしてくれたよ、門限」
ナツキの家は親父が厳しい。
金持ちであるが、小遣いだってミキオたちと変わらないくらいだし、門限にもうるさかった。
ナツキが小学生だった頃に甘やかしすぎた反省から、中学に上がった頃から厳しくなったらしい。
が…ナツキのあの性格が出来上がってしまった後にそんなことをしても、手遅れだったのではないか。
ミキオは確信を持ってそう考えていた。
三人は店のお兄さんにデュエルスペースを使い終わったことを伝えると、駅前のマク○ナルドに向けて歩き出した。
ナツキが無理やりミキオの手を握り、ミキオが本気でそれ振りほどきながら「ふざけんな」を連呼する。
そんな光景を苦笑交じりに見ていたタンサンが「そういえば、姉さんとはどういう約束になった?」と、赤信号で止まった時に言った。
「ん?あぁ、言い忘れてた。明日姉さんの家に行くことになったぜ」
ミキオは思い出したように携帯が入っているだろう左ポケットを小突いた。
それを聞いて、うっとおしくまとわりついていたナツキの指がピクリと止まる。
「えー!家行くの!?ウチの家に来たこともないのに?」
ナツキはぐいと顔を近づける。
マスカラでバッチリ決めた彼女の大きめの瞳には、変な目力があった。
「バッカ。オメーの家には行く理由がないだろ」
「ひっどー!」
「信号、青だ」
タンサンは信号を指差してそう言った。
それを合図にミキオは――結局目的地は一緒なのだが――ひとまず逃げた。
つづく
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txt:Y256
初出:mixi(10.03.02-03)
掲載日:10.03.03
更新日:10.04.01
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*第2(8)話 逆襲のジンクス
「おれっちのターンなっ!」
後攻のタンサンは1枚目のG…緑基本Gを場に出しターン終了を宣言した。
ミキオは「オレのターン」と言いながら、カードを手札に加える。
「配備フェイズ、ギンガナム軍を配備。ターンエンドだ」
次ぎのターン、タンサンは手札から紫色のGカードを出した。
彼が緑紫デッキを作っているのは知っていたし、戦ったこともある。
だからミキオは、タンサンがそのGのテキストを宣言した時に、「は?」と思わず聞き返した。
「だから、1コストで緑国力を発生だって」
タンサンはそう言って、紫の特殊Gであるジャブロー残留部隊を指差した。
ジャブロー残留部隊…通常は紫国力を発生しているが、自軍配備フェイズに1資源を支払うことで発生する国力を緑か黒に変更することが出来るGカードだった。
「なんだよ。緑紫じゃないのか?」
ミキオはそう聞きながら、先ほど見せられたスローネヴァラヌスを思い出す。
デュアルカードの紫指定は紫基本Gか3種類国力が発生している状態でしか支払うことは出来ない。
3色だということだろうか?
ミキオはそう疑問に思った。
「うんにゃ。緑黒紫だよ」
タンサンはチッチッと指を振ってターンを終了した。
得意げなタンサンに「そんなに綺麗に国力並ぶのかよ」と言いたげな表情を向け、ミキオはカードを手札に加える。
「エネルギー吸収をヴァリアブル。ターンエンド」
「ドロー、もう1枚ジャブロー残留部隊を配備。黒を発生」
ミキオは許可を出す。
特殊Gはデッキに6枚。ジャブロー残留部隊を採用している今日のタンサンが対ガンダム調査隊を使う可能性は低い。
という読みで、無理にギンガナム軍を使わずに、エネルギー吸収をヴァリアブルにしたミキオの行動はどうやら正解らしかった。
「これで緑、黒、紫が1国力ずつ。ブーストでジンクス3(ルイス機)を配備」
「あ、そいつの指定国力…緑1と紫1か」
ミキオは出されたカードを見てから「なるほど」と言った。
彼は、自分でも引いた緑セットの中身をよく確認していなかったから、今までのジンクスのように緑2と紫1の指定国力が必要なカードだと思い込んでいたのだ。
「ちなみにヴァラヌスもおんなじ指定国力だぜ」
「あるのか…?手札に」
「ないよ、戦闘フェイズ」
タンサンはもう1枚のジャブロー残留部隊の国力変更を宣言して、手札にデュアルカードがないことを体言する。
戦闘フェイズを告げるも、特殊兵装を宣言しただけでターンを終えた。
「ドロー…」
「配備フェイズ、ボルトガンダム(ガイアクラッシャー)を配備!」
「新カード。やっぱりそれ入れたかぁ~。でも、その代わりにシャイニングガンダムあたりを抜いたんでしょ?」
ミキオは「1枚な」と軽く答える。
大会ではないから、バレたからどうってことはないということらしい。
「だよね、こっちはジンクスをロールインしてる間にリングハンデスされるのがニガテだからさ~」
「おいおい待てよ、俺はまだ『これで終わり』なんて言ってないぜ」
タンサンが「あ?」と変な声を出す。
「アルゴ・ガルスキー!このカードをガイアボルトにセット、テキストでリロールするぜ」
「戦闘配備の代わりかよ~!」
「戦闘フェイズ…リングに出撃だ!」
規定で出られるユニットはいない。
タンサンは観念して手札をシャッフルする。
手札から黒基本Gが廃棄された。
「じゃあ本国に5ダメージで」
「ターンエンド」
ミキオはボルトガンダム(ガイアクラッシャー)を帰還させターンを終えた。
ボルトガンダム(ガイアクラッシャー)交戦することが前提のこのユニットに、攻防に使うことが出来るアルゴ。
専用機だけに強力なセットグループの完成だ。
「ドロー…配備フェイズ、緑基本Gを配備」
「Gが枯渇したりはねえよな」
すんなり出てきた4枚目のGにミキオは少し残念そうにそう言った。
タンサンは「まあね」と苦笑する。
「ジャブロー残留部隊で黒を発生、まずは王留美。2ドロー後に~、ブーストでこのカード!」
タンサンは1枚のユニットカードを表にした。
23弾のジンクスだった。
「このカードは場に出た場合、捨て山の中からジンクス系をもつユニットを何枚でもハンガーに移せる!」
「さっきからやたらに資源払いまくってるのはそういうことかよ」
「まあね~。おれっちだって考えてるんだぜ?」
タンサンは10枚以上ある自分の捨て山のカードを確認する。
何枚ジンクス系のユニットを入れているかはミキオには予想がつかなかったが、何枚かハンガーに行く予感がした。
「このカード達を移すぜ」
タンサンがハンガーに送ったのはジンクス3、ジンクス3(ルイス機)、そしてスローネヴァラヌスだ。
「随分な枚数が移った」とミキオは手札と場のカードを見比べる。
タンサンの手札次第だが、ギリギリ攻略は出来そうだ。
「こいつが落ちてるのは特殊兵装で見たから知ってたんだぜ。ハンガーのARユニット、ジンクスヴァラヌスをプレイ!」
「スローネだろ、それ。スローネヴァラヌス」
ミキオはタンサンの間違いを指摘するが、当の本人は「そうとも言う」と言っただけだ。
ヴァラヌスは戦闘配備を持ち、さらに手札やハンガーにあるジンクス系やスローネ系ユニットを除外することで敵カードを手札に戻すことが出来る。
24弾プレリュードスターター専用のレアであったため、アドバンスレアと同様の箔が押されていた。
タンサンは箔押しカードが好きだった。
彼がガンダムウォーを始めた頃には10thレアなどの箔押しレアが既にあり、10thイナクトやアグリッサなどを好んで使用していた。
曰く「スペシャルな感じが出て良い」そうだ。
「戦闘フェイズ、特殊兵装を宣言」
「…了解。帰還ステップにアルゴをリロールしておくぜ」
ジンクスはもう場に出たのだから、捨て山を増やす必要もあまりない。
となると、本当に専用兵装・擬似太陽炉がデッキにあるのか?
ミキオがそんことを考えているうちに、タンサンは3機全部の特殊兵装を宣言して「ダメだ。ない」と言ってターンを終えた。
「ドロー、配備フェイズ。危なく国力が足りなくなるところだったぜ…ギンガナム軍を起動」
引いたばかりのニュータイプの排除を表にするミキオ。
続けてガンダムシュピーゲル(シュツルム・ウント・ドランク)をプレイする。
タンサンはさらに増えるMFユニットに、少したじろぐ。
いかにヴァラヌスが優秀なバウンス能力を持っていたとしても、対応しきれない数になる前に勝負を決めなければいけない。
「戦闘フェイズ。ガイアボルトをリングに、ウント・ドランクを宇宙に出撃だ!」
「防御…このターンは手札は譲れないね。リングにジンクスヴァラヌス!」
「スローネな。オーケー!使うか?テキスト」
ミキオは誘うようにハンガーの2枚のジンクス系を指差す。
ここでテキストを使わなければヴァラヌスは撃破され、おまけにガイアクラッシャーのテキストも起動する。
タンサンもそれはわかっていたのか、迷わず宣言する。
「アルゴに使いたい」
「明鏡止水。いつもこれで悪りぃーけどな」
ボルトガンダム(ガイアクラッシャー)のセットグループはこれで移動しない。
「じゃあウント・ドランクを戻す」
タンサンは不思議とがっかりせず、気を取り直してそう宣言する。
ボルトガンダム(ガイアクラッシャー)がいくら攻撃力を上げても攻撃が貫通するわけではない。
タンサンにはそういう余裕があるように見えた。
「このままヴァラヌスは戦闘ダメージで撃破!」
「明鏡止水は仕方ないよね」
「さらに、ガイアボルトが4ダメージを受けたから…そっちの配備エリアにいるルイスジンクスも撃破!」
タンサンはユニットを2枚とも廃棄し、残るはジンクスのみ。
「ターンエンドだ」
「だからガイアクラッシャーと交戦したくなかったんだよなぁ~」と愚痴りながらも、タンサンは手札にカードを加える。
手札に加わったカードはジンクス3(ルイス機)。
なんだ、3枚全部引いたのか。
ぼけっとそう考えて、タンサンはジャブロー残留部隊で黒国力を発生させた。
「ハンガーのジンクス3をプレイ」
「…ネタ切れか?」
ジンクス3は他のジンクス系がいれば緑国力を発生するテキストを持っている。
5ターン目にブーストを持たないこのユニットをプレイするということは…もうヴァラヌスはない。
ミキオはヴァラヌスの脅威を可能性から消した。
「そして、ケリィ・レズナー《EB1》でジャンクヤードのジンクスヴァラヌスを場に」
「げ…」
ミキオは「スローネだろ」と突っ込むのも忘れ、思わず声を出す。
脅威再び、だ。
「戦闘フェイズ、ジンクスで捨て山を見たときにはなかったんだから、そろそろ…」
そう言いながらタンサンは特殊兵装を宣言した。
あたり。ケリィとヴァラヌスの資源コストに擬似太陽路が入っていたのだ。
「セットされた擬似太陽路のテキストを宣言して、全ユニットに+1修正を。さらにヴァラヌス、ジンクスが出撃」
両面攻撃で9点のダメージだ。それなりに大きい。
「攻撃規定後、手札からジンクスを除外してアルゴをバウンスは」
「…許可」
「じゃあこれも通るってことかな?手札からさらにジンクス3除外してボルトも手札に」
ミキオはカードを手札に移す。
しかし、相手の手札はこれで随分減った。
9点の攻撃のためにこれでは…次のターンにまた出るガイアボルトとアルゴをどうする気だよ。
と彼は思った。
「戻ったね。おれっちの勝ちだ…報復行動」
タンサンはニヤリと笑い、手札からコマンドをプレイした。
「おま…」
ミキオは慌てて相手の配備エリアを見た。
配備フェイズに黒を宣言したジャブロー残留部隊を含めた4枚のGカード。
そして、今更意味のないと思っていた”国力を発生する”ジンクス。きちんと5国力発生していた。
「いやー、リングハンデスで国力落とされたときはヒヤヒヤしたよ。対ガンダム調査隊もこのデッキにはないからね~」
タンサンはそう言って、報復Xを2で宣言した。
ミキオの場にはコインが乗ったギンガナム軍を含めて4枚のGカードしかない。
ミキオが報復行動のXを1で済ませたとしても、残るカードはギンガナム軍の2国力だけ。
次にボルトガンダムが出るまでに10ダメージ以上の打点を受ける…。
「オレはX=1で」
しかし、そもそも手札に国力要素がない彼にとって、この9ダメージで国力3枚を失うのは痛手。
結局、ガイアクラッシャーを再配備するまでに2回G事故を起こして、本国は削りきられてしまった。
×××
「本当は最速4ターンで報復行動キメめられるんだぜ?」
タンサンはえっへんと胸を張った。
「そういう系は対処できねーなんだよな…」
ミキオはカードをしまいながら、「先攻最速の月光蝶で勝負すればいいのか」などと言って首を捻った。
「もう1回!」
「おっけ。今度は4ターン目に決め…」
ミキオの売り言葉に、タンサンが買い言葉を口にしようとして…負のオーラを出しながら二人を睨むナツキに気づいて言葉を濁す。
ルールブックを読み終えたのかわからなかったが、顔に『飽きた』と書いてあった。
「…仕方ねー」
それを見たミキオはシャッフルしようとしてたカードをしまう。
タンサンもそれに習う。
「駅前のマック行こうよ」
「あれ?ナッちゃん門限いいの?」
途端にニッコリ笑ってそう提案したナツキに、タンサンは時計を指差して「はて?」と声を上げた。
「あ、うん。ウチのパパが『高校生になるから』ってのばしてくれたよ、門限」
ナツキの家は親父が厳しい。
金持ちであるが、小遣いだってミキオたちと変わらないくらいだし、門限にもうるさかった。
ナツキが小学生だった頃に甘やかしすぎた反省から、中学に上がった頃から厳しくなったらしい。
が…ナツキのあの性格が出来上がってしまった後にそんなことをしても、手遅れだったのではないか。
ミキオは確信を持ってそう考えていた。
三人は店のお兄さんにデュエルスペースを使い終わったことを伝えると、駅前のマク○ナルドに向けて歩き出した。
ナツキが無理やりミキオの手を握り、ミキオが本気でそれ振りほどきながら「ふざけんな」を連呼する。
そんな光景を苦笑交じりに見ていたタンサンが「そういえば、姉さんとはどういう約束になった?」と、赤信号で止まった時に言った。
「ん?あぁ、言い忘れてた。明日姉さんの家に行くことになったぜ」
ミキオは思い出したように携帯が入っているだろう左ポケットを小突いた。
それを聞いて、うっとおしくまとわりついていたナツキの指がピクリと止まる。
「えー!家行くの!?ウチの家に来たこともないのに?」
ナツキはぐいと顔を近づける。
マスカラでバッチリ決めた彼女の大きめの瞳には、変な目力があった。
「バッカ。オメーの家には行く理由がないだろ」
「ひっどー!」
「信号、青だ」
タンサンは信号を指差してそう言った。
それを合図にミキオは――結局目的地は一緒なのだが――ひとまず逃げた。
つづく
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掲載日:10.03.03
更新日:10.04.01
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