#60 - (2009/05/26 (火) 14:17:06) の最新版との変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
*#60 目指したものは…
「配備フェイズ、ジョッシュ・オフショーをトッシュ機にセット」
「はい」
!
ジョッシュでジャンクからユニット…おそらくツヴァイを釣って攻撃に出せる即効性…!!
このタイミングで?
「嘘~っ」
「では、攻撃ステップ規定前にジョッシュのテキストを起動。地上エリアにゼク・ツヴァイを出し、このキャラを移す!」
あたしの小さな悲鳴を無視し、煉さんは宇宙にそれを出す。格闘8の大型ユニット。
そして、トッシュ機とイオージマも宇宙エリアに出撃する…その攻撃力は11。あたしの本国を0にするのに十分な戦力だ。
「言っただろ?”次に攻撃するときは勝つときだ”と」
煉さんはニッと笑った。
あたしはそれにニコッと笑顔で返す。
シャクティが与えてくれたもの…それは2枚目のキラ・ヤマト!
あたしが昔と同じ攻撃バカだと思ったら大間違い。確かに女戦士で手札が削られるようじゃ負けだったけど、カウンターを握っておくのも忘れちゃいない。
あたしは思い返す。
楽しければいい?負けてもかまわない?
そんなの御免だ!あたしは勝って、彼女を乗り越え先に進むわ!それこそが…!
「…私のガンダムウォー、か」
「え?」
あたしは急に口を開いた煉さんに思わず聞き返す。
「お前はさっき『押し付ける』だのなんだのと言っていたが、それはお前の思い違いだな」
「…?」
まるでゲームが終わったかのように、煉さんは静かに続ける。
「己も、相手も、楽しめるに越したことはない。しかしな、ゲームなんだ。人それぞれ『目標』『勝敗』大いに結構。”だれもお前に押し付けちゃいない”」
あたしは黙って聞く。
なにかの時間稼ぎ?いや、そんなの意味ない。彼女の言うとおり、この攻撃が最後。
「何を勘違いしたか知らないが、つまらない時間を浪費したようだな」
「つまらない…時間?」
そのきつい言葉に、あたしは煉を睨む。
…エクシアを買うために、無理に作り笑いして働いたバイト。
…夜更かしして作ったデッキ。
決してつまらない時間なんかじゃ…。
「必要だったのよ!それを…あんたって人はぁ!!」
手札を握るあたしの手に力が入る。
あたしがあなたを倒す!
「ふん、お前がどういうゲームをしようが、私には”全く興味がない”。ただ、立ちふさがる全てを殲滅するのみだ。攻撃ステップ規定後!」
「…!!」
煉さんは会話の終わりを告げ、そして手札のカードを表にする。
「偽りの会談!」
古いカード。テキストは…
>(常時):全てのプレイヤーは、手札を全て自軍本国の下に移す。その場合、全てのプレイヤーは、移した枚数までの任意の枚数のカードを引く。
!
「あ…あぁ」
あたしのうめき声。
手札のハイマットとキラは無常にも”攻撃ステップ”に本国の下に行ってしまう。
本命と目されていただけあって、対策はギリギリの最後までとってあった…ってこと。
「まっ…まだよ!」
あたしはドローする。しかし、もう分ってるんだ。残りの本国12枚なんて。
内部調査とサラサで送ったカード…だからね。
そう。…対抗策はなし。
「なんで。なんで…」
あたしは精一杯努力したよ?
なのに…なんでなのよ!
「それにな、私が言う『勝ち負け』は、薄っぺらな表面上のもんじゃない。もっと本質的な部分だ」
「…」
「どんなに圧倒的なカードやデッキを使おうが、上手いプレイングができようが、それがなっていない限りそういう意味ではいつまで経っても負けなんだ」
棘のある言葉がつづく。
あたしは心苦しくなって俯く。
言ってることはわかるような気がする。
「『勝って先に進む』と言ったが…”どこに”行こうとしていたのだ?」
「どこに…?」
あたしは自分に問いかける。
…エクシアを買うために、無理に作り笑いして働いたバイト。
…夜更かしして作ったデッキ。
ホントだ。何やってんだろ、あたし。
「…」
負けたあたしがよくわかってる。
このまま勝っても、あの”どうしようもないわだかまり”は取れなかったかもしれない。
「それに『押し付ける』ほど、私は他人に興味はない」
「あははっ。そうですね」
煉さんは冗談を飛ばし、立ち上がる。
まだ対戦が終わってないテーブルの横を通り、入り口に向かう。
あたしはその姿をじっと見つめた。
×××
大会は無事終了した。
煉さんはあの後案外あっけなく負けて、優勝は公旗。
「あーあ」
あたしは手を組んで伸びる。
…妙に晴れ晴れした気分。外に出て思いっきり走り出したいような、そんな感じ。
「どうした?」
武志があたしのそばに来る。
そういえば、こいつにも色々心配させたんだろうね。
「ううん。あたし何やってたんだろうって。…ゴメン」
あたしは親友に小さく頭を下げる。
「は?何がだよ?」
「色々。…気が向いたら話すわ♪」
うん。
煉さんを倒さなくても、勝たなくても、わだかまりは消えた。
あたしは明かりが差し込むほうを見て、右手をグッと握り締めて高く掲げる。
「やれることはいくらでもあるわ!」
----
[[前へ>#59]] [[次へ>#S2E]]
----
*#60 目指したものは…
「配備フェイズ、ジョッシュ・オフショーをトッシュ機にセット」
「はい」
!
ジョッシュでジャンクからユニット…おそらくツヴァイを釣って攻撃に出せる即効性…!!
このタイミングで?
「嘘~っ」
「では、攻撃ステップ規定前にジョッシュのテキストを起動。地上エリアにゼク・ツヴァイを出し、このキャラを移す!」
あたしの小さな悲鳴を無視し、煉さんは宇宙にそれを出す。格闘8の大型ユニット。
そして、トッシュ機とイオージマも宇宙エリアに出撃する…その攻撃力は11。あたしの本国を0にするのに十分な戦力だ。
「言っただろ?”次に攻撃するときは勝つときだ”と」
煉さんはニッと笑った。
あたしはそれにニコッと笑顔で返す。
シャクティが与えてくれたもの…それは2枚目のキラ・ヤマト!
あたしが昔と同じ攻撃バカだと思ったら大間違い。確かに女戦士で手札が削られるようじゃ負けだったけど、カウンターを握っておくのも忘れちゃいない。
あたしは思い返す。
楽しければいい?負けてもかまわない?
そんなの御免だ!あたしは勝って、彼女を乗り越え先に進むわ!それこそが…!
「…私のガンダムウォー、か」
「え?」
あたしは急に口を開いた煉さんに思わず聞き返す。
「お前はさっき『押し付ける』だのなんだのと言っていたが、それはお前の思い違いだな」
「…?」
まるでゲームが終わったかのように、煉さんは静かに続ける。
「己も、相手も、楽しめるに越したことはない。しかしな、ゲームなんだ。人それぞれ『目標』『勝敗』大いに結構。”だれもお前に押し付けちゃいない”」
あたしは黙って聞く。
なにかの時間稼ぎ?いや、そんなの意味ない。彼女の言うとおり、この攻撃が最後。
「何を勘違いしたか知らないが、つまらない時間を浪費したようだな」
「つまらない…時間?」
そのきつい言葉に、あたしは煉を睨む。
…エクシアを買うために、無理に作り笑いして働いたバイト。
…夜更かしして作ったデッキ。
決してつまらない時間なんかじゃ…。
「必要だったのよ!それを…あんたって人はぁ!!」
手札を握るあたしの手に力が入る。
あたしがあなたを倒す!
「ふん、お前がどういうゲームをしようが、私には”全く興味がない”。ただ、立ちふさがる全てを殲滅するのみだ。攻撃ステップ規定後!」
「…!!」
煉さんは会話の終わりを告げ、そして手札のカードを表にする。
「偽りの会談!」
古いカード。テキストは…
>(常時):全てのプレイヤーは、手札を全て自軍本国の下に移す。その場合、全てのプレイヤーは、移した枚数までの任意の枚数のカードを引く。
!
「あ…あぁ」
あたしのうめき声。
手札のハイマットとキラは無常にも”攻撃ステップ”に本国の下に行ってしまう。
本命と目されていただけあって、対策はギリギリの最後までとってあった…ってこと。
「まっ…まだよ!」
あたしはドローする。しかし、もう分ってるんだ。残りの本国12枚なんて。
内部調査とサラサで送ったカード…だからね。
そう。…対抗策はなし。
「なんで。なんで…」
あたしは精一杯努力したよ?
なのに…なんでなのよ!
「それにな、私が言う『勝ち負け』は、薄っぺらな表面上のもんじゃない。もっと本質的な部分だ」
「…」
「どんなに圧倒的なカードやデッキを使おうが、上手いプレイングができようが、それがなっていない限りそういう意味ではいつまで経っても負けなんだ」
棘のある言葉がつづく。
あたしは心苦しくなって俯く。
言ってることはわかるような気がする。
「『勝って先に進む』と言ったが…”どこに”行こうとしていたのだ?」
「どこに…?」
あたしは自分に問いかける。
…エクシアを買うために、無理に作り笑いして働いたバイト。
…夜更かしして作ったデッキ。
ホントだ。何やってんだろ、あたし。
「…」
負けたあたしがよくわかってる。
このまま勝っても、あの”どうしようもないわだかまり”は取れなかったかもしれない。
「それに『押し付ける』ほど、私は他人に興味はない」
「あははっ。そうですね」
煉さんは冗談を飛ばし、立ち上がる。
まだ対戦が終わってないテーブルの横を通り、入り口に向かう。
あたしはその姿をじっと見つめた。
×××
大会は無事終了した。
煉さんはあの後案外あっけなく負けて、優勝は公旗。
「あーあ」
あたしは手を組んで伸びる。
…妙に晴れ晴れした気分。外に出て思いっきり走り出したいような、そんな感じ。
「どうした?」
武志があたしのそばに来る。
そういえば、こいつにも色々心配させたんだろうね。
「ううん。あたし何やってたんだろうって。…ゴメン」
あたしは親友に小さく頭を下げる。
「は?何がだよ?」
「色々。…気が向いたら話すわ♪」
うん。
煉さんを倒さなくても、勝たなくても、わだかまりは消えた。
あたしは明かりが差し込むほうを見て、右手をグッと握り締めて高く掲げる。
「やれることはいくらでもあるわ!」
おわり
----
[[前へ>#59]] / [[SeasonTOP>あたしのガンダムウォーSeason2]] / [[エピローグ>S2E]]
----
txt:Y256
初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:08.12.19
更新日:10.04.14
----
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: