「#7」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る
#7 - (2009/04/18 (土) 09:36:08) のソース
*#7 予約って大切よね 「大きいところの大会は、予約が必要なほど混む。よく考えたらそうよね」 あたしは、頬杖をつきながらマックシェイクのストローをくわえ、窓越しに通りを見た。藤野はハンバーガーを頬張りながら「わりぃ…」と言った。 今日は10時からの大会に出るために、わざわざ町に出た。でも、大会は予約でいっぱい。あたしたちは仕方なく、午後の「ブースタードラフト大会」に空きがあったので登録してきた。 「ブードラ出るなんて考えてなかったから、俺金ギリだぜ?」 「そんなに言うなら無理して出なくてもよかったのに~」 愚痴る松岡に、あたしは冗談半分で言った。でも1500円って結構な出費よね…服買ったから、あたしの財布も結構ピンチかも。 「だって20弾とエクステ2だったら、いいカード出そうじゃん?あそこシングルあるって言っても結構高かったしな」 松岡が続ける。たしかに、大きな店だけあってシングルカードの種類は豊富だった。 …あ、 「藤野?」 「なんだ?」 「バカ!」 こっちを向いた藤野に、あたしは罵声を飛ばす。 「なんだよ急に!」 「エクシアの値段見た?ノワールの軽く4倍じゃない!もしかしてあんた、知っててトレードしたの!?」 そう。さっきの店のエクシアの値段を見て、あたしは自分がシャークされたことに気付いたのだ。 「い、インジャも出したじゃん?」 藤野は苦笑いで答える。やっぱ知っててやったのかよ! 「最低~!帰りカラオケおごりね」 あたしは特別に釈明の余地を与えてあげた。 「おい、そろそろ行ったほうがよくないか?」 松岡はいつの間にかトレーを片付け、立ち上がっていた。 「そうね」 「…だな」 あたしは藤野にそっぽむいて立ち上がった。 --- あたしたちは余裕を持ってマクドナルドを出たはずなのに、カードショップ『CKG』に入ると案外ギリギリな雰囲気だった。 「では全員そろいましたね?これからパックを配ります」 店員さんがそう言った。結構年配の店員さんで、”マスター”って呼ばれてそうな感じ。 参加者は全員で8人。参加費とかも高いから、普通の大会より人集まらないのかな?午前中の大会の参加者だろうか、まだ対戦スペースには何人かの人がいて、ブードラを見学してる人もいた。 あたしの手元にもブースターが5パック手渡される。構成は「流転する世界」3パックと「エクステンションブースター2」2パック。 2枚しか持ってないからハッキング出るといいなぁ。 「では1パック目、はじめてください」 店員さんが言う。1パック目は「流転する世界」… レアはキラ・ヤマト。PS装甲と相性のいい白キャラだ。でも、ブードラで重要なのはやっぱりユニットよね…このパックだと、めぼしいのはバーザム改とアッグ。 あたしはアッグをピックした。 「ドラフト!」 掛け声と共に左の人からカードがまわる。結局1パック目が終わるまでにあたしは赤、緑のカードを多くピックすることになった。 2パック目、3パック目も順調にカードをピックしていく参加者たち。あたしの右側に座った藤野は、終始微妙そうな顔をしていた。 「4パック目、はじめてください」 そう言われて、あたしはエクステ2のパックを剥く。さっきはレアが悪かったからなぁ…お? パックから現れたのは、緑の大型高機動ユニット、ノイエ・ジールと00コストの強力な4国ユニット、ガンダムデュナメスだった。豪華すぎ! 「うーん、どうしよ…」 思わず口から言葉が漏れる。それに気付いた藤野があたしのほうを見る。「引きが悪いから、いいのまわせ!」っていう視線を感じた。 よし、あたしはノイエ・ジールで勝負よ!デュナメスは藤野にまわしたげる。 5パックの全てのカードが分配され、デッキ構築が始まる。 あたしは、ブースタードラフトという遊び方が大好きだ。普段は誰も気にも止めないようなコモンカードや、実用向きじゃないレアが活躍できる数少ない場だからね。 「よし、完成」 スリーブに入った50枚のカードをシャッフルする。 対戦相手はクジで決めてあり、あたしは向かいに座ったこの人と勝負だ。見慣れたスコアシートには『コバヤシ ケンジ』と書いてある。外人? そう思ってあたしは対戦相手の顔を見る…めがねをかけた男性、どう見ても日本人。名前は見やすいようにカタカナなんだ。 「「よろしくお願いします」」 店員の合図で、お互いに礼をしてゲームを始める。さぁ、行くわよあたしのブードラ! じゃんけんで勝ったあたしが先攻だ。 「先攻もらいますね。緑Gを配備、そしてアッグを配備してターン終了です」 ターン終了を宣言する。相手はドローし場にGを配備した。色は…緑!同色だ。 「僕のターンだお。サイド3を配備してターン終了ぅ」 「あたしのターン、黒Gを配備して、アッグを地球に出撃」 本国にアッグの攻撃が通る。ブードラは基本的にユニットでの殴り合いが勝負の鍵。まずは一歩先を行かせてもらうわ。 …にしてもこの対戦相手、コバケン(勝手に略)ノリノリだなぁ…。あたしはそんなことを考えながら対戦相手を見る。コバケンはあたしの視線に気付いたのか、「何かぁ?」と言った。 「あ、いえ。ターン終了です」 あたしが宣言し、コバケンはドローする。配備フェイズに2枚目の緑Gを配備しただけでターンを終了する。緑G2枚だから何もできないのかな? ブードラだと色を絞ったとしても単色のデッキは作りづらいだろうか、あと1色…何かあるわね。 あたしはターンを開始し、ドローする。うゎ…国力こなかった。 「攻撃ステップに入っていいですか?」 あたしはしぶしぶ宣言する。おっかしいなぁ、G事故しないように国力20枚くらい入れたはずなのに…。コバケンはノリノリで許可を出す。 アッグを地球に出撃させて攻撃は通ったけど、2点だ。早く殴り始められたけど、次もGじゃなかったら本格的にやばいなぁ。 コバケンのターンになり、彼はドローしたカードがよほど良かったのか、鼻歌まで歌いだす。…恥ずかしくないのか? 「サイド3にシャア・アズナブルをセットするお!」 緑Gを場に出した後に、コバケンはサイド3にキャラクターをセットする!サイド3にセットしたってことは…専用機がある!? 「攻撃ステップ、シャアの効果で手札からシャア専用ゲルググを出すよぉ♪」 まさかブードラでシャアの効果使われるとはね…!早くどうにかしないと、このまま本国がもたない! あたしはシャアゲルググの6点を本国に受け、自分のターンを開始した。ドローしたカードは待望の緑G! 「緑Gを配備して、このカードをセットするわ」 あたしは手札からオリヴァー・マイを緑基本Gにセットする。破壊されたユニットを捨て山の上に移して、自軍ユニットに+1/+1/+1コインを乗せるキャラ。 …よく考えたら、ジャンクヤードを利用するノイエ・ジールとの相性は悪いわね… 「ゾゴックとラ・トゥールを配備」 あたしは2枚のユニットを場に出す。ゾゴックはアッグがいるからリロールイン!緑指定さえ満たせればこんなもんよ!…シャアへの対抗策は、ないわけじゃない。あとは引けるかどうか。 「アッグを先頭、ゾゴックを射撃で部隊を編成して地球に出撃、ゾゴックの効果を使うわ!」 あたしは意気揚々と攻撃に出撃させる。余裕があるように見せなくちゃ。それにリロールで防御に残しても、シャアはきっと宇宙に出撃する。 「5点受けるお。君がアッグ系をピックしてたんだねぇ。どうりで回ってこないわけだぁ」 「そうみたいですね」 あたしはニコッと笑ってユニットを帰還させる。ドラフトしたときのコバケンの位置は確かあたしの左の左。「流転する世界」をドラフトしたのは左周りの時だけだから、あたしが「流転する世界」の緑を確保できたんだ。 逆を言えば「エクステンションブースター2」の緑ユニットは、コバケンが集めやすい位置ってこと…! 「じゃ、僕のターン。緑Gをプレイして攻撃ステップに入るお」 また緑G?事故?それとも… 「…はい。6でいいですか?」 「あぁ、ターン終了だお」 「あ、ちょっとまってください。帰還ステップで」 あたしは手札1枚をプレイする。 「ユニオンフラッグ(グラハム機)ぃ?」 コバケンはあたしが出したユニットの名前を読む。 「はい。流転する世界の緑はあたしが握ってますよ♪」 あたしはターンを開始する。 「攻撃ステップ…」 国力もユニットもなし。攻撃にでも行くかな。 宇宙はサイド3があるから突破不可能、また地球にアッグ、ジュアッグね。 「地球にアッグとジュアッグを地球に出撃させるわ。」 「防御ステップ、”流転する世界の緑”カード赤い彗星をアッグに撃つよぉ~?」 コバケンは笑顔であたしの言葉を引用しつつ、手札からコマンドカードを出す。「流転する世界」の赤い彗星、あたしの左の人のパックから出たっての!? 「アッグは破壊されてオリヴァーの効果で捨て山の上に移ります。フラッグにコインを」 あたしはフラッグにコインを乗せる。これでフラッグは4/2/3…まだ赤い彗星の射程内だ…。 「ダメージ判定ステップにゾゴックが部隊の先頭だから、ダメージは3点でいいかなぁ?」 「…はい」 …どうする京子。相手は赤い彗星のサイクルを完成させた。今のままだと、オリヴァーでフラッグを防御5以上に改造するしか対抗策はないわ…。 あたしは少しの沈黙の後、ターンを終了した。 つづく [[前へ>#6]] [[次へ>#8]] ----