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#46 - (2010/04/14 (水) 14:39:03) のソース
*#46 湯煙に考え事を… 成り行きで、信ちゃん達と温泉ブードラをすることになってしまったあたし達。 電車を乗り継ぎ、徒歩でその温泉に向かうんだって。 「悪いね、詩織達までつき合わせて~♪」 「いいよいいよ。私も一回友達とこういうところ来てみたかったし」 あたしは隣を歩く詩織に言った。「悪いね」と言う割には鼻歌交じりだけど。 「友達と…?”松岡と”の間違いじゃないん?」 「そっ…そんなんじゃないって~!」 あたしはニッと笑って言う。 詩織は頬を赤らめて、あたしを小突く。 あたしたちの前には武志と松岡、公旗が歩き、後ろに煉さんと信ちゃん、菊池さんが歩いていた。これが今回のメンバー。 「でもすごいね、京ちゃん。うちのお父さん黙らせるなんて」 「そう?なんか無理やりだったけどね」 詩織のお父さんは松岡との交際に反対らしく、「今回の温泉の件も松岡と二人で行くのを偽装してるんじゃないか」って言われて、危なくいけなくなるとこだったわけ。 まー松岡も行くのは事実だけど…とりあえず、あたしが詩織の家に行って「女子だけの集まりです!」って断言した。 「バレたら、きっと詩織外出禁止だねー」 「え~。本当にそうなったらどうしよ」 そんなことを言ってる間に、前を歩く武志が「見えた!」といったのが聞こえた。 あたしたちは前を見た。 *あたしのガンダムウォー ~激闘!?温泉ブードラ篇~ 「じゃ、17:30に飯でその後にブードラ、それまでは各自自由でいいかな?」 チェックインしてあたしと詩織、煉さんがいる女子部屋に信ちゃんが顔を出す。 あたしは荷物を置きながら「大丈夫です」と言った。信ちゃんはそれを聞いて顔を引っ込める。 「煉さんは、前にここに来たことあるんですか?」 あたしは浴衣に袖を通しながら、何気ない質問を口に出す。 どのくらい前からこの企画があるかわからないから、もしかしたら煉さんも来たことあるかもしれないしね。 「いや、初めてだ。小娘たちは?」 「あたしたちも初めてです。てか、小娘ってやめてくださいよ。あたしにはちゃんと本田京子って名前が」 「あら失礼。信一郎たちが”お嬢さん”って言うもんだから名前知らなかったわ」 煉さんはそう言うと、部屋の襖を開けて出て行った。 外にタバコでも吸いに行くのかな? 「さ、あたしたちも行くよ?」 「え?」 あたしは気を取り直し、帯を締めている詩織に言った。 何処に行くの?と言う詩織の表情。決まってるでしょ? 「温泉!」 ××× あたしは湯船の縁に寄りかかる。 そういや、こういう温泉に来るのなんて何年ぶりかしらね。 「そういえば”ブースタードラフト”って何?」 隣に座った詩織が、思い出したように言った。 そういえば急に誘ったから、ブードラの説明なんてしてなかったっけ…。 「あー。後で説明するね。ちょっとしたコツがあってね」 「うん」 あたしは詩織の横顔を見ながら続けた。 女のあたしがいうのもおかしな話だけど、詩織は美人さんだ。松岡なんかにはもったいないよホント。 あーだめだ。こんなことばっかり考えると自己嫌悪はいるから止め。 「露天風呂いかない?」 「いいよ~」 あたしは頭を振りながら、立ち上がって言った。 時間が時間だからか、温泉の中には数えるくらいしかお客さんはいなかった。露天風呂はどうだろ? あたしは扉を開け、秋の少し寒い空気を肌に感じながら、タオルを投げ捨てて風呂に足から入る。 「京ちゃん…」 「どうしたん?」 あたしはズカズカと風呂に入る。 「ずいぶん開放的だね」 「そう?人いないから大丈夫しょ?」 あたしは、露天風呂を見渡しながらそう言って固まった。 「まあ正論ではあるな、本田」 誰もいないと思った露天風呂の端に、見たことある怖い顔の人。 煉さんだ。 「あ」 「なんだ?私が温泉を楽しむのは想定外か?」 煉さんは、おかしそうにあたしを指差した。右腕で。 前は驚いてあんまり直視できなかった火傷が、そこにあった。詩織もそれに気付いたのか、黙る。 二人を別れさせた”それ”は自分の傷のように痛々しく、でもどこか悲しい。 あたしがああなったら…もしああなっても、武志はあたしのことを好きでいてくれるかな…。 「ん?いつまでそうしてる気だ?私はお前の裸になんぞ興味ないぞ?」 冗談めいた口調で言った煉さんの台詞で、我に帰る。 あたしなんで武志のこととか考えてるわけ?バッカみたい! 「そですよねーあはは」 あたしは肩までお湯につかる。 少し長めに外の空気に当たったせいか、お湯が暑感じる。 「ほらー詩織もタオルなんて巻いてないで、自慢の胸見せなさよー」 あたしは照れ隠しで詩織が巻いてるタオルを引っ張る。 「えー京ちゃん。自慢なんかじゃないってばー」 抵抗する詩織にあたしは立ち上がり、引っ張ろうとしたときに、足が滑った。 あたしはお湯しぶきを挙げて盛大にこけた。 「付き合ってられん…私は先に上がるぞ」 そう言って腰をさすりながら起き上がったあたしに、煉さんはそう言って露天風呂を出た。 つづく ---- [[前へ>#45]] / [[SeasonTOP>あたしのガンダムウォーSeason2]] / [[次へ>#47]] ---- txt:Y256 初出:あたしのガンダムウォー 掲載日:08.10.07 更新日:10.04.14 ----