ATAGUN@Wiki
#5
最終更新:
y256
-
view
#5 十字勲章国力
結局あの後、松岡もガンダムデッキを使用した知らないおっさんに負けて大会は幕を閉じました。
「1位 菊池さん、賞品と勲章をどうぞ」
しばらくして信ちゃんが順位の発表を始めた。準決勝で負けたあたしは、3位タイかな?2位で松岡が呼ばれる。
「3位 公旗さん 本田さん」
私と”アプサラス”の人が一緒に呼ばれた。やっぱタイなんじゃん。3位決定戦でもやればいいのに…。
そう思いながらあたしは一番端のテーブルに向かった。
そう思いながらあたしは一番端のテーブルに向かった。
「あぁ、”00の彼”の友達の」
公旗は、あたしの顔を見て始めて名前と顔が一致したようでそう言った。
「その節はあのバカがどうも。準決勝で負けたんですね」
「ガンダムが止められなくてね」
「ガンダムが止められなくてね」
テーブルの上にはGクルーザーの束と、4枚の勲章国力が並べられていた。
「勲章はお好きなのをどうぞ」
信ちゃんが言った。6色だから6位までこれをもらえるって意味だろうけど、今日は参加者7人…ほとんどの人が勲章ね。
「では、私は緑を…」
公旗は緑の勲章国力に手を伸ばした。しかし、信ちゃんがそれを止める。
「大人気ないぞ公旗。レディーファーストだ、お嬢さんに先に選ばせろよ」
信ちゃんが言った。呼び方からして知り合いなのかな?
「これは失礼、”お嬢さん”」
公旗はそう言ってテーブルの前を空けた。なんか鼻につく言い方。嫌がらせで緑の勲章でとってやろうか…。
でも初めての勲章、やっぱ白でしょ。
でも初めての勲章、やっぱ白でしょ。
「参加賞のGクルーザーと、3位の賞品の古いパックだ」
勲章を選び終わったあたしに、信ちゃんがそれらを手渡してくれる。古いパックとは「月下の戦塵」だった。
空けてみると中身は茶色のレアカードで、4国で3/1/3 条件付範囲兵器(4)のユニット、ガンダムX。…ヴァーチェがいかに化け物かわかるわ。
空けてみると中身は茶色のレアカードで、4国で3/1/3 条件付範囲兵器(4)のユニット、ガンダムX。…ヴァーチェがいかに化け物かわかるわ。
「あ、そうだ公旗…さん。今から3位決定戦やりませんか?」
不意に思いついて、私は賞品をもらっている公旗の背中に声をかけた。
「おもしろい。望むところだといわせてもらおう」
公旗はそう言いながら時計を確認する。
「ん?いや、待て。この後は用事があった。すまない”お嬢さん”、また今度だな」
そう言って公旗は折り畳み傘をカバンから出し、出口に歩いていった。最初から時間見て了承しなさいよ…。…傘?ってことは雨!?
あたしは急いで出口に向かった。空は黒い雲で覆われ、降り始めの雨がアスファルトを濡らしていた。
あたしは急いで出口に向かった。空は黒い雲で覆われ、降り始めの雨がアスファルトを濡らしていた。
「藤野ー松岡ー傘持ってないー?」
あたしはテーブルでカードを広げて遊んでいる二人のほうを見て言った。
「天気予報で降水確率50%って言ってたから、俺たちは降らないほうの50%にかけたから傘なんか持ってきてねぇよ!」
藤野が答える。こいつらマジバカだ。
「傘がないなら婆から借りるといいよ。俺が言っとくから」
またいつの間にか後ろに信ちゃん。順位の発表が終わったから店のほうに帰るとこだろう、左手にスコアシートの束があった。
「あ、ありがとうございます」
「じゃあ」
「じゃあ」
そう言って信ちゃんは引き戸を空けた。雨水のせいかドアのすべりは来た時よりいいように見える。変な音もないし。
「いつまでいる気?」
あたしはテーブルでカードを広げていた二人のところに戻った。こんなに広げていったい何のつもりだろう…。
「雨が上がるまで。かな」
藤野が言った。松岡もデッキの黒国力を勲章国力に入れ替えながら「お、賛成」と言った。
×××
結局、雨は止まないどころか強くなってきたので、あたしたちは帰ることになった。他の参加者たちはもうすでに帰っていて、空き家にはあたしたちだけになっていた。
「げっ、もう5時かよ。ずっとくもりだからわかんなかったぜ」
藤岡が言った。あたしたちは空き家を出て『カキヨ』の店内に入った。入り口のところには、来たときにはなかった”電池で動く恐竜型ロボット”の箱が積み上げられていた。いまどきこんなん売れんのかなぁ…
「カキヨ婆~傘貸してくれない?」
あたしはカウンターに歩いていった。カキヨ婆は「あぁ~信一郎がそんなこといっとったっけか~」と言って奥から傘を1本出してくれた。
「ありがと♪今度来るときに返すね」
私はそれを受け取って、二人がいるドアのほうに歩いた。外を見て二人でなにか言っていた。あたしに気付くと、松岡が外を指差した。
「雨やばくないか?もう少し弱くなるの待とうぜ~?」
藤野もしきりに頷いている。さっきもそれでだまされたんだから…。
「いいえ待ちませーん!はい、ここに傘が1本あります。持ってるのはあたし!一緒に傘で帰りたい人は文句を言わないー」
あたしは強行作戦に出る。ガラス製のドアを開け、傘を開く。
「はいはいはいはい。わかりました!」
藤野たちもそれに続く。自転車は軒下に置いていたため無事だったようだ。あたしは傘を藤野に預け、自転車の鍵を開ける。手でハンドルを押しながら道に出た。
「この傘小せぇな」
少し歩いたところで松岡が言った。…それは禁句だって。
「そう?3人の頭だけ入ればいいじゃん。ていうか、さっきからあたし濡れ気味なんだけど」
あたしは文句を言った。その直後、あたしの結った後ろ髪が引っ張られ、あたしは後ろにこけそうになる。
「京子が歩くスピード早いからだろ?」
お前か、藤野!
「ばかー」
頭を叩こうかと思ったが、手がとどかなそうなのでほっぺたをつねった。
「なんだよ痛てぇ!!悪いのはそっちだろ!?」
あたしたちが言い争いになろうとした瞬間、道路を車が通りあたしたち3人に盛大に水をかぶせていった。
「「「…」」」
「帰ろっか…」
「あぁ…疲れた」
「あぁ…疲れた」
びしょ濡れの3人は次の日、揃って風邪を引いたわけで…。
つづく
txt:Y256
初出:あたしのガンダムウォー
掲載日:08.05.20
更新日:10.04.14
掲載日:08.05.20
更新日:10.04.14