hime0207|姉さんとパッショーネ
[cm]
; bg: 居間
@bgm file="gakkou1.ogg"
@bg file="syoukouguti2.jpg" time=700
@texton
昨夜の夕食のときにに交わした姉さんとの約束を果たすべく、上級生用の昇降口前で待つ。[lr]
下級生が上級生の集まる場所にいるという――例えば上級生の教室に一人で放置されるといった――状況は、なんだか全く違う世界に独りぼっちで取り残された錯覚に陥りそうで、とても不安だ。[lr]
;↑原文 下級生が上級生の集まる場所に居るというのは、例えば上級生の教室に一人で放置されるとかいう状況は、なんだか全く違う世界に一人ぽつんと取り残された錯覚に陥るようで、とても不安だ。
本来居るはずのない場所に居る、自分たちとはブレザーに付けた校章の色が違う下級生を「何あれ?」という目でちらちら見てくる上級生達の視線は、なかなかに痛い。[lr]
こんな非常に居心地の悪い空間で待っていてくれという姉は、一体何がそこまで気に障ったのかは知らないが、どうやら相当に俺のことを恨めしく思っているらしい。[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=3 e=6 m=3
「稔くーん! ごめんね、待った?」[pcm]
そんな視線地獄に俺を置いて、かつここから救ってくれる姉さんが昇降口から現れた。[lr]
「待った。結構ね」[lr]
なにせ姉さんは、約束から15分も遅刻だ。普段は朝を除いて割と時間に正確な姉さんがここまで遅れるのは、恐らくわざとだろう。おかげで心が痛かった。[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=4 e=8 m=8
「もー、稔くん! そういうときは、俺も今来たところだよ、 って言うの!」[lr]
「なんというか、それは色々と間違ってると思うよ、姉さん」[lr]
俺がそう言うと、姉さんは可愛らしいほっぺたをややぷくりと膨らませて不満を露わにする。[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=7 e=8 m=10
「いいの、言って!」[lr]
「……イヤ、オレモイマキタトコロダヨ」[pcm]
非常に納得いかないのでカタカナになってしまったのは勘弁して欲しい。[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=5 e=6 m=6 c=1
「うん、良かった! それじゃあ、行こ? 稔くん!」[lr]
だが俺のハム大根レベルの演技でも姉さんはご満悦のようで、ほっぺたは元のすっきりした形に戻っていた。[lr]
; bg: 居間
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@texton
昨夜の夕食のときにに交わした姉さんとの約束を果たすべく、上級生用の昇降口前で待つ。[lr]
下級生が上級生の集まる場所にいるという――例えば上級生の教室に一人で放置されるといった――状況は、なんだか全く違う世界に独りぼっちで取り残された錯覚に陥りそうで、とても不安だ。[lr]
;↑原文 下級生が上級生の集まる場所に居るというのは、例えば上級生の教室に一人で放置されるとかいう状況は、なんだか全く違う世界に一人ぽつんと取り残された錯覚に陥るようで、とても不安だ。
本来居るはずのない場所に居る、自分たちとはブレザーに付けた校章の色が違う下級生を「何あれ?」という目でちらちら見てくる上級生達の視線は、なかなかに痛い。[lr]
こんな非常に居心地の悪い空間で待っていてくれという姉は、一体何がそこまで気に障ったのかは知らないが、どうやら相当に俺のことを恨めしく思っているらしい。[lr]
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「稔くーん! ごめんね、待った?」[pcm]
そんな視線地獄に俺を置いて、かつここから救ってくれる姉さんが昇降口から現れた。[lr]
「待った。結構ね」[lr]
なにせ姉さんは、約束から15分も遅刻だ。普段は朝を除いて割と時間に正確な姉さんがここまで遅れるのは、恐らくわざとだろう。おかげで心が痛かった。[lr]
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「もー、稔くん! そういうときは、俺も今来たところだよ、 って言うの!」[lr]
「なんというか、それは色々と間違ってると思うよ、姉さん」[lr]
俺がそう言うと、姉さんは可愛らしいほっぺたをややぷくりと膨らませて不満を露わにする。[lr]
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「いいの、言って!」[lr]
「……イヤ、オレモイマキタトコロダヨ」[pcm]
非常に納得いかないのでカタカナになってしまったのは勘弁して欲しい。[lr]
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「うん、良かった! それじゃあ、行こ? 稔くん!」[lr]
だが俺のハム大根レベルの演技でも姉さんはご満悦のようで、ほっぺたは元のすっきりした形に戻っていた。[lr]
@cl
@bg file="soto" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
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嬉しそうに、とてとてと歩き始める姉さん。行き先は当然、門を出て右に曲がる我が家ではなく、左に曲がるパッショーネとその近辺だ。[lr]
姉さんを追いかけるべく、姉さんの歩幅に合わせて、ややスローペースで歩き始める。[lr]
追いつく途中、姉さんが少し立ち止まり、やや不安げな顔でこっちを振り返ったが、俺の歩く姿を確認すると、再び柔らかい顔になって校門へと歩いていった。[pcm]
姉さんを追いかけるべく、姉さんの歩幅に合わせて、ややスローペースで歩き始める。[lr]
追いつく途中、姉さんが少し立ち止まり、やや不安げな顔でこっちを振り返ったが、俺の歩く姿を確認すると、再び柔らかい顔になって校門へと歩いていった。[pcm]
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@bg2 file="dscn0676" rule="縦ブラインド(左から右へ)"
@bgm file="aruhiA.ogg"
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@bgm file="aruhiA.ogg"
よもや大量に食材を買い込んでから、一日で再び訪れるとは思ってもみなかったパッショーネに着く。[lr]
一瞬、姉さんは何をするつもりで来たんだろうと思ったが、よく考えてみればフードコートなども備わっているので、普通に学校帰りの寄り道としても機能する事に思い至った。[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=5 e=3 m=6 c=1
「稔くん、一緒にパン食べる?」[lr]
そこで俺が「だが断る」と言ったらどうなるんだろうか。勿論、間違ってもそんなことは言わないが。[lr]
「うん、買いに行こう」[lr]
パッショーネの広い敷地に入り、テナントのパン屋へと向かう。[pcm]
俺がトレイを、姉さんがトングを手にして店内に入ると、姉さんは真っ先に菓子パンのコーナーに向かう。狙う先には、やはりコロネか。[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=5 e=1 m=5
「いっちゃんは昨日、何を買ったの?」[lr]
姉さんが聞いてくる。[lr]
「伊万里は……ホワイトチョココロネだったかな?」[lr]
とんでもなく甘そうな物を、嬉々として食べていたのは覚えている。[lr]
そのくせ体重がどうだのを延々と語って聞かせるので、何やら強い矛盾めいた物を感じていたが、努力してでも好きな物を食べたいという気持ちは理解出来るので黙っておいた。[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=1 e=6 m=1
「ホワイト……じゃあ、お姉ちゃんは黄金のコロネにする」[lr]
黄金のコロネとは、コロネを三つ繋げて出来た最強のコロネとでも言うべきコロネで、パッショーネのパン屋さんにおける三大名物の一つになっている。[pcm]
横に繋がった三つのコロネの中身はそれぞれチョコ、ホワイトチョコ、あんことなっており、味もボリュームもカロリーも最強の一品だ。[lr]
一つ一つはやや小振りとはいえ、やはり全体は大きめだ。しかし、姉さんはひょいっと軽々トングで掴み、俺の手の中にあるトレイに移した。[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=3 e=1 m=6
「稔くんは何食べたい?」[lr]
お姉ちゃんがとってあげるぞっ、という表情をして俺を見つめる姉さん。とりあえず、隣で姉さんが頬張るであろう黄金のコロネに胸やけを起こさないよう、甘いパンは避けておこう。[lr]
「それじゃあ、アレにするよ、プロシュートハムのサンドイッチ」[pcm]
たまたま周りを見渡して目に付いた、かつ美味しそうな物を指定する。[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=4 e=6 m=10
「プロシュートサンド? 何処?」[lr]
「あっちあっち」[lr]
サンドイッチの棚の上の方を指さす。[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=3 e=6 m=9
「…………」[lr]
姉さんは無言でサンドイッチの棚に近づき、トングを伸ばした。[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=5 e=6 m=7
「…………あ」[lr]
姉さんが棚に近づいて初めて気づき、思わず声が出た。俺の目線と同じような高さにあるあのサンドイッチ。姉さんには届かないんじゃないだろうか。[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=7 e=6 m=8
「………………」[pcm]
案の定、姉さんはトングを伸ばした姿勢のまま固まってしまった。途中で片足立ちなどをして必死に背を伸ばそうとしていたが、無駄だと悟ったようだ。[lr]
ややあってから、姉さんがクルッと顔だけでこっちを振り返る。[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=9 e=7 m=11 c=1 t=2
「稔くんのいじわる」[lr]
先ほど昇降口で見た以上の不機嫌に顔を染めた姉さんが、口を少しとがらせて泣きそうな顔でこっちを見ている。[lr]
「いや、ごめん姉さん。悪気は無いんだ、本当に。自分で取るよ」[lr]
売り物のパンを素手で掴むのは心苦しいが、結局自分で買うわけだし、一回くらいは目を瞑ってもらえると思いたい。[lr]
が、しかし。サンドイッチの棚に近づくと、姉さんの拳が腹めがけて飛んできた。[pcm]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=9 e=7 m=11 c=1
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=9 e=7 m=11 c=1 size=L
@quake time=500
「ウぇッ!?」[lr]
姉さんも手加減しているのか、そこまで痛いわけではないが、姉さんの肩の位置がみぞおちの近くにあるので、非常に危ない。危険が危ない。[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=7 e=9 m=10 c=1 size=L
「駄目ぇ! お姉ちゃんが取るの!」[lr]
トングをぶんぶん振り回しながら、姉さんはそんなことを言う。無茶な。[lr]
とりあえず、危険なので一旦トレイをその辺の棚に置く。[lr]
そして駄々をこねる姉さんの脇腹に手を回し、ホールドした。[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=6 e=6 m=5 c=1 size=L
「これなら取れるでしょ?」[lr]
ホールドしたまま姉さんを持ち上げ、サンドイッチの前に向かうと、姉さんは一瞬固まって、ややあってから「うん」と頷いた。[pcm]
トングでサンドイッチを掴むのを見計らって、姉さんを地面に下ろす。[lr]
姉さんは突然の視点上昇に驚いたのか、やや惚けた様な表情でトングに掴んだサンドイッチをトレイに載せた。[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=3 e=6 m=10 c=1 size=L
「稔くんの視線って、あんなに高いんだ……」[lr]
姉さんは聞こえるか聞こえないかの境目ほど微妙な声でそう呟いて、やや朱みのさした頬に手を当てた。[lr]
そうしてからゆっくりトングを逆手に持ち変えると、[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=7 e=6 m=11 c=1 size=L
「お姉ちゃんは子供じゃないんだぞ! 持ち上げるなぁ!」[lr]
@quake time=1000
と言いながらトングで殴りかかってきた。[lr]
「何で!?」[lr]
訳も分からず数発殴られた。トングの持ち手は、尖った金属になっているので普通に痛い。[pcm]
五発か六発くらい殴ったら気が済んだのか、トングを元の持ち方に戻し、[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=9 e=6 m=8 c=1 size=L
「ありがとう、稔くん」[lr]
と言った。[lr]
「ど、どういたしまして……」[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=9 e=6 m=8 c=1
殴られながらお礼を言われるのは初めての経験なので、どうしていいものか判断に困るが、とりあえず返しておく。[lr]
その後は少し大人しくなった姉さんを連れて、会計に向かった。[lr]
トレイの上には、黄金のコロネの隣にイベリコハムのサンドイッチが載っかっていた。[pcm]
一瞬、姉さんは何をするつもりで来たんだろうと思ったが、よく考えてみればフードコートなども備わっているので、普通に学校帰りの寄り道としても機能する事に思い至った。[lr]
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「稔くん、一緒にパン食べる?」[lr]
そこで俺が「だが断る」と言ったらどうなるんだろうか。勿論、間違ってもそんなことは言わないが。[lr]
「うん、買いに行こう」[lr]
パッショーネの広い敷地に入り、テナントのパン屋へと向かう。[pcm]
俺がトレイを、姉さんがトングを手にして店内に入ると、姉さんは真っ先に菓子パンのコーナーに向かう。狙う先には、やはりコロネか。[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=5 e=1 m=5
「いっちゃんは昨日、何を買ったの?」[lr]
姉さんが聞いてくる。[lr]
「伊万里は……ホワイトチョココロネだったかな?」[lr]
とんでもなく甘そうな物を、嬉々として食べていたのは覚えている。[lr]
そのくせ体重がどうだのを延々と語って聞かせるので、何やら強い矛盾めいた物を感じていたが、努力してでも好きな物を食べたいという気持ちは理解出来るので黙っておいた。[lr]
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「ホワイト……じゃあ、お姉ちゃんは黄金のコロネにする」[lr]
黄金のコロネとは、コロネを三つ繋げて出来た最強のコロネとでも言うべきコロネで、パッショーネのパン屋さんにおける三大名物の一つになっている。[pcm]
横に繋がった三つのコロネの中身はそれぞれチョコ、ホワイトチョコ、あんことなっており、味もボリュームもカロリーも最強の一品だ。[lr]
一つ一つはやや小振りとはいえ、やはり全体は大きめだ。しかし、姉さんはひょいっと軽々トングで掴み、俺の手の中にあるトレイに移した。[lr]
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「稔くんは何食べたい?」[lr]
お姉ちゃんがとってあげるぞっ、という表情をして俺を見つめる姉さん。とりあえず、隣で姉さんが頬張るであろう黄金のコロネに胸やけを起こさないよう、甘いパンは避けておこう。[lr]
「それじゃあ、アレにするよ、プロシュートハムのサンドイッチ」[pcm]
たまたま周りを見渡して目に付いた、かつ美味しそうな物を指定する。[lr]
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「プロシュートサンド? 何処?」[lr]
「あっちあっち」[lr]
サンドイッチの棚の上の方を指さす。[lr]
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「…………」[lr]
姉さんは無言でサンドイッチの棚に近づき、トングを伸ばした。[lr]
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「…………あ」[lr]
姉さんが棚に近づいて初めて気づき、思わず声が出た。俺の目線と同じような高さにあるあのサンドイッチ。姉さんには届かないんじゃないだろうか。[lr]
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「………………」[pcm]
案の定、姉さんはトングを伸ばした姿勢のまま固まってしまった。途中で片足立ちなどをして必死に背を伸ばそうとしていたが、無駄だと悟ったようだ。[lr]
ややあってから、姉さんがクルッと顔だけでこっちを振り返る。[lr]
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「稔くんのいじわる」[lr]
先ほど昇降口で見た以上の不機嫌に顔を染めた姉さんが、口を少しとがらせて泣きそうな顔でこっちを見ている。[lr]
「いや、ごめん姉さん。悪気は無いんだ、本当に。自分で取るよ」[lr]
売り物のパンを素手で掴むのは心苦しいが、結局自分で買うわけだし、一回くらいは目を瞑ってもらえると思いたい。[lr]
が、しかし。サンドイッチの棚に近づくと、姉さんの拳が腹めがけて飛んできた。[pcm]
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トングでサンドイッチを掴むのを見計らって、姉さんを地面に下ろす。[lr]
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と言いながらトングで殴りかかってきた。[lr]
「何で!?」[lr]
訳も分からず数発殴られた。トングの持ち手は、尖った金属になっているので普通に痛い。[pcm]
五発か六発くらい殴ったら気が済んだのか、トングを元の持ち方に戻し、[lr]
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「ありがとう、稔くん」[lr]
と言った。[lr]
「ど、どういたしまして……」[lr]
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殴られながらお礼を言われるのは初めての経験なので、どうしていいものか判断に困るが、とりあえず返しておく。[lr]
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トレイの上には、黄金のコロネの隣にイベリコハムのサンドイッチが載っかっていた。[pcm]
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@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=1 e=3 m=10 c=1
「んぐんぐ」[lr]
会計を済ませて向かったフードコートで、姉さんは巨大なコロネをちょっとずつ手でちぎっては食べている。[lr]
俺の方はと言えば、もう食べ終わってしまった。フランスパンの真ん中に切れ目を入れたサンドイッチなど、男子高校生の前では屁の突っ張りにしかならんのですよ。[lr]
姉さんの口、というか全体は小さいため、食事に多少時間が掛かるのはいつものことだ。だから特に気にしない。[lr]
「姉さん、それ食べたら、次は何処に行くの?」[lr]
そう聞くと、姉さんはもきゅもきゅと動かしていた口を止め、視線だけで俺を見ながら何かしら考えている。[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=3 e=6 m=10 c=1
「ん~?」[lr]
瞳がぐるりと一周。特に何も思いつかない様だ。そして再び口をもきゅもきゅし始めた。[lr]
その可愛く動く姉さんの口の周りに、チョコがついているのを見つけた。[pcm]
「あー、姉さん」[lr]
パンに付いてきたナプキンを紙袋から取り出し、姉さんの口の周りを拭いてあげる。[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=5 e=3 m=11 c=1 size=L
「ん~」[lr]
姉さんは、さながら背中を撫でられて気持ちいい表情を浮かべる猫の様に、されるがままだ。[lr]
「はい、できあがり」[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=5 e=3 m=11 c=1
ナプキンを離すと、そこにはいつも通り姉さんのやや薄いけれど可愛い唇があった。[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=4 e=4 m=1 c=1
「えへへ、ありがとう稔くん」[lr]
「どういたしまして」[lr]
ちらっと腕時計を見ると、適度な時間に達していることに気付いた。まだちょっと早いが、あまり遅くなると夕食の作業にも支障が出てしまう。[pcm]
そんな俺の考えを察してくれたのか、姉さんは口に含んでいたコロネを嚥下すると、[lr]
@ld pos=c name="hime" wear=u pose=1 b=3 e=6 m=1 c=1
「稔くん、これ食べ終わったら帰ろっか?」[lr]
と笑顔で言った。[lr]
「そうだね、帰ろう。晩ご飯作らなきゃ」[lr]
姉さんはうんうんと頷き、再び黄金のコロネをちぎって口に含む。[lr]
それからしばらく、いつになくゆっくりと、姉さんはコロネを食べていた。[lr]
俺はただ、その光景を眺めていた。[pcm]
「んぐんぐ」[lr]
会計を済ませて向かったフードコートで、姉さんは巨大なコロネをちょっとずつ手でちぎっては食べている。[lr]
俺の方はと言えば、もう食べ終わってしまった。フランスパンの真ん中に切れ目を入れたサンドイッチなど、男子高校生の前では屁の突っ張りにしかならんのですよ。[lr]
姉さんの口、というか全体は小さいため、食事に多少時間が掛かるのはいつものことだ。だから特に気にしない。[lr]
「姉さん、それ食べたら、次は何処に行くの?」[lr]
そう聞くと、姉さんはもきゅもきゅと動かしていた口を止め、視線だけで俺を見ながら何かしら考えている。[lr]
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「ん~?」[lr]
瞳がぐるりと一周。特に何も思いつかない様だ。そして再び口をもきゅもきゅし始めた。[lr]
その可愛く動く姉さんの口の周りに、チョコがついているのを見つけた。[pcm]
「あー、姉さん」[lr]
パンに付いてきたナプキンを紙袋から取り出し、姉さんの口の周りを拭いてあげる。[lr]
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「ん~」[lr]
姉さんは、さながら背中を撫でられて気持ちいい表情を浮かべる猫の様に、されるがままだ。[lr]
「はい、できあがり」[lr]
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ナプキンを離すと、そこにはいつも通り姉さんのやや薄いけれど可愛い唇があった。[lr]
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「えへへ、ありがとう稔くん」[lr]
「どういたしまして」[lr]
ちらっと腕時計を見ると、適度な時間に達していることに気付いた。まだちょっと早いが、あまり遅くなると夕食の作業にも支障が出てしまう。[pcm]
そんな俺の考えを察してくれたのか、姉さんは口に含んでいたコロネを嚥下すると、[lr]
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「稔くん、これ食べ終わったら帰ろっか?」[lr]
と笑顔で言った。[lr]
「そうだね、帰ろう。晩ご飯作らなきゃ」[lr]
姉さんはうんうんと頷き、再び黄金のコロネをちぎって口に含む。[lr]
それからしばらく、いつになくゆっくりと、姉さんはコロネを食べていた。[lr]
俺はただ、その光景を眺めていた。[pcm]
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