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Scene4 ローレンツ短縮 - (2009/04/21 (火) 08:31:35) のソース

**Scene4 ローレンツ短縮
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****問題
 こんどは,光時計の方向を90°回転させて,光の往復方向を速度$\vec{v}$の方向に一致させた場合に,光時計が刻む時間と光が進む距離の関係を考察してみよう。

#ref(http://www14.atwiki.jp/yokkun?cmd=upload&act=open&pageid=109&file=S4-1.PNG)

 あとの必要のため,M$$_1$$,M$$_2$$間の距離を($$l_0$$ではなく)$$l$$としておく。
 往路の所要時間$$t_1$$に対して,

$$ct_1 = l + vt_1 \qquad \therefore \quad t_1 = \frac{l}{c-v}$$
 復路の所要時間$$t_2$$に対して,
$$ct_2 = l - vt_2 \qquad \therefore \quad t_2 = \frac{l}{c+v}$$

だから往復の合計時間は,

$$t = t_1 + t_2 = \frac{2cl}{c^2-v^2} = \frac{2l}{c} \times \frac{1}{1-\beta^2} \quad ,\quad \beta = \frac{v}{c}$$

となる。しかし,ともに動く系で見た時計の刻み$$t_0 = 2l_0/c$$に比べて,静止系から見たそれは

$$t = \frac{t_0}{\sqrt{1-\beta^2}}$$

というおくれを生じるのだった。以上のつじつまを合わせるためには,

$$\frac{2l_0}{c} \times \frac{1}{\sqrt{1-\beta^2}} = \frac{2l}{c} \times \frac{1}{1-\beta^2}$$

すなわち,

$$l_0 = \frac{l}{\sqrt{1-\beta^2}}$$
or
$$l = l_0\sqrt{1-\beta^2} < l_0$$

とする以外にない。つまり,光時計の長さがともに動く系で見た長さ$$l_0$$(固有長)に対して$$\sqrt{1-\beta^2}$$の比で短縮して見えるということを示す,これまた非常識な結果がこぼれ出た。これをアインシュタイン以前に理論的に導出したローレンツにちなんで,ローレンツ短縮と呼ぶ。
 上の考察でわかるように,ローレンツ短縮という帰結は時間のおくれと切り離せない関係にある。それらの間の深い関係は,次のSceneでより明らかにされるだろう。ちなみに,短縮は$$\vec{v}$$の方向に起こるということを銘記しておこう。
 時間のおくれとローレンツ短縮で,ひとまずつじつまが合ったように思えるが,実は,以上の考察にはさらに深刻なジレンマが残されている。それは,往路時間$$t_1$$と復路時間$$t_2$$が等しくないということである。光時計とともに動く系では,この時間は等しく$$l_0/c$$のはずだから,$$t_1 > t_2$$という結論にはさらに何らかの説明がないと納得できないだろう。次のSceneの中心テーマがこれにあたる。

#ref(http://www14.atwiki.jp/yokkun?cmd=upload&act=open&pageid=109&file=S4-2.PNG)
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