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イオン化エネルギーと原子の大きさ - (2011/01/31 (月) 10:25:55) のソース

****イオン化エネルギーと原子の大きさ
イオン化エネルギーは,電気力による位置エネルギーの絶対値に他ならないから,古典的対応で原子の大きさを見積もる情報となる。[[Yahoo!知恵袋>http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1154449061]]より。
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イオン化電圧またはイオン化エネルギーは,電子を束縛状態から遠くに引き離すのに必要なエネルギーだから,原子核(+残留電子)の電気力による当該電子の位置エネルギー(<0)の絶対値に等しいと考えることができる。したがって,たとえば第1イオン化エネルギー$$E{\rm [J/mol]}$$,アボガドロ数 $$N$$,クーロン定数$$k$$,電気素量$$e$$として,

$$\frac{ke^2}{r} = \frac{E}{N}$$

$$\therefore r = \frac{ke^2N}{E}$$

を計算すると,原子半径のオーダーが導出される。なお,イオン化電圧$$V$$によれば,

$$\frac{ke}{r} = V$$

$$\threfore r = \frac{ke}{V}$$

となり,さらに簡単になる。

水素の第1イオン化エネルギーは,$$E=1312{\rm [kJ/mol]}$$だから,

$$r = \frac{9.0\times 10^9\times(1.6\times10^{-19})^2\times 6.0\times 10^{23}}{1.3\times 10^6}=1.1\times 10^{-10}{\rm [m]}$$

を得る。なお,よく知られているように水素原子の基底状態のエネルギー準位は,$$-13.6{\rm[eV]}$$であるから,これを用いると

$$r = \frac{ke}{V} = \frac{9.0\times 10^9\times1.6\times10^{-19}}{13.6}=1.1\times 10^{-10}{\rm [m]}$$

ちなみにボーア半径は,

$$r = 5.3\times10^{-11}$$

であり,2倍の開きがある。原子の大きさなどというものは,いってしまえば「あってない」ようなものだから,オーダーが合えば十分である。
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