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小球と木片の無限回衝突 - (2009/03/14 (土) 09:29:50) のソース

****小球と木片の無限回衝突
質量$$m$$の小球が高さ$$h$$から斜面をすべりおりて,なめらかに接続する水平面に静止した質量$$M(<m)$$の木片に完全弾性衝突する。小球と斜面および水平面との間の摩擦は無視でき,木片と水平面との間の動摩擦係数は$$\mu$$,また静止摩擦は無視できる(静止摩擦係数が動摩擦係数に等しい)ものとする。この場合,小球と木片が静止するまでの両者の無限回衝突について考察する。
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&ref(http://www14.atwiki.jp/yokkun?cmd=upload&act=open&pageid=67&file=coll.bmp)
衝突前の小球の速さを$$v_0$$とすると,エネルギー保存により
$$mgh=\frac{1}{2}mv^2 \quad \therefore \quad v_0=\sqrt{2gh}$$
衝突後の小球および木片の速さを$$v_1 , V_1$$とする。
完全弾性衝突であればはねかえり定数が1だから,
$$V_1=v_1+v_0$$
運動量保存により
$$mv_0=mv_1+MV_1$$
両式から
$$v_1=\frac{m-M}{m+M}v_0 \quad , \quad V_1=\frac{2m}{m+M}v_0$$
を得る。

さて,$$V_1$$の初速で動き始めた木片が摩擦力によって減速し,停止するまでの時間を$$\tau_1$$とすると,
$$V_1-\mu g\tau_1=0 \quad \therefore \quad \tau_1=\frac{2mv_0}{\mu g(m+M)}$$
もし,木片が静止する前に小球が再度衝突するのであれば,再衝突までの時間を$$t$$とすると,
$$v_1t=V_1t-\frac{1}{2}\mu gt^2 \quad \therefore \quad t=\frac{2v_0}{\mu g} > \tau_1$$
となるから,再衝突は木片の停止後に起こることになり,再衝突までの時間を$$t_1$$とすれば,
$$v_1t_1=V_1\tau_1-\frac{1}{2}\mu g{\tau_1}^2 \quad \therefore \quad t_1=\frac{2m^2v_0}{\mu g(m^2-M^2)}$$
を得る。2回の衝突位置間の距離は,
$$l_1=v_1t_1=\frac{2m^2{v_0}^2}{\mu g(m+M)^2}$$
となる。以上は,木片のエネルギー保存で$$l_1$$を得てから$$t_1$$を逆算してもよい。

以後の運動は$$v_0$$を$$v_1$$にとりかえる…$$v_n$$を$$v_{n+1}$$にとりかえる…という繰り返しによって得られる。
$$v_n$$は$$n$$回目の衝突直後の小球の速さである。そこで,
$$r=\frac{m-M}{m+M}$$
とおけば,$$v_{n+1}=rv_n$$であるから,
$$v_n=r^n v_0=r^{n-1}v_1$$
$$n$$回目の衝突から$$n+1$$回目の衝突までの時間$$t_n$$と移動距離$$l_n$$は,それぞれの$$v_n$$への依存性から,
$$t_n=\frac{v_{n-1}}{v_{n-2}}t_{n-1}=rt_{n-1}=r^{n-1} t_1 \quad , \quad l_n=v_n t_n=r^{2(n-1)}l_1$$
となるだろう。

すると無限回衝突による合計,すなわち最初の衝突から両者がともに静止するまでの時間$$T$$と距離$$L$$は,
$$T=\sum_{n=1}^\infty t_n = \frac{t_1}{1-r} = \frac{m^2v_0}{\mu gM(m-M)} = \frac{m^2}{\mu M(m-M)}\sqrt{\frac{2h}{g}}$$
$$L=\sum_{n=1}^\infty l_n = \frac{l_1}{1-r^2} = \frac{m{v_0}^2}{2\mu Mg}=\frac{mh}{\mu M}$$
となる。もちろん,最後の$$L$$の結果は,エネルギー保存
$$mgh-\mu MgL=0$$
によって,ただちに得られる結果に一致する。
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『Phun』によるシミュレーション
>http://www14.atwiki.jp/yokkun?cmd=upload&act=open&pageid=67&file=collision.phn
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