重力赤方偏移
以前光のドップラー効果で天体の視線方向の運動による赤方(青方)偏移について整理したが,今度はまた「かぎしっぽ」において議論になった一般相対論による重力赤方偏移についてまとめておく。

下記は「EMANの物理学」の「赤方偏移」の後半部分をシュバルツシルト時空に特定して「翻訳」したものである。

r=r_AにいるAが時刻t_1からt_2までの間、光を出し続けたとする。またr=r_BにいるBはその光をt_3からt_4までの間、受け続けたとする。ただし、これらの時刻はシュバルツシルト時間座標とする。光の進路においてはds=0なので、

\left(1-\frac{r_g}{r}\right)dt^2-\left(1-\frac{r_g}{r}\right)^{-1}dr^2=0

が成り立っている。ただし,簡単のためd\theta=d\phi=0にとった。光の伝播に要した時間間隔は、

t_3-t_1 = \int_{t_1}^{t_3}dt = \int_{r_A}^{r_B}\left(1-\frac{r_g}{r}\right)^{-1}dr

と表される。同様に、t_2の時点でAから発射された光はt_4の時点でBに届くのであるから、

t_4-t_2 = \int_{t_2}^{t_4}dt = \int_{r_A}^{r_B}\left(1-\frac{r_g}{r}\right)^{-1}dr

と表される。結果的に

{\it\Delta}t = t_2-t_1=t_4-t_3

となり、Aが光を発していた時間はBが受けていた時間に等しい。ただし、{\it\Delta}tはA、Bそれぞれが観測する時間ではなく、シュバルツシルト座標時間による時間間隔である。

A、Bそれぞれの立場での観測時間は固有時を用いればよい。AもBも静止しているので固有時は

d\tau(r)=\left(1-\frac{r_g}{r}\right)^{1/2}dt

で得られる。

光の振動数\nuは、固有時{\it\Delta}\tauの間に、N回の振動を数えたとして

\nu=N/\it{\Delta}\tau

Nの値はAとBのどちらにとっても変わらないので、それぞれが測る振動数は

\nu_A = \frac{N}{\sqrt{1-\frac{r_g}{r_A}}\cdot{\it\Delta}t}
\nu_B = \frac{N}{\sqrt{1-\frac{r_g}{r_B}}\cdot{\it\Delta}t}

以上から、次の関係を得る。

\frac{\nu_A}{\nu_B} = \sqrt{\frac{1-r_g/r_B}{1-r_g/r_A}}

※一般のg_{0r}=0にとった座標計量では

\frac{\nu_A}{\nu_B} = \sqrt{\frac{g_{00}(B)}{g_{00}(A)}}

である。

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最終更新:2009年06月02日 10:07