古典力学における運動量とエネルギー
OKWaveにおける回答を再掲する。
古典力学における運動量とエネルギーの原理的意義を整理する。

【質問省略】

次の関係が理解されると,見通しがよくなると思います。

――――――――――――――(結果←原因)

(1) 運動方程式 (加速度←力)
m \frac{d\boldsymbol{v}}{dt} = \boldsymbol{F}
(2) 力積-運動量関係(運動量変化←力積)
\it{\Delta}(m\boldsymbol{v}) = \int \boldsymbol{F}dt
(3) エネルギー原理(運動エネルギー変化←仕事)
{\it\Delta}(\frac{1}{2} mv^2) = \int \boldsymbol{F}\cdot d\boldsymbol{x}

(2)(3)は,(1)運動方程式をそれぞれ(2)時間,(3)位置座標で積分して得られます。

物体相互に及ぼしあう力積は,作用反作用則により逆向きで等しいので,外力がない場合に系全体の運動量が保存されるわけです。

また,力が保存力のみである場合に(3)の仕事は位置エネルギーの減少分に当たるので力学的エネルギーが保存されることになります。

運動量-力積関係もエネルギー原理も、もともとが運動方程式の積分によって得られるのですから、積分を省略しないですむのであれば運動方程式(および作用反作用則)から運動を予測することができます。

重要なことは、積分によって失われてしまう情報があるということです。このことが逆に、運動方程式の積分に現れる運動量とエネルギーがそれぞれにもつ有効性がどこにあるかを教えてくれます。

運動量保存則においては結果的にある物体から他の物体への運動量の移動を考えればよく、力積を実際に積分する必要がなくなります。つまりどんな力をどれだけの時間にわたって及ぼし合ったかという時間的なプロセスについては積分によって失われたといえます。ですから、逆に運動量保存則はどんな力がどれだけの時間作用したかという力積を実際に積分することが困難である場合に力を発揮することになります。たとえば、物体間の衝突現象などは作用し合う力も時間とともに変化し、またその時間も一般に短くて力積を直接求めることは大変困難です。しかし、作用反作用則の成立は保証済みなので両物体が受ける力積が大きさ等しく逆向きであることはわかっています。したがって力積の積分を介することなく系内で運動量が移動したということのみで衝突後の運動は予測できることになります。

一方、エネルギー原理(運動エネルギー-仕事関係)において積分の結果失われた情報は、どういう力をどういう運動経路に渡って受けたかということです。仕事は力と変位の内積の積分ですから、力と変位という方向をもつベクトルとしての情報は失われ、同時に運動経路の情報も積分によって失われてしまうことになります。したがって、どういう力をどういう運動経路に渡って受けたかという積分が困難であったりする場合に、エネルギー保存則が力を発揮することになります。とりわけ、保存力においては仕事が経路に依存せず始点と終点だけで決まるので、すでに積分によって得られた位置エネルギーの形式がわかっていれば、力を経路に渡って積分するという操作が省略できることになるのです。

まとめると、原理的に見れば
運動量保存は、力積の積分の省略が有効である場合。
エネルギー保存は、仕事の積分の省略が有効である場合。
に力を発揮するといえるでしょう。

具体的な問題に対する適用という点では、もう少しテクニカルな議論になるでしょう。あくまで原理的な考え方を整理してみました。

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最終更新:2009年07月02日 09:17