動く反射壁によるドップラー効果
音源および観測者が静止しており,壁が動く場合のドップラー効果について。Y氏の急逝を悼みつつ。

非礼とも思われるが,讃えるべき功績を有しながら,無念にも道半ばにして故人となられた方なので,実名で紹介させていただく。尊敬する仲間である山本央明さんが去る18日朝に急逝された。あまりに突然のことで言葉もない。生前の精力的な姿をしのびつつ,ご冥福をお祈りするばかりである。

昨年11月に,ローカルのMLでドップラー効果について議論になったとき,彼は反射壁がある場合に,壁を「一旦観測者,次いで音源に早がわり」と段階的に解くことの冗長さを指摘していた。彼によって投稿された実にエレガントな理論計算について紹介したい。これは,いずれ転載させていただこうと思っていたが,いままで保留していて,残念ながら彼に許諾をいただくこともかなわぬことになってしまったものである。

メール本文

波動関数の中から観測される時間的振動を取り出すというのが
現実の観測であるので,高校レベルでは,そこから波長-振動数
関係を取り出して \lambdaf の間をいったりきたりしながら,原理的に
悩むほうが,悩み方としてオーソドックスでかつ,結果的には
フレキシブルなのだと思うしだいです。ドップラー効果に関する
限り,私は「急がば回れ」をお勧めしたいところ。
  (※ 私の投稿からの引用である)

ということで、壁に観測者を想定しないで、音源静止、観測者静止
壁が u で向かっている時の振動数を証明しました。
添付します。



音速は V です。
Iの状態からIIの状態へ t 秒かかったとします。壁は u でうごいています。
IIのBD波は仮想の波です。
長さはCDは Vt、BCは ut、ACは Vt
CD間には f_0t 個の波があります。BC間には \lambda_0 = V/f_0 より、

\frac{ut}{V/f_0} = \frac{ut}{V}f_0

個の波があります。
よって、BD間には f_0t(V+u)/V 個の波があることになります。
BD間の仮想の波が反射したAB間の波と同じですから
AB間にも f_0t(V+u)/V 個の波があります。
ABの長さは Vt-ut ですので、 Vt-ut の間に f_0t(V+u)/V 個の波があることになり、
AB間の波長は

\lambda = \frac{Vt-ut}{f_0t(V+u)/V} = \frac{V(V-u)}{f_0(V+u)}

となります。
つまり観測者は波長 V(V-u)/\{f_0(V+u)\} で、速さ V の音を聞いているので

f = f_0 \frac{V+u}{V-u}

の振動数の音を聞きます。

私のMLへの返信

山本さん

そのまま大学入試問題にできそうな明快さだと思いました。

逆に,一旦壁を観測者にするという手続きが,むしろ操作的,
マニュアル的にさえ見えてきますね。もちろん,原理的に
因果関係を追跡すれば,

「一旦観測者,次いで音源に早がわり」

というのは,決して操作的な間に合わせではないのですが。

おそれいりました。

合掌

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2010年01月20日 14:14
添付ファイル