運動エネルギーの相対性
OKWaveのQ&Aより。運動エネルギーの相対性とエネルギー保存の絶対性について。
長いので引用は避けるが,要点は次の通りである。
一定の加速度で加速する車を観測する。静止系
では,時刻
に速度
だった車が,時刻
に速度
,そして時刻
に速度
になったとする。すると時間
に得たエネルギー
に対する,時間
に得たエネルギー
の比は,
となる。後半の方がエンジンの仕事率は1.67倍に増えなければならない。
これを
に対して
の速度をもつ慣性系
で観測すると,
となり,後半のエンジンの仕事率は3倍になってしまう。この矛盾をどう考えたらいいだろうか? ・・・というわけだ。
運動エネルギーは,座標系によって変換されるからもとより相対的である。しかし,エネルギー保存は絶対的でなければならないだろう。さて,議論のどこがおかしいか?
エンジンがする仕事は,車の推進において力を及ぼしあう「系」に対してであることを見逃してはならない。つまり,上の議論には地球が抜けている。以下,自転・公転といったもともとの地球の運動は無視し,初め車も地球も静止しているとする。また,車の質量
,地球の質量
とする。
たとえば,
系において車が速度
から
に加速すると,運動量保存により地球は後方へ速度
から
に加速することになる。このとき,
一方,
系から見ると,
となり,矛盾のないことが示される。
もう少し簡明にするために微分を使えば,運動量保存により,車の速度変化
に対して地球の速度変化は
であり,このときエネルギー変化は
となる。座標系を移ったときに,
のエネルギーが車から地球に移行したと見ることができる。まさに運動エネルギーは相対的だが,エネルギー保存は絶対的である。
最終更新:2010年01月31日 11:13