斜面を転がり下りる速さ
大道仮説実験「ころりん」でも話題を呼んだ,斜面上の転がり運動の本質。
すべりのない(エネルギー散逸のない)剛体の転がりについて考察しよう。
球,円盤,輪など軸対称の剛体について,質量を

,半径を

とすると,慣性モーメントは

と書ける。ただし,

は形状によって定まる無次元定数である。この剛体が,軸まわりの角速度

,速さ

で斜面を転がり下りているときの運動エネルギーは,
となる。つまり,運動エネルギーは

の比で重心の運動エネルギーと重心まわりの回転の運動エネルギーとに配分されるわけである。したがって,

が小さいほど,すなわち慣性モーメントが小さく転がりやすいほど,同じ高さでの速さは大きくなることになる。また,重力による位置エネルギーも質量

に比例するから,力学的エネルギー保存によって,同じ高さでの速さは

および

に依存せず,形状によって決まる因子

のみによって定まる。
斜面の傾角

とすると,初速ゼロから斜面上を距離

だけ転がり下りた後の速さ

として,
したがって,
となる。
斜面上を初速ゼロで距離

だけ転がり下りるのに要する時間は,
となる。ここに,
は,摩擦なくすべり下りるときの所要時間である。
たとえば,傾角30°の斜面を1m下りる時間と末端速度は,
摩擦なし(

) :0.639 sec.,3.13m/s
球 (

) :0.756 sec. ,2.65m/s
円盤 (

) :0.782 sec. ,2.56m/s
輪 (

) :0.904 sec. ,2.21m/s
などとなる。

,

mとして,実験してみた。
球(スーパーボール) 1.5 sec. (理論値 1.51)
円筒(単1乾電池) 1.6 sec. (理論値 1.56)
輪(幅広セロテープ) 1.8 sec. (理論値 1.81)
(缶コーヒー空き缶) 1.8 sec.
球殻
(ソフトテニスボール)1.7 sec. (理論値 1.65)
最終更新:2009年01月28日 15:41