エネルギー原理からエネルギー保存へ
Yahoo!知恵袋より。保存力による仕事と位置エネルギーの関係をすっきりさせる。

そのまま転載させていただく。

【質問】運動量と運動エネルギーの違い

私は理系大学生なのですが、はっきりとしたというか、納得のいくような運動量と運動エネルギーの区別の仕方がどうもわかりません。
一通り古典力学は学習したつもりです。
運動量は時間積分・ベクトル量。運動エネルギーは変位で積分・スカラー量。互いに次元も異なる。というのは知っているのですが、じゃあ具体的にどうなるのかというのを考えたときどうもうまく理屈(自分なりの)が合わなくなってしまいます。
というのも、私は高校生に物理を教えることが多く、このような質問をされたときに悩んでしまったということがあったからです。
たとえば、質量m[kg]の物体をh[m]持ち上げるとして、まあ当然それはエネルギーmghを持つわけですが、なぜそいつが運動量を持たないのか、ということです。
私は最初、物体は人からt[s]力(\vec{f})を受け、重力からも同じくt[s]力(\vec{f}^\prime})を受ける。
力の向きは逆で、なおかつ、つりあった状態で持ち上げるためf=f^\prime
つまり、ベクトルの和を考えると、\vec{f}t + \vec{f}^\prime t = \vec{0}
で運動量は0と考えました。
が、同様にエネルギーを考えると
重力は物体に-mgh,人は物体にfhの仕事をし、f=mgより、結局足し合わせると0になってしまいます。

位置エネルギーというのは場の考え方から導かれていますよね(?)
そのようなときに場から受ける仕事を足し合わせていいのかな、というのがあるのですが、なぜこのような結果になってしまうのでしょうか。

教科書などを見返したのですが、エネルギーと運動量を比較したような記述はなく困っています。ぜひ回答宜しくお願いします。
また、考え方が根本的に間違っているのであれば、それもぜひご指摘ください。

【回答】
つまり、ベクトルの和を考えると、\vec{f}t + \vec{f}^\prime t = \vec{0} で運動量は0と考えました。

この考察は問題ないと思います。正確に言うと,運動量の変化は0です。

位置エネルギーというのは場の考え方から導かれていますよね(?) そのようなときに場から受ける仕事を足し合わせていいのかな、というのがあるのですが、なぜこのような結果になってしまうのでしょうか。

もちろん,保存力場から受ける仕事を,人の手から受ける仕事と同一視してしまった点に問題があります。

基本にもどりましょう。まず,エネルギーを運動エネルギーに限定します。

運動方程式を経路積分すると,

{\it\Delta}\left(\frac{1}{2}mv^2\right) = W

すなわち,
「物体の運動エネルギーの変化は,外からされた仕事に等しい。」

これを「エネルギー原理」といいます。積分し,なおかつ内積によりスカラー方程式になったために,ある意味で情報の一部が失われていますが,

運動方程式:加速度(結果)←力(原因)
エネルギー原理:運動エネルギー変化(結果)←仕事(原因)

という運動における因果関係の異なる表現になっています。

右辺の仕事が保存力によるものであるときに,
-Wによって位置エネルギーの変化を定義しよう
…というのが力学的エネルギー保存への橋渡しになっています。
ここで仕事とエネルギーの関係の理解において「飛躍」が生じるので,要注意です。
つまり,保存力による仕事は位置エネルギー変化というものに解釈を変えたのですから,保存力の仕事という概念と位置エネルギー変化の概念を同居させると,大変な誤解を生じるのです。

この飛躍の結果として,進化した「エネルギー原理」が現れます。すなわち,
物体の力学的エネルギー変化=された仕事
というものです。ここで気をつけなければいけないのは,もちろん右辺は保存力による仕事を含まないという点ですね?

本来のエネルギー原理は,保存力による仕事W,保存力以外の力による仕事W^\primeとすると,

{\it\Delta}\left(\frac{1}{2}mv^2\right) = W + W^\prime

進化した「エネルギー原理」(※実際はこういう呼称はない)は,

{\it\Delta}\left(\frac{1}{2}mv^2\right) - W = W^\prime

となります。U = -Wと定義して,
力学的エネルギー変化=(保存力以外の力による)仕事
となるわけです。

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最終更新:2010年10月08日 19:27