ベクトル場の「勾配」?
電磁波の波動方程式の導出過程で出てくる,ベクトル場の「勾配(gradient)」とは何か?
かぎしっぽ掲示板より。
真空中のMaxwell方程式

…(i)

…(ii)

…(iii)

…(iv)
(i)の回転をとって,
ベクトル解析の公式
を用いて,
(ii)(iii)を代入すれば,
を得る(波動方程式)。
問題は,ベクトルに対するラプラシアンの作用にある。ラプラシアンは本来スカラー場の勾配の発散である。そこで,ベクトルの「勾配」,さらにその「発散」とはいったい何なのか,ということである。以下,簡単のため
などと略記する。ラプラシアンは,演算子
であるから,ベクトルのラプラシアンは,成分ごとのラプラシアンを成分とするベクトルと考えればいいわけだが,途中で出てくるベクトルの「勾配」
とは,いったい何ものなのか? また,さらにその「発散」とは???
本来の勾配や発散の意味をどこまで拡張できるかはわからないが,数学的には
ということになる。すなわち,ベクトル場の「勾配」は

とベクトル場の直積すなわち2階テンソルである。さらにその発散は,ベクトル演算子

と「勾配」テンソルの内積(縮約)ということになろう。
※ひとつ注意!
「勾配(gradient)」はスカラー場において定義された演算なので,厳密にはベクトル場の「勾配」または,

という記述は許されないそうである。もちろん,直積としての

は許されるが,これも

への形式的便宜にすぎないとする見方が一般的なものになっているようだ。
公式の証明
左辺の

成分をとると,
となる。または,レヴィ・チビタ記号

およびアインシュタインの和の規約を用いて
となる。
最終更新:2010年11月16日 13:06