高エネルギー正面衝突の有効性
加速された陽子-陽子間の正面衝突が,静止した陽子への衝突に比して有効であること。Yahoo!知恵袋より。

区別のつけやすさからか,問題は陽子-反陽子になっている。
【問題】
陽子の静止エネルギーを938MeVとする。加速器を用いて10GeVに加速した陽子と反陽子を正面衝突させるとき,陽子から見た反陽子のエネルギーはいくらになるか。

【解答】



実験室系からみた陽子・反陽子のエネルギーは,

E_0 = \frac{mc^2}{\sqrt{1-\beta^2}}\quad,\beta=\frac{v}{c}

\therefore \beta^2 = 1- \frac{m^2c^4}{{E_0}^2} …(i)

陽子から見た反陽子の速度をuとすると,陽子に対して速度vをもつ実験室系に対して,反陽子はvの相対速度をもっているから,速度合成則により

u = \frac{2v}{1+v^2/c^2} = \frac{2c\beta}{1+\beta^2}

したがって,陽子から見た反陽子のエネルギーは,

E = \frac{mc^2}{\sqrt{1-u^2/c^2}}

 = \frac{mc^2}{\sqrt{ 1 - \left(\displaystyle\frac{2\beta}{1+\beta^2}\right)^2 }}

 = \frac{1+\beta^2}{1-\beta^2}\times mc^2

(i)を代入して,

E = \frac{2{E_0}^2}{mc^2} - mc^2 \simeq 212{\rm [GeV]}

【別解】

4元運動量の「大きさ」が座標系によって変わらないので,

(2E_0)^2 = (E + mc^2)^2 - p^2c^2

ここで,

E^2 = m^2c^4+p^2c^2

を用いて

2{E_0}^2 = m^2c^4 + mc^2E

\therefore E = \frac{2{E_0}^2}{mc^2} - mc^2

を得る。


衝突実験において,両者とも加速する方が,ずっと効率のよい高エネルギー衝突になるということを示している。エネルギーが1割ですむということだ。

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最終更新:2011年01月26日 13:01
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