一杯の水に含まれる卑弥呼の飲んだ水分子
コップ一杯の水に,かつて卑弥呼の身体を通過した水分子がどれほど含まれているだろうか? 膨大な数を相手にするときには,いい加減な憶測は危険である。 Yahoo!知恵袋より。

上のQ&Aの回答で,質問にはあまり関係ないが下記の部分が気になった。

「早い話が遠い昔に卑弥呼が飲んでいた水をもしかすると僕らが飲んでいる可能性もあります。確率はめちゃくちゃ低いですが。」

以前,コップ一杯の水が地球全体に拡散する十分な時間の後に,再度水をくんだとして,何個の水分子がもどってきているか,を計算したことがあった(8億個ほどになる)。この計算の経験から,「確率はめちゃくちゃ低いですが」の結論の危うさに対してすぐにピンときた。

地球表面で循環する水量は,1.4\times10^{12}{\rm m}^3ほどだそうだ。これは,{\rm H}_2{\rm O}\,\,4.7\times10^{40}分子ほどになる。これに対して,卑弥呼が一生に飲んだであろう水は,1日1Lで60年と見積もると,7.3\times10^{29}分子。

卑弥呼が飲んだ水のいくらかは分解されてしまったかもしれない。しかし,未だ循環している水がほとんどだろう。そして,彼女が一生のうちに飲んだ水は地表全体に拡散してしまっているに違いない。

すると,私たちがコップ一杯の水(分子数6.0\times10^{24})を口にするとき,そのうち

6.0\times10^{24}\times\frac{7.3\times10^{29}}{4.7\times10^{40}}\simeq 10^{14}

程度の水分子が卑弥呼の身体を一度は通過したといえる。もちろん,何度も通過した分子もあろうし,上述したように卑弥呼の身体を通過した水の全てがそのまま地表に拡散してはいないかもしれない。海洋での水の平均滞留時間は3000年余りだそうだが,そうした要素も加味するべきかもしれない。さらに弁護をするなら,上の水分子数は一滴の水にもならない微小な量である。しかしながら,「確率はめちゃくちゃ低いですが。」などと軽々しくのたもうては笑われそうな数だともいえまいか?

※水分子はイオンとの相互作用などで,水素結合を介して原子が交換するということを同僚に教わった。この点も考慮すれば,話はまたちがってくるようだ。

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最終更新:2011年02月23日 09:08