瞬間の回転軸と慣性モーメント
半円筒の転がり振子(修正)でのすったもんだを経た決着を見て,この運動の考察を始めたときにふと気づいた「定理」を確認するときがきた。すなわち,

「剛体の回転を含む運動において,瞬間の回転軸まわりの慣性モーメントを平行軸の定理により
  I_i=I_G+mL^2 (I_Gは重心まわりの慣性モーメント,Lは瞬間回転軸から重心までの距離)
とすれば,角速度\omegaに対応する剛体の運動エネルギーは,I_i\omega^2/2である。」

あたりまえといえばそれまでだが,瞬間の回転軸まわりの回転の運動エネルギーを考えれば,重心の運動のエネルギーは必要ないということである。瞬間の回転軸まわりの回転こそが掛け値なしに剛体の運動の全てなのだ。

半円筒の転がり振子ですべりのない場合は,瞬間の回転軸は常に接地点であるから,
I_i=I_G+\left\{\left(1-\frac{4}{3\pi}\cos\theta\right)^2+\left(\frac{4}{3\pi}\sin\theta\right)^2\right\}mR^2
  =\left(\frac{1}{2}-\frac{16}{9\pi^2}\right)mR^2+\left(1+\frac{16}{9\pi^2}-\frac{8}{3\pi}\cos\theta\right)mR^2
  =\left(\frac{3}{2}-\frac{8}{3\pi}\cos\theta\right)mR^2

同様に,半円筒の摩擦のないすべり振子では,瞬間の回転軸は重心から
\frac{4}{3\pi}R\sin\theta
だけ水平に移動したところにある(水平方向の力がないから初速ゼロの初期条件では重心は鉛直方向にのみ動く)から,
I_i=I_G+m\left(\frac{4}{3\pi}R\sin\theta\right)^2
  =\left(\frac{1}{2}-\frac{16}{9\pi^2}\right)mR^2+\frac{16}{9\pi^2}\sin^2\theta\cdot mR^2
  =\left(\frac{1}{2}-\frac{16}{9\pi^2}\cos^2\theta\right)mR^2

となるわけである(下図の赤丸が瞬間の回転軸)。

「瞬間の回転軸」の概念にはこうした意義があったことをあらためて認識した。

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最終更新:2009年02月17日 20:25
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