無限時間の後の一体化
Yahoo!知恵袋からひろったが,たまに見かける問題である。目的の運動に至るのに理論上無限時間がかかる。

【問題】

なめらかな水平面上にある質量Mのリングの中心に質量mの質点を入れて,質点に初速v_0を与える。リングと質点が衝突を繰り返して十分に時間が経過した後,リングの速度はいくらになるか。ただし,リングと質点の間のはねかえり定数はe<1とする。



【解答】

衝突を繰り返した後,やがて両者は衝突しなくなり,一体として動くようになる。
求める速度をvとすると,運動量保存により

mv_0 = (M+m)v

\therefore v = \frac{m}{M+m}v_0


この,「十分に時間が経過した後」という収束問題は,たとえば抵抗を受ける落下の終端速度などでも見られるように,理論上目的に達するためには無限大の時間を要する。このこと自体は目的と「十分な時間」の程度の問題であるから疑問の余地はない。しかし,質問者は解答解説にある,「やがて両者は衝突しなくなり,一体として動くようになる」という説明にとまどいを覚えた。「一体」とは接触状態をさすのか,それとも同じ速度であれば離れていてもいいのか,という疑問を提起したのである。下記は私の回答の概要。

「離れているということは,相対速度がゼロでなかったから離れたのであるから,その後必ず次の衝突が起こる。したがって,両者は接触状態になければならない。しかるに,この状態に達するのに要する時間は無限大である。」

同一速度への収束は疑問の余地なく理解できるが,接触しているか離れているかということについての判断は悩ましい。実際は,十分な時間の後には相対速度が「ほとんどゼロ」となって,なおかつ両者が離れている,という場面も見られるだろう。しかし,上で述べたようにその場合は相対速度は厳密にはゼロではないはず。したがって,上記のような説明で納得してもらうしかない。



シミュレーションでは,e=0.5とした。相対速さが衝突ごとに半分になるから,衝突間時間は倍加していく。


最終更新:2012年03月14日 10:35