浮力による永久機関
Yahoo!知恵袋について考察を加えていたところ,副産物として半円の重心が導かれた,という話。

水平軸まわりに回転できる円筒のちょうど半分が,水を満たした水槽の側壁から外部に出ている。半円筒の浮心は軸より中に偏っているから,浮力は常に円筒を回転させるモーメントを持ち,円筒は回転し続けるだろうという「永久機関」。




水圧は円筒面に垂直だから軸まわりのモーメントを生じることはありえない。すなわち,水圧の合力は軸を通ることになるわけである。浮力の作用点としていわゆる「浮心」=半円筒の重心を持ち込むのは,陥りやすい誤りといえよう。半円筒の重心を作用点とするためには,その切断面にも水圧がかかっていなければならないのである。

うまい説明がないか考えていたところ,副産物として半円の重心位置が転がり出た。

半円筒に生じる浮力は,

\rho gw \times \frac{1}{2}\pi r^2

ただし,\rho:水の密度,g:重力加速度の大きさ,r:円筒の半径,w:円筒の幅 である。

ところが,今考察している円筒の切断面にかかる水圧はないのだから,円筒が受ける力のモーメントは「浮心」を作用点とする浮力のモーメントから,切断面で受ける水圧の分を差し引かねばならない。その結果がゼロというわけだ。切断面で受ける水圧があったとして,その力のモーメントの大きさは

\int_0^{2r}\rho gwz\times(z-r) dz = \frac{2}{3}\rho gwr^3

である。ここで,半円筒の重心位置を軸からdの距離とすると,

\rho gw\frac{1}{2}\pi r^2\times d - \frac{2}{3}\rho gwr^3 = 0

\therefore d = \frac{4r}{3\pi}

を得る。

最終更新:2012年04月09日 23:02
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