棒でつながれた質点系の運動
棒でつながれた質点系。なぜ円運動の方程式を使えるのか? Yahoo!知恵袋より。

【問題】

なめらかな水平面上に,質量Mの質点と質量mの2つの質点を軽くて伸び縮みしない長さlの棒でつないだものが置いてある。棒は接合部で自由に回転できるものとする。初期状態で質点は図のように一直線をなしている。真ん中の質点Mに図のように右方向の初速度V_0を与えた。この直後の質点mが棒から受ける力の大きさはいくらか。


【解答】

Mから見たmの運動を考えると,半径l,速さV_0で左向きの円運動を始めるので,棒がmを引く力をTとすると

T = \frac{m {V_0}^2}{l}

となる。

ここで,質問者は

mから見たMの運動を考えると,やはり半径l,速さV_0の円運動を始めるので,棒がMを引く力は

\frac{M {V_0}^2}{l}

となり,棒がMを引く力も棒がmを引く力も等しいので,mにはたらく棒からの力の大きさはM {V_0}^2/l となり…」

と考えて混乱している。Mが上下の棒から受ける力は等しいので,もちろんそのようにはならない。しかし,「mから見たMの運動も円運動」というのは合っているから,どこからか「向心力」を受けなくてはならない。いったいどこから受けるというのだろうか?

その答えは「慣性力」である。

Mは,初速度を与えられた直後の瞬間には,棒から受ける合力はゼロだから,その加速度はゼロである。すなわち,Mから見る立場は慣性系のものであるからmに対して円運動の方程式が成立する。ところが,mは直後からM方向へ引かれて加速度を持つから,mから見る立場は非慣性系のものである。したがって,mから見たMの運動方程式には,慣性力が入らなければならない。mの加速度はMから離れる方向を正として

a = -\frac{{V_0}^2}{l}

であるから,Mが受ける慣性力は

-Ma = \frac{M{V_0}^2}{l}

となり,この慣性力が「向心力」となってMを円運動させることになるわけだ。


最終更新:2012年05月20日 15:33
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