直線2連振子のエネルギー(2)
直線2連振子のエネルギーの定量的考察を試みた。



まず,初歩的な計算で最下点までのエネルギー移動を考察しよう。
本来の題意である最下点での速さv_1,v_2を求める。

力学的エネルギー保存により

\frac{1}{2}m_1{v_1}^2 + \frac{1}{2}m_2{v_2}^2 = m_1gh_1 + m_2gh_2

ここで,

v_2 = \frac{h_2}{h_1} v_1

を考慮して解けば,

v_1 = h_1 \sqrt{\frac{2g(m_1h_1 + m_2h_2)}{m_1{h_1}^2 + m_2{h_2}^2}}

v_2 = h_2 \sqrt{\frac{2g(m_1h_1 + m_2h_2)}{m_1{h_1}^2 + m_2{h_2}^2}}

を得る。したがって,おもり1のエネルギー変化は

{\it \Delta}E_1 = \frac{1}{2}m_1{v_1}^2 - m_1gh_1

   = \frac{m_1m_2gh_1h_2(h_1 - h_2)}{m_1{h_1}^2 + m_2{h_2}^2} > 0

同様に {\it \Delta}E_2 = -{\it \Delta}E_1 < 0 を得る。

「個別の力学的エネルギー保存が成立するのではないか」

という勘違いとともに多く見られる勘違いは,

「重心の力学的エネルギーは保存するだろう」

というものである。もちろん重心まわりの回転のエネルギーを忘れてはいけない。

重心の軸からの距離および最下点での速さ

h_G = \frac{m_1h_1 + m_2h_2}{m_1 + m_2}

V = \frac{h_G}{h_1}v_1

を考慮すると

\frac{1}{2}MV^2 = \frac{g(m_1h_1 + m_2h_2)^3}{(m_1 + m_2)(m_1{h_1}^2 + m_2{h_2}^2)}

失われた重力による位置エネルギーとの差をとれば

g(m_1h_1 + m_2h_2) - \frac{1}{2}MV^2 = \frac{m_1m_2g(m_1h_1 + m_2h_2)(h_1 - h_2)^2}{(m_1 + m_2)(m_1{h_1}^2 + m_2{h_2}^2)}

この差は重心まわりの回転のエネルギーまたは,相対運動のエネルギーということになる。

\frac{1}{2}I\omega^2 = \frac{1}{2}\mu {v_r}^2 = \frac{m_1m_2g(m_1h_1 + m_2h_2)(h_1 - h_2)^2}{(m_1 + m_2)(m_1{h_1}^2 + m_2{h_2}^2)}

は容易に確認できるだろう。ただし,

M = m_1 + m_2

\mu = \frac{m_1m_2}{M}

\omega = \frac{v_1}{h_1} = \frac{v_2}{h_2} = \frac{V}{h_G} = \frac{v_r}{h_1 - h_2}

Iは重心まわりの慣性モーメントである。

最終更新:2012年12月06日 16:02
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