『Phun』を力学シミュレータに(1)
『Phun』はもちろん生まれながらの物理シミュレータ。ピタゴラ装置ふうのゲーム的活用も楽しいが,条件設定の機能をフルに活用すれば,本格的な力学シミュレータとして十分使えそうである。『Phun』に秘められた可能性を引き出しつつ,力学シミュレータとして仕立て上げることを考えた。
まず,力学シミュレータとして『Phun』にほしいと思うのが,スケール。そこで,物体の大きさを知る唯一の情報として,右クリックメニューのInformationから得られるArea=面積を使うことができないか考えた。円板の面積から半径を逆算すれば画面上でのスケールを得ることができると思ったのである。この方法で1mのスケールを作ってみたが,自由落下時間を測定しても振子の周期を測っても,どうも長すぎるようだ。
それならばと,カットアンドトライで周期が2秒になる単振子を作った。すると,この単振子の長さを物体が落下する時間も1mの自由落下時間にほぼ等しくなったので,これを1mのスケールとして使うことができることがわかった。このスケール作りであらためて,『Phun』がPCの機種に依存しない絶対時間を使っているらしいことがわかった。異なるPCで,等しい時間測定結果を得たからである。絶対時間を使えることは,本格的に力学シミュレータとして活用する上で重要な要件である。また,スローモーション機能も時間測定にとってうれしい機能であり,振子の周期測定に力を発揮した。
なお,スケール作成とその試験のためには,OptionsでAirのチェックをはずして真空にし,またスケールの密度(右クリックGeometries-Density)を最小値にしなければならないことはいうまでもない。ちなみに,振子のおもりは小さくして密度を最大にした。
作ったスケールは,phunletとして登録・保存して,いつでも使えるようにした。
1mの単振子(周期2秒)をつくる
上記の1m振子のシーン
…とここまで書いて気がついたのだが,そういえば使える長さ情報がArea以外にもうひとつあった。ばねの自然長(右クリックSprings-Target length)である。そこで,比べてみた。
自然長0.99mのばねと比べたら,まさにぴったり。スケールを作るのならば,はじめからばねを使えばよかったのである。しかし,上で紹介したスケール作成にあたって,逆に時間・空間のスケールにおいて『Phun』が現実の物理空間をほぼ正確にシミュレートできることがわかったことを考えると,この遠回りは決して無駄ではなかったといえる。
最終更新:2009年03月18日 22:00