衝突振子(理論編)
2個をぶつけて2個飛び出す場合と,2個を連結してぶつけてバラバラに飛び出す場合のそれぞれについて考えてみる。

この問題は10年近く前に考察したことがあった。手近なものとしては10円玉をおはじきとして使っても実験できるのでやってみるとよい。連結はテープでよいが,ちょっとテンションをかけ気味にしてしっかり連結すると,よい結果が得られる。

鋼球(またはコイン)1個の質量をmとし,衝突は完全弾性衝突であるものとしよう。また,鋼球(コイン)に左から1・2・3・4・5と番号をつけて区別し,それぞれの速度の添字にも用いることとする。

(1) 連結しない場合

1と2の衝突直前の速度をv_0nの衝突直後の速度をv_nとする。
衝突時に鋼球(コイン)中を弾性波が伝わるには有限の時間を要するから,時間差で次々と起こる連続衝突現象として考察しなければならない。

2が3に衝突 → 3が4に衝突 → 4が5に衝突 → 5が速度v_0で飛び出す。
1が2に衝突 → 2が3に衝突 → 3が4に衝突 → 4が速度v_0で飛び出す。

いずれの衝突の場合も衝突した側が停止し,された側が速度v_0で飛び出す。完全弾性の等質量の正面衝突では,両者の速度が完全に交換する。もちろん,以上の過程で常に運動量保存が成立して,最初と最後の比較は

2mv_0 = m({v_4}^\prime+v_5) \quad , \quad {v_4}^\prime=v_5=v_0

である。4の速度にプライムをつけたのは,2度目の衝突後の速度だからである。

(2) 連結した場合

連結した場合は,なかなか大変だ。1と2は質量2mに一体化したとみなさなければならない。その初速度をv_0とする。

12と3の衝突後の速度をv_{12},v_3とすると,完全弾性衝突および運動量保存により,
v_0 = v_3 - v_{12}
2v_0 = 2v_{12} + v_3
運動量保存は両辺を質量mで割った。両式から,
v_{12}=\frac{1}{3}v_0 \quad , \quad v_3 = \frac{4}{3}v_0
となる。続いて,
3が4に衝突 → 4が5に衝突 → 5が速度4/3\cdot v_0で飛び出す。

12と3の2度目の衝突が起こる。その直後の速度を{v_{12}}^\prime,{v_3}^\primeとする。ここで,
{v_0}^\prime = v_{12} = \frac{1}{3}v_0
とおけば,上の2式の速度すべてにプライムをつけた式が成立する。したがって,結果は
{v_{12}}^\prime=\frac{1}{3}{v_0}^\prime=\frac{1}{9}v_0 \quad , \quad {v_3}^\prime = \frac{4}{3}{v_0}^\prime=\frac{4}{9}v_0
となる。続いて,
3が4に衝突 → 4が速度4/9\cdot v_0で飛び出す。

12と3の3度目の衝突が起こる。その直後の速度を{v_{12}}^{\prime\prime},{v_3}^{\prime\prime}とすると,全く同様にして
{v_{12}}^{\prime\prime}=\frac{1}{27}v_0 \quad , \quad {v_3}^{\prime\prime} = \frac{4}{27}v_0
となり,3は速度4/27\cdot v_0で飛び出す。

各鋼球(コイン)の最終速度は,
{v_{12}}^{\prime\prime}=\frac{1}{27}v_0 \quad , \quad {v_3}^{\prime\prime}=\frac{4}{27}v_0 \quad , \quad {v_4}^\prime=\frac{4}{9}v_0 \quad , \quad v_5=\frac{4}{3}v_0
となり,もちろん運動量保存

2mv_0 = 2m{v_{12}}^{\prime\prime}+m{v_3}^{\prime\prime}+m{v_4}^\prime+mv_5 = \left(\frac{2}{27}+\frac{4}{27}+\frac{4}{9}+\frac{4}{3}\right)mv_0
が成立している。

衝突される側の個数がn個の一般の場合は,

2mv_0 = \left(\frac{2}{3^n}+\frac{4}{3^n}+\frac{4}{3^{n-1}}+\frac{4}{3^{n-2}}+\cdots+\frac{4}{3}\right)mv_0

となるべきことは容易にわかる。

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最終更新:2009年04月02日 18:46
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