私は今、とても悩んでいます。
悩んでいると言っても、恋煩いとか将来の進路とかそういう類いの悩みではありません。
元を辿れば、この悩みは恋煩いが原因なのかもしれないけど…とりあえずその話はおいといて。

私の悩みというのは、ある人への誕生日プレゼントについてです。
些細な悩みだと思う人もいるかもしれません。でも、私にとっては違います。

その人の名前は、中野梓ちゃん。
私より一つ年下で、同じ軽音部の後輩です。
私は梓ちゃんのことをあずにゃんと呼んでいます。猫耳がとっても似合うから、あずにゃん。
あずにゃんは私と同じギターを担当していて、両親がジャズ奏者なこともあってその腕は一流です。
ギタリストじゃない人でも、思わず聴き入っちゃうくらい。本当にうまいんです。

練習熱心で、勉強もできて、性格も真面目で…
だけど、案外子どもっぽい一面もあったりします。
まずあずにゃんは甘いお菓子に弱いです。
ケーキをあーんして食べさせてあげると、途端にほわんとした笑顔を見せてくれます。
甘い物の中でも特に、たい焼きが大好き。
ひょいと口に入れられたそれを頬張るあずにゃんは、本当に嬉しそうな顔をするんです。

それから、スキンシップをしたときの反応がたまらなく可愛いです。
ツンデレって言うのかな?
私が抱きつくとあずにゃんは一度、怒ったような素振りを見せます。
でも、本気で抵抗してくることは決してないんです。
それが私は嬉しくて、いつからかあずにゃんに抱きつくのが日常茶飯事になっていました。
通称、あずにゃん分の補給です。

あずにゃんの仕草や表情を見ていると、なんだかドキドキします。
あずにゃんに抱きつくと、柔らかくて良い匂いがして…身も心も温かくなります。
ギターを丁寧に教えてくれたり、ソロで演芸大会に出ようとしたときは一緒に出場してくれたり…
可愛くて、愛しくて、とてもとても大切な人で…

私はあずにゃんが好きです。大好きです。
もちろん後輩としての好きではなく、一人の女性としての好き。
これが恋だと気付くまでには、少し時間がかかりました。
なにせ、こんな感情を抱いたのは生まれて初めてだったから…

初恋の相手は、私と同じ女の子でした。
同性愛なんて気持ち悪いと思うかもしれません。たしかに、私も最初はすごく悩みました。
でも、人を好きになってしまったら男も女も関係ないと分かったんです。

それを教えてくれたのは、妹の憂でした。
一人で悩んでいたても仕方ないと思った私は、思い切ってこのことを憂に相談してみました。
憂は、しどろもどろな私の話を真剣に聞いてくれました。そして、応援すると言ってくれた。
彼女の後押しがなかったら、私は今も一人で悩み続けていたかもしれません。

憂には、告白しないのかと聞かれました。
このことを相談をしていたのは8月の終わり頃だったかな…
だから、2学期が始まる前にちゃんとお付き合いできたらいいんじゃないかって。
もちろん私は、すぐにでもあずにゃんに告白したい気持ちでいっぱいでした。

でも結局、夏休みが終わる前にその一歩を踏み出すことはできなかった。
やっぱり、突然呼び出されて告白なんかされても戸惑っちゃうだろうから。
何かきっかけが欲しかったんだけど…つい最近までクラスの劇や学園祭ライブがあってそれどころではありませんでした。

最後の学園祭ライブが終わると同時に、私は焦りを感じました。
これから私たちは本格的な受験シーズン。あずにゃんと会える機会も減ってしまう。
受験が終わったら、いよいよ卒業。告白ができないまま、あずにゃんと離れ離れになってしまう。
その夜、ライブの余韻に浸る中で私は考えました。
何か告白のきっかけになる出来事はないかな。想いを伝えるのに相応しいイベント…あっ!

11月11日。
あずにゃんの誕生日。

これしかないと思いました。
誕生日はお祝いの行事だから、告白には向いていないと言う人もいるかもしれません。
だけど、この日あずにゃんが生まれて来なければ、私があずにゃんを好きになることもなかった。
あずにゃんの誕生日は、あずにゃんにとって特別な日であるのはもちろん、私にとって特別な日でもあるから。
生まれてきてくれたことへの感謝を伝えるとともに、私の想いも一緒に届けてみようと思ったのです。

それに何より、告白のタイミングが他にありませんでした。
クリスマスという手も考えたけど、冬休みは冬季講習や模試でさらに忙しくなります。
それから受験が終わるまでは勉強一筋だろうし、受験が終わればあとは卒業するだけ。
卒業式の日に告白という、よくあるシチュエーションも考えてみました。
でもそれだと、もし付き合えたとしてもその後一緒に過ごす時間が限られてしまいます。

春になれば、私は大学1年生で、あずにゃんは高校3年生。
同じ1学年の差でも、高3と高2とは比べ物にならないくらいの隔たりがあります。
付き合ってすぐに会えない時間が多くなるなんて、あずにゃんも寂しがるだろうし、私も寂しくなるに決まっています。
なんだか付き合うこと前提みたいな言い方だけど…
とにかく、卒業式に告白はしないことにしました。そうなると残された選択肢は1つだけ。

私、平沢唯はついに決心しました。
11月11日、誕生日プレゼントと一緒に私の想いをあずにゃんに伝えると──






To be continued?


  • 頑張れーー!! -- (あずにゃんラブ) 2013-01-12 06:32:50
  • 続きが無い…だと… -- (名無しさん) 2014-10-12 17:40:35
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最終更新:2010年12月08日 09:40