うー、緊張するなぁ~。
……んもぉ!
あずにゃんに手紙を渡すだけなんでしょ!
しっかりしなよ!私!
「唯先輩?」
「ぅぬぉあぅっ!!!!……あ、あずにゃん……いつの間に……後ろに?」
「どんな驚き方ですか……。ついさっきですけど。唯先輩、全然気付かないから……」
「へっ!?あ、そ、そうだったの?」
「……唯先輩……どこか具合悪いんですか……?」
「そーんなことはないよぉー!ほーら、げんきげんきー」
「……少なくとも、体の調子は悪くなさそうですね」
「あ、あずにゃん!体の調子『は』って何!?」
「……そのままの意味ですけど」
「ひ、ひどいよあずにゃ~ん……」
♪ dear my ……friend? ♪
─・─・─・─
親愛なるあずにゃんへ
この手紙を渡すのは
放課後だから、こんにちはかな?
それとも家に帰って読んでいるから、こんばんは?
まぁ、どっちでも良いよね。
今日いきなり手紙を渡したのには理由があります。
あずにゃん、今日は一日元気無かったね・・・、放課後も、一緒の
帰り道でも・・・。
この間、土手で日が暮れるまで話した時に、あずにゃんが「思うようになかなかいかないんです・・・」って泣きながら言ってたよね。
もしかしてさ、それが原因なのかな?
理由を聞いても、何も話してくれなかったけど・・・、
─・─・─・─
「ふぅ……何て書けば、ちゃんと伝わるかなぁ~……」
あずにゃん……俯いたままで全然話してくれなかったしなぁ~。
……私、そんなにも頼りないかなぁ……。
「……仕方ないよね……」
いつもの私を見ていれば『頼りない』って思っちゃうよね……。
「あ、あれ……」
なんで……なんで私……泣いてる……の……?
「……ヒック……あずにゃん……私……グスッ……あずにゃんの力に……エグッ……なりたいよ……ウゥッ……」
★
……よっし!!いっぱい泣いたら元気出た!!続きもちゃんと閃いたよ!!
─・─・─・─
理由を聞いたけど、何も話してくれなかったよね・・・。
でもね、大丈夫だよ!
頼りないかもしれないけれど、私がずっとそばにいてあげるからね。
元気出してさ、一緒にがんばっていこうよ!ね!
そうだ!あずにゃんに悩んだ時のとっておきの解決方法を教えてあげるよ。
私もね、たまに悩んで前に進めなくなっちゃう時があるんだ・・。
でも、いくら考えても、答えが全然出てこなかったりするんだよね。
そんなときはね、必ず夜空を見上げるんだ~。
あずにゃんもやってみて!
「何でこんな事を悩んでるんだろう」
って思えてきて、思わず笑っちゃう時もあるんだよ。
辛いこと、苦しいこと、全部自分のことなんだから、ちゃんと受け止めなくちゃ
って考え方に変わっていくんだよね・・・。
それでね、いっぱいの星がみんなの顔みたく見えてきて、「私は一人じゃないんだ、みんながいるんだ」って思えて、ちゃんと前に進めるんだよ。
あ、これはみんなに秘密だよ。憂だって知らないんだからね。
─・─・─・─
うーん……。
「ちょっと……これは……」
気持ち、出し過ぎかなぁ~。
「でも……もし……あずにゃんが……私の事……」
いやいやいやいやいやいや!!
いくらなんでも、それは良い方に考えすぎだよ、うん。
でも……。
「もうちょっとだけ……出してみようかな……」
ここ最近、気が付くとずっとあずにゃんの事考えているんだよ……。
もし、
これからも、心配な事があったら、いつでも私に相談して。
一緒に、ずーっと一緒に考えてあげるからね……。
「きゃぁー!そんなこと!ダメダメダメ!!」
『おねーちゃーん、うるさいよぉー』
「あ、ごめーん、ういー」
『早く寝なきゃだめだよー』
「はーい!おやすみー!」
『おやすみー……はふ……』
……ちょっとうるさくし過ぎちゃったかな……、憂が扉開けないで良かったよ……。
「流石に……さっきのは無しだよねぇ~」
あれじゃ、ガチ告白になっちゃうもん……あずにゃんが私の事をどう思ってるのかわからないのに、こんな事、書けないよね……。
「えっと……」
─・─・─・─
話しはかわるんだけどね、私、時々考える事があるんだ~。
5年後、10年後に、私達ってどうしてるのかな~って。
あずにゃんはどう思う?私はね・・・正直全然イメージできないんだよね。
でもね、例えみんなが離れ離れになったとしても、みんなが幸せだったらいいな~って思うんだ~。
ほら、やっぱ幸せな方が楽しいでしょ。だからなんだけどね。
─・─・─・─
なんて書こうかな……。
えっと……うーん……。
「難しいなぁ……。こんな時、澪ちゃんだったらすぐに思い付くんだろうなぁ~」
どーしよー、良い言葉が出て来ないよぉ~。
「……見直してみようかな」
澪ちゃんが言ってたもんね「良い詞が浮かばない時は、最初からもう一度見直すと、ポンと出てきたりするんだ」って。
「えぇーっと……」
★
「……よし、じゃぁこんな感じに……」
─・─・─・─
あずにゃん。
私は、いつでもあずにゃんのそばにいるよ!
さっきも書いたけど、頼りないだろうけど、迷ったり不安な時はいつでも言ってね!
じゃぁまた、学校でね!
唯
P.S.
わけわかんない手紙になっちゃってごめんね~
─・─・─・─
「……なんか、イマイチだなぁ~。あ、そうだ」
名前の所を……。
─・─・─・─
あずにゃんの栄養ドリンク 平沢唯より
─・─・─・─
よっし!オッケー!
「……ふぁ……あぅ……1時過ぎてる……」
ちょっと頑張り過ぎちゃったなぁ~。
でも……あずにゃんのために頑張ったんだから……まぁいいや……。
さっさとおふとん入ってねーまーしょ……。
#
はぁ……結局放課後に渡せなかったよ……。
「どうしたんですか……?やっぱりどこか具合悪いんですか?」
「あ、いや、そんな事は無いんだけどね……」
「……?それならいいんですけど……練習中も、お茶してる時も元気無かったので……」
「そぉ?そんなことは無いんだけどなぁ~……みんなも普通にしてたでしょ?」
「みなさんはそうかもしれませんけど……私の目はごまかせませんよ!」
えっ!そ、それって……。
「んもぉ~あずにゃんったら……大胆なんだからぁ~」
「へっ?あ!い、いえ、違います!そういった意味じゃありません!」
「……ぞんなに全力で否定しなくたっていいじゃん……」
「あ、すみません……てゆーか、そんな事で拗ねないで下さい」
「はぁ~い」
★
「……じゃぁ、先輩、また明日です」
はっ!!いつの間にかあずにゃん家との分かれ道に来てたよ!
「……唯先輩?」
「あ、ご、ごめん。うん、また明日ね~。……おぉーっと!ちょっとまったぁ~!!」
あぶないあぶない……、手紙渡しそびれるところだったよ~。
「な、なんですか?唯先輩!?」
「あずにゃん……えっとね……はい、これ……」
「手紙……私に……ですか?」
「うん……実はね、昨日これを書いてて、寝たのが今日の1時半だったんだぁ~……えへへ」
「『えへへ』じゃないですよ!もぉ……心配して損しました」
「あ、あずにゃ~ん……ゴメンよぉ~」
「……で、これを読めば良いんですか?今ここで」
おっと、今読まれたら意味がないねぇ。
「んーとね、家に帰ってから、読んでもらいたい、なぁ……」
「はぁ……わかりました。それでは、また明日です」
「まったね~」
★
はぁ~……星がきれいだねぇ~……。
あずにゃん……手紙読んでくれたかなぁ……。
「あ……メール……あずにゃんからだ……」
えーっと……。
from:あずにゃん
Sub:手紙ありがとうございます
message:
唯
先輩のおかげで少し元気が出ました。
改めてお礼が言いたいので、明日のお昼、部室に来てください。
ぬぉっっ!!ま、まさか……、って、そんな事あるわけ無いよね~。
「でも……元気になって良かった~」
やっぱり、あずにゃんは元気な笑顔でいるのが一番だよね!!
#
えっと……お昼に部室って書いてあったよね……、お礼って……なんだろ……。
「あずにゃ~ん、居る~?」
って、誰もいないや……。じゃぁ、しばらく待ってみ「唯先輩!!!」「うひゃぁぁぁ!!!」
「先輩……驚きすぎです」
「だって……びっくりしたんだもん……。ところで、一体何のようかな?」
「お礼をしたいってメールに書いたじゃないですか……」
「わざとだよぉ~、わかってるって」
「では、改めて……。唯先輩、手紙ありがとうございました。……悩んでいる事についてはまだ話せないんですけど……いずれ必ず話しますんで!」
「うん、わかったよ~」
「それと……、唯先輩の『とっておき』って、よく効きますね!おかげで前よりは悩みが軽くなりました」
「そぉ?良かった~」
「……私なんかに、そんな『とっておき』を教えても構わないんですか?」
梓だから……なんて言えないよね……。
「後輩が悩んでいるのに、先輩が手をさしのべないでどうするのかね?……なーんてね。別に、たまたま誰にも話した事が無かったってだけだから、気にしなくてもいいよ~」
「そうなんですか?でも、本当によく効きました!ありがとうございました!!……それと……もう少し聞きたい事が有るんですけど……」
「なーに?」
「手紙に書いてあった『迷ったり不安な時はいつでも言ってね』って……本当ですか?」
「もちろん!本当だよ」
「……ありがとうございます……、もし、今の悩みとは別の悩みが出た時は……お願いします……」
「まかせて~、どんな相談にも乗ってあげるよ~」
「ふふっ……唯先輩って……っと、もうお昼休み終わりますね。じゃぁ、また放課後に。失礼しまーす」
「うん、じゃぁねー……って、その『ふふっ、唯先輩って』の意味はなーにー!?」
……って、もう居ないや……。一体、何なんだろう?
#
「ゆーいー、これは要るの~?」
「どれどれ……、あ、これは要らないや」
「そ、じゃぁ捨てとくね……っと、結構片付いたかな」
せっかく我が家に家族がふえるんだから、ちゃんときれいにしておかないとね……。
さてと、次はこの箱の中を……。ん?これって……高校の時の物が入っているの……かな?
「わぁ……懐かしいなぁ~。ノートに教科書に……ん?手紙?……あ、あの時の……」
「あずさぁ~!どうしたの~?ちゃんと片付けしないと……って、何読んでるの?手紙?……あぁぁぁ!!それって!!!」
「うん、唯からの……初めての『
ラブレター』……かな?」
「ラブレターだなんて……まぁ、そのつもり……だったんだけどさ……」
「やっぱりそうだったんだ……」
じゃぁ、その時の悩みも話して構わないかな?
「あのさ、唯。私、あの時の『悩み』って、話してないよね」
「そう……かな?」
「あの時ね、何を悩んでいたかっていうと……『唯が好きで仕方がない』って事を悩んでたの」
「……な、なんですとぉ!!」
「なのに、唯ったらこんな手紙をよこすからさ……、なんだか悩んでいたのがばからしくなっちゃって」
「だから、吹っ切れてたんだ……」
「そーゆーこと。……でもね、感謝してるんだよ。だって、多分、この手紙が無かったら、……私、卒業式が終わった後に唯に告白してないもん……」
「そうだったんだ……、じゃぁ、この手紙が『縁結び』だったんだね」
「そうかもね……」
縁結びか……。実際、この手紙をもらってからとことん悩むのって無くなったからなぁ~。
ふふっ……唯様々だね……。
「あ、ところでさぁ、この手紙で『・・・あずにゃんだけの、特別だよ』って書いてあるけど……実際誰にも教えてないの?」
「うん……誰にも教えてないよ……だってさ……『梓だから』教えたんだもん……」
「……恥ずかしい事……言わないでよ……」
「だって……本当の事だもん……梓以外には、たとえ聞かれて言わないよ」
そうなんだ……へへっ……なんだか嬉しいな……。
「ん?どったの?ニヤニヤしちゃって……」
「へっ!?ううん!何でもないよ!さーて、絢音を我が家に迎え入れるための準備を終わらせちゃいましょ~!!」
「あ、いきなり始めないでよぉ~!!」
唯……本当に、ありがとうね……。私、唯が居なかったら、絶対にこんな前向きになれなかったよ……。
「唯!!」
「ん?なーに?」
「ずっと、一緒に、この先もずっと、歩いて行こうね!!」
「うん!!……未来までずっと……だよ!!」
「約束だからね!」
「約束するよ!」
「……ありがとう」
「……どういたしまして」
「えへへ……唯……」
「なーに?あず……ん……」
振り向いた唯に、ありったけの愛を込めたキスをしたのは……私達だけのヒミツ……。
おしまい!
- さあ!!このままバカップル街道まっしぐら? -- (あずにゃんラブ) 2013-01-18 16:09:32
最終更新:2010年07月29日 20:38