「ぱちゅりー!! ここをまりさたちのおうちにするよ!!」
「むきゅ… でもここはにんげんのおうちよ?」
「だいじょうぶだよ!! にんげんなんてまりさがやっつけるから!!」
街に食料を求めにきた
ゆっくりまりさとゆっくりぱちゅりー。
その二匹は一軒の家を見つけた。
「ここなられみりゃもきっとこないからあんぜんだよ!!」
「でも、にんげんはもっとこわいってきいたわよ?」
「でもまりさはここにすむってきめたからね!! さっさとなかにはいろうね!!」
そう言いながら手頃な石を見つけてガラスに投げるまりさ。ガラスは簡単に割れてしまう。
「じゃ、はいろうね!!」
「むぎゅ、だいじょうぶかしら?」
意気揚々と、まりさは家へ入っていった。
この家に住んでいるのは俺だけで、一緒に暮らしてる奴なんて誰もいない。
精々庭でよく寝ている猫がいるくらいだが、そいつも家の中に入ってくる事はない。
だから、仕事から帰ったばかりの俺が玄関を開けて聴こえてきた騒がしい声に、俺は落ち込んだ…
誰もいない筈の我が家が騒がしくなる理由は、たった一つと言い切れる。
どれくらい散らかされたのか…本は何冊破かれただろうか…
そんな事を考えてまたへこみ、覚悟を決めて家の中に入る。
声の聴こえる場所は居間からだった。おそらくガラスを石で割って侵入してきたのだろう。
居間への扉を引いて中へ入ると、奇跡と言うべきか特に荒らされた様子はない。
しかし、ガラスの周りではやはり二匹のゆっくりがいた。
まりさとゆちゅりーである。
二匹の側にはそれなりに大きい石があり、これを使ってガラスを割ったのだろう。
だが、二匹とも様子がおかしい。
まりさの方は痛い痛いと転げ回り、ゆちゅりーの方は体をザックリ斬って中身の生クリームを少しずつ流している。
二匹ともまだ生きているようだが、俺は何もしてないのに何故こんな状態に?
「おにぃざんみでないでだずげでえええ!!」
考え事をしていた俺の耳に喧しい声が届く。
まりさの方が俺が入ってきたことに気づいたようだ。こいつから何があったのか話を聞けばいいか。
「お前ここで何してんだ?」
「ぞんなごどどうでもいいでじょおおおおおおおおおおおおお!! はやぐだずげでよおおおおおおおおおお!!」
「そうか、なら俺もどうでもいいからお前ら放っておくわ」
「おねがいじまず!! だずげでくだざい!!」
「だったら何があったのか話してくれるよな?」
「わがりまじだあああああああああああ!! はなじまずからあああああああああ!!」
「ならさっさと話せよ」
「ほら!! ぱちゅりーもはやくはいってよ!!」
「む、むぎゅ…」
まりさは苛ついていた。さっさと入ってこないゆちゅりーに。
せっかく入れるようにしたのに、いまだにゆちゅりーは庭でモタモタしているのだ。
このまま待っていたら何時入るかわからない。まりさはさっさとこの家の中で遊びたいのだ。
「もういいよ!! ぱちゅりーはひとりでゆっくりしてれば!! まりさはこっちでゆっくりしてるからね!!」
「ま、まって!!」
ゆちゅりーを無視して家の中を進む。とりあえずまずは何か美味しい物を探そう。
そんな事を考えていると、入ってきた場所からガシャンという音が聴こえてきた。きっとゆちゅりーが入ってきたのだろう。
迎える為に振り返ると、ゆちゅりーは体に大きな切傷を作っていた… 中のクリームがどんどんこぼれていく…
「ぱ、ぱちゅりー!!」
慌てて駆け寄るまりさ。何故ぱちゅりーは怪我をしたのか、それしか考えることしかできなかった。
「まっててね、いまなめてあげるからね!!」
しかし、近づいた途端自分の足(底面)が痛み出した。
先程まで何ともなかったのに、今は跳ねようとするとチクチク痛み出す。
「い、いだいよおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
まりさは跳ねる事も儘ならず、その場で転がる事しかできなかった…
まりさの話を聞いて、男は一つの結論に達した。
こいつら、自滅したのだと。
ゆちゅりーの怪我は入ろうとした時に割れたガラスで体が切れたのだ。その証拠にガラスには生クリームがべっとり付いている。
そして、まりさのはガラスの破片を踏んだのだ。
割れたガラスの破片はとても細かく散らばる。
おそらく入ってきた時はすぐ通り過ぎたから無事だったものの、ゆちゅりーを助けようとしてガラスが散らばっている場所を踏んだため底面を傷つけてしまったのだ。
「おにいざんだずげでええええええええええええええええ!!!!」
まりさがもう一度叫ぶが、もう答えを聞いたから用はない。
ガラスの付近を掃除機で念入りに吸い込み、窓を開けて二匹を外へ投げる。
「どぼじでだずげでぐれないのおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
あの状態ならゆちゅリーもまりさもれみりゃ辺りから逃げれずに死ぬだろう。
そもそも人の家を奪い取ろうとしておきながら助けてもらえると本当にあの饅頭は信じていたのだろうか?
そんな事を考えていると、羽を生やした丸い球体が見えた。
間違いなくれみりゃだ。まりさの喧しい声が聴こえたので来たのだろう。
何度も助けてくれと叫ぶまりさを見ながら、俺はガラスをどうするか考えていた。
ちょうどいい機会だし対ゆっくり用の強化ガラスに変えるのも良いかもしれない。市が補助金を出してくれるらしいし。
庭を見るとゆちゅりーだったものはもう帽子しか残っておらず、まりさは今正に食われている最中だった。
目が合ったまりさはこちらに向かって今まで出一番大きな声をあげた。
「ゆっぐりじねええええええええええええええええ!!!!」
終
ガラスって結構スパスパ切れるんですよね、割れた後も破片散らばって危ないですし。
外で地震に遭遇したときに一番怖いのは建物の窓ガラスが割れることだそうです。
割れたガラスが散らばってかなり破片を撒き散らすそうですよ。
では、読んでいただき真にありがとうございます。お目汚し失礼!!
最終更新:2011年07月28日 03:47